Claudeで看護必要度を集計 — 該当患者割合を検算する手順
日次のA・B・C項目の記録から該当患者割合を出し、救急患者応需係数を足した割合指数で基準との差を確かめる手順です。Claude for Excelに判定列を組ませ、検算までを扱います。
看護必要度の該当患者割合は、日次のA・B・C項目の記録から「その日に基準を満たした患者が何人日あったか」を数え、評価対象の延べ患者数で割って出します。令和8年6月の改定からは、この割合に救急患者応需係数を足した「割合指数」が基準と比べられる対象になりました。Claude for Excelに判定列と集計式を組ませ、院内システムの集計値と突き合わせれば、割合の差がどの行から生じたかまでたどれます。
この記事の対象は一般病棟用の重症度、医療・看護必要度です。患者を特定する情報は渡さず、仮IDの日次記録だけで検算する前提で進めます。
看護必要度の該当患者割合は何と何で決まるか
割合の組み立てがずれたまま式を組むと、Claudeが正しい式を書いても答えが合いません。
割合指数を決める要素
該当患者の判定
A得点・B得点・C得点から、患者の1日ごとに「該当か否か」を決めます。入院料によって判定条件が異なります。
該当患者割合
該当と判定された患者の人日を、評価対象の延べ患者数で割った値です。評価票概要の注記では、レセプト電算処理システム用コードで評価するA項目とC項目について、対象病棟の入院患者の直近3か月の該当患者の割合を算出するとされています。
救急患者応需係数
1病床あたりの年間の救急搬送の受入件数に0.005を掛けた値で、上限は1割です。入院しなかった場合の件数も受入件数に含まれます。「年間」の数え方は通知の定義で確認します。
令和8年度改定は6月に施行されました。急性期一般入院料などで使う基準は、該当患者割合そのものではなく、割合に救急患者応需係数を加えた割合指数に変わっています。結核病棟7対1入院基本料や専門病院7対1入院基本料、看護必要度加算、地域包括ケア病棟入院料などは、引き続き病棟の該当患者割合を使います。
入院料ごとの判定条件と基準値
急性期一般入院料1と2〜5では、該当患者の条件が違います。
| 入院料 | 該当患者の条件 |
|---|---|
| 急性期一般入院料1(割合①) | 該当患者の条件A得点3点以上、またはC得点1点以上 |
| 急性期一般入院料1(割合②) | 該当患者の条件A得点2点以上、またはC得点1点以上 |
| 急性期一般入院料2〜5 | 該当患者の条件A得点2点以上かつB得点3点以上、またはA得点3点以上、またはC得点1点以上 |
急性期一般入院料1では、B項目は該当患者の条件から外れています。ただし評価票を使ってB項目を評価することは求められたままです。
基準値は、必要度Ⅰ/Ⅱの順に次のとおりです。
| 入院料 | 割合指数の基準(Ⅰ/Ⅱ) |
|---|---|
| 急性期一般入院料1 | 割合指数の基準(Ⅰ/Ⅱ)割合①28%/27%、割合②35%/34% |
| 急性期一般入院料2 | 割合指数の基準(Ⅰ/Ⅱ)28%/27% |
| 急性期一般入院料3 | 割合指数の基準(Ⅰ/Ⅱ)24%/23% |
| 急性期一般入院料4 | 割合指数の基準(Ⅰ/Ⅱ)20%/19% |
| 急性期一般入院料5 | 割合指数の基準(Ⅰ/Ⅱ)15%/14% |
特定機能病院や急性期総合体制加算、地域包括医療病棟には別の基準値があります。自院の届出区分の行は、告示と通知で引き直した値を使います。
検算シートの列を決める
シートは「1行 = 1患者の1日」にします。院内の必要度システムからエクスポートした日次記録を、そのまま貼れる形です。
A・B・Cの得点が決まる仕組み
得点の根拠になる評価票の項目は、次の構成です。
| 区分 | 項目 | 点数 |
|---|---|---|
