ClaudeでPatlyticsとSolve Intelligenceを使い分ける特許調査の手順
Patlyticsは先行技術と請求項の検索、Solve Intelligenceは特許・法令・標準の検索。どちらも契約済みの利用者向けです。出願前の順序と、コネクタでできない範囲を分けます。
研究開発部門が出願前にClaudeで特許を調べるとき、コネクタの選び方で作業の流れが変わります。PatlyticsとSolve Intelligenceは、どちらもClaudeのコネクタ一覧に載っている特許向けのサービスです。ただし、置かれている道具の種類が違います。
結論を先に書きます。発明の説明文から近い特許を探し、請求項を読み込む段階はPatlyticsのコネクタ。特許に加えて法令・判例・標準規格まで横断して調べる段階はSolve Intelligenceのコネクタ。どちらも既存の利用者が自分のアカウントで接続する形で、契約が無ければ使えません。
2つのコネクタは何を持っているか
コネクタ一覧のページに書かれた内容を並べると、次のとおりです。
| 項目 | Patlytics | Solve Intelligence |
|---|---|---|
| 一覧の紹介文 | Patlytics先行技術・請求項・ポートフォリオの検索 | Solve Intelligence特許の検索・起案・クレームチャート |
| 追加時期 | Patlytics2026年7月 | Solve Intelligence2026年5月 |
| サインイン | Patlytics必須 | Solve Intelligence必須 |
| ツール数 | Patlytics5 | Solve Intelligence9 |
| カテゴリ | PatlyticsLegal、Productivity | Solve IntelligenceLegal、Productivity |
| 検索の対象 | Patlytics特許、非特許文献(OpenAlex経由)、自組織の保存特許 | Solve Intelligence特許、非特許文献、法令・判例、標準必須特許(SEP)の技術標準、Web |
どちらのページにも「Anthropic verified」の表示があります。一方で、ページ下部には、開発元を信頼できる場合にだけ使うこと、ツールの内容は開発元が決めており変わりうることが明記されています。表示があることは、動作の保証とは別の話です。
Patlyticsのコネクタ: 発明を文章で書いて近い特許を探す
Patlyticsのコネクタは5つのツールで、すべて読み取り専用です。ページの説明では、検索は単語の一致ではなく概念の近さで行われます。発明を普通の文章で書くと、関連の高い特許が返ってきます。
Patlyticsのツール5つ
find_similar_patents
意味による特許検索です。基準にする特許を1件指定して、それに近いものを探す使い方もできます。
get_patent
特許の書誌データと、請求項の全文を取得します。
search_npl
非特許文献(論文など)をOpenAlexで検索します。
list_portfolios と list_vault_patents
自組織の非公開ポートフォリオと、保存してある特許(vault)を一覧します。
ページには、発明の仕組み、解く課題、構成要素を詳しく書くほど結果が良くなる、という趣旨の注意書きがあります。キーワードを並べる使い方より、段落で説明する使い方が向いています。
Solve Intelligenceのコネクタ: 特許の外側まで調べる
Solve Intelligenceのコネクタは9つのツールを持ちます。ページの説明によると、特許と非特許文献、法令と判例、標準必須特許に関わる技術標準、Web全体を検索できます。先行技術や侵害品の発見、法令の調査、請求項と標準の対応づけ、特許文書の分析と起案をClaudeに頼める、という紹介です。
ツール名は次の9つです。
- search_patents
- get_patent_content
- search_npl
- lookup_patent_search_entities
- list_patent_law_and_standards
- read_patent_law_and_standard
- search_patent_law_and_standards
- grep_patent_law_and_standards
- get_patent_search_guidance
