Claudeで司書のレファレンス記録をレファ協の項目に整える手順 — 質問と回答を分ける
レファレンス記録票を、レファレンス協同データベースの質問・回答・回答プロセス・参考資料の欄に振り分ける手順です。匿名化、解決・未解決の判定、公開レベルを決める前の点検まで示します。
レファレンス記録票は、受けた順に書くと「結局、何を聞かれて何で答えたのか」が後から読み取れません。レファレンス協同データベース(レファ協)に登録する形にするなら、記録票の文面を決まった欄に切り分けるのが近道です。Claudeにやらせるのは、その切り分けと抜けの洗い出しまでです。
この記事では、質問者が特定されないように外す情報、欄ごとの振り分け指示、解決・未解決の判定、返ってきた表の点検、公開レベルを決める前の確認までを順に示します。
レファ協の事例は、どの欄に何を書くのか
レファ協は、国立国会図書館が全国の図書館等と協同で構築している、レファレンス(調べものの相談)のデータベースです。データ作成のガイドラインによると、レファレンス事例データは19の項目からなり、画像を添付することもできます。
項目は二つに分かれます。質問の受付から回答までを書く中核的な情報と、検索しやすくするための付加的な情報です。
事例データの二つの層
中核的な情報
質問、回答、事前調査事項、回答プロセス、参考資料、照会先、寄与者の7項目です。質問と回答がデータの中心になります。
付加的な情報
事例作成日、NDC、内容種別、質問者区分、キーワード、調査種別、解決/未解決です。絞り込み検索の手がかりになります。
標準フォーマットで「必須」とされているのは、質問、公開レベル、管理番号、回答の4項目です。回答は、公開レベルが「自館のみ参照」なら任意の扱いになります。管理番号は各館が決める15文字以内の番号で、事例を書き始める前に体系を決めておく必要があります。
Claudeに任せる範囲は、次のように切ると安全です。
| 欄 | Claudeに任せるか | 理由 |
|---|---|---|
| 質問・回答・回答プロセス | Claudeに任せるか記録票の文面の切り分けまで | 理由内容を足すと、記録が事実でなくなる |
| 参考資料 | Claudeに任せるか記録票に書かれた資料の書き出しまで | 理由書誌事項の正しさは実物か目録で見る |
| キーワード・NDC | Claudeに任せるか候補を出させる | 理由付与の判断は担当者が行う |
| 調査種別・解決/未解決・質問者区分 | Claudeに任せるか規則を渡して候補を出させる | 理由判定の理由を表に残させる |
| 公開レベル | Claudeに任せるか任せない | 理由館の方針と責任に関わる |
渡す前に外す情報
レファ協のガイドラインは、公開してはならないデータとして、個人名の記載、質問者が特定される記述、差別・誹謗・わいせつな表現を挙げています。歴史上の人物や社会的に著名な人物の名前は、この限りではありません。
気をつけたいのは、個人名がなくても質問者が特定される場合があることです。ガイドラインは「質問」「事前調査事項」「質問者区分」の組み合わせから特定されうると述べ、特定されやすい質問の例を四つ挙げています。
- 公立図書館での庁内からの質問
- 大学図書館での学内の部署や教員からの質問
- 医療関係の質問
- 特定地域の学校からの質問のように、狭いコミュニティでの質問
記録票をClaudeに渡す前に、次を外すか置き換えます。
- 質問者の氏名・連絡先は削除する。「利用者A」のようなラベルも付けず、質問者区分の候補(学生、社会人など)だけを残す
- 庁内、学内の部署名、学校名、診療科名は「所属部署」「地域の学校」のように粗くする
- 日付は「受付日」「回答日」とし、必要なら年月まで落とす
- 職員の氏名は消す
置き換えの対応を残したいときは、手元の記録票に書き、Claudeには渡しません。入力してよい情報の線引きは要配慮個人情報をClaudeに入力してよいかに整理があります。館の規程でClaudeへの入力自体が認められていないなら、先に規程を確かめてください。
匿名化の作業そのものに、Claudeを使わない選択もあります。置き換え前の文面をClaudeに読ませることになるためです。氏名の削除は手で行い、振り分けだけを任せる分け方が無難です。
記録票を欄に振り分ける指示文
指示文では、各欄の定義と、書かれていない内容を補わない規則を決めます。次の文面は、そのまま貼って使える形にしてあります。
あなたは図書館のレファレンス記録を整理する補助です。
渡すのは、匿名化したレファレンス記録票です。次の欄に振り分けてください。
【質問】利用者が求めた内容。
【事前調査事項】質問者が事前に調べていたこと。書かれていなければ「記載なし」。
【回答】質問者に回答した内容。
【回答プロセス】回答までに経た調査の手順。資料名と調べた順を書く。
【参考資料】回答の根拠にした資料。書名・巻号・ページなど記録票にある範囲だけ。
【照会先】質問者に示した、図書館外部の人・機関。
【調査種別】文献紹介/事実調査/書誌的事項調査/所蔵調査/所蔵機関調査/
利用案内/その他から選ぶ。
【解決/未解決】規則: 所蔵調査は所蔵の有無がわかれば解決。事実調査で
典拠が見つからなければ未解決。理由を1行付ける。
規則:
- 記録票にない内容を足さない。書かれていない欄は「記載なし」と書く。
