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個人情報の目的外利用・提供の可否をClaudeで判断表にする — 自治体の照会と法69条

個人情報の目的外利用・提供の可否をClaudeで判断表にする — 自治体の照会と法69条

自治体が保有個人情報を目的外に使う・他機関へ出す照会を、個人情報保護法69条2項の各号に当てはめる判断表をClaudeのProjectsに置き、条文番号つきで下書きさせて担当者が決める手順です。

他部署や他の自治体から「この住民の情報を出してほしい」という照会が届いたとき、窓口の担当者が最初に迷うのは、出してよい根拠がどこにあるかです。根拠は個人情報保護法69条にあります。条文の構造は単純で、照会ごとに変わるのは「どの号に当たると言えるか」の材料だけです。

そこで、69条の読み筋を判断表にしてClaudeのProjectsに置き、照会文を受けたら条文番号つきの当てはめ案を出させます。結論を決めるのは担当者です。この記事は、判断表の作り方、照会1件の回し方、Claudeに任せない線引きの順で書きます。

69条は「原則禁止、例外は2項の4類型」という形をしている

自治体の機関が保有する個人情報は、個人情報保護法の第5章(行政機関等の義務等)の対象です。「行政機関等」には、議会を除く地方公共団体の機関が含まれます(第2条第11項第2号)。

69条の骨格は次のとおりです。

  • 第1項: 法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、または提供してはならない
  • 第2項: 柱書の但し書きを前提に、次の4つのいずれかに該当すると認めるときは、利用目的以外の目的でも自ら利用し、または提供できる
  • 第3項: 第2項があっても、他の法令による利用・提供の制限は残る
  • 第4項: 個人の権利利益の保護に特に必要があるときは、内部での目的外利用を特定の部局・職員に限る

判断表の列は、この条文をそのまま分解すると作れます。

判断の段階条文問いの中身
入口条文69条1項問いの中身照会は「法令に基づく」ものか
例外1号条文69条2項1号問いの中身本人の同意があるか、本人に提供するのか
例外2号条文69条2項2号問いの中身自分の組織の内部で使う話か
例外3号条文69条2項3号問いの中身他の行政機関等へ出す話か
例外4号条文69条2項4号問いの中身統計・学術研究、本人の利益、特別の理由のどれか
歯止め条文69条2項但し書き問いの中身本人または第三者の権利利益を不当に侵害するおそれはないか
外側の制限条文69条3項問いの中身他の法令が利用や提供を制限していないか

2項柱書は許容の形で書かれています。どれかの号に当たれば提供が義務になるのではなく、当たるなら提供してよい、という意味です。号に当たることと、出すと決めることは別の判断です。この区別は、後でClaudeへの指示にも入れます。

号ごとに見る当てはめの材料

各号が要求する材料は違います。照会文を読んで足りないものを洗い出せるように、号ごとの要件を表にしておきます。

号条文が挙げる要件照会文から拾う材料
1号条文が挙げる要件本人の同意があるとき、または本人に提供するとき照会文から拾う材料同意書の有無、同意の範囲、提供先が本人か
2号条文が挙げる要件法令の定める所掌事務・業務の遂行に必要な限度で内部利用し、利用に相当の理由がある照会文から拾う材料利用する部署、その事務の根拠、必要な範囲
3号条文が挙げる要件提供を受ける者が、法令の定める事務・業務の遂行に必要な限度で利用し、利用に相当の理由がある照会文から拾う材料照会元の機関、その事務の根拠法令、利用範囲
4号条文が挙げる要件専ら統計の作成・学術研究、本人以外への提供が明らかに本人の利益、その他の特別の理由照会文から拾う材料目的の説明、本人の利益になる事情

読み落としやすい点が3つあります。

1つ目は、2号と3号の「法令」に条例が含まれることです。61条第1項のかっこ書きが、69条2項2号・3号の「法令」には条例を含むと定めています。自治体の事務の根拠は、法律だけでなく自団体や相手方の条例にもあります。

2つ目は、3号の提供先に議会が入ることです。2条第11項第2号は、議会を除く地方公共団体の機関を行政機関等としていますが、第5章の規定のうちでは、そのかっこ書きが69条2項3号だけを議会を除く扱いの例外にしています。69条2項3号の「地方公共団体の機関」には、議会が含まれます。議会からの照会を、3号の枠で検討する余地があるということです。

