紛争鉱物のCMRT回答を取りまとめる手順 — Claudeで製錬所を統合し催促まで
サプライヤーから返ってきたCMRT(Excel)の製錬所リストをClaude for Excelで1つに統合し、RMAPの認定状況が未確認の施設と未回答の会社を一覧にして、催促文まで作る手順です。
CMRTの回収で手間がかかるのは、集めたあとです。サプライヤー数十社から届いたExcelを開き、製錬所の一覧を1つに寄せ、同じ施設の表記ゆれを揃え、どの施設の認定状況が確かめられていないかを洗い出します。ここは表の突き合わせが中心なので、セルの出典つきで答えるClaude for Excelと相性のよい作業です。
この記事では、返ってきたCMRTの製錬所リストを統合し、RMAP(Responsible Minerals Assurance Process)の認定状況が未確認の施設と、未回答・不備のサプライヤーを一覧にして、催促文を作るところまでを順に組みます。回答が十分かどうかの判定と、法令対応の最終判断は担当者が持つ領域として線を引きます。
CMRTとは何を集める書式か
CMRT(Conflict Minerals Reporting Template)は、Responsible Minerals Initiative(RMI)が作った無料の標準書式です。サプライチェーンを通じて、鉱物の原産国と、使っている製錬所・精錬所の情報をやり取りするために使います。回答から新しい製錬所を見つけ、RMAPの審査対象にする入口としても位置づけられています。
対象鉱物はスズ、タンタル、タングステン、金(3TG)です。RMIの書式は3種類あり、混ぜて回収すると集約の前提が崩れます。
| 書式 | 対象の鉱物 | 補足 |
|---|---|---|
| CMRT | 対象の鉱物スズ・タンタル・タングステン・金 | 補足米国ドッド・フランク法1502条とEU紛争鉱物規則への対応を支える |
| EMRT | 対象の鉱物コバルト・銅・天然黒鉛・リチウム・天然マイカ・ニッケル | 補足EMRT 2.0はEU電池規則への対応も視野に入れる |
| AMRT | 対象の鉱物利用者が決める(最大10鉱物) | 補足CMRT・EMRTの対象外の鉱物向け |
RMIは回答の提出先ではありません。完成した書式は、取引先(顧客)に渡すものとされています。つまり回収と集約は、依頼する側の会社が自前で回す作業です。ここに自動化の余地があります。
先に決める3つの基準
集約を頼む前に、表の基準を3つ決めます。曖昧なまま始めると、Claudeが出した「未確認」の意味が読み手ごとに変わります。
集約前に固定する基準
どの版の書式で回収したか
RMIは2026年4月17日に、機能変更を含むCMRT・EMRT・AMRTの最新版を出しています。サプライヤーが旧版で返した場合に備え、原票の列に版を残します。
認定状況を何で照合するか
RMIが公開する施設リストの出力を、照合日つきで貼ります。Claudeは最新の認定状況を知らないので、照合元は必ず自分で用意します。
未確認の定義
「リストに載っていない」「載っているが状態が未認定」「照合を実施していない」は別物です。3つを別の値にします。
RMIは、回答への期待水準を会社が自分で決めるものとしています。RMI自身は、AMRT・CMRT・EMRTのどれについても報告の期待値を定めていません。何社から、どの鉱物について、いつまでに回答がほしいのかは、自社の方針として先に決めておきます。
集約用ブックを作る
サプライヤーのファイルを1つずつClaudeに読ませるのではなく、集約用のブックを1つ作ります。シートは4枚です。
| シート | 中身 | 更新する人 |
|---|---|---|
| 回答管理 | 中身サプライヤー別の依頼日・回答日・版・状態 | 更新する人調達担当 |
| 原票 | 中身各社のCMRTから製錬所リストの値だけを貼ったもの(社名列を付ける) | 更新する人調達担当 |
| 照合リスト | 中身RMIの施設リストの出力と、その取得日 | 更新する人調達担当 |
| 統合 | 中身施設ごとに1行へまとめた結果 | 更新する人数式とClaude |
落とし穴
サプライヤーのファイルをClaudeの作業ブックで開かない
外部から届いたExcelには、Claudeに向けた隠れた指示が仕込まれていることがあります。Claude for Excelの公式ドキュメントも、信頼できるスプレッドシートだけで使うよう求めており、外部のファイルは、データの持ち出しや破壊的な操作を誘導される可能性があると書いています。CMRTは取引先から届くファイルそのものなので、原本を開いたブックにアドインを立ち上げないでください。値だけを貼り付けた集約用ブックで作業すれば、この経路を避けられます。
もう1つの理由は、書式の利用条件です。CMRTのページには、RMIの情報を許可なく再配布・改変・複製・派生物化できないという趣旨の利用条件が載っています。原本の書式はそのまま保管し、集約用ブックには値だけを写す運用にしておくと、この点でも安全です。
