賞与引当金の期末計上額をClaude for Excelで支給見込から検算する
支給見込額を算定期間の日数で按分して当期負担分を出し、社会保険料の会社負担分を別行で引き当てて前期末残高と比べる手順を、数値例とExcelの式つきで示します。
賞与引当金の期末計上額は、支給見込額のうち、決算日までに「稼いだ」分を日数で切り出し、そこに社会保険料の会社負担分を上乗せして決まります。Claude for Excelに任せられるのは、この按分と上乗せを数式で組み、前期末残高との差を一覧にするところまでです。何を算定期間とし、どの率を使うかは、賞与規程と会社の会計方針で決まる事柄で、Claudeが決めるものではありません。
この記事は3月決算で夏季賞与(6月支給)を引き当てる例を使います。金額・社会保険料率・前期末残高はすべて説明用の仮の値です。
期末計上額は「按分」と「上乗せ」の2段で出す
検算の対象は2つの金額です。1つは賞与そのものの引当額、もう1つは賞与にかかる社会保険料の会社負担分の引当額です。後者を賞与の引当額に混ぜると、前期末残高と比べるときに何が動いたのか分からなくなります。行を分けておきます。
期末計上額を作る2つの行
賞与引当額
支給見込額に、決算日までの算定期間の日数を、算定期間全体の日数で割った割合を掛けた金額です。
法定福利費の引当額
賞与引当額に、会社負担の社会保険料率を掛けた金額です。賞与とは別の行で持ち、前期末の同じ行と比較します。
どちらの行も、支給後に実際の金額が確定すると差が出ます。その差を追えるように、見込の前提(支給見込額・算定期間・率)を表の前提欄に残しておくことが、検算の出発点です。
検算の前に決めておく4つの前提
数式を書かせる前に、次の4点を人が決めます。ここが曖昧なままだと、Claudeが整った表を返しても、数字の意味が合いません。
- 算定期間: 賞与規程が定める、支給対象となる期間の開始日と終了日です
- 決算日: 当期末の日付です
- 支給見込額: 支給予定の総額です。最新の支給方針の見込を使います
- 社会保険料の会社負担率: 加入先と年度で変わるため、確認した日と出典を隣のセルに書きます
社会保険料は、実際に支払う賞与額(税引き前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率を掛けて決まり、事業主と被保険者が折半で負担します。標準賞与額には上限があり、健康保険は年度(4月1日から翌年3月31日まで)の累計で573万円、厚生年金保険は1か月あたり150万円です。同じ月に2回以上支給するときは合算して上限が適用されます(日本年金機構の案内)。
率の数値はこの記事に書きません。表の前提欄に最新の率を入れて、更新のたびに見直します。
数値例: 3月決算の夏季賞与
3月31日決算の会社が、12月1日から5月31日までを算定期間とする夏季賞与を、6月10日に支給するとします。支給見込額は12,000,000円、会社負担の社会保険料率は仮に14.5%とします。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 算定期間 | 値12月1日〜5月31日(182日) |
| 決算日までの日数 | 値12月1日〜3月31日(121日) |
| 支給見込額 | 値12,000,000円 |
| 会社負担率(仮) | 値14.5% |
日数は両端を含めて数えます。12月31日、1月31日、2月28日、3月31日を足して121日、算定期間はこれに4月の30日と5月の31日を足した182日です。
| 計算 | 式 | 結果 |
|---|---|---|
| 当期負担割合 | 式121日 ÷ 182日 | 結果約66.5% |
| 賞与引当額 | 式12,000,000 × 121 ÷ 182 | 結果7,978,022円 |
| 法定福利費の引当額 | 式7,978,022 × 14.5% | 結果1,156,813円 |
| 合計 | 式7,978,022 + 1,156,813 | 結果9,134,835円 |
円未満は四捨五入で処理した例です。切り捨てにするか四捨五入にするかは、会社の経理規程に合わせます。
前期末の残高が、賞与引当金7,500,000円、法定福利費の引当1,090,000円だったとします。当期末の見込と並べると、次のとおりです。
| 行 | 前期末残高 | 当期末見込 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 賞与引当金 | 前期末残高7,500,000 | 当期末見込7,978,022 | 差額+478,022 |
| 法定福利費の引当 | 前期末残高1,090,000 | 当期末見込1,156,813 | 差額+66,813 |
