Claudeでオリエンシートからクリエイティブブリーフを起こす手順 — 未記入項目の洗い出し
クライアントのオリエンシートと自社のブリーフの型をProjectsに置き、未記入の前提を質問させてからブリーフ化する手順。指示文と確認リストの例つき。
オリエンシートは埋まっているのに、読み返すとターゲットは「20〜40代」、KPIは空欄、禁止事項は書かれていない。そのままブリーフを書き始めると、制作が進んでから前提がひっくり返ります。Claudeに最初から文章を書かせるのではなく、先に抜けを洗わせ、質問に答えてからブリーフにする順に分けると、この手戻りを前の段階で止められます。
ここでは、オリエンシートと自社のブリーフの型をClaudeのProjectsに置き、未記入の項目を質問させ、仮置きを明示したブリーフと、クライアントへ戻す確認リストまでを作る流れを扱います。ブリーフの後段にあたる広告文の制作はClaudeで広告文とバナー案を量産する手順に、ターゲットの具体化はClaudeで顧客ペルソナを作る手順にあります。
オリエンシートで抜けやすい項目
オリエンシートの様式は会社ごとに違いますが、抜けやすい箇所は似ています。Claudeに洗わせる前に、人の側で「どこが空きやすいか」を持っておくと、指示文が具体的になります。
| 項目 | 抜けの典型 | 洗うときの観点 |
|---|---|---|
| ターゲット | 抜けの典型年齢層だけで、状況や悩みがない | 洗うときの観点誰が、どの場面で、何に困っているか |
| 目的とKPI | 抜けの典型「認知拡大」とあるが数値がない | 洗うときの観点何を、いつまでに、いくつ動かすか |
| 禁止事項 | 抜けの典型欄ごと空白 | 洗うときの観点競合名、表現上のNG、過去の炎上要因 |
| 訴求の根拠 | 抜けの典型強みは書かれているが証拠がない | 洗うときの観点数字、受賞、調査の出典があるか |
| 媒体・予算・納期 | 抜けの典型媒体だけあり、予算や承認日がない | 洗うときの観点制作範囲を決める制約が揃っているか |
| 承認フロー | 抜けの典型担当者名のみ | 洗うときの観点最終決裁者と、戻しの回数の上限 |
空欄は見つけやすい一方、書いてあるのに使えない項目は見落とされます。「若年層に刺さる」「ブランドらしく」のような語は、欄は埋まっていても、制作側が判断する材料になりません。Claudeには空欄だけでなく、こうした曖昧な記述も「未記入扱い」で拾わせます。
Projectsに置く資料と指示文
Projectsは、独立した作業場所ごとにチャット履歴と知識ベース(ナレッジ)を持てる機能です。文書をアップロードして文脈を与え、その中で集中的にClaudeと話せます。有料プランで内容が多くなると、RAGモードが自動で有効になり容量が広がります。無料アカウントでも使えますが、作れるプロジェクトは5つまでです。
ブリーフ作成用のプロジェクトには、次の3種類を知識として置きます。
プロジェクトの知識に置く3つの資料
自社のブリーフの型
見出しと各項目の書き方を決めた雛形です。項目名がぶれると、毎回の出力も揺れます。
過去のブリーフの見本1〜2本
粒度の基準になります。社名や数字は伏せた版にしておくと、案件をまたいで使い回せます。
社内の表現ルール
薬機法や景表法に関わる言い回しのチェック表、競合名の扱いなど、案件が変わっても共通の制約です。
案件ごとのオリエンシートは、型や見本とは別にして、案件ごとにチャットへ添付するか、案件専用のプロジェクトを作ります。型だけを置いた共通のプロジェクトに案件資料を溜め続けると、別のクライアントの情報が混ざります。
プロジェクトの作成は、左側のメニューから「Projects」を開き、右上の「+ New Project」を押します。名前と説明を入れる欄がありますが、この名前と説明はClaudeには見えません。Claudeに伝えたい内容は、知識の「+」から資料を追加し、「Set project instructions」に書いた指示として渡します。
