Opus 5.5のチャットで「think carefully」を外す理由
Opus 5.5は思考量を自分で決め、effortで制御します。Anthropicのテストで「じっくり考えて」の指示を外すと品質を落とさず応答開始が速くなった理由と、多ターンで前の回答を掘り返す挙動を止める2文を解説します。
Opus 5.5では「じっくり考えて」の指示を外すと速くなる
チャットアプリのシステムプロンプトに「回答前にじっくり考えて」のような指示を書いている場合、Claude Opus 5.5ではその行を外す方がよい結果になります。Opus 5.5はどれだけ思考するかを自分で判断するモデルで、思考量を外側から直接コントロールする手段はeffortパラメーターです。Anthropicのチャット製品でのテストでは、システムプロンプトからこの種の指示行を外すと、回答品質を落とさずに応答開始が速くなりました。
Claude Opus 5.5はOpus 5より出力トークンの生成が30%以上速く、同じタスクをより少ないトークン数で終えます。既存のOpus 5向けプロンプトは変更なしでも動きますが、この「じっくり考えて」型の指示だけは、Opus 5.5の特性と噛み合わなくなった代表例です。
なぜ外すと応答が速くなるのか
Opus 5.5では常にthinkingが有効で、モデルは入力の複雑さに応じて自分で思考の深さを決めます。この思考量をアプリ側から動かす主要な手段はeffortパラメーターで、既定値はmediumです(Opus 5の既定はhighでした)。Anthropicの計測では、Opus 5.5のmediumはコーディングや知識作業のベンチマークでOpus 5のhighと同等かそれを上回る結果になっています。
この構造の下で、システムプロンプトに「じっくり考えて」と書いても、モデルの思考量の決定に対する影響はeffortほど直接的ではありません。Anthropicがチャット製品で行ったテストでは、この種の指示行を取り除いたところ、回答の開始が速くなり、回答品質に目立った低下は見られませんでした。
effortの段階名はモデルをまたいで同じ思考量を意味しません。いくつかのコーディング評価ではOpus 5.5のlowでもmediumに近い水準まで届いており、コストをさらに抑えられる余地があります。
多ターンで前の回答を掘り返す挙動を止める2文
チャットでの「じっくり考えて」削除とは別に、Opus 5.5には多ターン特有のもう一つの挙動があります。会話が続く中で、短い追加質問に答えるときでも、Opus 5.5はそれまでの応答を思考の中で読み返すことがあり、これが後続ターンの思考時間とレイテンシーを押し上げます。
モデルに過去の回答を「決着済み」として扱わせたい場合、Anthropicはシステムプロンプトの末尾に次の2文を加えることを提案しています。
Once you have answered something, treat that answer as done. On later turns, focus your thinking on what the user is asking now, and don't go back over an earlier answer unless the user asks about it or points out a problem with it.日本語に訳すと、「一度答えた内容は完了したものとして扱う。以降のターンでは、ユーザーが今尋ねていることに思考を絞り、ユーザーから指摘や質問がない限り過去の回答を掘り返さない」という指示です。Anthropicのテストでは、この2文を加えることで後続ターンの思考量が減り、回答開始も速くなった一方、品質の低下は確認されませんでした。
この2文を入れない方がいいケース
この指示は常に有効というわけではありません。長い分析タスクや、後の手順が前の手順の誤りを明らかにするようなエージェント的なタスクでは、モデルが自分の過去の出力を見直し続けること自体に価値があります。こうした用途では2文を加えず、モデルが自発的に過去の回答を再検討できる状態を残す方が適しています。
もう一つ、Anthropicが明示している副作用があります。この指示を加えると、モデルが自分の過去の回答の誤りを自発的に指摘する頻度が下がる可能性があるという点です。ユーザーからの指摘なしにモデル側から誤りに気づいてほしい用途では、この副作用が実際にどの程度出るかを自分のトラフィックで確認してから採用を判断します。
レイテンシーが重視されない用途では無理に外さなくてよい
ここまでの根拠は、Anthropicがチャット製品で行ったテストに基づくものです。ユーザーが画面の前で応答を待つチャット用途では、開始の速さがそのまま体感品質に直結するため、「じっくり考えて」を外す判断は妥当性が高くなります。
