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Claudeを日本から使う提供経路 — 直接契約とBedrock/Vertexの違い

Claudeを日本から使う提供経路 — 直接契約とBedrock/Vertexの違い

日本企業がClaudeを導入する経路は直接契約だけではありません。Bedrock・Vertex・Foundry経由の違いを、データの保存場所・ネットワーク・調達の3点で比較します。

日本企業がClaudeを使う経路は、Anthropicとの直接契約だけではありません。AWS Bedrock、GCP Vertex AI、Microsoft Foundryという3つのクラウド経由の経路があり、それぞれ運用主体も請求方法もデータの置き場所も異なります。どれを選ぶかは、情シスや調達担当にとって単なる契約手続きの違いではなく、データ所在・ネットワーク境界・既存のクラウド契約との整合という実務判断です。この記事では5つの経路を、日本(APAC)から使う前提で比較します。

Claudeを日本から使う5つの経路

Claudeへのアクセス経路は、運用主体で大きく2つに分かれます。1つはAnthropicが直接運用する経路で、直接契約とClaude Platform on AWSがこれにあたります。もう1つはクラウド事業者が自社基盤の一部としてClaudeを提供する経路で、Bedrock・Vertex・Foundryがこちらです。

経路運用主体請求APAC(日本含む)対応
直接契約(Claude API)運用主体Anthropic請求Anthropicへの直接請求APAC(日本含む)対応利用自体は可能。ただしデータ保存は米国限定(後述)
Claude Platform on AWS運用主体Anthropic請求AWS Marketplace経由APAC(日本含む)対応直接契約と同じ制約
Amazon Bedrock運用主体AWS請求AWSへの請求に統合APAC(日本含む)対応対応済み
GCP Vertex AI運用主体Google Cloud請求Google Cloudへの請求に統合APAC(日本含む)対応対応済み
Microsoft Foundry運用主体Microsoft請求Azureへの請求に統合APAC(日本含む)対応2026年内に対応予定

Claude Platform on AWSは名前に反して「AWSが運用する経路」ではなく、Anthropicが運用する経路です。inference_geoパラメータも直接契約と同じく適用対象になっており、この点は公式ドキュメントで確認できます。請求はAWS Marketplace経由になりますが、購入・請求の仕組みの詳細はAnthropic側の該当ページで確認するのが確実です。モデルの中身や挙動は直接契約とほぼ同一です。Bedrockとの違いはClaude Platform on AWSの解説記事で扱っています。

こうした経路の使い分けは、金融・医療・ライフサイエンス・行政・法務といった規制業種でとくに意識されます。Anthropicが公表している事例はその規模を物語ります。ノルウェーの政府系ファンド運用機関Norges Bank Investment Managementは、1.7兆ドル規模の資産運用業務にClaudeを組み込みました。欧州議会はAWS Bedrock経由で、210万件のアーカイブ文書を扱えるようにしています。どの経路を選ぶかが、業務データの扱い方そのものを左右する規模の意思決定になり得ることがうかがえます。

データの保存場所は経路によって変わる

ここが最も見落とされやすい点です。直接契約のワークスペースジオ(データの保存地域)は、現状「us」しか選べません。Anthropicの公式ドキュメントは、推論を実行する地域を指定するinference_geoパラメータと、データを保存する地域を指定するワークスペースジオを分けて管理しています。後者、つまり保存地域の側は、米国以外の選択肢がまだ用意されていません。

一方、Bedrock・Vertex経由では事情が異なります。Anthropicの地域コンプライアンスページは、AWS Bedrock・GCP Vertex・Microsoft Foundry経由での地域データレジデンシーを案内しています。対象地域にはアジア太平洋地域(日本・韓国・シンガポール・インド・オーストラリアを含む)も含まれます。実際にAPAC欄を見ると、Bedrock・Vertexは対応済み、Foundryのみ「2026年内に対応予定」と表示されています。

Bedrock・Vertexでは、推論が実行される地域もエンドポイントURLやインファレンスプロファイルで決まる仕組みです。直接契約のようにinference_geoパラメータをリクエストごとに切り替える発想ではなく、契約時点でリージョンを固定する形に近くなります。

ネットワークと認証方式の違い

直接契約はAnthropicのAPIエンドポイントへAPIキーで認証します。既存のネットワーク境界に、新しく1つの外部ホストへの許可を追加する形です。

Bedrock・Vertex経由は違います。認証はAWS IAMやGoogle CloudのIAMに統合され、通信も既存のVPCやプロジェクトの境界内で完結します。すでにAWSやGCPで厳格なネットワーク管理をしている情シスにとっては、新しい許可リストを増やさずに済むという実務上の利点になります。Claude Codeでの具体的な認証設定はAmazon BedrockでClaudeを使う設定ガイドにまとめています。

