Claudeで派遣のマージン率を算出し情報提供資料にする手順
派遣のマージン率は、料金の平均額から賃金の平均額を引き、料金の平均額で割って出します。事業所ごとの明細をClaude for Excelで集計し、検算して情報提供資料に載せる流れをまとめます。
派遣会社(派遣元事業主)は、事業所ごとのマージン率を算出して、関係者に情報提供する義務があります。計算式は施行規則に書かれていて、必要なのは「派遣料金の平均額」と「派遣労働者の賃金の平均額」の2つだけです。
材料は請求と給与の明細に揃っています。Excelの明細をClaude for Excelに集計させ、別の経路で検算し、情報提供の資料に組み込む。この記事は、その手順を派遣元の総務・営業管理の立場で扱います。
派遣先として台帳を点検する側の話はClaudeで派遣先管理台帳を点検する手順に、許可更新の書類は労働者派遣事業の許可更新に必要な書類をClaudeで点検する方法にあります。
マージン率とは何で、誰がどこへ公開するのか
労働者派遣制度でいう「マージン」には、派遣会社の利益にあたる部分のほか、派遣会社が負担する社会保険料や教育訓練費などが含まれます。厚生労働省のページがそう説明しています。
マージン率の情報提供は、平成24年の労働者派遣法の改正で派遣会社に義務付けられました。働く人がインターネットなどで派遣会社のマージン率を確かめ、より適切な派遣会社を選べるようにするためです。
法律上の根拠は労働者派遣法23条5項です。派遣元事業主は、事業所ごとに次の事項を関係者へ知らせます。
- 派遣労働者の数
- 労働者派遣の役務の提供を受けた者の数
- 料金の平均額から賃金の平均額を引いた額を、料金の平均額で割った割合(マージン率)
- 教育訓練に関する事項
- その他、あらかじめ関係者に知らせることが適当なものとして省令で定める事項
提供の方法も決まっています。施行規則18条の2第1項は、インターネットの利用その他の適切な方法で行うと定めています。令和3年4月1日からは、情報提供の法的義務がある情報の全部について、原則として常時インターネットで広く提供することとされました。自社のホームページに加え、厚生労働省が運営する人材サービス総合サイトの活用も案内されています。
つまり、資料は一度作って終わりではありません。事業年度が変わるたびに、同じ手順で数字を作り直します。
条文が決める計算式を、先に固定する
計算式は施行規則18条の2第2項にあります。文章を数式に直すと次のとおりです。
マージン率 =(料金の平均額 − 賃金の平均額)÷ 料金の平均額条文が指定している条件は4つあります。
- 対象は前事業年度。直近の決算期の1年分で見る
- 単位は労働者派遣事業を行う事業所ごと
- 平均額は、派遣労働者1人1日当たりの額
- 割合に端数があるときは、小数点以下の一位未満を四捨五入する
事業所がその派遣元事業主の他の事業所と一体的な経営を行っている場合は、その範囲内で同じ方法により割合を算定してもよい、とただし書きがあります。複数の事業所をまとめて算定できるのは、このただし書きに当たる場合です。
数字の感覚をつかむために、説明用の仮の値で試算します。1人1日当たりの料金平均が21,500円、賃金平均が15,050円なら、差額は6,450円です。6,450を21,500で割ると0.3になり、百分率で30.0%です。分母は料金の平均額なので、同じ差額でも、料金の水準が違う事業所どうしでは率が変わります。
条文が決めていないことは、自社で決めて注記する
条文から読み取れないことが3つあります。ここを黙って決めると、翌年の担当者が同じ数字を再現できません。
| 論点 | 条文の状況 | 資料での扱い |
|---|---|---|
| 平均額の作り方 | 条文の状況「1人1日当たりの平均額」とあるだけ | 資料での扱い総額を延べ人日で割るのか、日額の単純平均なのかを決めて注記する |
| 賃金に含める範囲 | 条文の状況施行規則18条の2は賃金の中身を定めていない | 資料での扱い通勤手当や時間外手当を含めるかを決め、毎年そろえる |
| 端数の桁 | 条文の状況一位未満を四捨五入 | 資料での扱い百分率の小数第1位で載せる前提なら、その旨を注記する |
3行目は読み方に幅があります。条文は割合そのものの桁を定めているため、百分率の小数第1位として表示する場合は、労働局の案内や所管窓口に確かめてから固定すると安全です。
