Claudeで透明性ガイドライン対応 — 製薬協の公開区分に支払明細を振り分ける
製薬協の透明性ガイドラインが定める公開区分に、支払明細をClaude for Excelで振り分けて集計する手順です。要判断の行を残し、合計の一致で検算します。
製薬企業が医療機関や医療関係者に払った講演料・原稿執筆料・寄附金などは、製薬協の透明性ガイドラインで、決まった区分に分けて公開します。支払明細をこの区分に振り分けて集計する作業は、Excelの上で「規則表と照合して、迷う行を人に回す」形にするとClaudeに任せやすくなります。この記事では、Claude for Excelに分類の下書きを作らせ、区分ごとの合計が支払総額と一致するかで検算するところまでを扱います。
ガイドラインの適用先は製薬協の会員会社です。区分の最終判断は、各社が定める「透明性に関する指針」と社内のコンプライアンス部門が持ちます。Claudeが出すのは分類の案と、判断が割れる行の一覧です。
公開区分と、区分ごとの公開の粒度
振り分けの前に、何を何の単位で出すのかを押さえます。ガイドラインの解説(2026年4月1日改定)は、公開対象をA〜Eの5区分に分けています。粒度が違うので、集計の軸も区分ごとに変わります。
| 区分 | 主な項目 | 公開の粒度 |
|---|---|---|
| A研究費開発費等 | 主な項目特定臨床研究費 | 公開の粒度研究ID、提供先、統括管理者名、研究責任医師名、契約件数、金額 |
| A | 主な項目倫理指針に基づく研究費、治験費、市販後の調査費など | 公開の粒度提供先の名称、当該年度に支払のある契約件数、金額 |
| A | 主な項目臨床以外の研究費 | 公開の粒度提供先の名称一覧 |
| B学術研究への助成等 | 主な項目奨学寄附金、一般寄附金、学会等寄附金、学会等共催費等、広告掲載費、賛助会費 | 公開の粒度提供先ごとの金額(件数が付く項目もある)と、項目ごとの年間総額 |
| C原稿執筆料等 | 主な項目講師謝金、原稿執筆料・監修料、コンサルティング等業務委託費 | 公開の粒度施設名・所属部科・役職・個人名ごとの件数と金額 |
| D情報提供関連費 | 主な項目講演会等会合費、説明会費 | 公開の粒度年間の件数と総額 |
| D | 主な項目医学・薬学の関連文献の提供費 | 公開の粒度年間の総額 |
| Eその他の費用 | 主な項目接遇等費用 | 公開の粒度年間の総額 |
公開の対象は金額の大小を問いません。外注業者や財団などの第三者を経由した支払も含み、医薬品や機器の現物も入ります。ただし臨床試用医薬品、製剤見本、治験薬は除かれます。公開時期は、各社の事業年度が終わってから1年以内です。
迷いやすい支払は、解説の規定で先に決めておく
Claudeに「適切な区分に振り分けて」と丸投げすると、摘要の文字面から推測した区分が返ります。解説には、区分をまたぐ支払の扱いが書かれています。この規定を規則表に先に落とし、Claudeには照合だけをさせます。
| 支払の場面 | 公開区分 | 解説の定め |
|---|---|---|
| 症例報告費(個人に払う場合も) | 公開区分Aの該当項目 | 解説の定めCにはしない |
| 共催会合の演者への謝金 | 公開区分C講師謝金 | 解説の定め演者等への謝金はC |
| 医療機関等との共催会合の費用 | 公開区分D講演会等会合費 | 解説の定め医療関係団体との共催とは区別する |
| 学会の会合で募集される共催セミナー費、展示ブース出展料、スポンサー料 | 公開区分B学会等共催費等 | 解説の定め広告掲載費でも、会合開催時の募集分はここ |
| 財団を経由する学会等寄附金 | 公開区分B学会等寄附金 | 解説の定め学会等の名称と、財団に払った金額を公開する。財団名は不要 |
| 研究に必要な機器の貸与 | 公開区分公開しない | 解説の定めAの規定 |
| 一般会員(正会員)の会費 | 公開区分公開しない | 解説の定め賛助の目的で払う会費はB賛助会費 |
| 被験者の健康被害補償費 | 公開区分公開しない | 解説の定め特定臨床研究費を除く |