法令・標準に関するツールが5つあり、特許本体を引くツールは2つです。個々のツールの動作についての説明はページに載っていないため、役割は名前から決めつけず、実際に呼んだ結果で確かめます。
使い分けの目安: 調べる対象で決める
2つのコネクタに重なる部分もあります。どちらも特許と非特許文献を検索できます。そこで、重なりの外にあるものを手がかりにします。
コネクタの選び方
Patlyticsを先に開く
発明の説明を文章にしてあり、近い特許と請求項を読み比べたいとき。自組織で保存した特許を引き合いに出す作業もここです。
Solve Intelligenceを先に開く
標準規格との関係、各国の法令や判例の確認が論点になるとき。通信など、標準に関わる技術はこちらの出番です。
迷うときは、手元の発明の説明から始める前者が入りやすい入口です。後者は、調査の途中で「この技術は標準規格と関係するのか」「この国の審査基準ではどうか」と論点が広がった時点で開きます。
出願前の進め方: 5つの段階
研究開発部門が出願前に使う順序の一例です。2つのコネクタを両方契約していることが前提で、片方だけなら、その段階を人の作業に置き換えます。
出願前にコネクタを使う順序
- 1
公開できる範囲で発明を文章にする
課題、解き方、構成要素を段落で書きます。未公開の細部を入れるかどうかは、後述の秘密保持の確認を済ませてから決めます。
- 2
Patlyticsで近い特許を探す
説明文を渡して近い特許を出してもらい、気になる特許は請求項の全文まで取得します。
- 3
Patlyticsで論文側も探す
search_nplで非特許文献を探します。特許だけでは見えない公開済みの技術が出てくることがあります。
- 4
Solve Intelligenceで観点を広げる
標準規格や法令に関わる論点があれば、Solve Intelligenceに切り替えて、特許と法令・標準を行き来しながら調べます。
- 5
結果を人が読んで判断する
近いと出た特許の請求項は、人が読んで権利範囲を比べます。出願するかどうかの判断もここで人が行います。
2つのコネクタを同じ会話に入れておき、Claudeに「最初の検索はPatlyticsで、法令の確認はSolve Intelligenceで」と段階ごとに指定する方法もあります。指定しないと、Claudeがどちらのツールを選ぶかは会話の文脈次第になります。
依頼文の例
次は、第2段階向けに組んだ依頼文の例です。括弧の中は自分の案件に置き換えます。
Patlyticsのコネクタを使って、次の技術に近い特許を探してください。
【解こうとしている課題】
(例: 〜の工程で〜が起きて歩留まりが下がる)
【解き方の仕組み】
(例: 〜を〜の順に処理し、〜を検出して〜する)
【構成要素】
(例: センサ、制御部、記憶部とそれぞれの役割)
近い順に5件を挙げ、それぞれ
- 近いと判断した理由
- 請求項1の要点
を表にしてください。請求項はget_patentで取得した文面だけを根拠にし、
取得していない特許について請求項を推測で書かないでください。最後の指示が要点です。請求項の文面は、ツールで取得した原文が根拠のときにだけ要約させます。取得していない特許の請求項について、Claudeが一般知識から補って書くことを防ぐためです。
コネクタでできない作業
Patlyticsのページには、深い作業はPatlyticsのWebアプリ側で動くと書かれています。
Patlyticsのコネクタの外にある作業
- 事業実施の自由度(FTO)に関する意見書
- 侵害と無効のクレームチャート
- 特許の起案
つまり、Patlyticsのコネクタで行えるのは検索と取得までです。Claudeから出願書類のたたき台を作らせたい場合は、取得した請求項や文献を材料にして、Claudeの通常の会話で文章を作らせることになります。
Solve Intelligenceの一覧の紹介文には「起草」「クレームチャート」とありますが、9つのツールの名前に起草やクレームチャートを直接指すものはありません。ページにも、コネクタ経由でどこまで起草できるかを区切る説明はありません。起草まで任せたい場合は、トライアルや契約の窓口で、コネクタ経由の範囲とWebアプリの範囲を確認するのが確実です。
入力の扱い: 出願前の発明を渡す前に
特許の調査で最も気をつけたいのは、未公開の発明内容の扱いです。秘密保持の約束がない状態で第三者に開示すると、新規性を失うおそれがあります。この論点は弁理士がClaudeで生成AIを使うときのガイドラインの記事で、ガイドラインと契約形態ごとに整理しています。
