ClaudeとFullstoryを連携して離脱セッションを特定する
FullstoryコネクタをClaudeに追加し、ファネルの離脱ステップから実際のセッションリプレイまで辿る手順です。接続条件と、取得できる件数・レートの上限も扱います。
「購入完了率が落ちた」という数字を見ても、何を直せばいいかは分かりません。Fullstoryコネクタを使うと、Claudeがファネルを組み、離脱したセッションを引き出し、画面の変化まで読んで報告します。数字から原因の仮説までを1つの会話で進められます。
この記事では、接続前に管理者が済ませる設定、離脱セッションに辿り着くまでの流れ、件数やレートの上限を順に扱います。
Fullstoryコネクタでできること
Fullstoryコネクタは、Fullstoryが取得した行動データをClaudeから参照するためのMCPサーバーです。コネクタ一覧では「Anthropic verified」の表示があり、サインインが必要で、2026年7月に追加されています。接続先のURLは https://api.fullstory.com/mcp/fullstory です。
Claudeに任せられる作業は、コネクタページの説明では次の6つです。
- セグメントと指標を作って保存する
- 件数・比率・推移を、端末・ブラウザ・地域・ユーザー属性で分けて集計する
- ページ名や定義済みイベントを検索し、実際の製品の語彙で質問に答える
- 保存済みファネルを読み、どこで離脱するかを測る
- 指標の裏にあるセッションを、レイジクリックやデッドクリックといった苛立ちのシグナル付きで取り出す
- 離脱やアラートの背後にある数十件のセッションを読み、パターンを報告する
Fullstoryはクリック・ページ閲覧・エラーを自動で取得するため、イベントを事前に仕込まなくても答えられる質問が多い、とも説明されています。
接続の前に管理者が確認すること
ここが最初のつまずきどころです。Fullstory側の設定が済んでいないと、Claudeからは接続できたように見えて、使えるツールが1つも出ません。
接続前のチェック
- Fullstoryの組織管理者が、設定の「StoryAI Features」でStoryAIをオンにする
- 同じ画面で「Model Context Protocol (MCP)」のトグルをオンにする
- MCPサーバーはベータ版で、通常のサポートSLAの対象外
- 1つのMCP接続は1組織に限られる。複数組織を見るなら接続を分ける
StoryAIを無効にしている組織では、OAuthが完了してサーバーが「connected」と表示されるのにツールが空になります。この症状が出たら、まず管理者に2つのトグルを確かめてもらいます。
データセンターがEUの組織では、別の注意点があります。クライアントがサーバーの宣言するURLと設定のURLの一致を求める場合、Protected resource does not match expected というエラーで弾かれることがあります。そのときは設定のURLを https://api.eu1.fullstory.com/mcp/fullstory にします。米国側のURLは https://api.na1.fullstory.com/mcp/fullstory です。
Claudeに追加する
claude.aiまたはデスクトップアプリでは、Fullstoryのコネクタページから1クリックで認可に進めます。アプリ内から追加するなら次の流れです。
コネクタを追加する流れ
- 1
Customizeを開く
左のサイドバーでCustomizeを選びます。
- 2
Connectorsから探す
ConnectorsでAddを押し、Browse Connectorsに進みます。
- 3
Fullstoryを選んで認可する
Fullstoryを検索してConnect to Claudeを押し、ブラウザでFullstoryにサインインします。
- 4
ツールが見えるか試す
新しい会話で「What Fullstory tools are available?」と尋ねます。
ディレクトリのコネクタが入れるのはMCPサーバーとツールだけです。general-analysis・comparisons・session-review・idea-generation の4つのスキルと、session-context エージェントは含まれません。これらも使いたい場合は、Fullstoryが配布するプラグインをマーケットプレイス経由で入れます。ツール自体はどちらの経路でも同じです。
