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特定空家の勧告通知書をClaudeで段階別に下書きする手順と線引き

特定空家の勧告通知書をClaudeで段階別に下書きする手順と線引き

空家等対策特別措置法の助言・指導・勧告・命令を段階別にClaudeのプロジェクトへ整理し、現地調査メモから通知文書の下書きと住宅用地特例の説明文を作る手順です。

特定空家等の所有者へ出す通知文書は、助言・指導・勧告・命令と段階が進むたびに、根拠条文も記載事項も変わります。Claudeのプロジェクトに段階別の条文と記載事項を置いておけば、現地調査メモから各段階の下書きを同じ型で起こせます。ただし、特定空家等に当たるかどうかの判断と、文書を出す決裁は市町村長側の仕事です。Claudeに任せるのは、条文に沿った下書きと点検までです。

この記事は、空家等対策の担当になった自治体職員を主な読者に想定しています。相続した空き家の所有者側の手続は空き家の3000万円特別控除の要件、所有者が自分で行う点検の記録は空き家管理の点検記録と修繕履歴の整理で扱っています。

段階ごとに何を書き、どの条文に立つか

空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特措法)は、対象を2つに分けています。「特定空家等」は第2条第2項の定義で、倒壊等で著しく保安上危険となるおそれのある状態、著しく衛生上有害となるおそれのある状態、著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全のために放置が不適切な状態にある空家等です。もう1つの「管理不全空家等」は第13条第1項にあり、そのまま放置すれば特定空家等に該当するおそれのある状態の空家等を指します。

通知文書は、この2つの対象と段階の組み合わせごとに根拠が違います。

段階根拠通知に入れる中身
立入調査の事前通知根拠第9条第3項通知に入れる中身立ち入る旨を、立入りの5日前までに所有者等へ通知
管理不全空家等への指導根拠第13条第1項通知に入れる中身特定空家等に該当することを防ぐために必要な措置
管理不全空家等への勧告根拠第13条第2項通知に入れる中身修繕、立木竹の伐採などの具体的な措置
特定空家等への助言・指導根拠第22条第1項通知に入れる中身除却、修繕、立木竹の伐採などの措置
特定空家等への勧告根拠第22条第2項通知に入れる中身相当の猶予期限を付けた措置
命令前の通知書根拠第22条第4項通知に入れる中身命じようとする措置、その事由、意見書の提出先と提出期限
命令根拠第22条第3項通知に入れる中身相当の猶予期限を付けた措置

立入調査の事前通知は、所有者等に通知することが困難なときは不要とされています(第9条第3項ただし書き)。

手順

特定空家等に対する措置の進み方

  1. 1

    助言または指導

    第22条第1項。除却、修繕、立木竹の伐採などの措置をとるよう求めます。

  2. 2

    勧告

    第22条第2項。助言または指導をしてもなお状態が改善されないと認めるときに、相当の猶予期限を付けて出します。

  3. 3

    命令前の通知書と意見書の機会

    第22条第4項。勧告を受けた者が正当な理由なく措置をとらず、特に必要があると認めるときに命令へ進みます。命令の前に、通知書で意見書と有利な証拠を出す機会を与えます。

  4. 4

    命令・公示・代執行

    第22条第3項の命令、第13項の標識の設置などによる公示、履行されないときの行政代執行(第9項)へ続きます。

段階ごとに「前の段階を経ていること」が条文の要件になっています。勧告の文書には、先行する助言または指導の事実を書き込む欄が要ります。命令前の通知書は、勧告に係る措置が履行されなかった経緯を前提にします。

Claudeのプロジェクトに置く資料と指示

Claudeのプロジェクトは、独立した作業スペースです。ファイルや文脈をアップロードする知識ベースと、プロジェクトごとの指示を持てます。無料アカウントでも使え、作れるプロジェクトは5つまでです。知識ベースが文脈の上限に近づくと、有料プラン(Pro、Max、Team、Enterprise)では検索拡張生成(RAG)が自動で有効になり、容量が最大10倍まで広がります。

