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ClaudeのResearchでファイブフォース業界分析を作る — 事実と解釈を分ける指示の型

ClaudeのResearchでファイブフォース業界分析を作る — 事実と解釈を分ける指示の型

ファイブフォース分析の下調べをClaude Researchに任せる手順です。5つの力ごとに出典付きの根拠を集め、事実・解釈・未確認を列で分ける依頼文と、結果の点検の仕方を扱います。

ファイブフォース分析を「Claudeに作らせる」と、たいていは5つの力それぞれに「高い」「中程度」と書かれた、もっともらしい一枚が返ってきます。困るのは、その判定がどの資料から出たのか追えないことです。

Claude Researchに任せるなら、判定ではなく証拠集めを任せるのが安定します。5つの力ごとに出典付きの事実を集めさせ、事実・解釈・未確認を別の列に置く。強さの判定は、その表を読んだ人が下します。この記事は、そのための依頼文と点検の手順です。

Researchに任せる範囲と、人が持つ範囲

ファイブフォースは、業界の収益性を左右する5つの力を見る枠組みです。新規参入の脅威、供給業者の交渉力、買い手の交渉力、代替品の脅威、既存企業間の競争の5つで、枠そのものは誰でも知っています。難しいのは、各力に載せる根拠を集める作業です。

Claude Researchは、質問を深く調べる機能です。複数の検索を重ね、見つかった内容をもとに次に調べる対象を決め、質問のいろいろな角度を順に掘ります。この「根拠を重ねて集める」動きが、5つの力ごとの証拠集めに向いています。

使える条件は次のとおりです。

  • 有料プラン(Pro、Max、Team、Enterprise)で、Web版、Claude Desktop、モバイルが対象
  • Web検索がオンになっていること
  • チャット欄左下の「+」から「Research」を選ぶと、画面下に青い表示が出る

逆に、Researchの出力に求めないほうがよいものもあります。「この業界は魅力的か」という結論です。公開情報で埋まるのは、参入に必要な資本の目安、上位企業の集中度、買い手の業種といった事実までです。それらを重ねてどの力が強いかを決めるのは、分析を使う人の仕事になります。

先に決める3つ — 業界の切り方・地域・時点

依頼文を書く前に、次の3つを決めます。ここが曖昧だと、力ごとに別の業界の話が混ざります。

準備

依頼前に固める範囲

  • 業界の切り方

    「外食」と「ファストフード」では、買い手の交渉力も代替品も変わります。分析する単位を1つの名前で決め、隣接する業界は含めない旨を依頼文に書きます。

  • 地域

    国内の話か、特定の地域か、グローバルかを決めます。海外の数字を国内の根拠に使わせない指示を入れておきます。

  • 見たい時点

    直近の状況を見たいのか、数年の推移を見たいのかを決めます。資料ごとに年が違うので、出典には年を付けさせます。

業界の切り方は、ファイブフォースでいちばん結果を左右する前提です。同じ業界でも、顧客層で区切れば買い手の交渉力は別物になります。切り方を変えて2通り試すのも手で、その場合は2回分の表を別々に残します。

5つの力ごとに集める証拠の種類

力ごとに、集める事実と、それが公開情報で埋まりやすいかを先に表にしておきます。「埋まりにくい」と分かっている欄は、Researchに埋めさせず、人が埋める列として扱います。

力集める事実の例公開情報での埋まりやすさ
新規参入の脅威集める事実の例必要な許認可、設備投資の規模、近年の新規参入・撤退の事例公開情報での埋まりやすさ中。事例は拾えるが、投資額は非公開が多い
供給業者の交渉力集める事実の例主要な仕入れ先の数、特定企業への依存、価格改定の動き公開情報での埋まりやすさ低〜中。調達の内訳は企業側の情報
買い手の交渉力集める事実の例顧客の業種と集中度、乗り換えのしやすさ、価格交渉の実態公開情報での埋まりやすさ中。上場企業の開示に顧客依存度が出ることがある
代替品の脅威集める事実の例同じ課題を解く別の製品・サービス、乗り換えの費用公開情報での埋まりやすさ高。ニュースや業界資料で拾える
既存企業間の競争集める事実の例上位企業のシェア、市場の成長率、価格競争の事例公開情報での埋まりやすさ高。統計と企業の決算資料がある

