Coworkタスク指示の書き方 — 「やり方」でなく「欲しい結果」を書く
Coworkの「Say what, not how」を、計画の立て方・承認モード・標準指示の置き場所から読み解きます。手順を書き込むと何が起きるか、書き分けの具体例です。
Claude Coworkの製品ページには「Say what, not how」という見出しがあります。「どうやるかでなく、何が欲しいかを伝える」という意味で、Coworkへの指示の書き方を一言で表した文句です。手順を細かく書くほど良い結果が出ると考えがちですが、Coworkが先に計画を立てる作りを考えると、手順の書き込みは得になりにくい場面があります。ここでは、公式ヘルプの動作説明を手がかりに、何を指示文に書き、何を承認モードや計画の確認に任せるかを分けます。
「Say what, not how」の中身
指示文に書くのは「達成したい結果」と「条件」で、結果に至る手順は書きません。製品ページの説明文は次のとおりです。「Tell Claude what you need, not how. It opens browsers for web tasks and takes over your screen only when it has to. You're always in control.」(Claudeに必要なことを伝えてください、やり方ではなく。ウェブ作業ではブラウザを開き、必要なときだけ画面を引き継ぎます。あなたは常にコントロールを保てます)
この文には2つの主張があります。手順はClaudeが決めること、それでも制御は手元に残ることです。後者は指示文ではなく、計画の確認と承認モードが担います。以下では、この分担を順に見ます。
手順を書き込むと何が起きるか
Get Startedガイドによると、Coworkはタスクを受けると次の順に動きます。
Coworkがタスクを受けてからの流れ
- 1
依頼を解析して計画を立てる
依頼を読み、何をどの順に進めるかの計画を作ります。
- 2
必要なら作業をサブタスクに分ける
複雑な作業は小さな単位に割ります。
- 3
隔離された環境でコードとシェルコマンドを実行する
実行場所はAnthropicのサーバー上の隔離環境です。
- 4
妥当なら複数の作業を並行して進める
並行できる部分は同時に進みます。
- 5
成果物をセッションに届ける
完成したファイルはセッション上でプレビューやダウンロードができます。
これはClaude Codeと同じエージェント的な作りです。分割と並行の判断は、タスクを渡した時点でClaudeの側が受け持っています。ヘルプはこれをSub-agent coordinationと呼び、複雑なタスクでは複数のサブエージェントが同時に動くことがあるとしています。
そこへ「まずAをして、次にBをして、Cを確認してからD」と書くと、Claudeが立てるはずの計画と、人間が書いた手順が二重になります。手順が前提として読まれるなら、実行中に見つけた近道や、途中で前提が崩れたときの立て直しの余地は狭まると考えられます。想定例として、請求書フォルダの整理を考えます。
| 観点 | 結果指定 | 手順指定 |
|---|---|---|
| 指示文 | 結果指定「請求書フォルダを整理して」 | 手順指定「PDFだけを移し、ファイル名を日付形式にし、取引先ごとに振り分けて」 |
| PDF以外が混ざっていた | 結果指定形式の実態を見て分類方法を選べる | 手順指定手順にない形式の扱いが宙に浮く |
| 日付の読めない名前があった | 結果指定計画の段階で扱いを決められる | 手順指定「日付形式にリネーム」のどこで止まるかが不明になる |
公式ヘルプの用例「Organize my Downloads folder by type and date」(Downloadsフォルダを種類と日付で整理して)も、結果と条件だけで書かれています。
書き分けの実例
同じ業務でも、指示文の作りで二通りになります。
| 業務 | 手順指定 | 結果指定 |
|---|---|---|
| ファイル整理 | 手順指定「Downloadsを開いて、拡張子ごとにサブフォルダを作り、1件ずつ移動して」 | 結果指定「Downloadsフォルダを種類と日付で整理して」 |
| リサーチ | 手順指定「まずGoogleで検索して、上位5件を開いて、メモ帳にコピーして」 | 結果指定「競合3社の価格プランを比較した表にして」 |