調達・請求の違いが選定を左右する

Bedrock経由の利用は、AWS Marketplaceのサブスクリプションという形を取ります。実際の設定では、aws-marketplace:Subscribe権限を持つIAMポリシーを用意し、Bedrockの呼び出し経由でマーケットプレイスの購読を許可する構成になります。これはつまり、既存のAWS契約の中でClaudeの利用料を精算できるということです。新たにAnthropicとの契約・与信審査・請求書払いの調整を通す必要がありません。

Vertex AI経由も同様に、既存のGoogle Cloud契約に統合されます。Enterprise Agreement(EA)を結んでいる企業なら、そのコミット消化にClaudeの利用料を充てられる場合があります。

料金体系も経路によって仕組みが異なります。直接契約でinference_geo"us"に固定すると、標準料金の1.1倍が入力・出力トークン双方に適用されます。一方、Bedrock・GCP Vertexといったパートナー運用のプラットフォームは、Anthropicの料金表とは別に、それぞれ独自のリージョン別料金を持っています。同じモデルでも経路によって単価が違い得るという前提で見積もる必要があります。実額の比較はBedrockのClaude料金は直接APIとどう違うかで扱っています。

これに対して直接契約は、Anthropicとの間で個別に契約・請求関係を結びます。エンタープライズプランのSSOや一元請求が必要な場合、Anthropic側の営業窓口を通す流れになります。どちらが「楽か」は、社内にどちらのクラウド契約が既にあるかで決まる話です。

モデルの中身とコンプライアンス認証は経路を問わず共通

経路を選ぶとき、「クラウド経由だとモデルの性能が落ちるのでは」という懸念を持つ担当者もいます。この点は公式に明確な回答があります。Anthropicの地域コンプライアンスページは、地域デプロイでも同一のフロンティアモデルにアクセスでき、知能・性能は同一だと明記しています。ビジョン・ツール呼び出し・拡張コンテキストといった基本機能もすべてのプラットフォームで対応しています。ただし一部の高度な機能はプラットフォームによって対応状況が異なります。Claude Code固有の機能差はClaude Codeの機能比較(Bedrock・Vertex・Foundry別対応表)で個別に確認できます。

コンプライアンス認証も経路で分かれません。Anthropicは「商用デプロイメントの顧客データはデフォルトでモデル学習に使わない」という原則を、すべてのデプロイメントオプションと準拠フレームワークにわたって適用すると明言しています。GDPR・HIPAA・SOC 2 Type 2・ISO/IEC 27001・27017・27018・CSA STARといった認証群も、経路を問わず提供される枠組みです。つまり「Bedrock経由だと認証が弱くなる」という心配は当たりません。差が出るのは認証の有無ではなく、データがどこに物理的に置かれるかという先ほどの論点だけです。

どの経路を選ぶかの判断軸

3つの観点を並べると、判断の焦点が見えてきます。

観点直接契約が有利な場面Bedrock/Vertexが有利な場面
データ所在直接契約が有利な場面米国保存で問題ない場合Bedrock/Vertexが有利な場面日本・APAC域内に保存地域を限定したい場合
ネットワーク直接契約が有利な場面新規の外部エンドポイント許可が容易な組織Bedrock/Vertexが有利な場面既存のAWS/GCPのネットワーク境界を維持したい組織
調達直接契約が有利な場面Anthropicとの直接契約に抵抗がない組織Bedrock/Vertexが有利な場面既存のAWS/GCPコミットで消化したい組織

3つの観点が一致しない企業も少なくありません。データ所在は直接契約でも困らないが、調達だけはAWSコミットで済ませたい、という場合はBedrock経由が現実的な選択になります。逆に日本国内保存が必須要件なら、調達の都合に関わらずBedrockかVertexを選ぶことになります。

経路は1つに固定しなくても構いません。開発チームは直接契約でClaude Codeを素早く試し、本番の業務データを扱う部門はBedrock経由で日本国内保存を満たす、という併用も現実的な選択肢です。認証・料金体系は経路ごとに独立しているため、用途によって使い分けても運用が破綻するわけではありません。

まとめ

Claudeを日本から使う経路は5つに分かれます。直接契約・Claude Platform on AWS・Amazon Bedrock・GCP Vertex AI・Microsoft Foundryで、運用主体も請求も異なります。最も判断を左右するのはデータ所在です。直接契約のワークスペースジオは現状米国限定で、日本・APAC域内への保存を求めるならBedrockかVertex経由を選ぶ必要があります。モデルの中身とコンプライアンス認証はどの経路でも共通なので、性能や安全性を理由に経路を絞り込む必要はありません。ネットワークと調達は、既存のクラウド契約との整合という実務都合で決まることが多く、3つの観点をそれぞれ自社の制約と照らし合わせて選ぶのが実務的です。

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