Claudeで保険の意向把握・意向確認書面を下書きする手順 — 代理店向け
面談メモから意向確認書面の記載事項を整理し、特記事項と確認設問の案までClaudeに下書きさせる手順です。意向は顧客の言葉から取り、推定と推奨は人が決める線引きを示します。
意向確認書面の下書きは、面談メモをClaudeに渡して「顧客の意向」「プランとの対応」「特記事項」の3欄に仕分けさせる使い方が向いています。書面を最初から作らせるのではなく、顧客が口にした言葉を欄に収める作業を任せる形です。
一方で、顧客が何を望んでいるかを決める作業と、どの商品が合うかを判断する作業は、募集人の仕事のまま残ります。この記事では、保険業法と監督指針が書面に求める記載事項を軸に、Claudeに渡す素材、指示文の例、人が確認する箇所を順に示します。
意向把握と意向確認書面は、法律が何を求めているか
意向把握・確認は、保険業法第294条の2が保険会社と保険募集人に課す義務です。条文は3つの動作を求めています。
- 顧客の意向を把握する
- その意向に沿った提案と、保険契約の内容の説明を行う
- 契約の締結時に、意向と契約内容が合致していることを顧客が確認する機会を設ける
監督指針(II-4-2-2(3))は、この流れを具体化しています。個別プランを説明・提案する前に意向を把握し、プランが意向とどう対応するかも説明します。最終的な意向が固まった段階で、当初の意向と比べて違いがあれば相違点を確認します。契約の申込み前には、申込内容と意向が合致しているかを確かめる「意向確認」を行います。
意向確認書面は、この最後の確認の機会を作るための書面です。保険会社または保険募集人が顧客の意向に関する情報を集め、保険商品が意向に合致することを確認する書面として作成し、顧客に交付したうえで保険会社等側でも保存します。
Claudeが下書きできるのは、この書面の文案と、書面に載せる情報の整理です。意向を把握する面談そのものは、人が顧客と行います。
意向確認書面に書くべき4つの記載事項
監督指針は、意向確認書面に次の事項が記載されているかを見ます。下書きの枠組みは、ここから作るのが近道です。
| 記載事項 | 内容 | Claudeに任せやすさ |
|---|---|---|
| 顧客の意向に関する情報 | 内容顧客が望む保障の分野、貯蓄部分の要否、保障期間・保険料・保険金額の希望や優先事項 | Claudeに任せやすさメモからの抽出は任せやすい。推定は人が決める |
| 保険契約の内容との対応 | 内容提案した契約が、その意向にどう対応しているか | Claudeに任せやすさ設計書と意向を突き合わせた対応表の案を作れる |
| 特記事項 | 内容意向を満たさない部分、強い要望や個別性の強い意向、確認に必要な情報が提供されなかった場合 | Claudeに任せやすさ候補の洗い出しは任せやすい。採否は人が決める |
| 保険募集人の氏名・名称 | 内容書面の作成責任者を顧客に明らかにする | Claudeに任せやすさ書面ごとに人が入れる |
特記事項については、監督指針が3つの例を挙げています。契約内容では意向の全部または一部を満たさない場合はその旨。顧客が特に強く望んだ意向や、個別性の強い意向があればその情報。意向に合致するかを確認するための最低限の情報が提供されなかった場合はその旨です。
「意向に合わない点を書く」欄がある、というのが書面の肝です。Claudeに下書きさせると全体が前向きな文面になりがちなので、この欄は意識して指示に入れます。
手順1: 素材を整える — 意向は「顧客が言ったこと」だけにする
Claudeに渡す素材は、次の3種類に絞ります。
- 面談メモやアンケートの回答(顧客が言ったこと・書いたこと)
- 提案した個別プランの設計書(保障内容、保険料、保険金額、保障期間)
- 自社で使っている意向確認書面のひな形