| A | 項目創傷処置(褥瘡の処置を除く)、呼吸ケア(喀痰吸引のみの場合を除く)、注射薬剤3種類以上の管理(最大7日間)、シリンジポンプの管理 | 点数各1点 |
| A | 項目輸血や血液製剤の管理 | 点数2点 |
| A | 項目専門的な治療・処置 | 点数3点または2点 |
| A | 項目救急搬送後の入院(2日間)、緊急に入院を必要とする状態(2日間) | 点数2点 |
| B | 項目寝返り、移乗、口腔清潔、食事摂取、衣服の着脱、診療・療養上の指示が通じる、危険行動 | 点数項目ごとに0〜2点 |
| C | 項目開頭手術(11日間)、開胸手術(9日間)、開腹手術(6日間)、骨の手術(10日間)、胸腔鏡・腹腔鏡手術(4日間)、全身麻酔・脊椎麻酔の手術(5日間)、救命等に係る内科的治療(4日間)、別に定める検査(2日間)、別に定める手術(5日間) | 点数いずれも該当で1点 |
専門的な治療・処置は、抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)、麻薬の使用(注射剤のみ)、昇圧剤の使用(注射剤のみ)、抗不整脈剤の使用(注射剤のみ)、抗血栓塞栓薬の持続点滴の使用、無菌治療室での治療のいずれかに該当すると3点です。放射線治療やドレナージの管理など、そのほかの項目だけに該当したときは2点になります。
C項目には、手術ごとに数えられる日数の窓があります。手術日から窓の日数だけ、その患者は毎日C得点1点を持ちます。日次記録にC項目の日数窓が正しく展開されているかは、検算の最初のチェック点です。
列の設計と入力の例
列は項目ごとの得点を持つ形にします。判定列は空けておき、Claudeに組ませます。
日付,仮ID,病棟,A創傷,A呼吸,A注射3種,Aシリンジ,A輸血,A専門,A救急,B得点,C得点
10/01,P01,5A,0,0,0,0,0,0,2,3,0
10/01,P02,5A,1,0,1,0,0,0,0,2,0
10/01,P03,5A,0,0,0,0,0,0,0,1,0
10/01,P04,5A,0,0,0,0,0,3,0,4,0
10/02,P01,5A,0,0,0,0,0,0,2,3,0
10/02,P02,5A,1,0,0,0,0,0,0,2,0
10/02,P03,5A,0,0,0,0,0,0,0,1,0
10/02,P05,5A,0,0,0,0,0,0,0,0,1
10/02,P04,5A,0,1,0,1,0,3,0,4,0上の9行は、後の式の確認にも使うダミー記録です。
氏名、生年月日、診療科の自由記述欄は列に入れません。仮IDは、院内で対応表を別に管理する前提で振ります。
Claude for Excelに判定列と割合を組ませる
Claude for Excelは、開いているブックについて質問すると、セル単位の根拠つきで答えます。式の追加や、ソート・フィルタなどのExcel操作も依頼できます。データテーブルとマクロ・VBAは対応外なので、集計は通常の関数で組みます。
判定列から割合までの流れ
- 1
A得点を作る
A列群を足して「A得点」列を作ってもらいます。式は、各項目の得点を横に足すだけで足ります。
- 2
入院料ごとの判定列を作る
自院の届出区分に合わせ、判定列を作ります。急性期一般入院料1なら割合①と割合②の2列です。
- 3
割合を出す
P列の「集計対象」が1の行だけで、判定列の合計を行数で割ります。集計対象は、直近3か月に入る行で、かつ院内システムが分母に入れている入院の行です。
- 4
手計算と照らす
任意の病棟・日を選び、Claudeの式の結果を手で追った値と比べます。
依頼文の例です。数値や基準は自院の値に置き換えます。
このシートは1行が患者1人の1日分の記録です。
1. A列群(D〜J列)を足して、M列に「A得点」を作ってください。
2. N列に割合①の判定(A得点3以上、またはC得点1以上なら1、それ以外は0)、
