Claudeで法人保険の損金算入割合を確かめる — 提案書の数字を通達と突合
法人契約の定期保険の損金算入割合は、最高解約返戻率の区分で決まります。提案書の解約返戻金表から割合を表にし、記載と突合する手順です。
法人が契約する定期保険の保険料は、全額が損金になるとは限りません。損金に入る割合を決めるのは、保険期間の長さそのものではなく、解約返戻金の推移から出る最高解約返戻率です。
提案書の解約返戻金表が手元にあれば、この率と区分はClaudeで計算できます。本記事では、法人税基本通達9-3-5と9-3-5の2の線引きを判定の順番に落とし、年ごとの損金算入額を表にして提案書の記載と突合するまでを書きます。
損金算入の割合は何の数字で決まるか
定期保険と第三分野保険の保険料は、原則として期間の経過に応じて損金に入ります。これが法人税基本通達9-3-5の取扱いです。
ただし、保険期間が3年以上で、最高解約返戻率が50%を超える契約は、9-3-5の2が優先されます。保険料の一部が資産に計上され、その分だけ損金算入額が減ります。
ここで効くのは次の3つの数字です。
- 最高解約返戻率: 資産計上の割合を決める
- 保険期間: 資産計上期間と取崩期間の長さを決める
- 年換算保険料(通達上は末尾に「相当額」が付く語): 例外として従来の取扱いに戻れるかを決める
つまり、保険期間と年換算保険料から損金算入の割合が直接出るわけではありません。割合を引くのは最高解約返戻率で、保険期間は資産計上の年数、年換算保険料は例外の判定に使います。
最高解約返戻率と資産計上の割合
通達の表は、最高解約返戻率を3つの区分に分けています。損金算入の割合は、資産計上期間のあいだ、支払保険料から資産計上額を引いた残りです。
| 最高解約返戻率 | 資産計上の割合 | 資産計上期間のあいだの損金割合 |
|---|---|---|
| 50%超70%以下 | 資産計上の割合40% | 資産計上期間のあいだの損金割合60% |
| 70%超85%以下 | 資産計上の割合60% | 資産計上期間のあいだの損金割合40% |
| 85%超 | 資産計上の割合最高解約返戻率の70%(10年経過まで90%) | 資産計上期間のあいだの損金割合残り |
85%超の区分では、最高解約返戻率が90%なら、10年経過までの資産計上は90%の9割にあたる81%です。損金は19%になります。11年目以降は70%の63%を資産計上し、損金は37%です。
85%超では、資産計上期間の終わりが「最高解約返戻率となる期間の終了の日まで」です。その後の各期間で、解約返戻金の増加額を年換算保険料で割った値が70%を超える期間があれば、その期間の終わりまで延びます。資産計上期間が5年未満になるときは5年間とし、保険期間が10年未満なら保険期間の50%相当期間とします。
取崩期間は、解約返戻金が最も高い額となる期間(資産計上期間が5年などに延びたときはその期間)を経過した後から、保険期間の終了までです。
資産計上期間と取崩期間
50%超70%以下と70%超85%以下の区分は、期間の決め方が同じです。
- 資産計上期間: 保険期間の開始から、保険期間の40%相当期間を経過する日まで
- 取崩期間: 保険期間の75%相当期間を経過した後から、保険期間の終了まで
資産計上期間が終わると、その後の保険料は期間の経過に応じて損金に入ります。それまでに積み上げた資産計上額は、取崩期間に均等に取り崩し、取り崩した額も損金に入ります。
提案書を計算に回す前の4つの判定
率の計算より先に、そもそも9-3-5の2の対象かどうかを確かめます。順番を誤ると、計算が合っていても結論が逆になります。
9-3-5の2が使われるかの判定
- Q契約者が法人で、被保険者が役員または使用人(親族を含む)か?答えがいいえのとき答えがはい
9-3-5と9-3-5の2の対象外です。個人契約や他の保険種類は、別の通達で扱われます。
- Q保険期間が3年以上の定期保険または第三分野保険か?答えがいいえのとき答えがはい
9-3-5の2の対象外で、9-3-5の取扱い(期間の経過に応じた損金算入)になります。
- Q最高解約返戻率が50%を超えているか?答えがいいえのとき答えがはい
9-3-5の2の対象外で、9-3-5の取扱いになります。
- Q最高解約返戻率が70%超、または年換算保険料が30万円超か?答えがいいえのとき答えがはい
最高解約返戻率が70%以下で、かつ年換算保険料が30万円以下の例外に当たります。9-3-5の例によります。
9-3-5の2の表で資産計上額を計算する