3つ目は、3号が「相当の理由」、4号が「特別の理由」と、語を使い分けていることです。4号の「その他」は、統計・学術研究・本人の利益のいずれにも当てはまらない場合の受け皿になっています。語が違う以上、3号の感覚で4号を当てはめると甘くなりがちです。

判断表と指示文をProjectsに置く

Projectsは、ナレッジに入れた資料と指示を、そのProject内のすべてのチャットで使えるようにする仕組みです。ナレッジには文書・テキスト・コードをアップロードでき、指示は「Set project instructions」から保存します。

置くものは、誰の照会でも変わらない共通部分に限ります。

  • 69条から71条の条文(e-Govの法令本文から該当条を抜き出したテキスト)
  • 2条第11項と61条第1項のかっこ書き(行政機関等の範囲と「法令」に条例を含む旨)
  • 上の判断表と、自団体の個人情報の保護に関する条例・内部規程の関係条文
  • 回答案の雛形(提供する/しない/保留の3種)

指示文は、Claudeに結論を言わせない設計にします。次のように書いておくと、出力が「候補」と「不足」の形に揃います。

あなたは自治体職員の補助者です。照会文を読み、個人情報保護法69条の
どの号に当たり得るかの「候補」と、判断に不足している材料を出します。
ルール:
- 条文番号は、ナレッジに入れた条文テキストにある番号だけを使う。
- 号ごとに「要件」「照会文で確認できた事実」「不足」を分けて書く。
- 「提供してよい」「提供できない」と結論を言い切らない。
  結論欄は「候補:○号」「保留:不足○点」のどちらかにする。
- 69条2項但し書きと3項(他法令の制限)は毎回必ず確認欄を設ける。
- 照会文に根拠法令の条名がなければ、推測で補わず「不足」に書く。

「推測で補わない」の1行が重要です。照会元の根拠法令を、Claudeが知識から補うと、存在しない条文や古い条文を挙げるおそれがあります。条名は照会文に書かれているか、担当者が条文を確認して添えたものだけを根拠にします。

照会1件の回し方

Projectsの中に新しいチャットを1つ作り、照会1件につき1チャットで進めます。

手順

照会を受けてから回答案までの流れ

  1. 1

    個人情報を落とした照会文を貼る

    氏名、住所、個人番号などは伏せ字にします。当てはめに必要なのは、誰が(どの機関が)、何の事務のために、どの項目を求めているかです。

  2. 2

    Claudeに号ごとの当てはめ案を出させる

    指示文どおり、要件、確認できた事実、不足の3欄で出させます。

  3. 3

    不足を担当者が埋める

    照会元に根拠条文を問い合わせる、同意書の有無を台帳で確かめる、条例の条文を読む、といった作業は担当者が行います。

  4. 4

    埋めた材料を貼って再度当てはめる

    同じチャットで続けると、前の不足と今回の補足がつながります。

  5. 5

    結論欄を担当者が書き、決裁に回す

    Claudeの案は下書きとして扱い、結論と理由は担当者の言葉で書き直します。

出力の形の例

次の表は、他市の担当課から手当の支給要否の確認のために転出時期の提供を求められた、という想定の照会に対して、指示文に沿って返ってくる形の一例です。実際の出力ではなく、判断表の使い方を示す例示です。

号要件照会文で確認できた事実不足
69条2項3号要件提供先が法令(条例を含む)の定める事務の遂行に必要な限度で利用し、相当の理由がある照会文で確認できた事実照会元は他の地方公共団体の担当課。事務は手当の支給要否の確認不足根拠法令の条名、求める項目が転出時期に限られる理由
69条2項1号要件本人の同意、または本人への提供照会文で確認できた事実同意の記載なし不足同意書の有無
69条2項但し書き要件本人または第三者の権利利益を不当に侵害するおそれ照会文で確認できた事実判断材料なし不足提供項目の範囲、DV等支援措置の対象者に当たらないか
69条3項要件他の法令による制限照会文で確認できた事実判断材料なし不足当該情報に特別な制限を課す法令・条例の有無

結論欄は「候補:3号。保留:不足3点」となります。この形なら、担当者は不足の3点を埋める作業から始められます。

つまずきやすい4つの場面

「法令に基づく」と「3号」を混ぜる

69条1項は「法令に基づく場合」を、2項の各号とは別に置いています。条文に定義はなく、提供そのものを求める法令がある場合を指すと解されるのが一般的ですが、個別の当てはめは条文と所管のガイドラインで確かめます。照会元の事務に根拠法令があるだけの場合は、2項3号の枠で検討する余地があります。照会文が「法令に基づく照会です」と書いていても、その法令の条文が提供を求める内容かどうかは、条文を読んで確かめます。

