Claudeで塾の退塾防止 — 出欠・成績・面談メモの兆候をExcelで洗う
月次の出欠・テスト得点・面談メモを1冊のExcelにまとめ、欠席の連続と成績の下降と保護者の発言の変化をClaude for Excelで拾い、次の面談で聞くことのリストに落とす手順です。
退塾の連絡は、たいてい突然に感じられます。ところが月次の記録を後から並べると、出欠の乱れや点数の下降、面談での言い回しの変化が、数か月前から残っていることが少なくありません。記録は塾に溜まっているのに、横断して眺める時間がない。そこが取りこぼしの正体です。
この記事では、出欠・テスト・面談メモを1冊のExcelにまとめ、Claude for Excelで兆候を拾い、次の面談で聞くことのリストにまで落とす手順を扱います。Claudeに任せるのは「拾い出して並べる」ところまでです。誰が辞めるかの判定は任せません。
兆候は3つの表に分けて持つと拾いやすい
最初にやるのはブックの設計です。1枚のシートに全部を詰めず、性質の違う記録を別のシートに分けます。
| シート | 1行の単位 | 主な列 |
|---|---|---|
| 出欠 | 1行の単位生徒ID × 授業日 | 主な列ID、授業日、出欠(出・欠・遅) |
| テスト | 1行の単位生徒ID × 実施日 | 主な列ID、実施日、得点率 |
| 面談メモ | 1行の単位生徒ID × 面談日 | 主な列ID、面談日、記録者、要約、発言タグ |
| 兆候 | 1行の単位生徒IDごとに1行 | 主な列上の3シートから計算した値と印 |
出欠とテストは「生徒IDごとに日付順」で並べておきます。この並びが、後の式で連続欠席や直近の得点を数える前提になるためです。面談メモは自由記述が中心なので、そのまま数えられません。次の節以降で、数えられる形に直していきます。
生徒ごとに1行の「兆候」シートを別に作るのは、Claudeに見せる範囲を絞るためでもあります。元の記録は大量でも、判断に使う値は生徒1人あたり数列に収まります。
氏名と保護者名を外してから開く
出欠・成績・家庭の事情を含む面談メモは、塾にとって最も重い個人情報の束です。Claude for Excelに開かせる前に、氏名・保護者名・連絡先・学校名を外し、生徒IDだけで回る形にします。IDと氏名の対応表は別ファイルに置き、Claudeを使うブックには入れません。
作業IDの付け方や対応表の置き場所は、養護教諭の健康診断集計で扱った匿名化の型がそのまま使えます。塾の月次模試を扱う場合の氏名の外し方は、模試の成績分析の記事にも同じ考え方があります。
面談メモの要約欄には、保護者や本人の実名、勤務先、兄弟姉妹の学校名が混ざりがちです。記録者が書いた時点で外すか、シートに取り込む前に置換しておきます。
使える環境とプランを先に確かめる
Claude for Excelは、Pro・Max・Team・Enterpriseの各プランで一般提供されているアドインです。動作する環境は次のとおりです。
- Excel on the web
- Microsoft 365契約のExcel on Windows(ビルド16.0.13127.20296以降)
- Excel on Mac(バージョン16.46以降、ビルド21011600以降)
Excel 2016・2019の永続ライセンス版とボリュームライセンス版、iPad版、Android版では動きません。教室のPCが古い買い切り版のExcelだと、アドインを入れる以前に対象外です。導入は、個人ならMicrosoft AppSourceの「Claude for Microsoft 365」から入れて自分のClaudeアカウントでサインインします。組織で配る場合は、管理者がMicrosoft 365管理センターから展開します。
利用量はClaude.aiと同じアカウントの上限に数えられます。処理が長くなる月末は、学年やコースで分けて回す前提で組むと、上限の消費も検算の範囲も区切りやすくなります。