製錬所リストを統合する
原票に貼った行は、同じ施設が社名の表記違いで並んでいます。統合の目的は、施設ごとに1行にして、その施設を挙げたサプライヤーの数を数えられる状態にすることです。
Claude for Excelは、ブックへの質問にセルの出典つきで答えます。複数タブのブックも扱えます。依頼文は、基準を具体的に書きます。
「原票」シートの製錬所リストを、「統合」シートへ施設ごとに1行でまとめてください。
- 照合のキーは、施設名・所在国・鉱物の3つです。識別用の番号の列があれば、
番号が同じ行を同一施設として先にまとめてください。
- 表記ゆれ(株式会社の有無、英字の大文字小文字、記号の違い)で同じ施設と
推測した行は、勝手にまとめず「同一候補」の列に候補の行番号を書いてください。
- 統合した各行に、その施設を挙げたサプライヤー名の一覧と社数を付けてください。
- 数式は壊さず、原票は変更しないでください。「同一候補」の列を設けるのがこの手順の肝です。名寄せの確定は担当者が行います。社名が似た別の施設を誤ってまとめると、認定状況の照合が根本からずれるからです。Claudeには、候補を挙げて根拠のセルを示すところまでを任せます。
統合すると、複数社が同じ施設を挙げているという情報が見えてきます。社数の多い施設から認定状況を確認すると、確認の効率が上がります。
RMAPの認定状況を3段階で照合する
照合の前に、RMIが使う用語を押さえます。施設リストのページでは、次のように分けています。
| 区分 | 意味 |
|---|---|
| Active | 意味RMAP審査を受けると約束し、書類を出して、現地審査の日程まで決めた施設。審査前・審査中・是正中のいずれか |
| Conformant | 意味該当するRMIの基準に対する審査を完了した施設 |
| Eligible | 意味RMIの審査を受けられる施設。川上・ピンチポイント・川下のすべてを含む |
注意が要るのは、Eligibleに載っていることと審査に合格したことは別だという点です。Conformantも、過去に向けた審査です。RMIの説明では、施設のデューデリジェンスの仕組みと手続きが基準に適合しているかを見るもので、材料そのものを検証する審査ではありません。「Conformantなら安全」と読める列にしないのが無難です。
照合リストには、RMIの公開リストを出力して貼ります。照合の依頼は、次のように書きます。
「統合」シートの各施設を「照合リスト」と突き合わせ、「認定状況」の列を
次の値のどれかで埋めてください。
- Conformant / Active / Eligibleのみ / リストに該当なし / 照合できず
- 完全一致しない場合は推測で埋めず、「照合できず」にして、近い名前の
候補を「備考」に書いてください。
- 照合に使ったリストの取得日を、列の見出しに入れてください。「リストに該当なし」は、それ自体が調査の入口になります。RMIのFAQは、サプライヤーが挙げた施設が書式の参照リストに載らない理由を例示しています。
- その会社が書式の対象鉱物を処理していない
- 製錬所・精錬所の川上か川下にあたる事業者である
- RMIの適格性判定(Smelter Disposition Process)をまだ通っていない
- すでに操業を停止し、参照リストから外れた
「載っていない=問題のある施設」ではなく、「なぜ載っていないのかを確かめる」対象です。備考に理由の候補を書かせ、担当者がサプライヤーへの確認に使います。
認定状況を読むときの限定条件
照合結果を社内に出すときは、次の点を注記します。
- Conformantから外れる理由に、基準への不適合だけでなく、操業停止による適格性の喪失があります。RMIは、適格性を失った施設を毎年1月と7月にConformantのリストから外すとしています。リストの取得日が古いと、状態が変わっている可能性があります。
- 金の精錬所には、LBMAまたはRJCの審査を完了した施設がRMIのリストに載る相互承認の仕組みがあります。これらはRMAP審査を受けていないため、問い合わせはそれぞれの団体宛です。
- RMIの公開リストの説明では、中国の施設に対するRMAPの新規審査を当面停止し、既存のConformantの有効期間を延長しているとあります。期限の読み方が通常と異なる施設があるので、有効期間の列は機械的に読まないでください。
未回答と不備を一覧にする
認定状況の確認と並行して、サプライヤー側の回答状況を「回答管理」シートにまとめます。回答のあったファイルは、次のような不備に分けると催促しやすくなります。
| 状態 | 見分け方の例 | 催促の内容 |
|---|---|---|
| 未回答 | 見分け方の例回答日が空欄で、依頼日から期限を過ぎている | 催促の内容提出の依頼 |
| 製錬所の記載なし | 見分け方の例回答はあるが、原票に行が1つも貼られていない | 催促の内容製錬所の特定を依頼 |
| 版が古い | 見分け方の例版の列が最新版でない | 催促の内容最新版での再提出 |
