補助金の実績報告と領収書の突合をClaudeで行う — 額の確定審査の手順
実績報告書の経費内訳と領収書・請求書のPDFをClaudeに突き合わせさせ、対象外経費・按分・日付のずれを一覧にして確定額の根拠メモにする手順。適正化法14条・15条を軸に、人が確かめる箇所まで示します。
補助金の事務は、交付決定で終わりません。事業が終わると実績報告書が届き、担当者はその経費内訳を領収書や請求書と突き合わせて、交付すべき額を確定します。
この突合は、行数が多く、ページをまたぎ、地味に時間を取る作業です。Claudeは、実績報告書の経費内訳と添付PDFを並べて読み、対象外の疑いがある経費、按分の不整合、日付の前後を一覧にするところまで下ごしらえできます。額を確定するかどうかを決めるのは、これまでどおり担当職員と決裁権者です。
この記事では、確定審査で見る観点を条文から押さえたうえで、PDFの渡し方、照合表を作るプロンプト、確定額の根拠メモ、人が確かめる箇所までを手順にします。交付要綱そのものの作り方と申請段階の審査は補助金の交付要綱案と審査チェックリストをClaudeで作る手順にあり、ここでは交付後の実績報告を扱います。
額の確定で見るのは、成果の適合と経費の裏づけ
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)は、実績報告と額の確定を14条と15条で定めています。
14条は、補助事業者が事業の完了時に、成果を記載した実績報告書へ書類を添えて報告するよう求めます。15条は、報告を受けた側が書類の審査と必要に応じた現地調査で、成果が交付決定の内容と付された条件に適合するかを調べ、適合すると認めたときに交付すべき額を確定して通知する、という流れです。
この法律の条文は「各省各庁の長」を主語にしているため、国の補助金等の条文です。自治体が単独で出している補助金は、自治体の補助金交付規則や個別の交付要綱が根拠になります。手元の補助金にどの規程が効いているかは、交付決定通知と要綱で先に確かめてください。
突合の作業を観点に分けると、次の3つになります。
突合で見る3つの観点
成果の適合
実績報告書の成果が、交付決定の内容と条件に合っているか。経費の突合の前提になります。
経費の裏づけ
内訳の各行に、領収書・請求書などの証拠があり、金額が一致しているか。
対象経費の範囲
要綱が定める対象経費区分、対象期間、按分の考え方に収まっているか。
Claudeに向くのは、2つ目と3つ目の「行と証拠を機械的に当てる」部分です。1つ目の成果の適合は、事業の中身の判断になるので、人が主に見ます。
材料を揃える: PDFの条件と渡し方
突合に使う材料は、次の4種類です。
| 材料 | 役割 |
|---|---|
| 交付決定通知 | 役割決定額、補助対象経費の区分、条件 |
| 交付要綱・公募要領 | 役割対象外経費、対象期間、按分や証拠書類のルール |
| 実績報告書の経費内訳 | 役割突合される側。行ごとの区分と金額 |
| 領収書・請求書・振込明細のPDF | 役割突合する側。金額・日付・宛名・但書 |
Claudeに読ませるPDFには、APIの仕様上の条件があります。リクエスト全体で32MB、1リクエストあたり600ページが上限で、コンテキストウィンドウが1Mトークン未満のリクエストでは100ページです。パスワードや暗号化のかかったPDFは対象外で、標準的なPDFである必要があります。これはAPI経路の条件で、claude.aiのチャットにアップロードする場合の上限は利用形態によって異なります。数値を決め打ちせず、実際の画面で受け付けられるかを先に試してください。
実績報告の添付書類は、領収書だけで数十枚になることがあります。ページ数が多いときは、経費区分ごとにPDFを分けて何回かに分けて照合するほうが安全です。公式のドキュメントも、密度の高いPDFはページ上限の前にコンテキストを使い切ることがあるとして、分割を勧めています。
PDFは、各ページが画像に変換され、抽出されたテキストが画像と並べて渡されます。スキャンした領収書でも画像として読めますが、文字がかすれていたり、斜めに撮られていたりすると誤読が増えます。ビジョン機能の制限事項として、低品質・回転・200ピクセル未満の小さな画像では、誤りや作り話が出ることがあると明記されています。
