第三者割当増資の決議書類と登記添付書類をClaudeで点検する手順
定款と会社の条件をClaudeに読ませ、募集事項を決める機関、割当ての承認、払込みの証明、登記の添付書類まで条文順に点検表にする手順です。公開会社かどうかで決議機関が変わる点と、目視で確かめる箇所も整理しました。
第三者割当増資の書類で抜けやすいのは、募集事項を決める機関と、割当てを承認する機関が、会社の種類によって変わる点です。Claudeには、定款を読ませたうえで「どの条文に当たり、どの決議書と添付書類が要るか」を表にさせる役を任せると、抜けを早い段階で見つけられます。この記事では、その点検表の作り方を条文の順に説明します。
登記の申請そのものは司法書士か自社で行います。Claudeに頼むのは、条件の整理、決議書類の文案の下書き、書類の突き合わせまでです。
点検の前に、Claudeに渡す3つの前提
第三者割当は、株主に割当てを受ける権利を与えない募集です。株主に権利を与える株主割当て(会社法202条)とは決議の手順が違うので、最初に区別して伝えます。
Claudeに渡す前提は次の3つです。
- 公開会社か。株式の譲渡制限の定めが、全部の株式にあるかどうか
- 取締役会を置いているか
- 払込みは金銭だけか、金銭以外の財産(現物出資)や債権を含むか
この3つで決議の機関も、検査役の要否も、登記の添付書類も変わります。定款の条文番号を指定して「この3点を定款から読み取り、根拠の条項を示して」と頼むと、読み違いを後から検証しやすくなります。
募集事項を決める機関は、会社の種類で変わる
募集株式の数、払込金額、払込みの期日、増加する資本金と資本準備金などが募集事項です(会社法199条1項)。第三者割当では、この募集事項を誰が決めるかが最初の分かれ目になります。
| 会社の種類 | 募集事項を決める機関 | 根拠 |
|---|---|---|
| 公開会社でない会社 | 募集事項を決める機関株主総会の特別決議 | 根拠199条2項、309条2項5号 |
| 公開会社 | 募集事項を決める機関取締役会 | 根拠201条1項 |
| 払込金額が引受人に特に有利な場合 | 募集事項を決める機関公開会社でも株主総会の特別決議 | 根拠199条3項、201条1項 |
| 株主総会が取締役(会)に委任する場合 | 募集事項を決める機関取締役(会)。株主総会で数の上限と払込金額の下限を決める | 根拠200条1項 |
特別決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数(定款で3分の1以上に引き下げられます)が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上で成立します(309条2項)。
払込金額が特に有利なときは、取締役が株主総会で、その金額で募集する理由を説明しなければなりません(199条3項)。議事録にこの説明があった旨が書かれているかは、Claudeに必ず見させる項目です。
委任の場合は、決議の効力が及ぶ期間にも制限があります。払込みの期日がその決議の日から1年以内の募集にしか効力がありません(200条3項)。委任決議を使い回すときは、日付の確認を点検表に入れます。
種類株式を発行する会社が譲渡制限株式を発行する場合は、定款に別段の定めがなければ、その種類株主の種類株主総会の決議が要ります(199条4項)。種類株式を使う会社では、この行を点検表に足します。
公開会社は2週間前の通知も確認する
公開会社が取締役会決議で募集事項を決めたときは、払込期日(期間なら初日)の2週間前までに、株主へ募集事項を通知するか公告します(201条3項・4項)。金融商品取引法の届出をしている場合などは不要です(201条5項)。
引受人が議決権の過半数を得る形(特定引受人)になる場合は、同じく2週間前までに株主へ通知します(206条の2第1項)。総株主の議決権の10分の1以上を持つ株主が2週間以内に反対を通知したときは、株主総会の決議による承認が要ります(206条の2第4項本文)。ただし、会社の財産の状況が著しく悪化していて、事業の継続のため緊急の必要があるときは、この承認は要りません(同項ただし書)。ここは公開会社だけの項目なので、非公開会社の点検表では「対象外」と明記させます。
割当ての承認と引受けの書類は別に見る
募集事項が決まっても、誰にいくつ割り当てるかの決定は別の手順です。ここが決議書類の2枚目になります。
申込みを受けて割り当てる通常の流れでは、会社が割当先と株数を決め、払込期日(期間なら初日)の前日までに申込者へ通知します(204条1項・3項)。募集株式が譲渡制限株式のときは、この割当ての決定は株主総会(取締役会を置く会社は取締役会)の決議によります。定款に別段の定めがあれば、その定めが優先します(204条2項)。
