ClaudeにBillingMartをつなぐ — 請求書の下書きと経費を会話で扱う
BillingMartのコネクタでClaudeにできること、送信や課金が人の承認待ちになる仕組み、日本の適格請求書で使う前に確かめる点をまとめます。
ClaudeからBillingMartの請求書と経費を扱う仕組み
BillingMartは、小規模事業者向けの請求・支払い管理サービスです。請求書と見積書を送り、カード払いのリンクで入金を受け、支払いが遅れた相手には督促を出します。仕入先からの請求(買掛)も同じ画面で管理します。
このサービスのMCPサーバーをClaudeにつなぐと、請求書の下書き、顧客の検索、経費の記録、売掛金の確認を、会話から頼めるようになります。接続先のURLは https://api.billingmart.com/mcp です。Claudeのコネクタ一覧では「Anthropic verified」の表示があり、提供元はBillingMart.com LLC、カテゴリは金融サービスと生産性、追加は2026年10月です。
仕組みの要点は1つです。Claudeが作るものは下書きか記録で、顧客に届くもの、お金が動くものは人の承認を待ちます。
- 請求書や見積書は、下書きとして作られる
- 送信、督促メール、入金の記録、返金は「依頼」として積まれ、BillingMart側で承認されて初めて実行される
- 承認の方式は接続ごとに選べる(Ask、Plan、Auto)
コネクタ全般の考え方はClaudeのコネクタとはにまとめています。同じ経費・支払い系ではClaudeとPayhawkの連携やClaudeとNavanの連携も、承認の置き方を比べる材料になります。
Claudeに接続する手順
接続はClaudeのコネクタ一覧から行います。BillingMartのアカウントが前提で、サインインは必須です。
接続から最初の依頼まで
- 1
コネクタ一覧でBillingMartを追加する
Claudeのコネクタ一覧でBillingMartを探し、追加します。一覧の掲載ページには「Add to Claude」のボタンがあります。
- 2
BillingMartのアカウントでサインインする
BillingMart側のページに移り、自分のアカウントで認可します。方式はOAuthで、権限は接続ごとに範囲が絞られます。
- 3
最初は読み取りの依頼から始める
顧客の検索や、未払い請求書の一覧のような読み取りで動作を確かめます。書き込みはその後です。
操作の範囲は、サインインした本人がBillingMartで持つ権限と同じです。BillingMartのチームには、オーナー、管理者、スタッフ、閲覧者の4つの役割があります。閲覧者の権限でつないだなら、下書きの作成まで頼める保証はありません。接続前に、自分の役割を確かめておくと迷いません。
提供元は、本番のデータに触れずに試せるサンドボックスのワークスペースも用意しています。最初の接続はこちらで行うと、顧客や売上に影響しません。サンドボックスをデモ用データに戻す操作も、書き込み側のツールに含まれています。
読めるもの、下書きにできるもの
BillingMartの説明では、読み取りのツールが110個、書き込みのツールが179個とされています。読み取りは次のような範囲です。
- 事業のプロフィール、顧客、請求書、見積書、支払い、支払いリンク
- 売掛・買掛の年齢別集計(エイジング)、キャッシュフロー予測、会計向けの書き出し
- 定期請求のスケジュール、時間記録、経費、走行距離
- 仕入先と、支払う予定の請求書
- 通知、チームメンバー、APIキー、Webhookの状況などの設定情報
書き込み側は「下書きまたは記録を作る」か「依頼を出す」かのどちらかです。顧客、請求書、見積書、経費、仕入先、支払いの記録などが含まれます。
ここで1点、数字の食い違いがあります。Claudeのコネクタ一覧のページは、ツールを「Show all 168 tools」と案内しています。BillingMartのサイトは、読み取り110個と書き込み179個の合計で説明します。数え方の違いなのか、公開範囲の違いなのかは、どちらのページにも書かれていません。ツール名を指定して依頼したいときは、手元のClaudeで実際に見えているツール一覧を基準にしてください。
コネクタ一覧に見えるツール名の一部を挙げます。名前から用途が読み取れるものに絞っています。
| 分類 | ツール名の例 |
|---|---|