O列に割合②の判定(A得点2以上、またはC得点1以上なら1)を作ってください。
3. 病棟ごとに、判定列の合計÷対象行数で割合①と割合②を出してください。
4. P列に「集計対象」を作ってください。日付が集計期間(直近3か月、開始日と終了日はAA1とAB1のセル)に入る行を1、外れる行を0にします。
5. 割合は、P列が1の行だけで集計してください。
6. 式はセル参照で書き、値の貼り付けにしないでください。式は次の形になります(列の割り当ては上の記録に合わせた例です)。
A得点(M列) =SUM(D2:J2)
割合①の判定(N列) =IF(OR(M2>=3,L2>=1),1,0)
割合②の判定(O列) =IF(OR(M2>=2,L2>=1),1,0)
急性期2〜5の判定 =IF(OR(AND(M2>=2,K2>=3),M2>=3,L2>=1),1,0)
集計対象(P列) =IF(AND(A2>=$AA$1,A2<=$AB$1),1,0)
割合① =SUMIFS(N2:N1000,P2:P1000,1)/SUM(P2:P1000)小さな例で式の挙動を見ます。上の9行は、期間内の行(P列がすべて1)として判定すると、次の結果になります。日付は文字列でなく日付の値にし、AA1とAB1に期間の開始日と終了日を入れておきます。
| 判定 | 該当した行 | 割合 |
|---|---|---|
| 割合①(A3以上またはC1以上) | 該当した行3行 | 割合3/9で約33.3% |
| 割合②(A2以上またはC1以上) | 該当した行6行 | 割合6/9で約66.7% |
| 急性期2〜5の条件 | 該当した行5行 | 割合5/9で約55.6% |
これは式を確かめるための説明用の数字で、実際の病棟の水準を示すものではありません。同じ9行をClaudeに処理させて、この3つの値が出るかを見る使い方が、式の最初の検算になります。
救急患者応需係数を足して基準との差を見る
割合が出たら、救急患者応需係数を足して割合指数にします。係数は、1病床あたりの年間の救急搬送の受入件数に0.005を掛けて求めます。
救急患者応需係数 = 年間の救急搬送受入件数 ÷ 病床数 × 0.005(上限は0.1)
割合指数 = 該当患者割合 + 救急患者応需係数病床数40床、年間の救急搬送受入が300件の病棟で、該当患者割合(割合①)が24%の例を考えます。
- 1病床あたりの受入件数は300 ÷ 40 = 7.5件
- 救急患者応需係数は7.5 × 0.005 = 0.0375、つまり3.75ポイント
- 割合指数は24% + 3.75% = 27.75%
必要度Ⅰで急性期一般入院料1の割合①の基準は28%です。この例では0.25ポイント足りません。基準との差を列で持たせると、「あと何人日で届くか」の目安もシートに出ます。
対象病棟が複数あるときは、入院した救急搬送患者の比率に応じて、受入件数を各病棟に按分します。シートに病棟別の受入件数の列を持たせ、按分の割合をセルに明示しておくと、検算で追えます。
検算で食い違いが出やすい5つの箇所
院内の集計値とClaudeが組んだ式の結果が合わないとき、原因はほぼ次のどれかに収まります。
落とし穴
B項目を毎日記録しているとは限らない
令和8年度改定では、入院5日目以降のB項目の測定を7日ごとに1回とし、それ以外の日は直近の評価で代替することが認められました。退院日は必ず測定します。エクスポートされたB得点が空欄の日があるとき、直近値で埋めた後に判定列を組みます。埋めずに判定すると、急性期一般入院料2〜5の条件でA得点とB得点を組み合わせる行が落ちます。
落とし穴
必要度ⅠとⅡで、A・C項目の元データが違う