指示文は、質問を先にさせることと、推測で埋めないことの2点を固定します。次は例です。
あなたは広告代理店のプランナーを補佐します。
オリエンシートからクリエイティブブリーフを作る前に、
必ず次の順で進めてください。
1. オリエンシートを、ブリーフの型の項目に当てはめる
2. 空欄と、判断材料にならない記述を一覧にする
3. 一覧の項目ごとに、クライアントへ聞く質問を作る
4. 質問への回答が揃うまで、ブリーフ本文は書かない
オリエンシートに書かれていない事実は補わないでください。
不明な項目は「未確認」と書き、推測した内容は
「仮置き」と明記して、確認が必要な理由を添えてください。4番目の指示が肝です。何も言わなければ、依頼を受けた側は「ブリーフを書いて」という文面どおりに本文まで進みます。「回答が揃うまで書かない」を明文化しておくと、先に洗い出しの一覧が出ます。
抜け洗いからブリーフ化までの流れ
オリエンシートからブリーフまでの4段階
- 1
オリエンシートを添付して抜けを洗う
チャットにオリエンシートを添付し、型の項目に当てはめた結果と、空欄・曖昧な記述の一覧を求めます。
- 2
質問リストを人が見て絞る
出てきた質問を、そのままクライアントに送りません。社内で答えが分かるもの、クライアントにしか答えられないものに仕分けます。
- 3
回答を持ち帰り、資料として足す
回答はチャットに貼るだけでなく、知識かチャットの本文として明示的に渡し直します。
- 4
仮置きを残したままブリーフ化する
答えが揃わない項目は「未確認」のまま本文に残し、ブリーフとして一度まとめさせます。
1段階目の依頼文は、次のように書きます。
添付のオリエンシートを、ブリーフの型の項目に当てはめてください。
出力は次の2つの表にします。
表1: 項目 / オリエンシートの記述 / 状態(記入済・空欄・曖昧)
表2: 空欄と曖昧の項目ごとに、クライアントへの質問と、
その回答がないと制作で何が決まらないか
ブリーフ本文はまだ書かないでください。表2の「回答がないと何が決まらないか」を求めるのは、質問の優先順位をつけるためです。ターゲットが決まらなければコピーの語り口が決まらない、予算が分からなければ制作範囲が決まらない、というように、影響の大きい未記入から順に確認する運用になります。
質問への回答を、次のチャットにつなぐ
プロジェクト内のチャット同士では、文脈は引き継がれません。公式の説明では、プロジェクトの知識に追加した情報だけがプロジェクト内の全チャットで使われます。昨日のチャットで洗い出した一覧は、今日の新しいチャットには見えません。
クライアントから回答が戻ったら、次のどちらかで渡します。
- 同じチャットで続ける。洗い出しの一覧がそのまま文脈として残る
- 新しいチャットで始めるなら、洗い出しの表と回答を貼り直すか、案件専用の資料として知識に追加する
メモリー機能が有効なら、プロジェクトごとに独立したメモリーが働きます。プロジェクト内では、そのプロジェクトのメモリーと、プロジェクト外の自分のメモリーが使われ、別のプロジェクトのメモリーは使われません。ただ、案件の事実(数値や禁止事項)をメモリーに任せるのは避け、ブリーフの根拠になる情報は資料として明示的に置くほうが、後から出どころを辿れます。クライアントごとに完全に分けたいときは、プロジェクトのページでアカウントのメモリー利用を切る設定があります。
仮置きを埋めない書き方
クライアントの返答が間に合わないまま、制作の着手日が来ることがあります。このとき、ブリーフから空欄を消して、もっともらしい一般論で埋めるのが最も危険です。後工程の担当者が、それを決定事項として読んでしまうためです。
未確認項目の書き方
推測で埋めたブリーフ
ターゲット: 20〜30代の働く女性。SNSでの情報収集に積極的で、トレンドに敏感。