| 請求書 | ツール名の例create_draft_invoice / add_line_item / add_to_invoice / create_deposit_invoice |
| 見積書 | ツール名の例convert_estimate_to_invoice |
| 顧客 | ツール名の例create_client / add_client_contact / client_statement / archive_client |
| 買掛 | ツール名の例create_bill / attach_bill_document / archive_vendor |
| レポート | ツール名の例ar_ageing_report / ap_ageing_report / cash_forecast / collections_insights / accounting_export |
| 状態確認 | ツール名の例billing_status / ai_credits_status / automation_upcoming |
一覧の先頭付近には、activate_live_gateway や charge_saved_method、create_api_key のような、お金の動きや認証情報に関わる名前もあります。これらがどのモードで実行できるかは、次の節の承認の仕組みで決まります。
送信と課金は誰が承認するか
BillingMartは、Claudeのような外部アシスタントが出す依頼の扱いを、接続ごとの3つのモードで切り替えます。
| モード | 動き | 既定 |
|---|---|---|
| Ask | 動き依頼のたびに、サインイン済みの人が承認する | 既定既定 |
| Plan | 動き試し実行。保存も送信も課金もしない | 既定 |
| Auto | 動きオーナーが決めた上限付きのルールに合う依頼は、そのまま実行される | 既定既定ではない |
Autoには条件がつきます。オーナーだけが、第二要素でサインインし直したうえで有効にでき、さらに自動承認ルールを含むプランが必要です。ルールは種類、金額、1日あたりの件数で上限を決めます。
そのAutoでも、外部アシスタントからの返金、請求書の取り消し(void)、カードや銀行口座の入力といった「常に自動にならない依頼」は、人の承認を待ちます。サイトの記述にそのまま従えば、Claudeを接続した場合の最悪のケースは「下書きが増える」ことで、「顧客に勝手に請求が飛ぶ」ことではありません。ただしAutoを使う場合は、ルールの上限額と件数を自分で決めることになります。
依頼として出せる操作は、次の5つです。
- 請求書の送信
- 見積書の送信
- 支払い督促の送信
- 現金、小切手、振込による入金の記録
- 支払いの返金
下書きから経費の再請求までの流れ
実際の依頼は、現場で使う言葉で足ります。BillingMartのサイトは、次のような依頼文を例に挙げています。
Bill Northgate Property Co. for Tuesday: six hours of hedge work and the green-waste run.
サイトの例では、アシスタントが2行の請求書(INV-1042)を下書きし、送信は「依頼」として出して止まる、という流れで示されています。日本語でも、次のように頼む形になります(以下は依頼文の一例です)。
先週の火曜に作業した件を、顧客の北門不動産さん宛てに請求書の下書きにして。作業は6時間分と、廃材の運搬費。送信はせず、下書きのまま見せて。
下書きを確認し、金額と明細がよければ、BillingMartの画面で承認します。承認までの区切りが明確なので、Claude側に「送ってよいか」を何度も尋ねさせる必要はありません。
経費と時間を請求書に乗せる
請求書の下書きに、経費や作業時間を載せる使い方もできます。BillingMartの機能として、次の3つが挙げられています。
- 時間記録: 作業時間を記録し、請求書に再請求する。同じ時間を二重に請求しない作りになっている
- 経費: 費用に上乗せ額(マークアップ)をつけて再請求するか、自分の経費として持つかを選べる
- 走行距離: 自分の単価で距離を記録し、他の明細と同じように請求書へ載せられる
たとえば「今月、この顧客のために立て替えた材料費を経費として記録し、上乗せ10パーセントで請求書の下書きに入れて」と頼む形です。上乗せの率や、どの請求書に載せるかを、依頼文で決めておくのがポイントです。
買掛と請求レポートの確認