経費内訳がExcelで届く場合は、そのままでは渡せません。バイナリ形式のxlsxやdocxはドキュメントブロックで使えないため、PDFかテキスト(CSVなど)に変換してから渡します。
APIで照合する場合のリクエストの形は、次のとおりです。PDFをFiles APIにアップロードしてfile_idで参照すると、リクエストが軽くなります。
FILE_ID=$(curl -sS -X POST https://api.anthropic.com/v1/files \
-H "x-api-key: $ANTHROPIC_API_KEY" \
-H "anthropic-version: 2023-06-01" \
-F "file=@ryoshusho-01.pdf" | jq -r '.id')得られたfile_idは、messagesのcontentに{"type": "document", "source": {"type": "file", "file_id": "..."}}の形で並べます。複数のPDFを続けて並べ、指示のテキストは最後に置きます。公式の性能向上策にも、PDFをテキストより前に置くことが挙がっています。
手順1: 内訳の各行を証拠に当てる照合表を作る
最初の依頼では、判断をさせず、読み取りと突合に限ります。「対象かどうか」の判定は、次の手順に分けます。
照合表を作る流れ
- 1
PDFを区分ごとに渡す
経費区分(例: 機械装置費、外注費)ごとにPDFをまとめ、実績報告書の該当行と一緒に渡します。
- 2
読み取りだけを依頼する
行ごとに、証拠側の金額・日付・宛名・但書を書き出させます。判定はこの段階では求めません。
- 3
差異の列を人が確かめる
差異がある行と、読み取れなかった行から先に、原本のPDFで確認します。
依頼文の例は次のとおりです。
添付は、実績報告書の「機械装置費」の内訳(表)と、その領収書・
請求書のPDFです。次の表を作ってください。
列: 内訳の行番号 / 報告額 / 証拠書類(PDFのページ番号) /
証拠上の金額 / 証拠上の日付 / 宛名 / 但書 / 差異
規則:
- ページ番号は、PDFビューアーに表示される論理ページ番号で書く
- 読み取れない箇所は「判読不能」と書き、推測で埋めない
- 1つの内訳行に複数の証拠がある場合は、行を分けて書く
- 証拠が見つからない内訳行は、「証拠なし」と明記する
- 判定や助言は書かず、事実の読み取りだけを返すページ番号を論理ページ番号で指定させるのは、公式の性能向上策に沿った工夫です。あとで人が原本を開くとき、表の「3ページ目」とPDFビューアーの「3ページ目」が一致します。
「推測で埋めない」「証拠なしと明記」の2行は、突合の信頼性を左右します。これを入れないと、金額が読めない行に、それらしい数字が入ることがあります。
手順2: 要綱の規則を渡して、対象外の疑いを挙げさせる
照合表ができたら、次に要綱の規則を渡して判定の下書きを作らせます。ここで渡す規則は、要綱や公募要領の該当箇所の本文です。Claudeの記憶に頼って「補助金の一般的な対象外経費」を挙げさせないでください。補助金ごとに、対象経費の範囲は違います。
手順1の照合表と、交付要綱の「補助対象経費」「対象外経費」の
条文を渡します。照合表の各行について、次の3区分に分けてください。
A: 要綱の条文に照らして対象と読める(根拠の条番号を書く)
B: 対象外の可能性がある(該当しそうな条文と、疑う理由を書く)
C: 条文だけでは判断できない(人が確かめる点を書く)
条文に書かれていない基準で判断しない。
Bは「対象外と断定」ではなく「疑い」として書く。出力のBとCが、人が先に見る箇所です。Aの行も、条番号が実際に要綱にあるかを抜き取りで確かめます。条文番号の取り違えを点検する方法は、先の交付要綱の記事で扱っています。
手順3: 按分と日付のずれを別に調べる
按分と日付は、行を単独で見ても分からないため、観点を分けて再度依頼します。
按分の点検では、共通経費(光熱費、事務所の賃料、複数の事業にまたがる人件費など)を、補助事業分に切り分けた根拠を確かめます。
