Claudeで派遣の労使協定方式の一般賃金と派遣労働者の賃金を比べる手順
労使協定方式の派遣元が、職業安定業務統計の求人賃金から一般賃金を出し、対象派遣労働者の賃金と比べる流れをClaudeで検算する手順。端数処理と算入できない賃金の落とし穴つき。
労使協定方式の派遣元が毎年確かめるのは、協定に書いた賃金(協定対象派遣労働者の賃金。以下は対象派遣労働者)が、一般賃金の額と同額以上かどうかです。一般賃金は「職種別の基準値 × 能力・経験調整指数 × 地域指数」で出し、時給に換算した派遣労働者の賃金と1円単位で比べます。
この比較は手順が決まっていて、電卓でも解けます。ただ、職種の選び方、端数の切り上げと切り捨て、算入できない賃金の仕分けで、毎年どこかが食い違います。Claude for Excelに数式と抜けを点検させると、食い違いの場所が早く見つかります。この記事では、職業安定業務統計の求人賃金(局長通達の別添2)を基準にする場合を例に、一般賃金の算出から比較、Claudeへの頼み方までを書きます。
令和8年10月に待遇差の説明に関する明示事項が増えた点は、同一労働同一賃金の待遇差の説明をProjectsで下書きする手順に続きがあります。
一般賃金との比較は3つに分かれる
労使協定方式は、派遣元が過半数労働組合または過半数代表者と結ぶ労使協定で、派遣労働者の待遇を決める方式です。協定に定める賃金は、同種の業務に同一の地域で働く一般労働者の平均的な賃金と同等以上にします。あわせて、昇給規程など賃金が改善される仕組みも要ります。
「一般の労働者」とは、無期雇用でフルタイムの労働者を指します。比較は賃金をひとまとめにせず、次の3つに分けて進みます。
一般賃金の3つの比較
基本給・賞与・手当等
職種別の基準値、能力・経験調整指数、地域指数から一般基本給・賞与等を出します。通勤手当と退職金は含めません。
通勤手当
実費を支給して同等以上とみなす方法と、時給換算で67円以上にする方法を、労使で選びます。
退職金
退職手当制度で比べる方法、一般基本給・賞与等の5%以上を支払う方法、中小企業退職金共済制度等に加入する方法から選びます。
これらは令和9年度適用の局長通達(令和8年8月28日付)の定めです。67円と5%の数値は、通達ごとに見直されます。令和8年度適用分を使う協定の点検では、令和8年度の通達本文で数値を確かめ直してください。
別添2の数値はどう作られているか
職業安定業務統計の求人賃金を基準にする場合、別添2の「基準値(0年)」は、ハローワークが受け付けた無期雇用・フルタイムの求人賃金の下限額の平均から作られています。月額を時給にするときの式は「月額 × 12 ÷ 52 ÷ 40」です。
求人賃金には賞与が入っていません。そこで、賃金構造基本統計調査の勤続0年の特別給与から出した賞与指数「1.02」を掛けて、賞与相当分を加えています。基本給と定期的に支払われる手当は含まれ、通勤手当は含まれません。
求人賃金は勤続年数別に分けられないため、下限額の平均を「未経験者の賃金額」にあたる勤続0年の水準として置いています。ここを読み違えると、能力・経験調整指数の意味がずれます。
能力・経験調整指数は、勤続0年を100とした次の表です。
| 勤続年数 | 指数 |
|---|---|
| 0年 | 指数100.0 |
| 1年 | 指数117.5 |
| 2年 | 指数125.3 |
| 3年 | 指数130.0 |
| 5年 | 指数136.2 |
| 10年 | 指数139.8 |
| 20年 | 指数181.4 |
この年数は、派遣労働者の実際の勤続年数ではありません。対象派遣労働者の業務の内容や難易度が、一般の労働者の勤続何年目にあたるかを、労使で協議して選びます。勤続5年の人に必ず「5年」を当てる必要はなく、低い指数を賃金を下げる目的で使うことは認められません。