| 対象鉱物のずれ | 見分け方の例こちらの依頼範囲と選択された鉱物が違う | 催促の内容選択の理由の説明 |
| 照合できない施設あり | 見分け方の例統合シートで「照合できず」の施設を挙げている | 催促の内容施設名・所在国の再確認 |
対象鉱物のずれについて、RMIの案内は具体的です。サプライヤーが選んだ鉱物が依頼側と異なる場合は、サプライヤーがどう優先順位をつけたかを依頼側に説明することが勧められています。また、依頼側とサプライヤーが事前に話し合い、どの鉱物にいつまでに回答できるかの合意を作ることも勧められています。催促文には、この「説明の依頼」を入れておきます。
催促文の下書きを作る
状態列が埋まったら、サプライヤーごとの催促文をClaudeに起こさせます。1社ずつ手で書くと時間がかかり、文面が揃わないためです。
「回答管理」シートで状態が上の表のいずれか(未回答を含む)に当たるサプライヤーについて、
催促メールの下書きを1社1通で作ってください。
- 状態が「未回答」の会社には、回答の提出を依頼する文面にします。
- 不備のある会社には、不足点を具体的に書く文面にします。
- 宛名は会社名のみとし、担当者名は空欄にします。
- 「何が足りないか」を、状態列と、統合シートの「照合できず」の施設名から
具体的に書いてください。
- 期限は「〇月〇日」と空欄にして、私が入れます。
- 依頼の根拠(法令名など)は書かないでください。最後の指示は意図的です。紛争鉱物の報告義務は、会社の事業形態や取引先の国によって異なります。法令名を含めた催促文は、担当者または法務の確認を経てから足します。
出力された下書きは、次のような形になります(例です。社名と施設名は架空です)。
〇〇株式会社 御中
いつもお世話になっております。紛争鉱物調査(CMRT)の件でご連絡します。
お送りいただいた回答を拝見したところ、次の点が確認できておりません。
1. 製錬所リストに記載のある「Example Smelter Co.」について、所在国と
正式名称をご確認いただけますでしょうか。
2. ご回答の書式が旧版でした。最新版での再提出をお願いいたします。
お手数ですが、〇月〇日までにご返信いただけますと幸いです。運用上の落とし穴
催促の前に確かめること
- Q統合シートの『照合できず』は、人が名寄せを確かめたか?答えが確かめていない答えがはい
先に名寄せを確定します。候補列の行番号から、原票の元の行を見に行きます。
- Q照合リストの取得日は、今回の照合の直前か?答えが古い答えがはい
リストを取り直して、照合をやり直します。
- Q催促の根拠にした不備は、原票で行を確認できるか?答えが確認できない答えがはい
Claudeの出力が指すセルに戻って確かめます。
催促文を担当者の名前で送る
3つとも確認できたら、下書きの宛名と期限を埋めて送ります。
Claude for Excelの公式ドキュメントは、監査上重要な計算を検証なしで使うこと、最終的な顧客向け成果物を人の確認なしで使うことを推奨していません。また、マクロとVBAの操作、データテーブルは未対応です。集約を繰り返し自動で走らせたい場合は、ブックの数式で回せる範囲に留め、マクロに頼る設計にしないほうが安全です。
使える環境にも条件があります。Pro・Max・Team・Enterpriseの各プランが対象で、Excel 2016・2019の買い切り版、iPad、Androidでは動きません。調達担当の端末が対象外なら、集約用ブックだけ別の端末で作る運用にします。
隣接する書類回収との切り分け
紛争鉱物の調査は、製品に含まれる物質の書類回収とは対象が異なります。化学物質の不使用証明書の抜けを探す作業はRoHS・REACH書類の回収確認にまとめています。CMRTは、書面の記載を点検するのではなく、複数社の回答を1つの施設リストに寄せる作業が中心です。
催促の先で不適合が見つかれば、是正の依頼に進みます。文面の起こし方はSCAR是正要求書の作成手順が使えます。顧客から同様の調査票が届く側の立場なら、顧客監査の質問票の回答下書きの流れで、過去の回答と証跡の所在を突き合わせられます。表のまま部署の回答を集める型は、予算編成の部門ヒアリング回答の集約と同じです。
まとめ
CMRT回収の後工程でClaudeに任せやすいのは、施設の表記ゆれの候補出し、照合リストとの突き合わせ、不備の仕分け、催促文の下書きです。施設が同一かどうかの確定、認定状況の評価、法令対応の判断は、担当者に残ります。
最初に作る価値があるのは、「未確認」の定義表です。リストに無い、状態が未認定、照合をしていない、の3つを別の値にしておけば、統合の結果を読む人が迷いません。照合リストには必ず取得日を付け、外部から届いたファイルは値だけを写した別のブックで扱ってください。
サプライヤーの取引情報を含むブックを開くときは、Claude for Excelのデータの扱いも確認しておくと安心です。入力と出力はバックエンドで受領または生成から30日以内に削除され、チャット履歴はブラウザーのIndexedDBにローカル保存されます。