供給業者と買い手の交渉力は、公開情報だけでは薄くなりがちです。そこが薄いことをはっきり示してくれる表のほうが、全部の欄が埋まった表より使えます。

依頼文の型 — 事実・解釈・未確認を列で分ける

Researchには、5つの力を一気に判定させず、証拠の表を作らせます。次の依頼文は、例として組んだ型です。業界名、地域、時点は自分の分析に合わせて書き換えてください。

Researchを使って、「国内の○○業界」(△△を除く)について、
ファイブフォースの証拠を集めてください。時点は直近3年です。
 
各力(新規参入・供給業者・買い手・代替品・既存企業間の競争)について、
次の列の表を作ります。
列: 力 / 事実(資料に書かれていること) / 出典URL /
    資料の年 / 解釈(あなたの読み) / 未確認
 
ルール:
- 「事実」には、資料に書かれたことだけを書く。数字は表記のまま
- 「解釈」には、事実から言えそうなことを書き、
  根拠にした事実の行を示す
- 資料が見つからない項目は、推測で埋めず「未確認」の列に書く
- 力ごとに、根拠は最低2つの異なる資料から集める。
  1つしか見つからない力は、その旨を書く
- 強さの判定(高い・低い)はまだ書かない

ポイントは3つあります。

1つ目は、事実と解釈を別の列にすることです。1つのセルに両方を書かせると、解釈が事実の顔をして残ります。2つ目は、「未確認」を書いてよいと明示することです。Anthropicの開発者向けドキュメントも、幻覚を減らす基本策として、分からないと言ってよい許可を明示することを挙げています。3つ目は、強さの判定を後回しにすることです。証拠を見る前に判定を求めると、判定に合う証拠だけが集まります。

Researchが動いていないように見えるときは、「Claude、リサーチツールを使って〜」と書き出して依頼し直します。

1回で頼まず、3回に分ける

5つの力を1回の依頼で全部頼むより、段階を分けたほうが、途中で軌道修正できます。

手順

ファイブフォースの下調べを進める順番

  1. 1

    業界の範囲と主要プレーヤーを確かめる

    最初の依頼では、分析対象の業界の定義、市場規模の目安、上位企業の名前だけを集めます。ここで業界の切り方がずれていたら、力の調査に入る前に直します。

  2. 2

    力ごとの証拠表を作る

    前節の依頼文で、5つの力の証拠表を作ります。返ってきた表は、そのまま使わず次の点検に回します。

  3. 3

    空欄と薄い力を追加調査する

    「未確認」が多い力、資料が1つしかない力だけを選んで、追加で調べさせます。調べる観点を具体的に指定すると、広く浅い読み物に戻りません。

  4. 4

    強さの判定を人が書く

    証拠表を読み、各力を自分の言葉で判定します。判定の根拠には、表の行を指し示します。

3回目の追加調査は、全体をやり直さずに済むのが利点です。供給業者の交渉力だけを掘り下げる依頼なら、対象の力と、既に集まった資料を示して「それ以外の資料を探す」と指示します。

返ってきた表を点検する

出典が付いていても、中身が合っているとは限りません。Web検索の説明でも、重要な情報は引用元を突き合わせ、重大な判断には信頼できる情報源を使うよう案内されています。点検は次の順で行います。

出典のページに、その数字が載っているか

事実の行から、出典URLを開き、書かれている数字や記述を探します。見つからないときは、その行を「未確認」に戻します。ページの別の箇所に書かれていることもあるので、ページ内検索で探してから判断します。

同じ資料を複数の力に使い回していないか

1本の業界レポートが、5つの力すべての根拠になっている表があります。見かけの根拠数は多くても、独立した資料は1つです。資料名の列を見て、力ごとに異なる資料が並んでいるかを確かめます。

事実の欄に解釈が混ざっていないか

「参入障壁が高い」「競争が激しい」といった言い回しが事実の列にあれば、それは解釈です。解釈の列に移し、根拠になる事実の行を探します。根拠が見当たらなければ、その解釈は保留にします。