TeamプランとEnterpriseプランでは、組織のOwnerかAdminが先にプラグインを組織設定で構成しないと、メンバーはインストールできません。また、ディレクトリのコネクタはClaudeアプリ(web)向けで、Claude CodeではFullstoryのプラグインか、MCPサーバーを手動で登録して使います。Claude Codeに入れる場合のMCP設定の考え方はローカルMCPとリモートMCPの選び方が参考になります。
OAuthを避けたい共有ゲートウェイのような構成では、APIキーによる認証も選べます。キーはFullstoryの設定画面から作成し、権限レベルは、MCPサーバーで動く最も低い水準のStandardが推奨されています。クライアント側ではキーを環境変数から読み、Authorizationヘッダーに載せます。キーをファイルに直書きしない形です。
離脱したセッションまで辿る手順
核になるのは、ファネル、離脱セッション、画面の確認という3段階です。Fullstoryのツール名で言うと、次のように対応します。
| 段階 | 使うツール | 得られるもの |
|---|---|---|
| 語彙の確認 | 使うツールdiscover_org_context | 得られるものページ・名前付き要素・定義済みイベントのID |
| ファネル作成 | 使うツールbuild_funnel | 得られるもの順序付きのステップを持つ保存済みファネル |
| 転換率の計算 | 使うツールcompute_funnel | 得られるものステップごとの件数と、前ステップ・ステップ1からの転換率 |
| 離脱セッションの取得 | 使うツールget_funnel_sessions | 得られるもの離脱したセッションとリプレイURL |
| 時系列の確認 | 使うツールget_session_events | 得られるものクリック・遷移・エラー・通信の時系列 |
| 画面の確認 | 使うツールsession_open ほか | 得られるものスクリーンショット、構造の差分 |
1. ファネルを組んで落ちるステップを見る
質問は、製品の言葉でそのまま書きます。ページ名やイベント名はClaudeが discover_org_context で検索して対応づけるため、セレクタを自分で指定する必要はありません。
料金ページを見たあと、カート追加、決済入力、購入完了の順に進むファネルを
作って、直近30日の転換率をステップごとに出してください。
どのステップの落ち込みが大きいかも教えてください。build_funnel が作るファネルは、同じセッション内で同じユーザーが順に行う操作の並びです。集計の既定は一意ユーザー数です。compute_funnel はステップごとの件数、直前ステップからの転換率、ステップ1からの転換率を返します。集計期間は、保存したファネルの時間範囲が常に使われます。期間を変えたいときは update_funnel で直します。
2. 離脱したステップのセッションを取り出す
落ち込みの大きいステップが分かったら、次はそこで止まった人のセッションです。
決済入力のステップで離脱したセッションを5件取り出して、
各セッションで最後に何が起きていたかを時系列でまとめてください。get_funnel_sessions は、ファネルIDと0始まりの completed_step を受け取ります。did_not_complete=true を渡すと、そのステップを完了した人ではなく、離脱した人のセッションが返ります。各結果にはセッションリプレイへの直接URLが付くため、Claudeの要約が怪しいときは、人がそのまま開いて確かめられます。
件数には上限があります。セッションを返すツールは、既定が10件で上限が50件です。何百件ものセッションを一度に読ませる使い方はできません。
3. 画面で何が起きたかを確認する
イベントの時系列だけでは、ユーザーが何を見ていたかは分かりません。そこで get_session_events で時系列を読んだあと、必要なセッションだけを画面レベルで確かめます。
使うのは session_open・session_screenshot・session_get_a11y_tree・session_diff・session_close の5つです。流れは次のとおりです。
session_openにデバイスIDとセッションIDを渡して開き、client_idを受け取る- その
client_idで、気になる時刻のスクリーンショットやアクセシビリティツリーを取る - 2つの時刻の間で、画面の構造に何が変わったかを
session_diffで見る - 終わったら必ず
session_closeで閉じる