未確認を残したブリーフ
ターゲット: 20〜30代(オリエンシートの記載。職業・生活場面は未確認)。 仮置き: 働く女性層を想定して企画案を作る。クライアント回答後に確定。
左側の「SNSでの情報収集に積極的で」は、オリエンシートのどこにも書かれていない内容です。右側のように、元資料にある記述と仮置きを別の行に分けると、誰がどこまで確定した情報として扱えるかが読み取れます。指示文で「仮置きと明記する」と決めてあれば、Claudeの出力もこの形に寄ります。
ブリーフ本文の依頼は、たとえば次のように書きます。
質問への回答を反映して、ブリーフ本文を作ってください。
回答が得られなかった項目は「未確認」のまま残し、
推測した部分は「仮置き」の行に分けてください。
末尾に、未確認項目と確認の期限の一覧をつけてください。クライアントに戻す確認リスト
ブリーフと同時に、未確認項目の確認リストを作らせます。そのまま送れる文面にするのではなく、担当者が言い回しを整えて送る下書きとして扱います。
確認リストに入れる質問は、答えやすさで書き方が変わります。
- 選択肢で答えられる質問にする。「ターゲットは誰ですか」より「購入者と利用者が別の場合、どちらを主に想定しますか」が答えやすい
- 一度に聞く数を絞る。影響の大きい項目から先に3〜5件ほどに分け、残りは次の打ち合わせへ回す
- 回答の期限と、期限までに来ないときの扱いを書く。「未回答の場合は仮置きのまま企画案を作成します」と添える
3つ目は、クライアントに合意を取りにいく文面になるため、社内の営業担当にも見せてから送ります。
チームで同じプロジェクトを使うとき
TeamまたはEnterpriseプランでは、プロジェクトを組織内の他のメンバーと共有できます(管理者が共有を無効にしている場合を除く)。権限は、閲覧とチャットができる「Can view」と、指示や知識の変更もできる「Can edit」の2段階です。
ブリーフの型と見本は、プランナー全員が同じものを使えるよう共有し、編集権限は型の管理者に絞る運用が考えられます。一方、案件ごとのオリエンシートはクライアントの機密情報を含むため、案件の担当者だけに共有する別プロジェクトにします。守秘義務契約でAIへの入力が制限されていないかは、案件資料を置く前に契約書で確かめます。
よくあるつまずき
落とし穴
洗い出しの前に、ブリーフ本文まで出力される
指示文に「ブリーフ本文は書かない」「回答が揃うまで」の文言がないと、一度の依頼で本文まで進みます。プロジェクトの指示文に手順を固定し、各依頼でも「表のみ出力」と重ねて書きます。
落とし穴
前日のチャットで出した一覧が、翌日は見えない
プロジェクトの知識に追加していない情報は、別のチャットでは使われません。洗い出しの表と回答は、同じチャットで続けるか、資料として渡し直します。
落とし穴
案件の資料を共通プロジェクトに溜めてしまう
型や見本を置いた共通プロジェクトへ案件資料を足し続けると、別のクライアントの情報が同じ知識に混ざります。共通は型と見本まで、案件資料は案件ごとのプロジェクトかチャットに限ります。
また、画面の構成が手順と違うときは、新しい版のProjects(ベータ)に移行済みの可能性があります。移行したプロジェクトも、指示、ファイル、チャット履歴は引き継がれます。新版は段階的に提供されており、利用できるプランも限られるため、手元の画面で「Projects」の表示場所を確かめてください。
まとめ
オリエンシートからブリーフを起こす作業で、Claudeに任せる価値が出るのは文章の整形よりも、抜けと曖昧さの洗い出しです。指示文に「質問を先に、本文は後」「推測で埋めず仮置きと書く」を固定し、答えは資料として渡し直し、未確認はブリーフに残したまま制作を始める。この3点が、手戻りを小さくする骨格になります。
型と見本を整えるところまでは人の仕事です。そこが揃うと、案件が変わっても同じ指示文で洗い出しを回せます。