引受人が株式の総数を一括して引き受ける契約(総数引受契約)を結ぶ場合は、申込みと割当ての規定が適用されません(205条1項)。その代わり、譲渡制限株式ならこの契約を株主総会(取締役会を置く会社は取締役会)の決議で承認します(205条2項)。第三者割当の実務では総数引受契約が多いので、点検表には「申込み・割当て方式」か「総数引受契約の方式」かの欄を置きます。
登記の添付書類は、この方式の違いに連動します。申込み方式なら引受けの申込みを証する書面、総数引受契約なら契約書です(商業登記法56条1号)。
払込みと現物出資の書類で、登記の添付書類が決まる
出資の履行は、払込期日または期間内に、会社が定めた銀行等の払込取扱場所で、払込金額の全額を払い込む形です(208条1項)。現物出資なら財産を給付します(208条2項)。
点検で押さえる条文上の注意が3つあります。
- 引受人は、出資の履行をする債務と会社に対する債権を相殺できません(208条3項)
- 出資の履行をしないと、株主となる権利を失います(208条5項)
- 払込期日を定めた場合は、その期日に株主となります。期間を定めた場合は、出資の履行をした日です(209条1項)
資本金は、払い込まれた額が原則ですが、その2分の1を超えない額は資本金に計上しないでよく、その額は資本準備金になります(445条1項〜3項)。募集事項の決議書にある資本金・資本準備金の額と、払込額の合計がつながっているかを、Claudeに計算させて確認します。計算結果は電卓か表計算で再計算してください。
現物出資の場合は、募集事項を決めた後、遅滞なく裁判所へ検査役の選任を申し立てるのが原則です(207条1項)。ただし次のどれかに当たる事項は検査役の調査が不要です(207条9項)。
- 引受人に割り当てる株式の総数が発行済株式の総数の10分の1以下
- 現物出資財産の価額の総額が500万円以下
- 市場価格のある有価証券で、価額が市場価格として法務省令で定める方法による額以下
- 弁護士・公認会計士・税理士などの証明を受けた価額(不動産は不動産鑑定士の鑑定評価も必要)
- 弁済期が到来している会社に対する金銭債権で、価額が負債の帳簿価額以下
貸付金などの債権を株式に振り替えるデット・エクイティ・スワップは、最後の項目に当たる場合があります。登記の添付書類も、どの免除に当たるかで変わります。
登記の添付書類は出資の形で決まる
金銭出資
払込みがあったことを証する書面を付けます(商業登記法56条2号)。
現物出資・検査役あり
検査役の調査報告書とその附属書類を付けます(56条3号イ)。
現物出資・免除あり
有価証券の市場価格を証する書面、士業の証明書とその附属書類、金銭債権が記載された会計帳簿のいずれかを、当たる免除に応じて付けます(56条3号ロ〜ニ)。
このほか、商業登記規則61条9項により、資本金の額が増えるので、資本金の額が会社法と会社計算規則に従って計上されたことを証する書面も付けます。検査役の報告に関する裁判があればその謄本(56条4号)、公開会社の特定引受人について反対通知があったのに株主総会の承認を受けない場合(206条の2第4項ただし書の緊急の場合)は、それに当たることを証する書面(56条5号)が要ります。
登記の期限と、議事録の添付
募集株式の発行で発行済株式の総数と資本金が変わるので、変更の登記が要ります。申請の期限は変更から2週間以内で、本店の所在地で行います(915条1項)。払込みの期間を定めたときは、その期間の末日現在の内容を、末日から2週間以内に申請すれば足ります(915条2項)。
登記すべき事項について株主総会や取締役会の決議が必要なときは、申請書にその議事録を添付します(商業登記法46条2項)。第三者割当では、次の議事録が該当することがあります。
- 募集事項を決めた株主総会または取締役会の議事録
- 譲渡制限株式の割当てまたは総数引受契約を承認した議事録
- 委任に基づく場合は、委任した株主総会の議事録と、それを受けて決めた取締役会の議事録
株主総会の決議を要する登記では、議事録のほかに株主リストも付けます。総株主の議決権数に対する割合が高い順に上位10名、または議決権の割合を足して3分の2に達するまでの人数のうち少ないほうの株主について、氏名・住所・株式数・議決権数・割合を記した書面です(商業登記規則61条3項)。非公開会社の第三者割当は株主総会の決議を使うので、ほぼ必ず該当します。
Claudeには、決議機関の判定表で出た決議の数だけ議事録の行を作らせ、それぞれが書類一式に入っているかを確認させます。
ClaudeのProjectで点検表を作る手順
Claudeでは、Projectに指示文(プロジェクトの指示)とファイルを置けます。指示文で回答の口調や役割を決め、アップロードした文書は、そのProject内の会話で背景として使われます。同じ会社の増資を何度も点検するなら、Projectにまとめておくと条件を毎回貼り直さずに済みます。
Projectで増資書類を点検する流れ
- 1
Projectを作り、指示文を入れる