欠席の連続を式で数える
欠席の「回数」より「連続」のほうが、離れかけた合図として読みやすくなります。1回の欠席は体調不良でも起きますが、授業のたびに続くと様子が違います。
出欠シートを、A列がID、B列が授業日、C列が出欠、D列を作業列にして並べます。D2に次の式を入れ、下へコピーします。
=IF(C2="欠",IF(A2=A1,D1,0)+1,0)欠席の行では、同じ生徒の1つ上の行の値に1を足します。出席や遅刻の行では0に戻します。生徒が切り替わった行は、上の行の値を引き継がず1から数え直します。
兆候シートには、生徒ごとの最大連続欠席を持たせます。
=MAXIFS(出欠!D:D,出欠!A:A,$A2)Claudeには式を書かせることもできますが、この程度の式なら自分で入れたほうが速く、何を数えているかを塾の側が把握できます。Claudeに頼むなら、数えた結果の突合に使います。
出欠シートのD列(連続欠席数)が、授業日の順に正しく積み上がっているか、
IDごとに抜き取りで5人分検算して。D列が前の行の値を引き継ぐ箇所と
0に戻る箇所を、行番号つきで教えて。Claude for Excelは回答にセルへの引用を付け、クリックで該当セルに移動できます。検算の指摘を受けたら、その引用先を開いて、実際の並びと突き合わせます。
成績の下降は「直近3回」と「その前3回」の差で見る
テストの点数は、1回だけの上下で動揺しないために、まとまった期間の平均を比べます。テストシートのA列をID、B列を実施日、C列を得点率(0〜100の%値で入れます。0〜1の比率で入れると、後で使う「10ポイント下落」の閾値が効きません)、D列を「その生徒の何回目のテストか」にします。D2は次のとおりです。
=COUNTIF(A$2:A2,A2)兆候シートでは、生徒ごとのテスト回数を出したうえで、直近3回の平均とその前3回の平均を作ります。B列にテスト回数、C列に直近3回平均、D列にその前3回平均、E列に差を置く想定です。
B2: =COUNTIF(テスト!A:A,$A2)
C2: =AVERAGEIFS(テスト!C:C,テスト!A:A,$A2,テスト!D:D,">"&B2-3)
D2: =AVERAGEIFS(テスト!C:C,テスト!A:A,$A2,テスト!D:D,">"&B2-6,テスト!D:D,"<="&B2-3)
E2: =C2-D2テストが3回以下の生徒は、前の3回がなくD列が「#DIV/0!」になります。4〜5回の生徒は1〜2回分だけの平均になり、比べる材料としては弱くなります。入塾して間もない生徒を除くには、E列を次のようにして6回未満を「判定対象外」と表示します。
E2: =IF(B2<6,"判定対象外",C2-D2)単元ごとの得点率の推移や、教科別の弱点の出し方は模試の成績分析に書いたとおりです。ここでは単元までは掘らず、「下がり始めたか」だけを見ます。
面談メモは発言の「タグ」に置き換えて数える
面談メモの自由記述は、そのままでは表の列になりません。Claudeに読ませて、決めたタグのうち当てはまるものを付けさせます。タグは塾の側で先に決めておきます。例として次のような分類が考えられます。
| タグ | 拾う発言の例 |
|---|---|
| 費用 | 拾う発言の例月謝や講習費の負担に触れた |
| 他の習い事・部活 | 拾う発言の例時間の取り合いに触れた |
| 他塾・家庭学習 | 拾う発言の例別の学習手段の検討に触れた |
| 本人の意欲 | 拾う発言の例「行きたがらない」「楽しそう」など |
| 送迎・時間帯 | 拾う発言の例通塾の負担に触れた |
| 成績への見方 | 拾う発言の例結果に対する期待や不満 |
指示は次のように書きます。
面談メモシートのE列(要約)を読み、F列に下のタグから当てはまるものを
読点区切りで入れて。当てはまらなければ「なし」にして。
タグ: 費用、他の習い事・部活、他塾・家庭学習、本人の意欲、送迎・時間帯、成績への見方
