インフルエンサー契約の依頼書をClaudeでステマ規制に合わせる方法
インフルエンサー起用の依頼書に入れる表示指示・投稿前確認・修正依頼・二次利用・過去投稿の条項を、ステマ規制の運用基準に沿ってClaudeで点検する手順です。
依頼書に「広告表示の約束」を書く理由は、広告主だけが規制の対象だから
ステマ規制(景品表示法に基づく告示)が向き合う相手は、商品やサービスを供給する広告主です。消費者庁のQ&A Q1によれば、広告主から依頼を受けて投稿するインフルエンサーやアフィリエイターは規制の対象外になります。
つまり、投稿に「PR」が付いていなかったときに措置命令を受けるのは広告主側です。Q&A Q2は、違反が認められたときに誤認の排除や再発防止策の実施などを命じる措置命令が出ると説明しています。投稿者が表記を忘れても、広告主の責任になる構造です。
だから依頼書には、表示を「お願い」で済ませず、何を・どこに・いつまでに付けるかを契約の約束として書いておく意味があります。この記事では、その条項の洗い出しと文面づくりにClaudeを使う手順を扱います。投稿が出たあとの表記漏れの点検はClaudeでステマ規制のPR表記漏れをチェックする方法にまとめています。
先に決める分岐: その投稿は「依頼した投稿」か「自主投稿」か
条項を書く前に、依頼書が対象にする投稿が「事業者の表示」に当たるかどうかを決めます。運用基準(令和5年3月28日に消費者庁長官が決定)は、事業者が表示内容の決定に関与したと認められるかで判断するとしています。
関与の有無は、依頼書そのものが証拠になります。運用基準が総合判断の材料に挙げているのは、次の3点です。
- 事業者と第三者の具体的なやり取りの態様や内容(メール、口頭、送付状など)
- 事業者が提供する対価の内容と、その主な提供理由(宣伝する目的かどうか)
- 過去に対価を提供した関係がどの程度続いたか、今後どの程度続くか
対価は金銭や物品に限りません。イベント招待のような経済上の利益も、対価性があれば含まれます。
報酬を払って個別に感想の投稿を頼むなら、投稿内容を指定しなくても「事業者の表示」に当たる可能性が高くなります。そこで依頼書は、依頼した投稿をすべて表示対象として扱う前提で組むほうが安全側です。
一方、商品を無償で渡して投稿を頼んでも、受け取った人が自主的な意思で内容を決めた投稿は、運用基準上は事業者の表示に当たらないとされる場合があります。ただし判断は個別事情で変わります。「無償提供+投稿のお願い」の送付状を使う場合は、次の2択のどちらで運用するかを先に決め、文面を分けておきます。
| 運用 | 送付状・依頼書の書き方 | 表示 |
|---|---|---|
| 依頼投稿として扱う | 送付状・依頼書の書き方投稿を依頼し、期日や条件を書く | 表示「PR」等の表示を契約で義務づける |
| 自由投稿として扱う | 送付状・依頼書の書き方内容は受け取った人が決めると明記し、方針や文言の指定をしない | 表示運用基準上は不要になりうるが、個別事情で変わる |
後者を選ぶ場合は、送付状の内容と、その後のやり取りの記録を残します。「次の取引も考えている」と匂わせる言動は、自主的な意思による投稿と認められない方向に働くと運用基準が例示しているからです。
依頼書に入れる5つの条項
運用基準とQ&Aから、依頼書に落とし込める論点は次の5つです。各条項の下にある根拠は消費者庁の資料に書かれた内容で、文面の案は編集上の設計です。
依頼書に置く条項と根拠
1. 広告である旨の表示
「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」の用語、または「A社から商品の提供を受けて投稿している」のような文章で、表示内容全体から事業者の表示と分かるようにします。
2. 投稿前の確認
投稿案を事前に提出してもらい、表示の有無と位置、事実と異なる表現がないかを確認します。
3. 修正依頼と反映期限
確認で見つかった点の修正を依頼し、反映の期限と投稿日の扱いを決めます。
4. 二次利用
自社サイトへの転載や広告素材への利用は、事業者の依頼による投稿だと分かる表示を条件にします。
5. 過去投稿・契約終了後
契約終了後も投稿が残る間の表記の追加や削除に、協力してもらう約束を置きます。
条項1: 広告である旨の表示を「用語・位置・持続」で指定する
表示の書き方を「適切に表示すること」で止めると、投稿者によって解釈がぶれます。運用基準が「明瞭でない」例として挙げる型を、そのまま禁止事項に変えると指定しやすくなります。
- 末尾に置く、周囲の文字より小さくする、薄い色にする、長文に混ぜる
- 大量のハッシュタグの中に埋もれさせる
- 冒頭に「広告」と書きながら、文中で「第三者として感想を記載しています」と書くような矛盾した表示
