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Anthropic Anthology Fund — Menlo Venturesとの提携内容

Anthropic Anthology Fund — Menlo Venturesとの提携内容

AnthropicはMenlo Venturesと共同でAnthology Fundを設立しました。1億ドル規模のスタートアップ支援策の内容と、Claudeで起業する開発者が得られるものをまとめます。

Anthropicは2024年7月17日、ベンチャーキャピタルのMenlo Venturesと共同で「Anthology Fund」を設立したと発表しました(Anthropicという企業自体の概要はAnthropicとはにあります)。Menlo Venturesが出資する1億ドル規模のファンドで、Anthropicの技術を使って新しいAIアプリケーションを作るスタートアップが対象です。

発表文だけでは出資ステージや金額が見えません。Menlo側の公式ページには、出資の下限額、対象ステージ、審査の流れ、Claudeを使う義務の有無まで書かれています。本記事は両方を突き合わせて、起業を考える開発者が判断に使える形にします。

資金はMenlo、技術と知見はAnthropic

役割は明確に分かれています。原資を出して投資判断をするのはMenlo Venturesで、Anthropicはモデルへのアクセスと研究・製品の知見を持ち込みます。Menloは2023年の初めにAnthropicへ最初の出資をし、2024年にはさらに大きな追加ラウンドを主導しています。今回のファンドは、投資家と投資先が組んでスタートアップを探す形です。Menloは後の投稿で、狙いは2つあったと説明しています。有望な起業家を支援することと、従来のファンドの型より速い速度で投資することです。投資先どうしが学び合い、Anthropicと一緒にモデル開発の方向を形づくる集団を育てることも目標に挙げています。

Anthropic共同創業者で社長のDaniela Amodei氏は、関心領域をこう述べています。

"We're particularly interested in ventures that leverage AI to enhance human capabilities and productivity in fields such as healthcare, legal services, education, energy, infrastructure, and scientific research."

Menloのパートナー、Matt Murphy氏は、Menloの会社づくりの経験とAnthropicの最先端のAI技術と人材を組み合わせると述べています。Menlo側はAIチームのパートナー6人が担当です。Anthropic側ではDaniela Amodei氏とCPOのMike Krieger氏が支援に加わります。

支援対象の5分野

発表文は5分野を挙げています。Menloのページは、それぞれに何が入るかをもう少し具体的に書いています。

分野Menloページでの説明
AIインフラMenloページでの説明開発者向けツールやミドルウェアなど、ClaudeやほかのLLMの採用と能力を押し上げるもの
新しい産業応用Menloページでの説明バイオ、ヘルスケア、法律、金融、サプライチェーン、クラウド基盤、サイバーセキュリティ
コンシューマー向けAIMenloページでの説明LLMを中核部品にして、体験そのものを変えるサービス
信頼性・安全性ツールMenloページでの説明モデル層かそれより上で、AIの安全性を高めるもの
社会的便益Menloページでの説明教育・研修、雇用創出、アクセシビリティを広げるツール

産業応用の列挙には「ただしあらゆる分野で優れた案を支援する」という但し書きが付いています。挙げられた分野以外は対象外、という読み方はできません。一方でインフラとツール類の枠は、発表文より広く取られています。担当パートナーの専門もインフラ、コンシューマー、サイバーセキュリティ、SaaSなどに分かれ、Menloのページには各人の得意領域が並びます。応募する分野に近い人へ連絡する、という使い方ができます。

採択されると得られるもの

資金と技術支援が同時に付くのが特徴です。数字で見ると次のとおりです。

数字

Anthology Fundの数字

  • ファンド規模

    1億ドル

    Menlo Venturesが拠出

  • 出資の下限

    10万ドル〜

    Menloのページの記載

  • 無料クレジット

    2.5万〜3万ドル

    資料により金額が違う

  • デモデー

    年2回

    ディープダイブは四半期ごと

出資ステージとクレジット額の記載は資料ごとに異なります

クレジットの額は資料で割れています。Anthropicの発表文とMenloのページ本文は「2万5,000ドル」、同じMenloページのFAQは「3万ドル」です。いずれも対象は「最先端のモデル」で、旧世代向けの割引ではありません。