知識ベースに置くのは、次の3種類に絞ります。

  • 空家特措法の第2条、第9条、第13条、第14条、第22条、第30条の本文
  • 自分の市町村の空家等対策計画と、特定空家等の判断基準にした庁内資料
  • 過去に実際に出した通知文書のひな形(所有者名や所在地を伏せたもの)

条文は、e-Govの法令検索から本文をコピーしてテキストにして置きます。最新の改正が反映された版を使うため、置く日付をファイル名に入れておくと、後で改正があったときに差し替え対象が分かります。

プロジェクトの指示には、通知文書の型を固定します。次のような形です。

あなたは市町村の空家等対策担当の起案を補助する。
- 知識ベースの条文だけを根拠にする。条番号と項番号を必ず明記する
- 段階(助言・指導 / 勧告 / 命令前通知)は、私が指定したものだけを書く
- 条文にない要件や期限は書かない。分からない項目は【要確認】と書く
- 所有者の氏名・住所はA氏・B住所のように仮名のまま扱う
- 出力は「根拠条文 / 通知本文 / 添付する資料 / 決裁前に人が確認する点」の4節にする

「分からない項目は【要確認】と書く」の一行が効きます。猶予期限の日数のように、条文に数字がない項目をClaudeが自然な値で埋めるのを防げます。法は「相当の猶予期限」としか書いておらず、日数は事案ごとの判断だからです。

現地調査メモから勧告の下書きを起こす

調査メモは、見たままを箇条書きにしたもので足ります。プロジェクトを開いて、次のように依頼します。

段階は「特定空家等への勧告(第22条第2項)」。
調査メモ:
- 令和X年Y月Z日調査。木造2階建て、居住実態なし
- 北側の外壁が剥落し、道路側へ落下するおそれあり
- 敷地内の立木が隣地へ越境
- 前回、令和X年A月に助言・指導の文書を送付済み。改善なし

返ってくる下書きは、例えば次のような構成になります(これは構成の例示で、Claudeの実際の出力を転載したものではありません)。

  1. 根拠: 空家特措法第22条第2項
  2. 措置の内容: 外壁の修繕、立木竹の伐採
  3. 猶予期限: 【要確認】
  4. 経緯: 助言・指導を受けても状態が改善されていない旨
  5. 決裁前の確認点: 特定空家等に該当すると判断した庁内の記録の有無

下書きを読むときは、条文との照合を機械的に行います。第22条第1項のかっこ書きによれば、保安上の危険や衛生上の有害のおそれがない特定空家等では、建築物の除却を求める措置から除かれます。調査メモが景観の悪化だけを挙げているのに、措置の欄に「除却」が入っていたら、この例外に当たらないか見直します。照合の質問は、プロジェクトの中でそのまま投げられます。

いまの下書きの措置の欄を、第22条第1項のかっこ書きと突き合わせて。
調査メモの状態で、除却を求める措置は条文上許されるか。

勧告で住宅用地特例が外れる説明文を作る

勧告には、所有者にとって重い効果が付いています。地方税法第349条の3の2は、住宅用地の固定資産税の課税標準を、価格の3分の1の額とする特例を定めています。その対象から、次の土地が除かれています。

  • 第13条第2項の規定で勧告がされた管理不全空家等の敷地
  • 第22条第2項の規定で勧告がされた特定空家等の敷地

つまり、勧告を受けた時点で、その敷地は住宅用地の課税標準の特例の対象外になります。命令まで進んだときでなく、勧告の段階で外れる点が、所有者への説明で取り違えられやすいところです。

説明文を作るときは、条文の2か所を知識ベースに足してから依頼します。

勧告通知書に添える「固定資産税への影響」の説明文を作る。
- 根拠は地方税法第349条の3の2の本文のみ
- 勧告を受けた特定空家等の敷地が住宅用地の特例から除かれること
- 具体的な税額・適用開始年度は書かない。課税担当課に確認するよう案内する
- 平易な文体で、条文の言い回しをそのまま引用しない