差額が大きいときは、支給見込額が増えたのか、対象人数や算定期間が変わったのかを切り分けます。前期末と同じ前提でどれだけ動いたかを見るには、前提欄を1つずつ元に戻して数字を比べるのが近道です。
Excelの式の組み方
前提は表の外にまとめ、式はそのセルを参照します。次の例では、B1に算定開始日、B2に算定終了日、B3に決算日、B4に支給見込額、B5に会社負担率を置きます。
算定期間の日数 B7: =B2-B1+1
当期の日数 B8: =MAX(0, MIN(B3, B2) - B1 + 1)
当期負担割合 B9: =B8/B7
賞与引当額 B10: =ROUND(B4*B9, 0)
法定福利費引当額 B11: =ROUND(B10*B5, 0)MIN(B3, B2)は、決算日が算定終了日より後でも、算定期間を超えて数えないための式です。決算日が算定開始日より前ならMAXが0を返し、引当額は0になります。
B1に算定開始日、B2に算定終了日、B3に決算日、
B4に支給見込額、B5に会社負担率を置いた前提表があります。
B7からB11に、算定日数、当期の日数、当期負担割合、
賞与引当額、法定福利費引当額を、値の直書きなしの数式で
入れてください。当期の日数は、決算日が算定期間の外に
あっても負にならないようにします。この依頼文は、列やセルの位置を自分の表に合わせて書き換えてください。値を直接書かず、前提セルを参照する数式にするよう明示しておくと、前提を変えたときに下流の数字が連動します。
Claude for Excelに任せる工程
Claude for Excelは、ブックについての質問に答え、数式の関係を保ったまま値を更新し、エラーの原因を探り、テンプレートに入力できるアドインです。回答にはセル単位の出典が付き、クリックで該当セルへ移動できます。次の4工程に当てはめます。
検算の進め方
- 1
前提を指示欄に書く
アドインの設定画面にある指示欄に、「円未満は四捨五入」「日付は両端を含めて数える」といった書式と数え方の決まりを書いておきます。この指示欄はExcelだけに効き、PowerPointやWordの指示とは別です。
- 2
数式を組ませる
前提セルの位置を伝え、算定日数から法定福利費の引当額までを数式で入れてもらいます。
- 3
手計算の1件と突き合わせる
上の数値例のように、1つの賞与を電卓で計算し、Claudeが出した値と一致するかを見ます。一致しなければ、どのセルの式が原因かをセル参照つきで説明させます。
- 4
前期末残高との差を出させる
前期末残高の列を足し、差額と増減率を計算してもらいます。差額が大きい行は、前提欄の入力値を先に疑います。
出力された数式は、次の観点で読み返します。
- 日数の数え方が両端を含む形になっているか(
+1が抜けると1日ずれる) - 決算日が算定期間より後や前のときに、割合が1を超えたり負になったりしないか
- 法定福利費の引当額が、賞与引当額の丸め後の金額に率を掛けているか
- 会社負担率が、全行で同じ前提セルを参照しているか
人数が複数の部署や雇用区分にまたがるとき
実際の賞与は、部署や雇用区分で支給見込額も算定期間も違います。1行1区分の表にして、行ごとに算定開始日・終了日・支給見込額を持たせ、上の式を各行に複写します。会社負担率は区分によって違いうるので、率の列も行ごとに持たせます。
合計行はSUMで足し、区分別の割合を見るときはSUMIFを使います。Claudeには「区分列をキーに、賞与引当額と法定福利費の引当額を区分別に合計して」と頼めば組めます。区分名の表記ゆれがあると集計から漏れるため、合計が全行の合計と一致するかを最後に確かめます。
支給見込額の更新も頻繁に起こります。評価の確定で支給額が動いたときは、前提セルだけを書き換えて、下流が連動するかを見ます。Claude for Excelは、数式の関係を保ったまま値を更新するよう設計されています。
損金算入は引当金の計上とは別に確認する
決算で賞与引当金を計上したことと、法人税の所得計算で損金に算入できることは別の問題です。使用人賞与の損金算入時期は、法人税の施行令第72条の3が定めています。次の3区分に分かれます。
| 区分 | 損金算入される事業年度 |
|---|---|
| 労働協約・就業規則による支給予定日が到来し、支給額を通知済みで、その事業年度に損金経理した賞与 | 損金算入される事業年度支給予定日か通知日の遅い日が属する事業年度 |
| 各人別に・同時期に支給を受ける全員に通知し、通知日の属する事業年度の終了日の翌日から1か月以内に支払い、かつ通知した事業年度に損金経理した賞与 | 損金算入される事業年度通知をした日が属する事業年度 |
| 上の2つ以外の賞与 | 損金算入される事業年度支払った日が属する事業年度 |