- 動画の冒頭だけに表示する。長時間の動画では、冒頭以外の中間や末尾にだけ表示する場合も同じ扱いです
Q&A Q14は、本文でなくツリー(リプライ)にだけ「広告」等を書く方法は、気付かれないおそれがあり明瞭とはいえない場合が多いと説明しています。動画についてのQ&A Q15は、画面上に常に「広告」と表示するなど、動画全体を通して明瞭になる方法が望ましいとしています。依頼書では、投稿の種類ごとに置き場所を決めます。
用語は、運用基準が挙げる4語に限る必要はありません。Q&A Q11は、表示内容全体から明瞭であれば他の用語も認められると説明しています。ただし、「私は○○社の社員です」のような所属の明示だけでは、事業者の表示だと明瞭とはいえないと考えられています(Q&A Q12)。依頼書で語を絞っておくほうが、確認作業が簡単です。
条項2: 投稿前の確認は「何を見るか」を限定する
運用基準に、投稿前の確認手順を求める定めは載っていません。確認フローは、広告主が明瞭性を確保するために自分で設計する部分です。
確認項目は表示の有無と位置・用語に絞り、投稿者の感想そのものに口を出す形にしません。運用基準は、事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があるかを見ます。Q&A Q6が示すとおり、口コミの評価として「星5」を条件にすれば事業者が内容を決めたことになります。依頼書に「好意的な内容とすること」と書き込むと、表示対象であることがいっそう明確になる一方、投稿者の自由な感想という前提とは両立しません。依頼投稿として扱うと決めた以上は表示を必須にしたうえで、内容の確認は事実誤認の防止という目的に限ります。
事実と異なる性能の表現は、ステマの問題とは別に、優良誤認など他の不当表示にも当たりえます。運用基準は、告示の対象となる表示が他の告示に該当するときは、それらが景品表示法第5条違反になるとしています。確認項目に入れるべき性能表現の線引きは、景品表示法の表示チェックはClaudeでどこまでできるかで扱っています。
条項3: 修正依頼は期限と投稿日への影響まで書く
修正依頼の条項は、依頼の手段と反映の期限、反映されなかったときの扱いの3点を決めます。
- 修正依頼は書面(メールやチャット)で行い、日時と内容を残す
- 乙(投稿者)は修正依頼を受けた日から何営業日以内に反映する
- 反映が間に合わない場合は、公開を延期するか、表示だけ先に直す
表示の抜けは、公開後に気付いても修正で間に合います。ただし、公開から修正までの間も投稿は表示され続けます。修正の期限を「できるだけ早く」とせず、日数で書いておく意味はここにあります。
条項4: 二次利用は「お客様の声」にしない
依頼して書いてもらった投稿を、自社サイトの「お客様の声」に転載するのは適当ではありません。Q&A Q16は、「お客様の声」は顧客の自主的な意思による感想と理解されるためだと説明しています。掲載する場合は、自社が依頼したインフルエンサーの投稿であることが、サイトを見た消費者に明瞭な形で表示しなければなりません。
運用基準には、その表示の文例として「弊社から○○先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています」が挙がっています。依頼書では二次利用の範囲(自社サイト、広告バナー、店頭など)と、転載時に付ける表示を書いておきます。
条項5: 過去投稿と契約終了後の協力義務
Q&A Q20は、令和5年10月1日の施行前に行った事業者の表示にあたる投稿が、施行後も表示され続けていれば、明瞭でない限り行政処分の対象となる可能性があると説明しています。契約が終わっても、投稿は残ります。
そこで依頼書には、契約終了後も投稿が公開されている間は、広告主からの表記追加や削除の依頼に協力してもらう条項を置きます。依頼先が複数のインフルエンサーにまたがるなら、投稿URLの一覧表を契約の別紙にして、管理の基点にします。
再委託と代理投稿の扱い
運用基準は、販売促進のための表示を事業者が他の者に指示して行わせる場合も、事業者の表示に当たりうるとしています。アフィリエイターに委託して表示させる場合も、同じ整理の中で例示されています。
代理店やマネジメント会社が間に入ると、投稿者に表示の約束が届かないことがあります。依頼書には、次の2点を入れておきます。
- 投稿者が第三者に投稿を再委託、または代理投稿させるときは、事前の承諾を必要とする
- 再委託先にも、広告主と同じ表示の約束を負わせる
Claudeで条項を洗い出し、依頼書を点検する手順
Claudeに任せるのは、資料に基づく条項の洗い出しと、依頼書案との照合です。契約書として仕上げる判断や、個別の事情への当てはめは人が行います。
依頼書づくりの進め方
- 1
運用基準とQ&Aを根拠資料として渡す
消費者庁の運用基準とQ&Aの本文を、Claudeのプロジェクトや会話に貼ります。根拠を資料に限らせるための準備です。
