Claudeを日本から使う提供経路 — 日本リージョンで選ぶBedrock/Vertex
Claudeのデータを日本・APAC域内に置ける経路はBedrockとVertex AIです。直接契約とFoundryを含む5経路を、保存場所・ネットワーク・調達で比べます。
日本・APAC域内にデータを置きたいなら、候補はAmazon BedrockかGoogle CloudのVertex AIです。直接契約とClaude Platform on AWSは、保存地域を米国にしか置けません。FoundryはAPAC欄が未対応の表示です。
日本企業がClaudeを使う経路は、Anthropicとの直接契約だけではありません。AWS Marketplace経由のClaude Platform on AWSに加え、Bedrock、Vertex AI、Foundryという3つのクラウド経由の経路があります。経路ごとに、運用主体も請求方法もデータの置き場所も異なります。情シスや調達担当にとっては契約手続きの違いにとどまらず、データ所在・ネットワーク境界・既存のクラウド契約との整合を決める実務判断です。ここでは5つの経路を、日本から使う前提で比較します。
日本国内に保存したいなら、選べる経路は絞られる
最初に確認したいのは、日本・APAC域内にデータを置く必要があるかどうかです。この1点で、選べる経路がほぼ決まります。
Claudeへのアクセス経路は、運用主体で2つに分かれます。
運用主体で見た5つの経路
Anthropicが運用
Claude APIへの直接契約と、AWS Marketplace経由で購入するClaude Platform on AWSです。後者はAWSが運用する経路ではなく、Anthropicが運用します。
クラウド事業者が運用
AWS・Google Cloud・Microsoftが自社基盤の一部として提供します。請求は各社のクラウド請求に統合されます。
APAC(日本を含む)での対応状況は、経路ごとに次のとおり違います。
| 経路 | 請求 | データを日本・APACに置けるか |
|---|---|---|
| 直接契約(Claude API) | 請求Anthropicへ直接 | データを日本・APACに置けるか置けない。ワークスペースジオは米国のみ |
| Claude Platform on AWS | 請求AWS Marketplace経由 | データを日本・APACに置けるか置けない。直接契約と同じ制約 |
| Amazon Bedrock | 請求AWSの請求に統合 | データを日本・APACに置けるか地域コンプライアンスページのAPAC欄に対応の表示あり |
| GCP Vertex AI | 請求Google Cloudの請求に統合 | データを日本・APACに置けるか同上 |
| Microsoft Foundry | 請求Azureの請求に統合 | データを日本・APACに置けるか同ページのAPAC欄は未対応の表示で、予定時期の記載なし |
Claude Platform on AWSは、inference_geoパラメータが直接契約と同じく使える一方、ワークスペースジオは設定できません。公式ドキュメントによれば、この経路のClaude Managed Agentsは実効ワークスペースジオが"us"として動きます。ワークスペースは単一のAWSリージョンに紐づきますが、そのリージョンが決めるのは呼び出すゲートウェイと、IAM・CloudTrail・請求の範囲です。推論の実行場所までは固定しません。Bedrockとの違いはClaude Platform on AWSの解説記事にあります。
Foundryの欄は、地域コンプライアンスページを見直す価値があります。Europeの行には「Coming soon」と書かれています。一方、APACの行は対応済みを示すチェックではなく、未対応を示す表示です。予定時期は書かれていません。Foundryに日本の保存要件を預ける前に、このページで状態を取り直してください。FoundryでClaudeを使う手順はMicrosoft FoundryでClaudeを使うガイドで扱っています。
規制業種では、この選択が業務データの扱いそのものを左右します。1.7兆ドルの資産を運用するNorges Bank Investment Managementは、欧州のデータ保護規制を満たしながらClaudeを使っています。欧州議会はAWS Bedrock経由で210万件のアーカイブ文書を扱えるようにしました。
直接契約では、保存も推論も日本に固定できない
直接契約の設定は、Anthropicのドキュメントで2つに分かれています。推論をどこで走らせるかを決めるinference_geoと、データを保存する地域を決めるワークスペースジオです。
inference_geoに指定できる値は"global"(既定)と"us"の2つだけです。日本やAPACを指す値はありません。ワークスペースジオも、現状選べるのは"us"だけです。作成時に決める設定で、あとから変更できません。設定場所はConsoleのSettings > Workspacesで、新しいワークスペースを作るときに選びます。
つまり直接契約には、日本国内にプロンプトや履歴を留める手段がありません。保存場所を動かせるのは米国だけです。推論の場所についても、米国内に限定するか、グローバルにお任せにするかの二択になります。
inference_geoが使える経路は、直接契約とClaude Platform on AWSです。BedrockとGoogle Cloudでは、推論の地域がエンドポイントURLや推論プロファイルで決まるため、このパラメータ自体が当てはまりません。Foundryも同様で、Azure上のデプロイでは米国のData Zone Standardという配備タイプで推論を米国内に留めます。仕組みそのものはClaudeのデータレジデンシー解説に詳しく、保存地域の実務はワークスペースジオと日本のデータ現地化に書いてあります。
BedrockとVertexで日本に留めるとき、設定で外しやすい点
Bedrock・Vertexなら日本域内に置けるという話は、契約上の選択肢があるというだけです。Claude Codeから使うときは、設定の既定値が意図した地域に向かわない場面があります。
Claude Codeで地域がずれやすい3か所
Bedrockの推論プロファイル接頭辞
AWSのリージョンが