金額以外にも、FAQには次の項目が並びます。

  • Anthropicのチームへの定期的な相談と、開発者向け支援(developer relations)の専任窓口
  • MenloとAnthropicの幹部が参加する、四半期ごとのディープダイブ
  • Menloの投資先企業が提供するクレジット
  • サンフランシスコとメンローパークのMenloオフィスにある共用ワークスペース

Claudeを使っていなくても応募できるのか

Menloのページは、この点をはっきり否定しています。Claudeの上で作ることは、出資を受ける条件ではありません。ただし理由が付いています。FAQが書かれた2024年6月20日に、Claude 3.5 Sonnetは世界最高性能の言語モデルでした。最良のモデルを使いたくなるはず、という説明です。

同じFAQに、出資の骨格もあります。

  • ステージはPre-Seed、Seed、Series A。リード投資家としても、参加投資家としても入る
  • 条件は案件ごとに交渉する。リードする場合は7〜10年のコミットメントと考え、有望な投資先には追加出資も検討する
  • 米国企業を好むが、米国外の優れた企業にも出資する

同じMenloのページの本文は「SeedからExpansionまで」と書いています。上限はFAQの方が狭い書き方です。

応募から出資決定までの流れ

応募は随時受け付ける形(rolling)で、締め切りの回はありません。

流れ

応募から出資決定まで

  1. 1

    応募フォームを送る

    Menloの応募ページから申し込みます。Menloのパートナー宛に直接連絡する方法も案内されています。

  2. 2

    返信を待つ

    Menloは2週間以内に返信すると書いています。

  3. 3

    チームと面談する

    進んだ創業者は、Menloのチームに事業を説明する面談に呼ばれます。

  4. 4

    デューデリジェンスと最終判断

    面談の次が投資先の精査(デューデリジェンス)で、最後に投資判断が出ます。

落ちた場合も再応募できます。事業が大きく進んだと思えたら再応募を勧め、間は3か月以上空けるよう求めています。審査基準の記述は短く、AIの新しい応用で産業を変え暮らしを良くする開拓者、とだけあります。

発足後に分かった実績

その後のMenloの投稿から、応募の規模と出資の実態が読み取れます。

あゆみ

Anthology Fundの歩み

  1. 2024年7月17日設立を発表

    1億ドルのファンドとして、MenloとAnthropicが共同で立ち上げました。

  2. 2024年10月3日60日後の報告

    数千件の応募が、ほぼ全大陸から届きました。応募者の80%は技術系の経歴です。すでに複数の小切手を切っています。

  3. 2025年4月15日出資20社超、第2期の募集

    4月15日の投稿は、数週間前に最初のAnthology Dayを開いたと報告しています。投資先は20社を超え、数千件の応募を処理しています。第2期(Batch 2)の応募も受け付けています。

60日後の投稿は、応募内容の分析手法まで公開しています。数千件の応募文を文章埋め込みでベクトル化し、t-SNEで2次元に落とし、K-Meansで分類しました。各グループの一行要約は、Claude 3.5 Sonnetが付けています。

提案はAIによる診断ツール、個別最適化の学習、サプライチェーンの最適化から、交通、ゲーム、コーディング、サイバーセキュリティまで広く散っていました。応募者の大半は、製品づくりの前の段階でした。一部にPoCやMVPを作り終え、利用者数や売上の伸びを示せる会社が混ざっています。

出資の規模感は、4月の投稿から分かります。多くの案件は150万ドル未満から始まり、実績の出た会社を追加出資で増資していく設計です。最初の1社は、約1,500万ドルの本格的な出資に進みました。Menloは、資金調達の手続きを正式に踏まなくても、Anthropicの近くで複数ステージの資金にアクセスできる点を利点に挙げています。