地域指数は、全国計を100として、都道府県とハローワークの管轄地域ごとに示されています。派遣先の事業所その他派遣就業の場所を含む地域のものを選びます。全国計の「100.0」をそのまま使うことは、認められません。
一般賃金を仮の数値で計算する
別添2の表には、基準値に能力・経験調整指数を掛けた勤続年数ごとの数値が載っています。一般基本給・賞与等は、その数値に地域指数を掛けて、1円未満を切り上げた額です。
仮の数値で一度通します。派遣先がある地域の地域指数を96.5、選んだ職種の「勤続3年」欄の数値を1,820円とします。
一般基本給・賞与等 = 1,820 × 96.5 ÷ 100 = 1,756.3 → 切り上げて 1,757円端数の扱いには決まりがあります。局長通達は、別添の数値(基準値 × 指数)に地域指数を掛けて算出するよう定めています。基準値、指数、地域指数を自分で掛け直すと端数がずれることがあるため、別添の数値から始めます。
基準値(0年)が地域別最低賃金や特定最低賃金を下回る職種では、その最低賃金を基準値(0年)に置き換えたうえで、指数を掛けます。Q&Aは、比べる最低賃金を「実際に賃金が支払われる時点で適用される額」と答えています。年度の途中で最低賃金が改定されたら、基準値の確認が改めて必要になります。最低賃金額との照合は、最低賃金の改定後に賃金割れを点検する手順と同じ形で台帳に組めます。
対象派遣労働者の賃金を時給にそろえる
比較の相手は、協定に書いた対象派遣労働者の賃金です。基本給、賞与、手当を合算して時給に換算し、1円未満は切り捨てます。一般賃金は切り上げ、派遣労働者側は切り捨てと、端数の向きが逆である点に注意してください。
月給制の換算は、Q&Aが2つの式を挙げています。
- 月給 × 12か月 ÷ 52週 ÷ 週の所定労働時間数
- 月給 ÷ その月の所定労働時間数(月で変わるなら年間の月平均の所定労働時間数)
基本給が月給280,000円、職務手当が月10,000円、週の所定労働時間が40時間という仮の人で計算します。
(280,000 + 10,000) × 12 ÷ 52 ÷ 40 = 1,673.07… → 切り捨てて 1,673円先ほどの一般基本給・賞与等1,757円と比べると、1,673円は84円足りません。この場合は、賃金テーブルの改定や、能力・経験調整指数の見直しを労使で協議することになります。指数の当てはめを、不足を埋めるために低く見積もる方向へ動かすのは認められません。
比較に入れる賃金と外す賃金の線引きも決まっています。
- 労働基準法上の賃金であれば、基本給のほか諸手当も入る
- 時間外・休日・深夜の労働にかかる手当等は入らない
- 宿日直手当と交替手当も「等」に含まれる
- 固定残業代は、そのままでは対象派遣労働者の賃金に入れられない
- 実際の時間外労働に相当する割増賃金を超えて支払った固定残業代の部分は、労使協議のうえで入れる余地がある
賞与や業績連動の手当は、一人ひとりへの実支給額でなくても構いません。直近の事業年度の対象派遣労働者の平均額、支給見込み額の平均額、標準的な対象派遣労働者への支給額のいずれかを、労使で選べます。歩合給や変動手当の割増賃金との切り分けに迷うときは、歩合給の割増賃金をClaude for Excelで検算する手順の考え方が使えます。
通勤手当と退職金を合算するときの条件
通勤手当と退職金は、基本給・賞与・手当等とは別に比べるのが原則です。合算してまとめて比較できるのは、条件を満たす場合に限られます。
- 通勤手当は、時給換算で67円以上にする方法を選んだ場合に限り、基本給・賞与・手当等と合算できる
- 退職金は、一般基本給・賞与等の5%以上を支払う方法を選んだ場合に限り、合算できる