| データ整理 | 手順指定「A列でソートしてから、B列が空白の行を削除して、次にC列を…」 | 結果指定「重複と欠損値を除いた集計用シートにして」 |
条件を足すのは原則に反しません。分量・期限・使ってよい情報源・出力形式(スプレッドシートかMarkdownか)は「欲しい結果の輪郭」で、手順ではありません。具体的に書くほど結果が狙いに寄ります。
出力の形式も条件に含められます。ヘルプには、数式の入ったExcelやPowerPoint、整形した文書を成果物にする例があります。保存先も条件の一つです。Claudeが読み書きできるのは接続したフォルダに限られ、ファイルが期待した場所にないときは、Claudeが示した出力先とアクセス権限を見直します。
指示文に書くべき前提 — 手順ではない「置き場所」の情報
手順ではないが指示文に書いておく価値があるのが、作業がどこで動くかに関わる前提です。ヘルプによると、Coworkのセッションはクラウドで動き、ローカルファイルやブラウザ、コンピューターに触れるときだけ、その端末のClaude Desktopアプリを経由します。アプリが閉じていたりPCがスリープしていたりすると、ローカルのセッションは途中で止まることがあります。
2026年10月6日から、ProとMaxプランの新しいCoworkタスクはクラウドで動きます。この変更の対象はProとMaxプランで、Settings > Generalの「Only on your computer」は削除されます。すでに端末上で始めたタスクは、終わるまで端末に残ります。各タスクの上部にあるボタンからトランスクリプトをダウンロードでき、続きをClaude Codeで進めることもできます。「Downloadsを整理して」のようにローカルのフォルダを指す指示は、デスクトップアプリが開いている前提で成り立ちます。
使用量にも関わる条件があります。ヘルプは、使用量の上限に頻繁に当たるときの対処として次の3つを挙げています。
- 関連する作業は、複数のタスクに分けず1つにまとめる
- 無関係な作業は新しい会話で始め、余分な文脈を引きずらせない
- 簡単な答えだけでよいときは、ファイルや完成物は要らないと伝える
3つ目は結果の指定そのものです。「何が欲しいか」には「何は要らないか」も含まれます。
メモリも開始前に決める前提です。1つのタスクだけメモリなしで走らせたいときは、最初のメッセージを送る前に「+」メニューで「Memory」をオフにします。この設定はタスクの開始時に決まり、あとから変えられません。
「ブラウザで開いて」と書かなくてよい理由
ウェブが絡む作業でも、手段の指定は要りません。ヘルプによると、サイトを開く・ページを読む・クリックする・入力するといった操作は、デスクトップではClaude Desktopに内蔵のブラウザが既定で使われます。インストールは不要で、自分のブラウザのログインやタブとは別になります。Claude in Chromeをすでに使っている場合は、自分のブラウザで動き、使うブラウザはSettings > Coworkでいつでも変えられます。
どのブラウザで開くかはClaudeと設定側の仕事です。指示文には、どのサイトから何を集めて何にするかだけを書けば足ります。ログイン済みのサイトを使いたいかどうかは、手順ではなく前提条件として書きます。ログインの扱い自体は、ブラウザ側の設定で決まります。内蔵ブラウザの初回起動時には、自分のブラウザからCookieを取り込む選択肢が出ます。取り込みはサイト単位で選べ、銀行・メール・シングルサインオンのサイトは既定でチェックが外れています。
計画を確認して走らせる — 制御を指示文に押し込まない
「不安だから手順を細かく書いておく」の代わりになる仕組みが、公式の手順に入っています。セッションの開始手順は、タスクを説明したあとに「Claudeの進め方を確認してから、走らせる」です。実行中も、進捗表示で各ステップが見え、途中で割り込んで軌道修正できます。別の端末で同じセッションを開いて確認や指示変更もできます。
経路を管理したいときは、手順を先に書くより、計画を見てから修正する方が指示文を軽く保てます。
もう1つ、ファイルの削除は指示文と無関係に守られています。Coworkはファイルを完全に削除する前に必ず明示的な許可を求め、許可の確認画面で「Allow」を選ぶ必要があります。「削除はしないで」と手順に書き足さなくても、この確認は入ります。
承認モードが制御を担う