| IRB(臨床研究の審査委員会)に払う費用 | 公開区分A | 解説の定め研究代表医師または統括管理者の所属施設等で一括公開してよい(A注記(9)) |
| 統計解析費(特定臨床研究費・倫理指針に基づく研究費・臨床以外の研究費) | 公開区分Aの該当項目 | 解説の定め医療機関等に提供する資金として公開する。代表医師または統括管理者の所属施設等で一括してよい(A注記(10)) |
| 上記以外の統計解析費 | 公開区分Aその他の費用 | 解説の定めA注記(10) |
| 研究活動への医療用医薬品・原末の提供(GCP・GVP・GPSP省令の下で実施する調査・試験を除く) | 公開区分Aの該当項目 | 解説の定め金額換算して公開してよいが、物質名と提供量での公開が推奨される。特定臨床研究費では研究資金と区別できる形にする(A注記(13)) |
研究IDがまだ付与されていない特定臨床研究は、公開開始時点では空欄にし、付与後に速やかに公開します。契約時に、提供先から研究IDを会員会社へ連絡してもらう取り決めを入れておく運用も解説に書かれています。
規則で決まらない行は「要判断」に残す
解説の規定が1つに決まらない行は、Claudeに区分を当てさせません。たとえば、医療機関に払わない会合の会場費や飲食費、旅費は、Aの規定では「その他の費用」に入ります。ところが同じ種類の費用は、講演会ではDの講演会等会合費にも当たりえます。研究に関わる会合か、情報提供の会合かで行き先が変わるため、摘要だけでは決められません。
こうした行には「要判断」と記録させ、判断した人の名前と理由を隣の列に残します。分類の精度を上げるより、要判断の行を正直に出すほうが、検算で効いてきます。
支払明細と規則表のシートを作る
ブックには3枚のシートを置きます。「支払明細」「規則表」「集計」です。
次のCSVは、支払明細の形を示すダミーです。実在の機関や個人とは無関係の記号で埋めています。
支払ID,支払日,相手先コード,相手先区分,摘要,金額,契約ID,研究ID
P001,2025-04-12,K001,個人,製品説明会 講師謝金,100000,,
P002,2025-05-20,K002,個人,論文監修,50000,,
P003,2025-06-03,G005,学会,学術大会 共催セミナー費,300000,,
P004,2025-06-30,H002,大学,奨学寄附金,1000000,,
P005,2025-07-15,H003,医療機関,症例報告費,30000,,
P006,2025-08-01,C001,CRO,特定臨床研究 研究費,2000000,CT01,jRCT-DUMMY
P007,2025-09-10,F011,医療機関,医局説明会 弁当代,12000,,
P008,2025-10-05,Z001,業者,会合 会場費,60000,,契約ID列を設けるのは、Aの公開内容が「契約件数」で、支払行の数とは別の数え方になるためです。1つの契約に複数の支払行がぶら下がる場合を、この列でまとめます。
相手先区分列の値は、解説が公開対象先として挙げる区分に合わせて決めます。
- 医療機関: 病院、診療所、薬局など医療に係る施設
- 研究機関: 医療機関に併設された研究部門、大学の医学・薬学系部門とARO、大学の理学・工学等のライフサイエンス系研究部門、医薬基盤研究所や理化学研究所などのライフサイエンス系研究部門
- 医療関係団体: 医師会、薬剤師会、医学会、薬学会など、団体性のある医療関係団体(「○○研究会」といった名称は問わない)
- 財団等: 医学・薬学系の財団法人等、特定臨床研究の研究資金等を管理する団体(CROを含む)、特定臨床研究の統括管理者となる団体
- 医療関係者等と研究者: 医療担当者と医療業務関係者、および医学・薬学系のほか理学・工学等のライフサイエンス系の研究者
この定義に当たらない相手(ダミー明細の「業者」)への支払は、公開対象先以外に発生した資金等として扱われ、Aの「その他の費用」の対象です。CROが財団等に入るのは、特定臨床研究の資金管理を担う場合である点に注意が要ります。