要約に書かれていない内容は推測で補わないこと。
G列には、そのタグを付けた根拠になった要約の語句を1つ抜き出して。G列に根拠の語句を出させるのは、タグの付け間違いを人が見つけやすくするためです。付けたタグは必ず人が読み直します。「なし」が多い行ほど、記録者が書き残した情報量が薄い可能性があります。
保護者の発言の「変化」を見るには、同じ生徒の前回と今回のタグを並べます。前回は「なし」だったのに今回「費用」が付いた、前回は「なし」だったのに今回「他塾・家庭学習」が付いた、前回あった「費用」が今回は消えた、といった並びです。
面談メモシートを生徒IDごとに日付順で見て、直近の面談で新しく
付いたタグと、前回から消えたタグを兆候シートのH列・I列に入れて。
面談が1回しかない生徒は空欄にして。兆候シートで3つを並べ、要フォローの印を付ける
3つの値が揃ったら、兆候シートで並べます。印を付けるルールは、塾が自分で決めた閾値で動かします。次は一例です。数字は、自塾の過去の退塾事例を振り返って調整する前提の仮置きです。
| 兆候 | 列の例 | 印を付ける目安(仮置き) |
|---|---|---|
| 欠席の連続 | 列の例最大連続欠席 | 印を付ける目安(仮置き)2回以上 |
| 成績の下降 | 列の例直近3回平均 − その前3回平均 | 印を付ける目安(仮置き)10ポイント以上の下落 |
| 発言の変化 | 列の例新しく付いたタグ | 印を付ける目安(仮置き)「費用」「他塾・家庭学習」「本人の意欲」のいずれか |
印は「1つ当たれば要フォロー、2つ以上なら優先」のように段階を分けると、面談の順番を決めやすくなります。単独の兆候は誤検知が多く、複数が重なったときに初めて意味を持つことが多いためです。この重み付けも、実際の退塾事例を並べて見直す部分です。
Claude for Excelは、並べ替え・フィルター・ピボットテーブルの編集・条件付き書式・データ検証のドロップダウンをブック上で直接実行できます。印の列は条件付き書式で色を付け、優先度の高い順に並べ替えるまでを頼めます。
兆候シートで、F列(最大連続欠席)が2以上、E列(得点率の差)が-10以下、
H列(新しいタグ)に「費用」「他塾・家庭学習」「本人の意欲」のいずれかを含む、
の3条件のうち当てはまる数をJ列に数えて。J列が2以上の行は条件付き書式で
塗りつぶし、J列の降順に並べ替えて。既存の列は上書きしないで。既存データを上書きしようとすると、Claudeは実行前に警告します。それでも、作業前にブックのコピーを取っておくのが基本です。
「退塾リスク」という言葉を、シートの列名やファイル名に残さないほうが無難です。講師間で共有するファイルでは「要フォロー」のような中立的な語にし、保護者に見せる資料にはこの印そのものを載せません。
面談で聞くことのリストに落とす
兆候は、面談で聞くことに変換して初めて役に立ちます。印の付いた生徒ごとに、どの兆候が出たかを元に質問案を出させます。
兆候シートでJ列が2以上の各行について、面談で保護者に聞くことを3つまで
K列に書いて。次の条件を守って。
- 退塾の可能性には触れない。授業の様子や家庭での困りごとを聞く問いにする
- 兆候の数値(欠席回数、点数の差)は、先生が把握していることを伝える
言い回しの形で添える
- 「はい・いいえ」で終わらない聞き方にする出てきた質問案は、そのまま読み上げるものではありません。面談を担当する先生が、普段の言葉遣いに直して使います。たとえば連続欠席が付いた生徒には「最近お休みが続いていますが、お家での様子はいかがですか」といった聞き方になります。
面談の準備全体の流れは三者面談の準備をClaudeで進めるにまとめています。入塾時に立てた学習計画との差を見るなら、入塾面談から学習計画案を作るの計画案と並べると、当初の目標からどれだけ離れたかが分かります。
毎月の更新をアドインの指示欄に持たせる