投資先にはLLMルーターのOpenRouter、採用基盤のMercor、オープンソースのコーディングエージェントAll Handsなどがあります。Anthology Dayでは、Anthropic側の登壇者がClaude Codeの実演、AIエージェントの設計、MCP(Model Context Protocol)の成り立ちを話しました。締めくくりには、一般公開前の機能を投資先へ先行して使わせるサプライズもありました。

参加した創業者は、複数モデルへの振り分けより「同じモデルに異なるシステムプロンプトで振り分ける」発想が新しかったと語っています。同じ創業者は、3時間でこれまで出たイベントの全部を合わせたより多くの技術的なヒントを得たとも話しています。クレジットとは別の、技術の場に入れる価値です。

立場別の関連度

立場関連度理由
Claude APIやAgent SDKで製品を作るPre-Seed〜Series Aの起業家関連度明確な恩恵あり理由出資とクレジットと伴走が一度に付く
他のVCがリードするラウンドの最中の企業関連度条件次第理由Menloは参加投資家としても入るため、枠組みに合う可能性がある
Series B以降の企業関連度条件次第理由本文は「Expansion」まで書くが、FAQの記載はSeries Aまで
社内でClaude Codeを使う既存企業のエンジニア関連度ほぼ影響なし理由出資を受ける法人が対象のプログラム
個人で試作している開発者関連度ほぼ影響なし理由同上。法人化と調達を考える段階で初めて関わる

買収、出資、公式プログラムの使い分け

Anthropicは技術の取り込みと、外部の育成を別の手段で進めています。前者の例がStainlessの買収で、SDKとMCPサーバー生成の基盤を内製化しました。後者がAnthology Fundで、社外の会社に出資して周辺の事業を増やします。

もう1つ、Anthropic自身の「Claude Startups」プログラムがあります。入口の違いは次のとおりです。

くらべる

2つの窓口の違い

出資が入口

Anthology Fund

Menloが出資を検討し、面談とデューデリジェンスを経て決まります。クレジットは出資に付く特典の1つで、四半期ごとの勉強会やデモデーも付きます。

Anthropicの窓口

Claude Startups

Claudeで作る初期段階の創業者やスタートアップが参加でき、VCの出資は参加の条件ではありません。クレジットと追加特典には条件があります。機関投資家から出資を受けた創業4年以内の企業で、過去にAnthropicのスタートアップ向けクレジットを受けていないことです。ハッカソンや創業者向けイベントなど、コミュニティの場も用意されています。

Claude Startupsには、VCファンド側が参加するパートナー向けの窓口も別にあり、投資家が創業者へ無料クレジットを渡せる場合があるという位置づけです。Anthropic主催のBuilder Daysやハッカソン、Founder Days、6都市のミートアップも案内されています。

スタートアップ向けの製品として並ぶのは、Claude API、Claude Code、Claude Managed Agents、Claude Coworkです。Coworkのように、開発者以外の業務にも使えるものが含まれます。

どちらの窓口が合うか

判断の分かれ目は、資金の出どころです。

  • Menloの出資を検討したい場合: Anthology Fund。Pre-Seed〜Series Aで、AIの産業応用や基盤ツールに取り組む会社が中心です。他のVCがリードするラウンドでも、Menloが参加投資家として入る余地があります。
  • クレジットや創業者向けの場が主な目当ての場合: Claude Startups。Anthropicの窓口なので、Menloの審査は通りません。
  • 出資の予定がなく個人で試している場合: Anthology Fundは出資を受ける法人が前提です。

Anthology Fundという名前は、Anthropicの名と響き合わせたものです。アンソロジー(作品集)のように、創業者を集めた一冊をつくる構想だとMenloは説明しています。

まとめ

Anthology Fundは、Menloの出資にAnthropicのクレジットと知見が付く仕組みで、Claudeの利用は条件に入っていません。出資まで視野に入れるならAnthology Fund、クレジットとコミュニティが目当てならClaude Startupsと、求めるものの違いで窓口を分けられます。

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