規則表は、次の列で作ります。
規則ID,条件(摘要に含む語・相手先区分),公開項目,根拠
R01,講師謝金,C 講師謝金,C 原稿執筆料等
R02,監修;原稿執筆,C 原稿執筆料・監修料,C 原稿執筆料等
R03,症例報告費,A 該当項目(研究区分で確定),A 注記(3)
R04,奨学寄附金,B 奨学寄附金,B 助成等
R05,共催セミナー費;出展料;スポンサー料,B 学会等共催費等,B 注記(5)
R06,医局説明会,D 説明会費,D 情報提供関連費
R07,IRB;倫理審査,A 該当項目(所属施設等で一括可),A 注記(9)
R08,統計解析,A 該当項目 または A その他の費用(研究区分で確定),A 注記(10)
R09,原末提供;医薬品提供,A 該当項目(物質名と提供量で公開を推奨),A 注記(13)根拠の列は、検算のとき「なぜその区分か」を人が追うために欠かせません。解説の節名をそのまま写します。
ダミー明細に規則表をかけた結果
上の8行に、R01〜R06の6本の規則を当てた結果です。R07〜R09は、このダミー明細に該当する行がありません。
| 支払ID | 当たった規則 | 公開項目 | 扱い |
|---|---|---|---|
| P001 | 当たった規則R01 | 公開項目C講師謝金 | 扱い確定 |
| P002 | 当たった規則R02 | 公開項目C原稿執筆料・監修料 | 扱い確定 |
| P003 | 当たった規則R05 | 公開項目B学会等共催費等 | 扱い確定 |
| P004 | 当たった規則R04 | 公開項目B奨学寄附金 | 扱い確定 |
| P005 | 当たった規則R03 | 公開項目Aの該当項目 | 扱い区分は確定。項目は契約の研究区分で決める |
| P006 | 当たった規則なし | 公開項目要判断 | 扱い規則表に特定臨床研究の規則がない |
| P007 | 当たった規則R06 | 公開項目D説明会費 | 扱い確定 |
| P008 | 当たった規則なし | 公開項目要判断 | 扱い研究の会合か、情報提供の会合かが摘要で決まらない |
P005は、症例報告費をCではなくAで公開するところまでが規則で決まります。Aのどの項目に入るかは、治験か製造販売後調査かといった契約の研究区分で変わり、摘要からは分かりません。契約ID列から契約情報を引く工程を、規則表の外に用意しておきます。
P006は、規則の不足が原因の要判断です。ただし規則表に特定臨床研究の行を足すだけでは足りません。解説では、CROが特定臨床研究の資金管理をしている場合、CROに払った研究資金と、各医療機関に間接的に提供される分の全体が公開対象です。このときは資金管理をしているCROの名称も公開対象に入ります。相手先区分がCROの行は、規則に当たっても人が確認する行にします。
P008は、規則を足しても要判断のままになる行です。会場費という摘要は、Aのその他の費用にもDの講演会等会合費にも当てはまります。
Claude for Excelに分類の下書きを作らせる
Claude for Excelは、開いているブックについての質問に、セル単位の根拠を付けて答えます。ソートやフィルタ、ピボットテーブルの編集といったExcelの操作も頼めます。Pro、Max、Team、Enterpriseの各プランで使えます。
分類から検算までの流れ
- 1
個人名を外した写しで始める
作業用のブックには、個人名を入れず相手先コードだけを置きます。コードと氏名の対応表は、社内の管理された場所に残します。
- 2
規則表で照合させる
支払明細の各行に、規則表のどの規則に当たったかを書かせます。当たる規則が1つなら公開項目を、0または2つ以上なら「要判断」を返させます。
- 3
根拠の列を読む
件数の多い規則から、摘要と公開項目の組み合わせを目で確かめます。規則の条件が広すぎる場合は、規則表の側を直します。
- 4
集計表に流す
公開項目と相手先コードごとに、件数と金額を集計します。
依頼文は、次のように範囲を絞って書きます。