2つのサービスは、ホームページで次の内容を掲げています。
| 項目 | Patlytics | Solve Intelligence |
|---|---|---|
| モデルの学習への利用 | Patlytics利用しない | Solve Intelligenceアップロードしたデータも出力も、いかなるモデルの学習にも使わない |
| 認証・規格 | PatlyticsSOC 2 Type 2、ISO 27001、ISO 42001、GDPR | Solve IntelligenceSOC 2 Type II、ISO 27001、ISO 42001、GDPR、CCPA |
| 暗号化 | Patlytics保存時と通信時に暗号化 | Solve Intelligence通信時と保存時にAES-256、TLS 1.3 |
| データの分離 | Patlytics組織ごとに分離 | Solve Intelligence組織ごとの分離という表現はなく、利用者ごとのサンドボックスと保存地域の選択が書かれている |
これは各社のサービス全体についての記載で、Claudeのコネクタ経由で送った入力が同じ扱いになるかどうかは、ページに書かれていません。Claude側にも、入力内容がClaudeのプランごとにどう扱われるかの確認が要ります。出願前の発明の詳細を渡す前に、双方の契約条件を社内の知財部門や法務に見せておく流れが現実的です。
コネクタは、接続した利用者本人の権限で動きます。ヘルプセンターには、元のサービスでアクセスできないものはコネクタ経由でも到達できないという趣旨の説明があります。Patlyticsのページでも、結果は各自の組織の範囲に限られると書かれています。社内のどの案件をどのアカウントから見せるかは、元のサービス側で決まります。
調査の前に、発明者の考え方と社内規程も確かめておくと手続きが滞りません。Claudeを使って発明を作った場合はClaudeで発明を作ると特許は取れるか、規程の点検は職務発明規程の改定案を特許法35条の要件でClaudeに点検させる手順が参考になります。
見つからなかったときの読み方
Researchなど、Claude単体で行う下調べとの違いは、検索の対象が特許データベースかどうかです。Claudeが公開Webから集める下調べの限界は、Claudeで特許の先行技術調査を下調べする範囲と限界にまとめています。特許専用のコネクタを使えば、公報そのものに当たれる道が開けます。
それでも、検索結果が空だったときに「先行技術はない」と言える材料にはなりません。
- 意味による検索は、記述の粒度が粗いと近い特許を取りこぼします
- 非特許文献は、論文以外の製品資料やカタログに及ばないことがあります
- 出願から公開までの期間にある他者の出願は、どの検索にも現れません
- 表示された「近い順」は、サービスの判定であり、権利範囲の近さを保証するものではありません
結果の読み方と最終判断は、弁理士などの専門家と行います。Claudeが整理した表は、その相談の資料として使う位置づけです。
接続の手順と管理
コネクタの追加は、Claudeの設定からコネクタ一覧を開いて行います。ヘルプセンターによると、一覧では各コネクタのページに、用途、読み書きの権限、提供状況が載っています。PatlyticsとSolve Intelligenceは、どちらも接続時にサインインが求められ、既存の契約者が自分のアカウントで入る形です。契約のない人がClaude側の操作だけで使えるようにはなりません。
組織で使う場合は、誰に接続を許すかが論点になります。ヘルプセンターには、Enterpriseプランでカスタムロールの権限を使い、組織が共有するコネクタを管理できるという説明があります。特許の案件は閲覧者を絞りたいことが多いため、接続できる人を限る設定の有無を、導入前に管理者と確認します。
まとめ
PatlyticsとSolve Intelligenceは競合する2択というより、調べる範囲の違うコネクタです。発明の説明から近い特許と請求項を引くならPatlytics、法令・標準まで広げるならSolve Intelligenceという分け方になります。
どちらも読み取りと検索が中心で、FTO意見書や起草のような深い作業は各社のWebアプリ側に置かれています。コネクタは調査の入口を速くする道具であり、最終的な判断は請求項を読む人に残ります。