一方で、バッチ処理や夜間実行のレポート生成のように、応答が返るまでの時間をユーザーが直接待たない用途では、応答開始の速さを優先する理由がそもそも薄くなります。こうした用途まで一律に「じっくり考えて」を外す必要はなく、むしろeffortをhighやxhighに上げて品質を優先する判断の方が理にかなうことがあります。指示を外すかどうかは、その用途でレイテンシーが実際にボトルネックになっているかを起点に判断します。
Opus 5とOpus 5.5でシステムプロンプトの前提はどう変わったか
「じっくり考えて」の扱いが変わった背景には、思考量の既定の制御方式そのものの変化があります。
| 項目 | Claude Opus 5 | Claude Opus 5.5 |
|---|---|---|
| thinkingの既定状態 | Claude Opus 5有効・無効を選択可能 | Claude Opus 5.5常時有効(無効化不可) |
| 既定effort | Claude Opus 5high | Claude Opus 5.5medium |
Opus 5ではthinking: {"type": "disabled"}を選べましたが、Opus 5.5ではこのパラメーターでthinkingを無効化できません。API呼び出しでこのthinking: {"type": "disabled"}を使っていた実装の移行手順はClaude Opus 5.5でthinking無効のプロンプトを移行するにあります。
なお、レイテンシーをさらに削りたい場合にシステムプロンプトへ「深く考えずに直接回答してください」という1行を足す手法もAnthropicのガイドに登場します。ただしこれは元々thinkingを無効化していた運用からの移行時に効果を計測すべき手段として紹介されているもので、常時thinkingが有効な通常のチャット運用に無条件で当てはまる指示ではありません。追加する場合は品質への影響を必ず計測します。
見直しの手順
既存のシステムプロンプトを点検する際は、次の順で確認すると判断しやすくなります。
- 「じっくり考えて」「慎重に検討して」に類する指示行を探す。チャット用途で、モデルの思考量を言葉で動かそうとしている行が対象です
- その行を削除し、
effortを明示する。既定のmediumから始め、応答品質が落ちるようならhighへ調整します。思考量そのものを減らしたい場合は、プロンプトの指示ではなくeffortの値を下げる方が確実だとAnthropicのドキュメントも明記しています - 多ターンでの掘り返しが問題になっているか確認する。短い追加質問のたびに応答が遅い・思考時間が長いと感じる場合は、上記の2文を末尾に追加します
- 長い分析・エージェント的なタスクを含む用途では2文を保留する。過去の出力を見直す挙動自体が有用な場面では、削らずに残す判断もあり得ます。誤りへの自発的な気づきを優先したい用途ほど、この判断は慎重になります
- 変更ごとに応答速度と品質を計測する。プロンプトの変更は一つずつ加え、効果を自分のトラフィックで確認してから次へ進みます。複数の変更を同時に入れると、どの変更が効いたのか切り分けられなくなります
Opus 5.5以外のモデルにもそのまま当てはまるか
ここで紹介した根拠は、Anthropicが公式ガイドでClaude Opus 5.5に限定して示しているものです。Opus 5以前のモデルやSonnet系・Haiku系のモデルについて同じ検証結果があるとは述べていません。モデルを混在させて運用しているチャット製品では、モデルごとにシステムプロンプトを出し分けるか、Opus 5.5への切り替えに合わせてこの1行を見直す運用が無難です。他のモデル向けに同じ変更を適用する場合は、そのモデル・そのプロンプトでの応答速度と品質を個別に計測してから判断します。
まとめ
Claude Opus 5.5はthinkingが常時オンで、思考量はeffortパラメーターが主に決めます。チャット用システムプロンプトに残る「じっくり考えて」型の指示は、Anthropicのチャット製品でのテストでは外すことで応答開始が速くなり、品質の低下は確認されませんでした。加えて、多ターンの会話で前の回答を掘り返す挙動が気になる場合は、「過去の回答は完了済みとして扱う」という2文をシステムプロンプトの末尾に足すと、後続ターンの思考量を抑えられます。ただし長い分析やエージェント的なタスクでは、この2文が過去の誤りへの自発的な気づきを妨げる可能性があるため、用途に応じて保留する判断も必要です。API呼び出しでthinkingパラメーターを直接操作している実装の移行は、Claude Opus 5.5でthinking無効のプロンプトを移行するを参照してください。effort変更がプロンプトキャッシュに与える影響はthinking設定を変えるとプロンプトキャッシュのヒット率が下がる理由にまとめています。Opus 5.5のthinkingブロックの読み取り方はthinkingのdisplay: summarizedとはで扱っています。