毎月同じ作業を繰り返すので、アドインの設定画面にある「Instructions」欄に決まりを書いておきます。ここに書いた内容は、Excelでの全会話に適用されます。PowerPointやWordの指示とは別に管理されます。
- 生徒は氏名ではなく生徒IDで呼ぶ
- 元の記録シート(出欠・テスト・面談メモ)は書き換えず、計算は兆候シートで行う
- 数値は小数第1位まで
- 要約に書かれていない内容を推測で補わない長い会話は自動的に圧縮されて新しい会話に引き継がれるため、1つの会話で全生徒を処理しても、途中で文脈が切れる心配は小さくなります。とはいえ圧縮のたびに細部は落ちるので、学年やコースの単位で会話を分けるほうが検算しやすくなります。
判定を任せないために知っておくこと
使い始める前に、アドインが苦手とするものを押さえておきます。
- 人の確認を通さずに、最終的な顧客向けの成果物をそのまま出す用途には向かない
- 監査で使うような計算は、検証なしに頼れない
- 機微な情報や規制対象のデータを含むモデルは、統制の整った状態で扱う
- データテーブルと、マクロ・VBAの操作には対応しない
退塾の兆候表は、塾内で面談の準備に使うだけのものです。それでも、印の付いた子どもの扱いを決めるのは先生です。兆候が出ていない生徒が突然辞めることもあり、印が付いていないことは安全の保証になりません。
外部から入手したファイルには注意が必要です。外部のファイルには、アドインを操って情報を抜き出したり、データを書き換えさせたりする隠れた指示が含まれることがあると警告されています。保護者から届いた文面や他校の資料をそのままシートに貼る場合も、内容を読んでから貼ります。危険な操作が提案されたときは確認を求められるので、承認する前に中身を読みます。
データの扱いについては、次の点を知っておきます。
- 入力と出力はバックエンドで受領または生成から30日以内に削除される
- チャット履歴はブラウザ内のIndexedDBにローカル保存され、Anthropicのサーバーには保存されない
- 組織で設定したカスタムのデータ保持設定は引き継がれず、アクティビティはEnterpriseの監査ログに含まれない
- Compliance APIを有効にしたEnterpriseでは、Claude for Excelのセッションがパブリックベータとして対象に入る
生徒の情報を扱う塾では、これを自塾の個人情報の取り扱い方針と照らし合わせ、外部の事業者へ預けてよい範囲かを先に決めておきます。匿名化した生徒IDだけを渡す運用なら、この判断はかなり軽くなります。
つまずきやすい点
- 連続欠席が実態より多く出る: 出欠シートが生徒IDと日付の順に並んでいないと、別の生徒の行を引き継いで数えます。並べ替えてから式を入れ直します。
- 振替で出席した日が欠席のまま残る: 振替授業を別の行で記録していると、元の欠席が残って連続に数えられます。振替の扱いを決めて記録を統一します。
- 成績の差が極端な値になる: 難易度の違うテストを同じ得点率で比べているためです。偏差値や学年平均との差を使う塾もあります。
- タグが「成績への見方」ばかりになる: 要約が結論だけで書かれていると、タグの材料が足りません。記録者に、保護者の言葉を一言引用する書き方を頼みます。
- 講習期間に欠席が集中して見える: 通常授業と講習の欠席を同じ列で数えているためです。期間を分けるか、集計の対象を通常授業に絞ります。
まとめ
退塾の兆候は、どれも単体では弱い信号です。欠席の連続・成績の下降・発言の変化を同じ表に並べて、複数が重なった生徒から面談の順番を決める、というのが使い方の中心になります。Claude for Excelは、その並べ替えと、聞くことの下書きまでを短くしてくれます。
兆候シートは先生の気づきを補う道具にとどめ、印の付け方は自塾の退塾事例に照らして半年ごとに見直します。閾値が当たっていたかどうかは、実際に辞めた生徒の記録を遡って確かめるのが確実です。