- 実費支給を選んだ通勤手当や、退職手当制度で比べる退職金、中小企業退職金共済制度等への加入は、合算できない
- 合算の組み合わせは、基本給等+通勤手当、基本給等+退職金、三つ全部の3通りだけ
たとえば一般基本給・賞与等が1,757円で、通勤手当を67円の方法、退職金を5%の方法で選ぶなら、5%は87.85円で、切り上げて88円です。三つ合算の比較では、1,757円+67円+88円の1,912円と、対象派遣労働者の三つの合計を比べます。
Claudeに点検させる
台帳の数式と仮定を点検する用途に、Claude for Excelが向いています。Claude for Excelは、開いているブックのセルについて質問でき、数式の関係を保ったまま仮定を調整できます。
台帳は、職種ごとに次の列を持たせます。
| 列 | 内容 |
|---|---|
| A | 内容対象派遣労働者の区分 |
| B | 内容選んだ職種(別添1か別添2、小分類名) |
| C | 内容能力・経験調整指数の年数と理由 |
| D | 内容別添の数値(基準値 × 指数) |
| E | 内容地域指数と地域(都道府県かハローワーク) |
| F | 内容一般基本給・賞与等(切り上げ) |
| G | 内容派遣労働者の時給換算額(切り捨て) |
| H | 内容差額と判定 |
F列とG列には、端数の向きを式で固定します。
F2: =ROUNDUP(D2*E2/100,0)
G2: =ROUNDDOWN((基本給+手当)*12/52/週所定時間,0)
H2: =IF(G2>=F2,"同等以上","不足")Claudeへの頼み方は、列の意味、判定基準、直さずに指摘だけ返す指示の順に書きます。
このブックの「一般賃金比較」シートは、1行が1つの対象派遣労働者の区分です。
D列は別添の数値、E列は地域指数、F列は切り上げ後の一般基本給・賞与等、
G列は派遣労働者の時給換算額(切り捨て)です。
次を確認し、数式は書き換えずに指摘だけ返してください。
1. F列がROUNDUP、G列がROUNDDOWNになっているか、全行で確認する
2. H列が「不足」の行を、差額の大きい順に並べる
3. G列の元の賃金に、時間外・休日・深夜の手当、通勤手当、固定残業代が混ざっていないか
4. E列の地域指数が、全国計の100.0になっている行を挙げる
5. 同じ協定の中で、B列の統計(別添1と別添2)が混在していないか最後の観点5は、通達が使い分けに理由の記載を求めているためです。数値の取り違えは機械的に見つけられても、職種の選び方が妥当かどうかは、労使の協議で決まる部分です。
条件を覚えさせておく
毎年同じ前提を打ち直さなくて済むよう、Projectsのプロジェクト指示に点検の約束事を置けます。Projectsは、プロジェクトごとに指示とナレッジを持たせられる機能です。
# 労使協定方式 一般賃金の点検
- 一般基本給・賞与等は、別添の数値 × 地域指数を計算して1円未満切り上げ
- 対象派遣労働者の賃金は時給換算して1円未満切り捨て
- 時間外・休日・深夜の手当、宿日直手当、交替手当、固定残業代は賃金に入れない
- 適用年度の局長通達の数値以外は使わない(67円、5%、1.02、指数表も年度の通達で確認)
- 別添の数値や通達の条文は、私が貼ったものだけを根拠にする
- 数値は計算根拠と合わせて返し、判断は私に戻す最後から2番目の指示が大事です。基準値や地域指数をClaudeの記憶から答えさせると、年度違いの数値が混ざります。厚生労働省が公開する別添のExcel版を貼って、そこにある数値だけで計算させます。
厚生労働省のページには、対象派遣労働者の賃金が一般賃金と同等以上かを確かめる「賃金比較ツール」も公開されています。ツールの結果とClaudeの台帳の差が出た行を調べると、端数処理や職種の選び違いの発見につながります。