次の節の列を使い、年ごとの損金算入額を出します。
4つ目の年換算保険料には、同じ被保険者について2つ以上の定期保険等に入っている場合の注意があります。通達は、それぞれの年換算保険料の合計額で30万円を判定すると書いています。提案書が1本分しか載せていないときは、既存契約の分を足して判定します。
受取人と被保険者の組み合わせ
通達は受取人でも取扱いを分けています。保険金の受取人が被保険者または遺族で、役員または部課長その他特定の使用人だけを被保険者にしている場合、保険料は役員または使用人への給与になります。9-3-5の2にも同じ注があり、表は使われません。
提案書の「契約者・被保険者・受取人」の欄は、Claudeに表へ起こさせる前に、人が目で確かめる項目です。
古い契約には使えない
9-3-5の2を含む改正通達は、令和元年7月8日以後の契約が対象です。それより前の契約は、改正前の取扱いと廃止された個別通達が引き続き使われます。
提案書の契約日が令和元年7月より前を前提にしていたら、本記事の表は当てはまりません。
Claudeに渡す材料と列の設計
提案書のPDFから、次の項目を拾います。保険の説明書面を読み解く手順は保険の意向把握・意向確認書面の下書きでも扱っています。解約返戻金は、提案書の推移表の列をそのまま使います。
- 契約日、保険期間(年)、払込期間(年)
- 年払保険料(特約分は別行にする)
- 年度ごとの解約返戻金
- 契約者、被保険者、保険金と給付金の受取人
- 法人の事業年度末
Claudeに渡せる形式にはPDFがあり、1回の会話で添付できるのは1ファイル500MB以下、20ファイルまでです。読み取った数字は取り違えがありうるため、推移表はExcelに転記して渡す方法もあります。どちらでも、元の数字との照合は人が行います。
Excelで進めるなら、Claude for Excelを使えます。Pro、Max、Team、Enterpriseのプランで一般提供されています。次の列を作ると、検算がしやすくなります。
| 列 | 内容 | 式の例 |
|---|---|---|
| A | 内容経過年数 | 式の例1, 2, 3 … |
| B | 内容累計保険料 | 式の例払込期間内は年払×年数 |
| C | 内容解約返戻金 | 式の例提案書の値 |
| D | 内容解約返戻率 | 式の例C÷B |
| E | 内容最高解約返戻率 | 式の例D列の最大値 |
式は次のように書きます。払込期間が10年で年払が100万円なら、B列は払込期間を過ぎると増えません。
B2: =年払保険料*MIN(A2, 払込期間)
D2: =C2/B2
E1: =MAX(D2:D31)通達は、解約返戻率を「保険契約時において契約者に示された解約返戻金」を、受け取るまでに支払う保険料の合計額で割った割合と定めています。D列の分母が累計保険料になっているのはそのためです。
年ごとの損金算入額を表にする手順
Claudeに頼む順番
- 1
提案書の値を表に起こさせ、人が目で照合する
契約日、保険期間、年払保険料、年度ごとの解約返戻金を読ませます。元のPDFの数字と、転記した列を一行ずつ見比べます。
- 2
最高解約返戻率と区分を出させる
E列の最大値と、50%・70%・85%のどの区分に当たるかを返させます。境界ちょうどの値は、通達の「超」「以下」で振り分けます。
- 3
例外の判定をさせる
年換算保険料(保険料の総額÷保険期間の年数)を計算させ、70%以下かつ30万円以下かを判定させます。
- 4
年ごとの資産計上額と損金算入額を出させる
区分に応じた資産計上期間と取崩期間で、年ごとの表を作らせます。
- 5
合計を検算する
損金算入額の合計が、支払保険料の総額と一致することを確かめます。
依頼文は、判定の順番と境界の扱いを先に書いておくと、Claudeが飛ばしにくくなります。
添付の提案書の解約返戻金表から、法人税基本通達9-3-5の2の
区分を判定してください。
1. 解約返戻率=解約返戻金÷それまでの累計保険料を年ごとに出す
2. 最高解約返戻率と、50/70/85%のどの区分かを答える
(70%ちょうどは「70%以下」、85%ちょうどは「85%以下」)
3. 年換算保険料=保険料総額÷保険期間(年)を出し、
最高解約返戻率70%以下かつ30万円以下か判定する
4. 該当しなければ、年ごとの資産計上額・損金算入額・取崩額を
表にし、損金算入額の合計が支払保険料の総額と一致するか示す
前提が足りない項目は、推測せず「不明」と書いてください。計算例: 最高解約返戻率72%の場合