必要度Ⅱでは、A項目とC項目をレセプト電算処理システム用コードで評価します。必要度Ⅰでは、A項目の専門的な治療・処置のうち薬剤を使用するものだけがコード評価の対象です。創傷処置と呼吸ケアは、必要度Ⅰでもコード一覧に掲げる診療行為を実施したときに限って評価の対象になります。どちらで集計した値かを、検算の前に揃えます。
落とし穴
C項目の日数窓が展開されていない
手術日の1行にしかC得点1が付いていない記録は、日数窓が展開されていません。開腹手術なら6日間、全身麻酔・脊椎麻酔の手術なら5日間、毎日C得点が1になります。手術日と窓の日数から、期待される行数を別に数えて照合します。
落とし穴
分母の対象患者が揃っていない
割合の分母は評価対象の延べ患者数です。除外の範囲は通知の評価の手引きで定められています。シート側で推測せず、院内システムが分母に入れている人日を基準にします。P列の集計対象に分母かどうかを反映させ、院内システムの分母人日と一致するかを先に見ます。
落とし穴
係数の入力が病棟単位になっていない
救急患者応需係数は病棟の病床数と受入件数で決まります。病院全体の数字を、そのまま病棟に当てはめた式を組むと、複数病棟の病院で割合指数がずれます。
食い違いの切り分けは、次の順で進めると早く終わります。
食い違いの切り分け
- Q分母(延べ患者数)は院内集計と一致しているか?答えがいいえのとき答えがはい
分母列を見直し、除外すべき入院が混ざっていないかを確かめます。
- Q該当人日の合計は院内集計と一致しているか?答えがいいえのとき答えがはい
A・B・C列の得点の入り方を、差が出た患者1人で追います。C項目の日数窓とB項目の代替評価が主な原因です。
- Q係数を足す前の割合は一致しているか?答えがいいえのとき答えがはい
病床数と年間受入件数の入力値を確認します。
割合指数まで一致しました
この時点で、基準との差の列を届出前の確認資料に載せられます。
患者データをClaudeに渡す前の線引き
Claude for Excelは、Pro、Max、Team、Enterpriseの各プランで使えます。使うブックの扱いには、いくつかの注意があります。
- 監査に関わる計算を、検証なしに任せるのは避けます。基準届出や実績報告に使う値は、Claudeの出力を手計算か別システムの値と突き合わせてから使います
- 高度に機微な、または規制対象のデータを、適切な管理なしに扱うのも避けます。日次記録の列は、仮IDと得点だけに絞ります
- 外部から受け取ったファイルには、隠れた指示が含まれることがあります。信頼できるブックだけで使います
- 上書きの前に警告が出ます。ただし、広範囲を編集させる前には、元のブックのコピーを作っておきます
チャット履歴は、ブラウザーのIndexedDBにローカル保存されます。入力と出力は、受け取りまたは生成から30日以内にバックエンドから削除されます。個々の組織の保持設定は引き継がれず、Enterpriseの監査ログにも含まれません。組織として使えるかどうかは、院内の情報セキュリティの規程で決めます。
同じ型の検算を別の領域で組んだ例に、学校の健康診断の未受診者と要精密検査の洗い出しがあります。匿名化の列の置き方が、この記事の仮IDにそのまま使えます。割合を段階ごとに出す組み方は、インボイス経過措置の仕入税額控除の割合別集計が近い構造です。Excel分析全般の使い方は、CoworkのExcel・スプレッドシート分析にまとめています。
まとめ
看護必要度の検算で大切なのは、式をClaudeに組ませる前に、割合の構成要素を自分で言えることです。判定条件は入院料によって違い、令和8年6月からは基準との比較に使うのが割合指数になっています。
Claudeに任せる範囲は、判定列と集計式、基準との差の列までにとどめます。分母の範囲、B項目の代替評価、C項目の日数窓の3つは、院内システムの定義と照らして人が確かめます。集計期間の3か月も同じです。その上で割合指数が院内の値と一致すれば、届出前の確認用の資料として使えます。