ap-*なら、Claude Codeが優先する接頭辞はapac.です。ANTHROPIC_BEDROCK_REGION_PREFIXにはus・eu・apac・jp・au・globalを指定でき、v2.1.224以降で使えます。なお、リージョンがus-*・eu-*・ap-*のどれにも当たらないと、既定はglobal.です。apac.は日本だけを指す接頭辞ではありません。このプロファイルは推論をAPAC内の別リージョンへ回すことがあり、日本国外での処理もあり得ます。保存先は既定で呼び出し元のリージョンのままです。接頭辞は希望であって保証ではない
指定した接頭辞のプロファイルがアカウントにない場合、Claude Codeは別の接頭辞の一致するプロファイルへ進みます。プロファイルの一覧を取れない環境では、確認せずに接頭辞を使い、未有効なら400エラーになります。
Vertexの既定リージョン
CLOUD_ML_REGIONが未設定か、形式が不正な値だと、Claude Codeはus-east5に戻ります。globalにすると、エンドポイントが空き容量のある地域へ動的に振り分けるため、日本に留めたい用途には向きません。
3つとも、公式ドキュメントの記述そのものです。Claude Codeで日本リージョンを狙うときは、接頭辞とCLOUD_ML_REGIONを明示し、/statusで解決後の値を確かめる流れになります。Vertexの/statusには、GCP project・Default region・Modelの各行が出ます。API providerの行が出ないときは、環境変数がプロセスに届いていません。
# Bedrock: 東京リージョンから、日本向けの推論プロファイルを優先する
export AWS_REGION=ap-northeast-1
export ANTHROPIC_BEDROCK_REGION_PREFIX=jpjpを指定しても、アカウントにjp.のプロファイルが無ければ、上の2枚目のカードのとおり別の接頭辞へ進みます。実際にどのプロファイルが選ばれたかは、/statusとAWS側の請求・ログで確認する必要があります。Claude Code側のBedrock設定はAmazon BedrockでClaudeを使う設定ガイドにまとめています。
調達と請求は、既存のクラウド契約で決まる
Bedrock経由の利用は、AWS Marketplaceのサブスクリプションを伴います。Claude Codeの公式手順では、IAMポリシーにaws-marketplace:ViewSubscriptionsとaws-marketplace:Subscribeを許可します。条件はaws:CalledViaLastがbedrock.amazonaws.comで、Bedrockの呼び出しを経由した購読だけが通る構成です。既存のAWS契約の中でClaudeの利用料を扱えるので、Anthropicと別に契約を結ぶ手間が減ります。
Vertex AIでもGoogle Cloudの請求に統合されます。企業の契約形態によっては既存のコミットに充てられる場合がありますが、条件は契約ごとに違うため、Googleの営業窓口で確認する話です。
料金は経路によって仕組みが違います。BedrockとGoogle Cloudは、Anthropicの料金表とは別に、各社のリージョン別料金を持っています。同じモデルでも単価が違い得ると見て見積もります。実額の比較はBedrockのClaude料金は直接APIとどう違うかで扱っています。
直接契約は、Anthropicとの間で契約と請求関係を個別に結びます。どちらが楽かは、社内にどちらのクラウド契約が既にあるかで決まります。
モデルの中身と学習不使用の既定は、経路を問わず共通
クラウド経由だと性能が落ちるのではないか、という懸念があります。地域コンプライアンスページは、地域デプロイでも同じフロンティアモデルにアクセスでき、知能と性能は変わらないと書いています。ビジョン・ツール呼び出し・拡張コンテキストは、すべてのプラットフォームで使えます。
ただし、一部の高度な機能はプラットフォームによって異なります。Claude Code固有の差はClaude Codeの機能比較(Bedrock・Vertex・Foundry別対応表)で個別に確認できます。
学習の扱いも同じです。同じページは、商用デプロイの顧客データを既定ではモデル学習に使わないと、すべてのデプロイ形態と準拠フレームワークにわたって説明しています。掲載されている枠組みはGDPR、HIPAA、SOC 2 Type 2、ISO/IEC 27001・27017・27018、CSA STARなどです。掲載の認証はAnthropic側のもので、クラウド経由ではクラウド事業者側の認証範囲も合わせて確認します。差が大きいのはデータの物理的な置き場所です。
自社の要件から経路を選ぶ手順
条件を上から当てはめると、選択肢が絞れます。
経路を絞り込む順番
- 1
日本・APAC域内に保存する必須要件があるか
あるなら、直接契約とClaude Platform on AWSは外れます。FoundryもAPAC欄が未対応の表示なので、BedrockかVertexが残ります。
- 2
既存のクラウド契約はどちらか
AWSが主ならBedrock、Google Cloudが主ならVertexです。請求・IAM・ネットワーク境界を既存の管理に載せられます。
- 3
推論の地域をどこまで縛るか
直接契約なら米国内かグローバルの二択です。BedrockとVertexでは、エンドポイントか推論プロファイルで地域を指定し、Claude Codeでは接頭辞とリージョンの解決後の値を
/statusで確かめます。
3つの観点は一致するとは限りません。データ所在は米国でも構わず、調達だけAWSのコミットで済ませたいなら、Bedrockが現実的です。逆に日本・APAC域内に置く要件があるなら、候補はAPAC欄に対応表示のあるBedrockかVertexです。日本のリージョンで使えるかは、各クラウドのモデル提供リージョン一覧で確かめます。
経路は1つに固定しなくても構いません。開発チームは直接契約でClaude Codeを素早く試し、本番の業務データを扱う部門だけBedrockで日本域内に置く併用もできます。認証と料金体系は経路ごとに独立しているため、用途で使い分けても運用は破綻しません。
まとめ
要件は「保存が国内」か「処理も国内」かに分けて決めます。後者なら接頭辞をjpまで絞り、実際に選ばれたプロファイルを請求とログで確かめます。