期末の時点で支給額を通知済みで、決算日の翌日から1か月以内に支払うなら、2番目の区分に当たりえます。一方、支給日に在籍する使用人にだけ賞与を支給する定めの場合、その支給額の通知は施行令第72条の3の「支給額の通知」には当たらないとされています(法人税基本通達9−2−43)。
この記事の例では、6月10日支給で決算日は3月31日です。決算日の翌日から1か月以内は4月30日までなので、6月の支給は2番目の区分の支払期限を過ぎます。引当金を計上しても、税務上は支払った6月10日が属する事業年度で損金に算入される区分になりえます。損金経理の範囲や税務調整の要否は、検算表の外で、税理士や経理規程に従って確認します。
検算でつまずきやすい点
数字は合っていても、前提が違っていて見落とす例を挙げます。
日数のカウントがずれる
算定期間を「12月1日から5月31日」とするとき、開始日と終了日の両方を含めます。引き算だけでは1日足りません。+1が数式に入っているかを、手計算の1件で確かめます。
賞与の支給月と算定期間を混同する
支給月が6月でも、算定期間が前年12月から始まるなら、決算日までの日数は算定期間の開始日から数えます。支給日や支給月を基準にすると、割合が合いません。賞与規程の算定期間の定めを、前提欄に日付で書き写します。
社会保険料の上限を無視する
高い賞与の人が出る年は、標準賞与額の上限で保険料が頭打ちになります。全員に一律の率を掛けた引当額は、実際の会社負担より大きくなりえます。人数が少なく賞与が高額な区分では、上限を挟む式で個別に確かめます。
標準賞与額(厚生年金) =MIN(ROUNDDOWN(支給額,-3), 1500000)健康保険の上限は年度の累計額なので、同じ年度に支給済みの賞与の累計を前提に持たせる必要があります。
実際の支給額が確定したあとの差額
引当額と実際の支給額の差は、支給時に処理されます。見込と大きくずれるときは、見込の精度を前提欄の変更履歴として残しておくと、翌期の見積りの見直しに使えます。
会計上の引当の可否は別に判断する
引当金を計上する要件(将来の支出の可能性・金額の合理的な見積り)の判断は、監査を受けている会社なら監査人との協議を含めて会社が決めます。この記事のExcelの検算は、金額の計算が前提どおりに出ているかを確かめるもので、引当てるべきかどうかを決めるものではありません。
Claude for Excelの限界と、使う前の確認
対応プランはPro、Max、Team、Enterpriseです。動作するのは、Excel on the web、Microsoft 365のWindows版(ビルド16.0.13127.20296以降)、Mac版(バージョン16.46以降)です。Excel 2016と2019の永続版・ボリュームライセンス版、iPad、Androidでは動きません。
使い方の制約は次の3点です。
- 監査上重要な計算は、検証なしで使うことが推奨されていません
- 顧客への最終成果物を、人の確認なしで出すことも推奨されていません
- データテーブルと、マクロ・VBAの操作は未対応です
賞与引当金は決算書の数字に直結します。Claudeの数式は下書きとして扱い、手計算した1件との一致を確認してから合計に使います。
給与や賞与のデータには、個人別の金額が含まれます。取り込むブックに個人情報が入る場合は、必要な列だけを残したコピーで作業すると、触らせる範囲を小さくできます。入出力はバックエンドで受領または生成から30日以内に削除され、チャット履歴はブラウザーのIndexedDBにローカル保存されます。組織で設定した独自のデータ保持設定は引き継がれず、Enterprise向けの監査ログにも含まれません。
外部から受け取った集計ファイルや、取引先のテンプレートには、隠れた指示が仕込まれている場合があります。信頼できるブックでのみ使う方針がドキュメントに示されており、危険な操作の前には確認が出ます。内容を読んでから承認します。
賞与の原資や貸倒引当金との関係
賞与の配分を評価区分ごとに試算する作業は、賞与の原資配分のシミュレーションに手順があります。ここで出した支給見込額は、その原資配分の結果を引き当ての前提に流用できます。ほかの引当金の計算は、貸倒引当金の計算で個別評価と一括評価の分け方を扱っています。賞与の支給が資金繰りに与える影響を見るときは、資金繰り表の週次更新が参考になります。
まとめ
賞与引当金の検算は、賞与の引当額と法定福利費の引当額を別の行で持ち、前期末残高との差を行ごとに見る形にすると、数字が動いた理由を追えます。算定期間・決算日・支給見込額・会社負担率の4つを前提欄に固定し、手計算した1件で式を確かめてから合計に進みます。損金算入の可否や、引当てるかどうかは、表の外で確認する事項です。