監督指針の対象整理は商品区分で分かれています。第一分野と第三分野(生命保険・医療保険など)では、望む保障の分野、貯蓄部分の要否、保障期間・保険料・保険金額の希望や優先事項を把握します。変額保険など投資性商品では、投資の意向に関する情報も含まれます。第二分野(自動車保険・火災保険など)では、望む補償の種類、主な補償内容、補償期間・保険料・保険金額の希望が対象です。
メモを渡すときは、この区分に合わせて見出しを付けておくと、後の仕分けが安定します。
個人情報の扱いにも触れておきます。監督指針は、顧客の意向に関する情報を収集・提供するときに、個人情報保護法(利用目的の明示や第三者提供の同意など)を守る必要があると注記しています。Claudeに入力する前に、氏名・住所・証券番号などは「顧客A」「契約X」のような仮名に置き換えます。Anthropicのサポート記事も、健康記録や財務情報のような機微な情報の共有には慎重になるよう案内しています。告知に関わる健康情報は、仮名にしたうえでも入力しない運用が安全側です。入力の線引きはプライバシーポリシーの改定案を外部送信規律に沿ってClaudeで下書きする手順と、Claudeに医療保険証券を読ませて保障内容を見直すの個人情報の節が参考になります。
手順2: 意向を抽出させる — 出典の引用付きで
最初の依頼は、書面を作ることではなく、メモから意向を取り出して根拠を付けることです。次の指示文は、そのまま貼れる形の例です。
あなたは保険代理店の事務を補助します。以下の面談メモから、
顧客が自分の言葉で述べた意向だけを抜き出してください。
ルール:
- 各項目の末尾に、根拠となるメモの原文を「」で引用する
- 顧客が述べていない意向を、年齢・家族構成などから補って書かない
- 意向が読み取れない項目は「メモに記載なし」と書く
- 保険商品の優劣や推奨は書かない
出力する項目:
1. 望む保障・補償の分野
2. 貯蓄部分の要否
3. 保障(補償)期間・保険料・保険金額の希望と優先事項
4. 顧客が強く要望した点、個別性の強い事情
[面談メモをここに貼る]「メモに記載なし」を許す指示が大事です。これがないと、Claudeは空欄を埋めようとして、顧客が言っていない意向を書き込む可能性があります。
監督指針は、年齢や家族構成などの顧客属性から意向を推定する方法も認めています。ただしその場合、設計書など交付書類の目立つ場所に、推定した意向とプランの関係を分かりやすく記載して説明するとされています。つまり推定は「してよいが、推定したと明示する」ものです。Claudeが黙って補った意向は、この説明と矛盾します。推定を使う場合は、推定した意向を募集人が選び、「推定」と区別して書く運用にします。
手順3: 意向とプランの対応表を作らせる
次に、抽出した意向と設計書を並べ、対応を表にさせます。
上の意向一覧と、添付した設計書を突き合わせて、
次の列の表を作ってください。
| 顧客の意向 | 該当するプランの内容(設計書の記載) | 対応状況(満たす/一部満たす/満たさない/設計書に記載なし) |
ルール:
- 「該当するプランの内容」には設計書の数値・特約名をそのまま書く
- 「満たす」と判定した根拠が設計書にない場合は「設計書に記載なし」とする
- 判断に迷う行は末尾に「要確認」と付ける対応状況の列に「満たさない」「一部満たす」を設けたのは、先の特記事項に直結するからです。書面の記載事項は「契約内容が意向とどう対応しているか」を求めているので、この表がそのまま書面の2欄目の素案になります。
表を受け取ったら、設計書の数値とClaudeの転記が一致しているかを募集人が1行ずつ見ます。保険料や保険金額の転記ミスは、顧客が確認する書面にそのまま残るためです。
手順4: 特記事項と確認設問の案を作らせる
対応表の「満たさない」「一部満たす」「要確認」の行から、特記事項の候補を作らせます。
対応表の「満たさない」「一部満たす」「要確認」の行について、