説明用の仮の数字で、70%超85%以下の区分を計算してみます。年払保険料が100万円、保険期間と払込期間が20年、最高解約返戻率が72%、事業年度は契約日に合わせてある前提です。
年換算保険料は2,000万円÷20年で100万円です。30万円を超えるので、例外には当たりません。
資産計上期間は20年の40%で8年、資産計上額は100万円の60%で毎年60万円です。取崩期間は20年の75%にあたる15年を経過した後の5年になります。
| 経過年 | 資産計上 | 損金算入(保険料分) | 取崩による損金 | 損金算入合計 |
|---|---|---|---|---|
| 1〜8年 | 資産計上60万円 | 損金算入(保険料分)40万円 | 取崩による損金0 | 損金算入合計40万円 |
| 9〜15年 | 資産計上0 | 損金算入(保険料分)100万円 | 取崩による損金0 | 損金算入合計100万円 |
| 16〜20年 | 資産計上0 | 損金算入(保険料分)100万円 | 取崩による損金96万円 | 損金算入合計196万円 |
8年間で積み上げた資産計上額は480万円です。これを5年で均等に取り崩すので、取崩額は毎年96万円になります。
損金の合計は、40万円×8年と100万円×7年、196万円×5年を足して2,000万円です。支払保険料の総額と一致します。この一致が、検算の最低条件です。
提案書の記載と突き合わせる
計算が済んだら、提案書にある損金算入の説明と並べます。比べる項目は次のとおりです。
- 契約日: 令和元年7月8日以後か
- 最高解約返戻率: 提案書の表から出した値と、記載の値が一致するか
- 資産計上の有無: 提案書が全額損金と説明していても、区分が9-3-5の2に当たらないか
- 年ごとの損金額: 前半の年に損金が多く見える説明が、資産計上を引いた値か
- 事業年度: 契約日と事業年度が違うとき、資産計上期間の月数按分が入っているか
事業年度の途中で資産計上期間が終わる場合、通達は当期の支払保険料を事業年度の月数で割り、資産計上期間に含まれる月数を掛けます。1月未満の端数は切り捨てです。この計算はClaudeが組み込めますが、端数の扱いは必ず人が確かめます。損金に入れられる限度額を年度ごとに追う型は、繰越欠損金の控除限度額を計算する台帳と同じです。
落とし穴
契約内容を変更すると、変更後の内容で計算し直す
通達は、9-3-5の2の取扱いを保険契約時の内容で適用するとしています。ただし契約内容の変更があった場合、変更以後の期間は変更後の内容に基づき、9-3-4から9-3-6の2の取扱いを適用します。責任準備金の過不足を精算するときは、資産計上額の累積額の差額を調整します。保険金額の減額や保険期間の変更を挟む契約は、最初の提案書の計算をそのまま使えません。
特約の保険料も、特約の内容に応じて9-3-4、9-3-5、9-3-5の2の例によります。特約が付いた定期保険は、主契約と特約を別の行に分けて渡します。
払済保険への変更や契約転換をした場合は、9-3-7や9-3-7の2の扱いになります。提案が「今の契約を転換する」ものなら、この表の外の論点です。
Claudeに任せない部分
Claude for Excelの説明には、次の用途には勧めないという記載があります。人のレビューなしの最終的な納品物、検証のない監査上重要な計算、適切な管理のない高機密・規制対象のデータです。使えない機能は、データテーブルとマクロ・VBA操作です。
損金算入割合は決算と申告に直結します。Claudeの出力は、提案を検討するための見込み額として扱い、合計の一致や区分の境界は、人が検算します。保険商品としての向き不向きや、節税になるかの判断は、通達の適用判定とは別です。税理士や保険会社の担当者に、同じ前提で計算した数字を見せて確かめる使い方が合います。
被保険者の氏名など個人情報を含む提案書は、会社の取り扱いルールを確認してから渡します。
損金の線引きを確かめる点では、交際費と会議費の判定も同じ考え方で進められます。
まとめ
提案書の損金算入の説明は、最高解約返戻率、契約日、年換算保険料の3点から再現できます。割合そのものは、保険期間ではなく最高解約返戻率の区分が決めます。
Claudeには、解約返戻率の計算、区分の判定、年ごとの表づくりを任せられます。契約者と受取人の組み合わせ、契約内容の変更、事業年度の端数は、人が見る項目として残ります。損金算入額の合計が保険料の総額に一致するかは、毎回確かめる点検です。