同意の範囲が目的外利用に及んでいない

1号の同意は、利用目的以外の目的のために利用・提供することへの同意です。申請書の同意欄が、手続の遂行上必要な範囲で自団体が使うことへの同意にとどまっているなら、他機関への提供までは含まれていないかもしれません。同意書の文言をそのまま貼って、何に同意しているかを読ませるのが確実です。

提供先の事務と求める項目が釣り合っていない

3号は、提供先が「必要な限度で」利用することを求めています。事務の根拠が正しくても、求める項目が必要な範囲を超えているなら、その超えた部分は3号で説明できません。項目ごとに「この事務にこの項目が要る理由」を照会元に確かめます。

内部利用を2号で済ませ、4項の絞り込みを忘れる

内部の別部署で使う場合は2号の検討になります。個人の権利利益の保護のために特に必要があると認めるときは、内部利用を特定の部局・職員に限るのが4項です。判断表に4項の確認欄を置いておけば、利用を認めたあとの運用まで考える流れになります。

提供した後に残る条文

提供して終わりではありません。判断表には、提供後の欄も作っておきます。

  • 70条: 69条2項3号または4号に基づいて提供するとき、必要があると認めるなら、提供を受ける者に利用の目的・方法の制限や、漏えい防止などの措置を求める。1号(同意・本人への提供)は70条の対象に含まれていません
  • 71条: 提供先が外国にある第三者の場合は、法令に基づく場合と69条2項4号に当たる場合を除き、本人の同意などの手当てが別に必要になる
  • 98条: 69条1項・2項に違反して利用または提供されていると思う本人は、利用の停止、消去、提供の停止を請求できる

最後の98条は、判断の誤りが請求として返ってくる経路があることを示します。判断の理由を書いて残しておくことは、この請求を受けたときの備えにもなります。罰則も別にあり、正当な理由なく個人の秘密に属する事項が記録された個人情報ファイルを提供した職員等は176条の対象、業務で知り得た保有個人情報を不正な利益を図る目的で提供した場合は180条の対象です。

Claudeに任せない線引き

Claudeに任せるのは、条文の要件を照会文に当てはめて、確認できた事実と不足を整理する作業までです。次の4点は担当者が行います。

  • 照会元の根拠法令と、自団体の条例の条文を、条文そのもので確認する
  • 「相当の理由」「特別の理由」「不当に侵害するおそれ」を満たすかの評価
  • 提供するかどうかの結論と、決裁に付ける理由の文章
  • 照会文に含まれる個人情報の取扱い(伏せ字にしてから貼る)

評価語の判断を任せない理由は、これらが条文の中で最も幅のある言葉だからです。号に当たるかの形式的な照合はClaudeの案で足りますが、「相当」「特別」「不当」の線は、事案の事情を知る担当者と決裁者が引きます。

Projectsを共有する場合の注意もあります。Team・Enterpriseプランでは、Projectを特定のメンバーや組織全体に共有でき、「Can view」の権限でも内容、ナレッジ、指示を閲覧できます。個別の照会文や回答案をナレッジに入れたままにすると、共有先全員から見えます。ナレッジには共通部分だけを置き、個別の照会は各チャットに限るのは、この性質のためです。

自治体職員が庁内文書の下書きにClaudeを使うときの入力の線引きは自治体の生成AIガイドラインとClaudeに、Claudeに入れた文書が行政文書にあたるかはClaudeに入れた文書は行政文書かにあります。個人情報を含むプロンプト入力の法的な位置づけは個人情報を含むプロンプト入力は第三者提供にあたるかで整理しています。判断表をProjectsに置く運用の型は、開示請求を受ける側の保有個人データの開示請求対応の判断表と同じです。

判断表を回し続けるために

照会は似た型が繰り返し届きます。決裁まで進んだ案件は、伏せ字にした照会文、号の当てはめ、結論の理由をひとまとめにして、共通ナレッジの「事例集」に加えていけます。次の照会で、Claudeが過去の当てはめと見比べながら不足を挙げられるようになります。事例集に加えるのは、個人が特定できる情報を除いた形に限ります。

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