人が決める箇所は3つある
Claudeが計算を速くしても、次の3つは労使の協議で決めることで、Claudeには決められません。
- 職種の選択:対象派遣労働者の「中核的業務」に最も近いものを選ぶ。賃金構造基本統計調査(別添1)と職業安定業務統計(別添2)のどちらを使うかも労使で決める
- 能力・経験調整指数の年数:業務の内容や難易度が勤続何年目に相当するかを判断する
- 地域指数の選択:派遣先の事業所その他派遣就業の場所を含む都道府県かハローワークの指数を選ぶ
賃金を下げる目的で、職種、統計、指数、地域を恣意的に使い分けることは、法の趣旨に反するとされています。複数の地域に派遣する場合に、東京と埼玉の地域指数の平均を使うことも認められません。派遣先の事業所ごとに、その所在地の指数で一般賃金を出して比べます。
同じ協定で別添1と別添2を職種ごとに使い分けるときは、その理由を協定に書きます。別添2の職種を選ぶ場合に、大分類と中分類以下を混ぜて使うときも同様です。
派遣労働者が実際に行う業務と、これらの統計の職種のあいだにずれがある場合は、一定の要件を満たす民間統計(独自統計)を使う道があります。独自統計を使うときは、その理由を協定に記載します。調査の実施には厚生労働省への協議が要ります。自ら統計調査を行う経済団体や業界団体向けの申請書は、承認を希望する日の2か月前までに出すよう、厚生労働省のページが案内しています。
年度が替わったときと有効期間の途中
一般賃金の通達は毎年度更新され、令和9年度適用分は令和9年4月1日から令和10年3月31日までが対象です。4月1日をまたぐ有効期間の協定は、結び直すかどうかを次のように分けます。
- 協定の賃金が新しい一般賃金と同等以上で、賃金を変えない場合は、「同等以上の額であることを確認した旨の書面」を協定書に添付する
- 同等以上にならないなど、賃金を変える場合は、協定を結び直す
この確認は、令和9年度の見直しに関するQ&Aが示す扱いです。台帳を年度ごとに複製して、別添の数値、地域指数、適用日を差し替えれば、確認書の根拠表としてそのまま使えます。確認書の様式例は、厚生労働省のページで公開されています。
一般通勤手当の額が下がったときは、それを理由に協定の通勤手当を引き下げてよいわけではありません。見直し前の協定の額を基礎に、労使で十分に協議したうえで決めます。実際に引き下げるなら労働条件の不利益変更となり得て、労働契約法第9条に基づき、原則として労使双方の合意が要ります。
一般賃金の額が下がった年も、同じ考え方です。通達は、従前の協定の額を基礎に協議することが望ましいとしています。
令和8年10月の改正で明示事項が増えた
令和8年10月1日から、派遣労働者として雇い入れようとするときと、労使協定方式で労働者派遣をしようとするときに、「待遇の相違の内容及び理由等について説明を求めることができる旨」の明示が必要になりました。様式例は、厚生労働省のページに用意されています。
一般賃金との比較表は、この説明を求められたときに答える根拠にもなります。台帳に職種、指数、地域指数の選択理由を残しておくと、説明の下書きがそのまま作れます。協定の締結や同意書に関わる別の手続は、賃金のデジタル払いの労使協定と同意書の下書き手順にもあります。
派遣事業の許可の更新に必要な書類は、別の点検が要ります。労働者派遣事業の許可更新の書類点検も合わせて確認してください。
まとめ
比較の計算はClaudeに任せやすく、選択は人に残ります。台帳に端数の向きを式で固定し、選択理由を列に書いておけば、毎年の差し替えは別添の数値と地域指数の入れ替えで済みます。不足が出た行は、指数や職種を動かして帳尻を合わせるのではなく、賃金テーブルの側で対応を協議します。