料金の額は、事業報告書にも記載する項目です。23条2項が、事業所ごとの派遣労働者の数、役務の提供を受けた者の数、料金の額などを事業報告書に書くよう定めています。報告書の集計と同じ元データから出すと、2つの書類で数字がずれるのを防げます。
計算に使うExcelの表を作る
Claudeに渡す前に、明細を「1行 = 1人の1就業日」に直します。時間単価で請求・支給している場合は、就業時間を掛けて日額にしておきます。
必要な列は5つです。
| 列 | 内容 | 注意 |
|---|---|---|
| A | 内容事業所名 | 注意表記ゆれを統一する |
| B | 内容労働者ID | 注意氏名は入れず、社内IDにする |
| C | 内容就業日 | 注意前事業年度の範囲内の日付 |
| D | 内容派遣料金(円/日) | 注意請求ベースの日額 |
| E | 内容賃金(円/日) | 注意手当の範囲は前節で決めたとおり |
氏名を入れない理由は、Claude for Excelの扱いにあります。サポート記事は、機密性の高いデータや規制対象のデータを、適切な管理なしにモデルへ載せることを推奨していません。集計に氏名は要らないので、IDだけで足ります。
Claude for Excelで集計させ、別経路で検算する
Claude for Excelは、Pro・Max・Team・Enterpriseの各プランで使えるExcelのアドインです。Windows版はMicrosoft 365のビルド16.0.13127.20296以降、Mac版はバージョン16.46以降が要件です。Excel 2016と2019の永続・ボリュームライセンス版では動きません。
マージン率を出して検算するまで
- 1
明細シートを前事業年度で絞る
C列の日付が前事業年度の範囲に収まっているか、範囲外の行がないかをClaudeに数えさせます。
- 2
事業所別の集計シートを作らせる
事業所ごとの延べ人日、料金平均、賃金平均、差額、マージン率を1枚にまとめさせます。
- 3
別の数え方で突き合わせる
同じ数字を、ピボットテーブルなど別の経路で出し直して一致を確かめます。
- 4
異常値の行を担当者が見る
賃金が料金を上回る行や、日額が0円の行を一覧にして、元データと照らします。
1つ目の依頼は、たとえば次のように書きます。
「明細」シートのC列が2025年4月1日から2026年3月31日の範囲に入っているか確認して。
範囲外の行があれば行番号を一覧にして。数値は書き換えないで。事業年度の始期と終期は、自社の決算期に置き換えます。集計シートの式は、Claudeに作らせる場合でも式そのものを自分で読んでから採用します。事業所別の1行目は、次の形になります(例として、説明用の式です)。
B2: =COUNTIFS(明細!$A:$A,$A2)
C2: =SUMIFS(明細!$D:$D,明細!$A:$A,$A2)/B2
D2: =SUMIFS(明細!$E:$E,明細!$A:$A,$A2)/B2
E2: =C2-D2
F2: =ROUND(E2/C2,3)Bが延べ人日、Cが料金の平均額、Dが賃金の平均額、Eが差額、Fがマージン率です。Fを3桁で丸めているのは、百分率の小数第1位に当たる桁を残すためです。前節で決めた桁の読み方に合わせて直します。
検算で見る点は次のとおりです。
| 点検 | 見るもの | ずれたときの疑い |
|---|---|---|
| 件数の一致 | 見るもの集計の延べ人日と、明細の行数 | ずれたときの疑い事業所名の表記ゆれ |
| 合計の一致 | 見るもの事業所別の料金総額の合計と、請求総額 | ずれたときの疑い別年度の行の混入 |
| 符号 | 見るもの賃金が料金を上回る行 | ずれたときの疑い入力ミス、請求の締め漏れ |
| 桁 | 見るもの日額が極端に小さい行 | ずれたときの疑い時間単価を日額に直し忘れ |
Claude for Excelのサポート記事は、利用の場面として、監査に関わる計算を検証なしで使うことや、人の確認を経ない最終成果物を推奨していません。マージン率は外に出す数字なので、最後の突き合わせは人が行います。マクロとVBAの操作、データテーブルは未対応です。集計に使うのは通常の関数とピボットテーブルに留めると、この制限に当たりません。