資料の年が古くないか

事実の行ごとに、資料の年を見ます。業界の構造が変わった後の判断に、変わる前の資料を使っていないかを確認します。

事実と解釈の分離は、行ごとの引用でさらに強められます。開発者向けドキュメントは、主張ごとに裏づけとなる引用を探させ、見つからなければその主張を取り下げさせる方法を紹介しています。API向けの説明ですが、チャットの追加依頼でも使えます。

上の表の「事実」の行それぞれについて、出典ページから
その記述の根拠になる文を、原文のまま1つ引用してください。
引用できない行は、「未確認」に移してください。

引用が付いた行は、元のページと突き合わせる手間が減ります。引用できずに「未確認」へ移った行の数は、そのまま調査の薄さの目安になります。

表の完成形 — 事実と解釈を行で残す

点検を終えた表は、次のような形になります。以下は、実在しない業界を想定した記入例です。

力事実出典資料の年解釈未確認
新規参入事実事業開始に許可が必要出典所管省庁の資料資料の年2024解釈許可の取得が参入の壁になりうる未確認取得までの期間
代替品事実別の方式を使う新サービスが登場出典業界紙の記事資料の年2025解釈一部の顧客層で乗り換えが起きうる未確認乗り換えの費用
既存企業間事実上位3社で市場の過半を占める出典業界団体の統計資料の年2024解釈寡占に近く、価格競争は限定的かもしれない未確認近年の値下げの実態

事実の列は、資料に書かれたままの言葉にします。解釈の列は、「〜かもしれない」「〜になりうる」と、仮説であることが分かる書き方にそろえます。最後の強さの判定は、この表の下に別の節を設けて、人が書きます。

コネクタや有料データがあるとき

ResearchはWebに加えて、接続したコネクタ(Google Workspaceなど、チャットでオンにしたもの)の情報も調べます。調査中は、コネクタのツールを承認なしに自動で使います。社内の議事録や過去の業界メモをGoogle Docsに置いてあるなら、「社内資料も参照して」と指示に書くと、公開情報とのずれを見つけやすくなります。

注意したいのは、モバイルアプリからResearchを始めた場合です。ClaudeはWebだけを検索し、コネクタを使いません。エラーや通知は出ないので、気づかないままコネクタの情報が抜けた結果を読んでしまいます。コネクタを使う調査は、Web版かClaude Desktopから始めます。Claude Desktopに設定したローカルのMCPサーバーのツールは、Researchでは使えません。

調査会社の有料データを前提表にする流れは、ClaudeとIBISWorldを連携して業界分析の前提表を作る手順で扱っています。有料データがあれば、新規参入や既存企業間の競争の欄の根拠が厚くなります。この記事の型は、有料データがなくても、公開情報の範囲で証拠を集めるときに使えます。

使用量とモデルの注意

Researchの使用量は、通常の会話と同じ上限の下で数えられます。ただし、複数の資料を取得して詳しい回答を返すため、通常の会話より上限に早く近づきます。3回に分ける進め方は、1回目で範囲のずれを直せるので、重い調査を無駄にやり直さずに済む点でも有利です。

ResearchはClaude Opus 5.5で動き、必要に応じてClaude Opus 4.8に切り替わります。チャットで選んだモデルとは関係なく、この2つが使われます。TeamプランやEnterpriseプランで、管理者が両方のモデルを役割に対して無効にしていると、Researchは動きません。動かないときは、管理者に、少なくとも一方を有効にしてもらいます。

他の調べものとの使い分け

Researchを使った調べものは、目的によって依頼文の型が変わります。料金を比べるなら課金軸とプラン境界を列にそろえる競合の料金比較、方式の違いを比べるなら技術調査レポートの比較表の型が向きます。ファイブフォースは、それらより「業界の構造」を見る問いで、事実と解釈を分ける列の設計が中心になります。

Researchそのものの使い方や、Web検索との違いはClaudeリサーチとはにあります。

まとめ

ファイブフォース分析でClaudeに任せるのは、5つの力ごとの証拠集めまでです。依頼文で事実・解釈・未確認の列を分けておけば、強さの判定を人が下すときに、どの根拠に頼ったかを後から追えます。

最初の1本は、業界の切り方を決め、証拠表の依頼文を貼り、力ごとの根拠を行ごとに点検する、という3点だけで回せます。

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