指示文には、条文の根拠を必ず示すこと、定款に書かれていない事項は推測せず「記載なし」とすること、を入れます。
- 2
定款と会社法の該当条文を置く
定款は、役員の個人情報や機微な部分を伏せた版で足ります。会社法は第199条から第213条までの条文を、法令データの公開サイトから貼ります。
- 3
3つの前提を書かせて確認する
公開会社か、取締役会を置く会社か、現物出資の有無を、根拠条項とともに書かせ、人が目で確かめます。
- 4
決議機関の判定表と書類の点検表を出させる
手元の書類一覧を貼り、「ある」「ない」「内容に疑問」の3段階で埋めさせます。
- 5
議事録案を下書きさせ、差分を目視する
下書きは、決議機関が一致しているかと、払込金額・株数・日付が募集事項と同じかを人が確かめます。
指示文の例を次に示します。これは文案の一例で、Claudeがこのとおり動くことを保証するものではありません。
あなたは株式会社の第三者割当増資の書類を点検する補助です。
- 根拠は会社法と商業登記法の条文番号で示してください。
- 定款に書かれていないことは推測せず「定款に記載なし」と答えてください。
- 最初に、公開会社か、取締役会を置く会社か、現物出資の有無を、
定款の条項を引用して書いてください。
- 書類は「ある / ない / 内容に疑問」で判定し、疑問の理由を書いてください。
- 日付と金額は、募集事項の決議書と照らして食い違いを列挙してください。点検表の出力は、例えば次のような形になります。これは形の一例です。
| 書類 | 根拠 | 判定 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 募集事項を決めた株主総会議事録 | 根拠199条2項、商登法46条2項 | 判定ある | 備考特別決議の割合の記載を確認 |
| 割当ての承認(譲渡制限株式) | 根拠204条2項または205条2項 | 判定ない | 備考定款に別段の定めがあるか確認 |
| 払込みを証する書面 | 根拠商登法56条2号 | 判定内容に疑問 | 備考払込金額の合計が決議書と不一致 |
| 資本金の額の計上に関する証明書 | 根拠商登規則61条9項 | 判定ある | 備考資本金と資本準備金の額が決議書と合うか |
| 株主リスト | 根拠商登規則61条3項 | 判定ない | 備考総株主の議決権数と上位株主の割合を確認 |
人が必ず見る点
Claudeは条文に沿った整理は得意でも、書類の原本の押印や署名、日付の書き間違いを確かめる主体ではありません。次の点は人が確かめます。
- 定款の最新版か。定款変更の履歴で、譲渡制限や機関設計が変わっていないか
- 議事録の出席株主の議決権数が、株主名簿と合っているか
- 払込みを証する書面の金額と日付が、募集事項と一致しているか
- 特別決議の割合が、定款の定めで変わっていないか(309条2項は定款で引き上げを認めています)
使う前に知っておく制限
Projectの使い方に関する条件が、プランで違います。Projectは無料アカウントも使えますが、作れる数は5つまでです。ナレッジが大きくなったときにRAG(検索拡張生成)で容量を最大10倍まで広げる機能は、有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)だけです。TeamとEnterpriseでは、Projectを組織内のメンバーと共有でき、閲覧のみ・編集可のどちらかの権限を付けられます。
ナレッジに定款や株主名簿を置く場合は、プランごとのデータの扱いと、社内の機密情報の取扱い規程を先に確認してください。株主の氏名や住所は伏せ字にした版で作業する運用が、手戻りの少ない選択肢です。
条文は改正で変わります。会社法の条文は、公開されている最新の法令データを使うのが前提で、記事の条文番号と照合しながら進めてください。
周辺の書類は別の点検と組み合わせる
増資と同時に役員を選任する場合は、役員変更の書類が別に要ります。役員変更登記の必要書類を洗い出す手順の点検表を並べて使うと、申請書の枚数と添付書類の抜けを一度に見渡せます。
取締役が引受人や割当先を兼ねる場合は、利益相反の承認が別に必要になる場合があります。取締役会の議事録の見方は利益相反・競業取引の取締役会議事録の点検と共通です。
新株予約権(ストック・オプション)の発行は、募集株式とは別の条文と書類になります。契約書と議事録の点検はストック・オプション契約と議事録の点検で扱っています。
まとめ
第三者割当増資の書類は、公開会社か、取締役会があるか、現物出資を含むかの3点で、決議機関と添付書類が決まります。Claudeには、この3点を定款から読み取らせて根拠を示させ、決議書と添付書類の一覧を点検表にさせるのが向いています。
数字の突き合わせ、定款の最新版、議事録の署名押印は人が見ます。最後は司法書士か法務局の相談窓口で書類一式を確かめてから申請すると、却下や補正のやり直しを避けやすくなります。