セッションを開いたまま閉じ忘れると、サーバー側の資源を握ったままになり、次の session_open が通らなくなることがあります。Claudeに調べさせるときは、「調べ終えたら必ずセッションを閉じる」と指示に入れておくと安全です。
Fullstoryのワークフロー例では、プロモコードの「適用」ボタンでレイジクリックが起きていたケースが紹介されています。画面を比べると、成功のトーストは出ているのに割引額が0ドルのままで、その行が小さな灰色の文字だったことが分かります。時系列だけなら「クリックを繰り返した」で終わる事象が、「成功表示と実際の結果が食い違っている」という具体的な原因候補になる、という例です。
この例の出力は公式の例示であり、自社環境で同じ結果が返るわけではありません。
セグメントや指標で絞り込む
離脱の原因が特定の層に偏っていないかは、セグメントと指標で確かめます。
ログインしていないモバイルユーザーのセグメントを作って、
そのセグメントだけで決済入力の離脱率を出してください。
PCと比べた差も見たいです。build_segment が自然言語の説明からセグメントの定義を作り、build_metric が単一の数値・上位N件・推移のいずれかの形で指標を作ります。compute_metric は、指標を任意のセグメントと期間で実行します。結果にはFullstoryの画面へのリンクが付くため、Claudeの数字とFullstoryの画面を突き合わせられます。get_sessions にセグメントIDか指標IDを渡せば、その条件に合うセッションも取り出せます。
保存の扱いには、Fullstory側の公式ページ同士に食い違いがあります。ツールの一覧では build_segment が「セグメントを保存する」と書かれていますが、FAQでは、ベータ期間中はセグメントや指標をプログラムから保存できず、compute_metric が返すリンクからFullstoryの画面で手動保存する、と説明されています。
どちらが現行の挙動かは、組織や時期で異なる可能性があります。チームで再利用したいセグメントは、会話の終わりにFullstoryの画面で保存されているかを確認しておくと、後から消えて困ることがありません。
上限と制約を先に知っておく
Fullstoryの公式ページが挙げている制約を、運用に影響する順に並べます。
数値で見る上限
取得できるセッション
最大50件
既定は10件
集計の行数
50行
group byの上限
リクエスト
毎秒3回
バーストは20回まで
- 件数: 50行の上限があるため、大量のユーザーIDを書き出す用途には向きません。リストが欲しい場合はFullstoryのAPIなど別の手段になります
- レート: 組織とエンドポイントごとに、毎秒3リクエストです。制限に当たったら、期間を狭めるかセグメントを具体的にします
- 未対応の機能: ダッシュボードやヒートマップはMCPから扱えません。ユーザーの管理や課金、プライバシールールの変更もできません
- 細粒度のアクセス制御: FGACを使う組織はベータの対象外です
- プライバシー: 既存のマスキング設定・除外ルール・要素のブロックはMCPにも適用されます。Claudeがマスクされた入力値を読めるようになるわけではありません
- スケジュール実行: MCPは問い合わせに応えるだけで、定期実行の機能はありません。毎週同じ分析を回したいなら、使っているクライアントのスケジュール実行や自動化ツールに任せる形になります
StoryAIのPremiumを契約している組織では、get_opportunities などで、Fullstoryがあらかじめ順位づけした改善機会も引けます。ただし、これらのツールはPremium限定と明記されています。Premiumでない場合は、discover_groups でその場で苛立ちのシグナルを集計する方法になります。
毎週の確認フローに落とし込む
使い方の型を1つ挙げます。週次のリリースのあと、次の順で3つの質問を投げます。
- 主要ファネルのステップ別転換率を、先週と比べて出させる
- 落ち込んだステップがあれば、離脱セッションを5件ほど取り出させる
- 気になる1件だけ画面を開かせ、変わった要素を報告させる
3つ目の画面確認は、件数の上限とは別に手間とリクエストのかかる作業です。最初の2段階で当たりをつけ、画面を開くのは1〜2件に絞ると、レート制限にも当たりにくくなります。
個人が特定できる情報を含みうるセッションを扱うので、Claudeの会話に貼られた内容の共有範囲には注意が要ります。社内でコネクタを使う範囲を決めるときは、コネクタの権限と監査ログの確認が判断の材料になります。分析結果を月次のレポートにまとめる運用なら、Ahrefsとの月次SEO監査と同じスナップショットの考え方が使えます。