数字を情報提供資料の項目に組む
マージン率が出たら、事業所ごとの資料に載せる項目を並べます。施行規則18条の2第3項は、省令で定める事項を次のように挙げています。
- 労働者派遣に関する料金の額の平均額
- 派遣労働者の賃金の額の平均額
- 労使協定方式の協定(法30条の4第1項)を締結しているか否か
- 協定を締結している場合は、協定の対象となる派遣労働者の範囲と、協定の有効期間の終期
- その他、労働者派遣事業の業務に関し参考となると認められる事項
法23条5項に挙がっていた派遣労働者の数、役務の提供を受けた者の数、教育訓練に関する事項も、同じ資料に並べます。Claudeには、集計シートの値を次のような表に流し込ませます。表の枠は例として示すもので、様式の指定ではありません。
| 項目 | 記載する内容 | 元の置き場所 |
|---|---|---|
| 事業所名 | 記載する内容事業所ごとに1枚 | 元の置き場所集計シートA列 |
| 派遣労働者の数 | 記載する内容前事業年度の人数 | 元の置き場所人事システムの出力 |
| 役務の提供を受けた者の数 | 記載する内容派遣先の数 | 元の置き場所契約台帳 |
| 料金の平均額 | 記載する内容1人1日当たり(円) | 元の置き場所集計シートC列 |
| 賃金の平均額 | 記載する内容1人1日当たり(円) | 元の置き場所集計シートD列 |
| マージン率 | 記載する内容百分率で表示 | 元の置き場所集計シートF列 |
| 協定の有無と対象範囲・終期 | 記載する内容労使協定の写しと一致させる | 元の置き場所協定書 |
| 教育訓練に関する事項 | 記載する内容実施内容 | 元の置き場所教育訓練の記録 |
人数や教育訓練の欄は、Excelの明細からは出ません。Claudeに書かせず、元の記録から担当者が入れます。出せない欄を推測で埋めさせない、という線を依頼文にも書いておきます。
集計シートの値だけを使って、上の表の「料金の平均額」「賃金の平均額」「マージン率」の欄を埋めて。
明細にない項目は空欄のまま残して、推測で入れないで。数字に添える一文を決めておく
マージン率だけを載せると、「低いほど良い会社」と読まれがちです。厚生労働省のページは、この読み方を戒めています。マージンには社会保険料や教育訓練費なども含まれるため、マージン率は低いほどよいわけではなく、その他の情報と組み合わせて総合的に評価することが重要だと説明しています。
資料の余白に、この趣旨を事実として書き添える手があります。たとえば次の形です。
マージンには、当社の利益のほか、当社が負担する社会保険料や教育訓練費等が含まれます。
賃金の平均水準、教育訓練の取組状況とあわせてご覧ください。この文面はClaudeに作らせず、自社の実情に合わせて決めておきます。決めた後は、Claudeに「他の事業所の資料と文言が揃っているか」を照合させる使い方が向いています。
Claudeに任せる範囲と、担当者が確かめる範囲
作業の分担を最後に分けます。
| Claudeに任せる | 担当者が確かめる |
|---|---|
| 明細の日付範囲と表記ゆれの点検 | 担当者が確かめる平均額の作り方と、賃金に含める手当の範囲 |
| 事業所別の集計と式の作成 | 担当者が確かめる式の中身と、別経路での検算結果 |
| 異常値の行の一覧づくり | 担当者が確かめる異常値が入力ミスか実態かの判断 |
| 資料の表への流し込み | 担当者が確かめる人数、教育訓練、協定の欄の記載 |
| 事業所間の文言の照合 | 担当者が確かめる公開前の最終確認と、掲載先の更新 |
資料の公開先は、自社のホームページと人材サービス総合サイトです。厚生労働省は、サイトに各企業が掲載している情報をもとに、都道府県ブロックごとのマージン率の一覧を加工して公開しています。自社の数字が一覧と食い違っていないかは、公開後に見ておく価値があります。
まとめ
マージン率の計算は単純です。難しいのは数字そのものでなく、平均額の作り方と手当の範囲を決めて、毎年同じ方法で再現できる状態にしておくことです。
Claude for Excelに任せるのは、集計と点検までです。氏名を渡さず、社内で作ったブックだけを使い、検算は別の経路で行います。出した数字を外に公開する最後の一歩は、人が責任を持って行います。