- 2
起用の事実関係を書き出す
対価の種類、提供の理由、過去の取引、媒体、二次利用の予定を箇条書きにします。
- 3
条項の骨子をClaudeに出させる
下のプロンプトで、5つの条項について依頼書に書くべき論点と根拠の位置を出させます。
- 4
手元の依頼書案を照合させる
既存の依頼書案を貼り、条項の抜けと、曖昧な表現を指摘させます。
- 5
弁護士・法務に回す前提で確定する
Claudeの案を、契約書として整える段階は人が引き取ります。
条項の骨子を出させるプロンプト
添付した消費者庁の運用基準とステルスマーケティングに関するQ&Aだけを
根拠にしてください。次の起用案について、依頼書に入れるべき条項の論点を
「表示」「投稿前確認」「修正依頼」「二次利用」「過去投稿・契約終了後」
「再委託」の6項目で整理してください。
【起用案】
- 媒体: (例: Instagramのリール、YouTube)
- 対価: (例: 報酬10万円+商品提供)
- 過去の取引: (例: 今回が初回、来期も依頼する可能性あり)
- 二次利用: (例: 自社サイトに転載、広告配信に使用)
出力形式:
1. 項目ごとの論点(1〜3行)
2. 根拠にした資料の箇所(運用基準の章・Q&AのQ番号)
3. 資料に設例がなく、人の判断が必要な点
資料にない内容を補って断定しないでください。出力の「3」が空にならないかを見てください。設例のない領域でも文章が滑らかに出てくるのは、Claudeが資料の外から補っているサインです。
依頼書案を照合するプロンプト
次の依頼書案の条項を、添付の運用基準とQ&Aに照らして点検してください。
【依頼書案】
(ここに全文を貼る)
確認する観点:
- 広告である旨の表示が、用語・位置・持続(動画は全編か)まで特定されているか
- 「適切に」「できるだけ早く」など、解釈が分かれる書き方が残っていないか
- 運用基準が「明瞭でない」例として挙げる型(末尾、小さい文字、
ハッシュタグへの埋没、動画冒頭のみ)を禁止できているか
- 二次利用で「お客様の声」として使う余地が残っていないか
- 再委託・代理投稿の承諾が定まっているか
- 契約終了後の表記追加・削除への協力義務があるか
出力形式: 観点ごとに「記載あり/不足/曖昧」と該当条文、修正案の方向性。
修正案は条文の完成形でなく、論点の指摘に留めてください。最後の1行で、完成形の条文を出させない設計にしています。条文までClaudeに書かせると、断定的な文面ができやすく、確認の対象が増えるためです。
条項の文面で起きやすい失敗
文面が整って見えても、指定が緩いと現場で表示が抜けます。書き換えの例を示します。
表示条項の書き換え例(文面は編集上の設計案)
曖昧な書き方
乙は、本件投稿が広告であることが分かるよう適切に表示する。
用語・位置・持続を指定した書き方
乙は、本件投稿の本文の冒頭に「PR」と記載する。動画の場合は、画面上に「PR」を常時表示する。ハッシュタグの中に埋もれさせない。
上の「After」は条文の案であり、消費者庁が定めた文言ではありません。実際の条項は、媒体と起用の実態に合わせ、契約実務に詳しい人が確定します。
落とし穴
投稿前確認と修正依頼が、内容の指示に膨らむ
確認の段階で表現の言い換えを細かく求めるうち、事業者が投稿内容を決定した形になることがあります。依頼投稿として表示を付ける前提であれば、すぐに違反になるわけではありません。ただし、投稿者の自主的な感想として扱いたい場合は、その前提が崩れます。確認項目を表示と事実関係に絞っておくと、運用が崩れにくくなります。
Claudeの出力を依頼書に反映するときに人が決めること
Claudeの出力は、渡した事実関係と資料に基づく整理であり、法的な結論ではありません。消費者庁の判断も、やり取りの内容、対価、関係性の継続といった個別事情で変わります。
人が決めるのは次の3点です。
- 今回の起用を依頼投稿と自由投稿のどちらで扱うか
- 修正依頼の範囲を、表示と事実関係にどこまで絞るか
- 二次利用の範囲と、そのときの表示の文面
契約書の形に整える段階では、秘密情報の扱いも決まります。未発表の商品情報を投稿者に渡すなら、秘密保持の取り決めが要ります。契約と設定の確認順はコンサルがClaudeに顧客資料を渡す前のNDA点検表が参考になります。依頼書を業務委託契約の形で結ぶ場合、指示の出し方が労務の指揮命令と混ざらないかは別の論点です。点検の手順は業務委託の偽装請負をClaudeで点検で扱っています。
まとめ
ステマ規制の責任は広告主にあるため、投稿者の自覚に任せず、依頼書で表示の用語・位置・持続を指定しておくのが基本です。Claudeには根拠資料と起用の事実関係を渡して条項の抜けを洗い出させ、依頼投稿として扱うかどうかの線引きと契約文面の確定は人が担います。