指示の外側で制御を担うのが、Claudeが行動の前に許可を求める頻度を決める承認モードです。従来の画面では3つのモードがあり、メッセージ欄のモードセレクターでいつでも切り替えられます。ChatとCoworkが1つのClaudeになる新しい体験では、メッセージ欄の設定はAutoとManual(既定)の2つです。
従来の画面にある3つの承認モード
手動承認(Manual)
旧称は「Ask before acting」です。Claudeが一時停止して許可を求め、許可か拒否を選びます。
自動承認(Auto)
Claudeが各アクションを安全性の観点で自己チェックし、危険と判断したものをブロックします。ブロックが続くと、Claudeは各ステップで許可を求める状態に戻ります。
すべてスキップ(Skip)
旧称は「Act without asking」です。確認も自動チェックも入りません。関わるコネクタやファイルをすべて信頼できる場合に限る設定です。
コネクタのツール単位の権限と組み合わせると挙動が分かれます。ヘルプの表では、「Blocked」のツールはどのモードでも拒否されます。「Needs approval」のツールは、Manualでは確認が入り、Skipでは承認扱いです。Autoでは、「Always allow」のツールは読み取り専用なら承認され、書き込み・削除系はClaudeが判断します。「Needs approval」のツールもClaudeが判断します。
Autoには見落としやすい点が2つあります。ヘルプによると、この安全チェックのぶん、Autoは他のモードより使用量を多く消費します。お金・自分名義のメッセージ送信・重要なファイルが絡む作業では、Manualに戻す選択肢も明記されています。
TeamとEnterpriseでは、Autoを使えるかどうかを管理者が決めます。既定では使えますが、管理者がオフにするとモードセレクターに表示されません。書き込みできるコネクタツールにタスクごとの承認を組織が求める場合は、「Always allow」の設定が効かないこともあります。
モードの設計はCoworkの承認ゲートの設計にあります。
標準指示にも同じ原則が働く
全セッションに共通する前提は、標準指示(Global instructions)に書きます。トーン・出力形式・自分の役割の背景を書く欄で、ここにも手順ではなく結果と制約を書くのが向いています。「トーンはですます調で」「表はMarkdownを優先」といった内容です。
標準指示の置き場所は体験によって違います。従来の画面ではSettings > CoworkのGlobal instructionsで、「Edit」から入力して「Save」します。新しい体験では、Settings > Generalの「Instructions for Claude」の一部になります。すべての会話に適用されます。
デスクトップでローカルフォルダを選んだときは、フォルダ指示(Folder instructions)も使えます。プロジェクト固有の文脈を足す欄で、Claude自身がセッション中に更新することもあります。優先順位の詳細はCoworkの指示、優先順位はどう決まるかにあります。
定期実行のタスクにも同じ書き方が向きます。定期タスクはクラウドで動くため、端末が起きていなくても、デスクトップアプリが閉じていても走ります。任意のCoworkタスクで/scheduleと入力すると設定でき、「毎週月曜の朝に受信箱の要約を」のように結果と頻度で頼めます。
指示が言い過ぎになっているサイン
手順指定に寄っているかどうかは、いくつかの兆候で分かります。
- 番号付きの手順(「1. まず〜 2. 次に〜」)が並んでいる
- 「どの画面のどのボタンを押すか」まで操作を指定している
- ツールを使う順番(検索してからコピーして、Excelを開いてから)を明示している
- 最終成果物と関係ない中間確認(「10件集めたら一度見せて」)を挟んでいる
当てはまる部分は、「最終的に何が欲しいか」の文に置き換えられないか見直します。番号手順を消すと情報が失われるなら、順序に業務上の意味がある制約として残します。たとえば前出のデータ整理で、B列の空白行を消す順序が集計結果を左右するなら、その順序は条件です。単なる操作の言い換えなら削ります。
依頼文の型はClaude Cowork業務テンプレート12選に、並行して走る仕組みはCoworkの並列実行の仕組みと指示のコツにあります。
まとめ
指示文を書き終えたら、各手順を「最終状態の一文」に言い換えられるか試します。言い換えると意味が失われる順序だけが、指示文に残す制約です。