- 按分率が、実績報告書の別の箇所(従事時間の記録、床面積など)と整合しているか
- 同じ請求書が、補助事業と補助事業外の両方に計上されていないか
- 按分後の金額の合計が、請求書の総額を超えていないか
日付の点検では、要綱が定める対象期間と、証拠書類の日付を並べます。
- 発注日・納品日・請求日・支払日が、対象期間の内側に収まっているか
- 支払日が納品日より前(前払い)の行に、要綱上の取扱いの定めがあるか
- 領収書の日付が、請求書より前に来る行がないか
照合表の各行について、次の2点を調べて一覧にしてください。
1. 同じ請求書番号・同じ金額が複数の行に出ていないか
2. 日付が「対象期間: 令和X年X月X日〜X月X日」の外にある行、
または発注→納品→請求→支払の順が崩れている行
該当しない行は出力しない。この依頼は、行を横断して探す作業なので、Claudeの得意な範囲です。ただし、請求書番号や金額の読み取りが手順1で誤っていると、ここでも誤りが連鎖します。手順1の差異の列を確かめたあとに実行します。
確定額の根拠メモにまとめる
突合の結果は、確定額の根拠として残る文書にします。Claudeには、人が確かめた結果を渡し、メモの下書きを作らせます。
メモに入れる項目は、次のとおりです。
- 交付決定額と、実績報告書の報告額
- 対象と認めた経費の合計(区分ごと)
- 対象外または減額とした行と、その理由(要綱の条番号つき)
- 確認した証拠書類の一覧(ページ番号つき)
- 現地調査を行った場合の日付と所見
減額が生じたときの確定額は、対象と認めた経費に補助率を掛けた額と交付決定額のうち低いほうを基本に、要綱の算定方法で決まります。算定方法は要綱ごとに違うため、自治体の要綱で確かめてください。計算は人が確かめます。Claudeに算術を任せると、桁や行の取りこぼしが起こることがあります。合計は、表計算ソフトの式と照らして確定します。
人が確かめること
突合の下ごしらえをClaudeに任せても、次の3点は人の仕事です。
- 原本との照合: 差異の行と判読不能の行は、必ず原本のPDFを開いて見ます。スキャン品質が低い書類は、特に優先します
- 現地調査の要否: 適正化法15条は、書類の審査に加えて必要に応じた現地調査を想定しています。書類上は整合していても、事業の実在や成果の確認は、書類の突合では代わりになりません
- 確定の決裁: 額の確定は、通知を伴う行政の判断です。Claudeの出力は下書きで、決裁の根拠は職員が確認した事実に置きます
個人情報への配慮も、手順の前に決めておきます。領収書や請求書には、個人の氏名や住所、口座の情報が含まれることがあります。外部のサービスへ渡してよい情報の範囲は、個人情報の目的外利用・提供の可否をClaudeで判断表にするで扱った観点で、自治体の規程に照らして先に確かめてください。
減額・返還に進むときの条文
突合の結果、対象外の経費が見つかると、確定額が交付決定額より小さくなることがあります。このとき、すでに交付されている額が確定額を超えていれば、返還の問題になります。
適正化法18条2項は、交付すべき額を確定した場合に、すでにその額をこえる補助金等が交付されているときは、期限を定めて返還を命じなければならない、と定めています。また17条は、補助金等の他の用途への使用や条件違反があるときの交付決定の取消しを定め、同条3項により、額の確定があった後にも適用されます。
確定後に新たな事実が出たときでも取消しの余地が残るため、根拠メモには、確認した範囲と日付を残しておくことが、後の説明に役立ちます。受け取る側がこの返還や減額をどう経理処理するかは、補助金の経理処理と圧縮記帳をClaudeで整理する手順が受領者の視点で扱っています。
まとめ
実績報告の確定審査でClaudeに任せやすいのは、経費内訳の各行を領収書・請求書に当てる読み取りと、按分・日付・二重計上の横断チェックです。対象かどうかの判断は、要綱の条文を渡したうえで「疑い」の列として出させ、断定させません。
PDFの条件(32MB、100〜600ページ)と、スキャン品質による誤読の可能性を前提に、区分ごとに分けて照合し、差異と判読不能の行から原本で確かめてください。額の確定と通知は、職員の判断として残ります。