「支払明細」シートのH列に、「規則表」の条件に当たる公開項目を入れてください。
- 条件に当たる規則が1つだけの行は、公開項目名とI列に規則IDを書く
- 当たる規則が0または2つ以上の行は、H列に「要判断」と書き、I列に理由を書く
- 規則表にない分類は作らない。既存のセルは上書きしない「規則表にない分類は作らない」の一文が肝です。この指定がないと、規則に当たらない行にも、もっともらしい区分が付く可能性があります。出力の確認は、Claudeの回答に付く参照先のセルをたどって行います。
集計と検算の式
集計シートは、公開項目と相手先コードの組み合わせごとに1行にします。件数は契約ID単位、金額は合計です。
金額: =SUMIFS(支払明細!$F:$F, 支払明細!$H:$H, $A2, 支払明細!$C:$C, $B2)
行数: =COUNTIFS(支払明細!$H:$H, $A2, 支払明細!$C:$C, $B2)A列に公開項目、B列に相手先コードを置きます。行数は支払行の数なので、A区分の契約件数には使えません。契約ID単位の件数は、ユニークな契約IDを数える式かピボットテーブルで別に出し、行数と並べて見比べます。
検算は、次の3つで足ります。
検算の3点
- 公開項目ごとの金額の合計に、公開しない項目の合計を足すと、支払明細の金額の総計に一致する
- 「要判断」の行が0になるまで、集計シートを確定させない
- 公開項目が空欄の行が0である
一致しないときは、規則の条件が重なって同じ行を2回数えているか、規則表に当たらず空欄のまま漏れている行があるかのどちらかです。差額と同じ金額の行を、支払明細で検索すると見つかります。
個人名と公開形式の扱い
区分Cは、個人に払った講演料などを、施設名・所属部科・役職・個人名で公開します。所属する医療機関に払った場合は、医療機関の名称と件数・金額を公開し、個人名は要りません。勤務先以外の法人に払った場合は、その法人、個人、所属医療機関の名称がそろって対象です。
この区別は、作業の最後に氏名を戻す段階で使います。分類の段階では氏名が要らないため、Claudeに渡す表から外せます。Claude for Excelのサポート記事は、機密性の高い、または規制対象のデータを含むブックを、適切な統制なしで扱う用途には勧めていません。入力と出力はバックエンドで30日以内に削除されるとも書かれていますが、個人名を渡さずに済む設計のほうが、社内の取り決めと照らす手間も減ります。
落とし穴
外部から受け取ったファイルをそのまま開かない
Claude for Excelのサポート記事は、外部由来のファイルに、Claudeを操作する隠れた指示が入っている可能性を警告しています。提供先のリストや、CROから届いた支払明細を使うときは、信頼できる写しを作ってから開きます。Claudeが書き換えや外部への送信につながる操作を提案した場合は、確認の画面を読んでから承認します。
公開形式にも条件があります。解説は、閲覧者が申請して初めて見られる2段階方式を避け、印刷の制限もかけないとしています。特定臨床研究費のように臨床研究法で公表が求められる情報は、検索できる仕組みで見られるようにします。PDFの簡易検索では、この要件を満たしたことにならないとされています。集計表をそのままPDFにして載せる運用は、この点で見直しが要ります。
Claudeに任せる範囲と人が持つ判断
Claude for Excelは、データテーブルとマクロ・VBAには対応していません。上の集計はSUMIFSとCOUNTIFSで足りるので、影響はありません。
分担は、次のとおりです。
- 規則に当たる行の区分付けと、集計式の作成はClaudeに任せられる
- 規則表の中身と、要判断の行の決定は人が持つ
- 解説が改定された年度は、規則表の根拠列を、改定後の解説と照らして更新する
同じ「Excelの検算」の型は、看護必要度の該当患者割合の集計でも使っています。経費データを規則と照合する流れは、楽楽精算の経費チェックの記事が近い例です。製薬・創薬分野でClaudeが使われる場面の全体像は、Claude製薬創薬活用ガイドにあります。