意向確認書面の特記事項欄に載せる候補文を作ってください。
- 顧客に向けた平易な文にする
- 「意向の全部または一部を満たさない」場合はその旨が分かる書き方にする
- 顧客が強く要望した事項は、要望の内容を省略せず書く監督指針は、顧客が確認すべき事項について、書面に確認のための設問を設けるなどして再確認を促す工夫を求めています。例示されているのは、主契約や特約ごとの具体的な保障内容、保険料(払込方法・払込期間を含む)、保険金額、保障期間、配当の有無です。この項目を並べたチェックボックス形式の設問をClaudeに起こさせると、ひな形の整備が速く進みます。
- 主契約・各特約の保障内容は、希望と一致していますか
- 保険料、払込方法、払込期間は、希望の範囲に収まっていますか
- 保険金額と保障期間は、希望と一致していますか
- 配当の有無を理解していますか
設問の文面は例です。実際には、扱う商品と自社のひな形に合わせて調整します。
下書きから交付までの流れ
- 1
意向を抽出する
面談メモから、顧客が述べた意向だけを根拠の引用付きで取り出します。
- 2
プランとの対応を表にする
設計書の記載と意向を突き合わせ、満たさない点を表に残します。
- 3
特記事項と設問の案を作る
満たさない点と強い要望を特記事項に、再確認が要る項目を設問にします。
- 4
募集人が検証して顧客に確認を求める
数値・意向・氏名を人が確かめ、顧客に事実に反する記載がないかを見てもらいます。
手順5: 人が確かめる4か所
Claudeの下書きは、そのまま書面になりません。募集人が次の4点を確かめます。
- 顧客の意向の欄に、顧客が述べていない内容が入っていないか(手順2の引用と照合)
- 設計書の数値・特約名と書面の記載が一致しているか
- 意向に合わない点が、特記事項に漏れなく載っているか
- 募集人の氏名・名称が、作成責任者として正しく記載されているか
監督指針は、書面の記載のうち特に顧客の意向に関する情報(意向の欄と特記事項の欄)について、顧客に事実に反する記載がないかを確認し、顧客から修正を求められたら速やかに対応することを求めています。下書きの段階で、顧客に見せる前にこの修正が入る前提で作っておくと、運用が崩れません。
意向確認書面の確認・交付についても、指針はいくつかの運用を示しています。
- 書面は契約の締結までに顧客に確認してもらい、確認後は遅滞なく顧客へ交付する
- 申込書と一体の書面にしてもよいが、意向確認書面にあたる部分は明確に区別して記載する
- メールなど電磁的方法で交付する場合は、顧客の了解を得ること、印刷または保存が可能であることが必要
- 即時の契約締結を求められた場合や電話募集で書面を即時に渡せないときは、記載すべき内容を口頭で確認し、書面を事後に遅滞なく交付する形でも足りる
Claudeに任せる文案は、これらの運用に合わせて「交付のタイミング」「口頭確認後の交付」の文言まで含めると実用的です。たとえば、口頭確認後に交付する場合の送付状の文面も、同じ手順で下書きさせられます。
Claudeに任せない線引き
次の判断は、下書きの対象に含めません。
| 作業 | 理由 |
|---|---|
| 顧客の意向を推定して書き込むこと | 理由推定するなら、推定と明示して説明する必要がある(監督指針の注) |
| 商品の優劣や、顧客への推奨の判断 | 理由意向と契約内容の合致を、顧客が確認する書面の趣旨に反する |
| 二以上の所属保険会社を持つ場合の比較推奨の理由づけ | 理由比較推奨販売の理由の説明は、体制整備の対象として別に定められている |
| 保険募集人の氏名の記入、書面の最終承認 | 理由作成責任者を明らかにする記載事項 |
| 顧客が書面を希望しない場合の対応 | 理由書面の役割を説明し、希望しなかったことを事後に検証できる態勢が必要 |