入ってくるお金だけでなく、払うお金も同じ会話で扱えます。仕入先の請求書は、写真から下書きに読み取る機能があり、期日と承認の手順も持ちます。
「今週が期限の支払いを一覧にして」「売掛の年齢別集計を出して、60日を超えているものを教えて」のような依頼は、読み取りだけで完結します。書き込みを伴わないので、承認の画面も出ません。
日本の適格請求書で使う前に確かめる点
国内の事業者が使うなら、最初に気になるのは適格請求書(インボイス)への対応でしょう。BillingMartのトップページの機能一覧と説明文には、日本の適格請求書、登録番号、消費税の区分記載に関する記述がありません。税に関する主な記述は、仕入先の「税ID」、収入と支出の「所得・税のサマリー」、税区分(tax categories)です。
日本向けの運用で、事前に確認したい点は次の4つです。
| 確認する点 | 書かれていること |
|---|---|
| 請求書の言語 | 書かれていること請求書と明細書のラベルは英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、アラビア語。翻訳のない部分は英語になる |
| 通貨 | 書かれていること32通貨に対応し、金額は通貨ごとの最小単位の整数で保存される。通貨の一覧は同じページには載っていない |
| 登録番号の記載欄 | 書かれていること該当する記述なし |
| 税率ごとの区分と税額の表示 | 書かれていること税区分の設定はあるが、日本の税率ごとの区分記載・税額表示についての記述はない |
日本語は、翻訳済みとして挙がっている5言語に入っていません。適格請求書は、登録番号、税率ごとの対価の額と税額などの記載が求められる書類です。必要な記載が出せるかは、BillingMartの請求書テンプレートで項目を足せるかどうかにかかっています。テンプレートは、AI Studioで「レイアウトを説明すると、実際のレンダラーで描いたプレビューが出る」仕組みです。ただし、これが登録番号や税額の表示欄を作れるかどうかは、ページに記述がありません。
実務では、サンドボックスのワークスペースで日本向けの請求書を1枚作り、記載事項を目で突き合わせるのが確実です。受け取った請求書の側から記載事項を点検するやり方は、適格請求書の記載事項をClaudeで点検する手順で扱っています。発行側の請求書にも、同じ点検の観点が使えます。
送信上限とプランの見方
BillingMartは、受け取る代金に対する手数料の割合を取りません。月額は定額で、カード決済の手数料は決済事業者の通常の料率が適用されます。オプションのカード手数料プログラムを有効にしている場合のみ、顧客側が手数料を負担します。
料金の中身は、プランごとの「月間の送信上限」で決まります。
- 下書きは上限に数えない。数えるのは請求書を送ったとき
- 上限に達しても、送信済みの請求書は有効で、支払いも受け付ける
- 上限に達すると待たされるのは、新しい請求書の送信と、支払いリンクの作成または再有効化
- 下書きの保存、見積書の送信、入金の記録は、上限に達しても行える
月の区切りは、ワークスペースのタイムゾーンで決まります。Claudeから大量に下書きを作っても、送信の数が増えない限り上限には影響しません。
MCPサーバーがどのプランで使えるかは、BillingMartの料金ページに書かれています。無料プランがあることはサイトに明記されていますが、無料プランでMCPが使えるかどうかは、このページには出ていません。接続の前に料金ページで確かめてください。
使い始める前の確認
- Claude側: コネクタ一覧のBillingMartのページで、追加後に見えるツールの名前を確認する
- BillingMart側: 自分の役割と、接続のモードがAskになっているかを確認する
- 日本の税務書類: サンドボックスで請求書を1枚作り、適格請求書の記載事項が出せるかを見る
- 情報の扱い: 提供元は第三者の開発者です。コネクタ一覧のページにも「信頼できる開発者のコネクタだけを使う」という注意があります
結論として、BillingMartのコネクタは、下書きと読み取りを会話に移し、送信と課金は人に残す設計です。Claudeに任せる範囲を広げるときは、モードをAskからAutoに上げる前に、承認画面に届く依頼の中身を一定期間見ておくと、上限額の見当をつけやすくなります。
参照した一次ソース
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