税額と適用年度を書かせないのが要点です。特例が外れた後の課税額は、土地ごとの評価額で変わります。どの年度分から課税標準が変わるかは、勧告の時期と賦課期日の関係に左右されます。ここは条文の説明の範囲を超えるため、課税担当課への確認を案内する一文にとどめます。

Claudeに任せない部分と情報の扱い

下書きの質より先に決めておくのは、線引きです。

線引き

Claudeに頼らず人が行うこと

  • 特定空家等に当たるかの判断

    第2条第2項の状態に該当すると認めるのは、市町村長の判断です。調査メモの要約はClaudeに頼めても、認定そのものは決裁に委ねます。

  • 命令・公示・代執行の手続

    命令に違反した者には、第30条第1項で50万円以下の過料が定められています。命令以降は不利益が大きいので、通知書の下書きも法務担当の確認を経ます。

  • 所有者の個人情報の入力

    氏名・住所は仮名のまま扱います。庁内の情報セキュリティの規程で、生成AIへの入力が認められる範囲を先に確かめます。

プロジェクトの共有は、TeamとEnterpriseのプランの機能です。共有すると、メンバーは「Can view」ならプロジェクトの内容と指示を見てチャットでき、「Can edit」なら指示や知識ベースの編集もできます。庁内で複数人が同じ型を使いたいときに便利な反面、知識ベースに置いた資料は共有先のメンバー全員に見えます。所有者に関する資料は知識ベースに置かず、条文とひな形だけを共有する運用にすると、事故の範囲を狭められます。

新しい形式のプロジェクトがベータで順次提供されています。ここで述べた知識ベースと指示の構成は、従来のプロジェクトを前提にしています。

起案でつまずきやすい点

落とし穴

命令の前に、通知書の交付が要る

第22条第4項は、命令の前に、命じようとする措置とその事由、意見書の提出先と提出期限を書いた通知書を交付し、意見書と有利な証拠を出す機会を与えるよう定めています。通知書を受け取った者は、5日以内に、意見書に代えて公開の意見の聴取を請求できます。Claudeに命令書だけを作らせると、この通知書が抜けます。指示に段階の順序を書き込んでおくと防げます。

次の点も、下書きの点検項目に加えておくと取りこぼしが減ります。

  • 所有者が確知できないとき: 過失なく助言・指導や勧告の相手方を確知できない場合、第22条第10項の手続(措置を行う旨の事前の公告)が別に用意されています。通常の4段階とは別の経路です
  • 勧告の宛先: 命令は「勧告を受けた者」に対して出せる構造です(第22条第3項)。共有者がいるときは、勧告を誰に出したかを記録しておきます
  • 管理不全空家等の段階: 管理不全空家等への勧告も、住宅用地特例が外れる対象です。特定空家等でなくても、固定資産税の説明文が必要になります

立入調査の事前通知も忘れやすい項目です。第9条第3項の5日前の通知は、調査の前に出すものなので、勧告や命令の流れとは別に管理表で持ちます。立入りを拒んだり、報告をしなかったりした者には、第30条第2項で20万円以下の過料が定められています。

まとめ

通知文書の下書きが安定するかどうかは、プロジェクトに置く条文と、指示に固定した型で決まります。条文にない数字は【要確認】に回し、住宅用地特例の説明は地方税法の本文に絞り、税額は課税担当課に回す。この3点を指示に入れておけば、段階が変わっても同じ点検の手順で下書きを確かめられます。

賃料増額請求のように、法定の根拠表を作ってから通知書を書く流れは賃料増額請求の通知書の作り方にもあります。弁明の機会を与える手続の整理は懲戒処分の通知書と弁明の機会が近い題材です。

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