比較推奨販売は、複数の保険会社を扱う乗合代理店の論点です。顧客の意向に沿った比較可能な商品の概要を明示し、求めに応じて内容を説明することが指針に挙がっています。商品の絞り込みの理由づけまでClaudeに書かせる運用は、この説明責任を人が負う前提と合いません。
落とし穴
意向を埋めてしまう下書きは、書面の目的に反する
意向確認書面は、顧客が「自分の意向に合っているか」を最後に確かめるための書面です。Claudeが年齢や家族構成から意向を補って書くと、顧客が述べていない意向を顧客に確認させる形になります。指示文に「メモに記載なし」を許すルールを入れ、引用付きで抽出させると、この混入を目で追えます。
意向把握に使った帳票を残す
監督指針は、意向把握の適切な遂行を確認できる措置として、意向把握に用いた帳票(アンケートや設計書など)を保存することを例に挙げています。対象は、顧客の最終的な意向と比較した当初の意向に係るものと、最終的な意向に係るものです。
Claudeで下書きするときは、使った面談メモと設計書、確定した意向確認書面をひとまとまりで保存し、どのメモから書面ができたかを後から追えるようにします。Claudeとのやり取りの履歴は、募集人が確認した最終の書面とは別の資料です。保存の対象は、顧客が確認した書面と、元になった帳票の側にあります。
Projectsで指示文を固定する
同じ指示文を毎回貼る手間は、ClaudeのProjectsで減らせます。サポート記事によれば、Projectにはプロジェクト指示を設定でき、口調や特定の役割・業界の視点で答えさせるといった調整ができます。意向抽出のルール(「メモに記載なし」を許す、推奨を書かない)とひな形をProjectの指示に入れておくと、募集人が変わっても同じ基準で下書きが出ます。
ただし、Projectに顧客の個人情報を残さないよう、メモは仮名化したものだけを入れます。Projectの指示やファイルはメンバーに共有される設定もあるため、共有範囲はあらかじめ確かめます。
更新・変更の契約や少額の契約はどう扱うか
意向把握・確認は、すべての契約で同じ重さではありません。
- 既存契約の更新や一部変更では、実質的な変更に当たる場合に、その変更部分について意向把握・確認を行う
- 年間の保険料が5,000円以下の契約では、意向把握を商品の内容・特性に応じて適切に行う
- 事業活動に伴う損害をてん補する保険契約では、顧客の保険に関する知識や商品特性に応じて行う
自社のひな形を複数持つときは、更新用・事業者向け用など、種類ごとに指示文のルールを分けて保存しておくと、Claudeが一律の質問を当てはめるのを避けられます。どの契約に簡略化が許されるかの判断は、社内規則と保険会社の指示に従い、人が決めます。
手順を運用に載せるときの注意
- 保険会社から提供される書面や様式がある場合は、それを優先します。Claudeの文案は、その欄に入れる文章の案として使います。
- 書面の記載事項や収集項目は、苦情・相談の内容や商品・販売方法の変化を踏まえて検証し、必要に応じて見直す措置が求められています。Claudeの指示文も同じ周期で見直します。
類似の「記録を事実と所見に分ける」構成は、サービス等利用計画案を意向・事実・所見に分けて下書きする手順にもあります。契約の書面を点検する場面なら、クーリング・オフ書面の記載事項と期間をClaudeで点検する手順が近い使い方です。
まとめ
意向確認書面でClaudeが役に立つのは、顧客の言葉を欄に仕分ける作業と、満たさない点・確認設問の候補を洗い出す作業です。意向を決めること、商品を勧めること、書面を承認することは募集人の側に残ります。
最初の1本目は、実際の面談メモ1件を仮名にして手順2の指示文に通し、「メモに記載なし」がどれだけ出るかを見てください。その数が、面談で意向を聞き取れていなかった項目の数です。下書きの精度より先に、聞き取りの抜けが見えてきます。