- 資料の書誌事項は、記録票の表記をそのまま写す。補正や推測をしない。
- 各欄の末尾に、根拠にした記録票の行番号を[L3]の形で付ける。
- 氏名らしい語や、質問者が特定されそうな記述があれば、末尾に一覧で示す。記録票に行番号を振ってから渡すと、表の各欄がどの行から来たかを見に行けます。点検の起点になります。
欄のあいだで迷う箇所
ガイドラインは、「回答」と「回答プロセス」が密接に関わるため、回答の中に回答プロセスが書かれる場合もあると述べています。どちらに入れても、回答の必然性を裏づける情報が十分に書かれていれば足ります。
紛らわしいのは次の組み合わせです。
| 紛らわしい組 | 切り分けの目安 |
|---|---|
| 事前調査事項と回答プロセス | 切り分けの目安前者は質問者が調べていたこと、後者は図書館員が経た調査 |
| 参考資料と照会先 | 切り分けの目安前者は資料、後者は図書館外部の人や機関 |
| 参考資料と寄与者 | 切り分けの目安照会先は質問者に示したもの、寄与者はデータ作成に情報を寄せた人や機関 |
指示文に「迷ったら両方に書かず、末尾に迷った理由を書く」と足しておくと、判断をClaudeに隠れて決めさせずに済みます。
解決・未解決と調査種別の判定
解決/未解決の欄は、他の参加館の協力を呼ぶための欄でもあります。ガイドラインは、未解決とする場合を四つ挙げています。
- 文献紹介で、要望に応える資料を紹介できなかった
- 事実調査で、事実が確認できなかった
- 書誌的事項調査で、資料の存在を突き止められなかった
- 所蔵機関調査で、所蔵機関が判明しなかった
所蔵調査は例外です。所蔵しているか、していないかの二者択一の回答になるので、どちらの答えでも「解決」になります。質問者に回答した時点で未解決でも、事後の調査で解決したなら「解決」です。
この規則を指示文に入れると、Claudeは調査種別に応じて判定の候補と理由を返します。たとえば、次のような表になります(形を示す例で、事例は架空です)。
| 質問(要旨) | 調査種別 | 解決/未解決 | 理由 |
|---|---|---|---|
| ある資料が自館にあるか | 調査種別所蔵調査 | 解決/未解決解決 | 理由所蔵なしの回答でも解決に当たる |
| 郷土の人物の生没年を知りたい | 調査種別事実調査 | 解決/未解決未解決 | 理由典拠が見つからなかった |
| 地名の由来を扱う資料を知りたい | 調査種別文献紹介 | 解決/未解決解決 | 理由資料2点を紹介した |
判定はあくまで候補です。記録票に「調査を継続中」とあるのに「解決」と返ってきたら、その行は担当者が決めます。
返ってきた表を点検する
返ってきた表は読みやすく整っているため、読み返しを省きやすくなります。点検は次の順に行います。
- 行番号のない欄、存在しない行番号の欄を探し、その欄を削る
- 【回答】の各文を、行番号の記録票の文面と照らす。言い換えで意味が変わっていないか。事実と所見を分ける考え方は生徒指導の対応記録の整理と同じです
- 【参考資料】の書誌事項を、実物か目録で一つずつ開いて確かめる。記録票に書かれていない資料が混ざっていないかも見る
- 【回答プロセス】に、記録票にない調査(「国立国会図書館サーチで検索した」など)が足されていないかを見る
- 末尾の「氏名らしい語」の一覧に挙がった語を、手元で消す
3番が重要です。ガイドラインは、事実調査の事例で典拠が示されていないものを、原則として一般公開しない扱いだと述べています。公開された事例を見た人が同じ情報源にたどり着けるよう、適切に書く必要があるためです。参考資料の誤りは、そのまま事例の信用を損ないます。
引用にも注意が要ります。「回答」や「回答プロセス」に特定の文献からの引用を含む場合、出典を所定の書式で明記し、著作物の大半にわたるような大量の引用はしてはならないとされています。画像を添付する場合は著作権法に触れないかも検討します。これらは「自館のみ参照」で登録するときも点検の対象です。原文の照合の型は、インタビュー逐語録の引用の原文照合と同じ発想で使えます。
事例作成日と追記の扱い
事例作成日は、原則としてレファレンス質問に回答した年月日です。登録した日ではありません。Claudeに日付を埋めさせると、実行した日付を入れることがあるため、指示文には「事例作成日は記録票の回答日をそのまま写す。ない場合は記載なしと書く」と加えます。
後日の調査で判明した内容を追記する場合は、いつ追記したかが分かるように、回答・回答プロセス・備考のいずれかに書きます。システムが自動で持つ登録日時・最終更新日時とは別の話です。
公開レベルは、点検のあとに人が決める
レファ協の事例には、データごとに三つの公開レベルがあります。
公開レベルと条件
自館のみ参照
インターネット等には公開されません。条件を満たさないデータや、館の方針で公開しないと判断したデータを置けます。
参加館公開
個人のプライバシーが尊重されていること、質問者の特定につながる恐れがないこと、差別表現等の点で問題がないことの3条件をすべて満たす必要があります。
一般公開
参加館公開の3条件に加えて、中核的な情報の記入、出典等の適切な記載、事例作成日の記入など6条件を満たす必要があります。
一般公開の追加条件は六つです。
- 中核的な情報が記入されていること
- 記載内容の典拠となる情報源(出典、照会先、寄与者等)が適切な書き方で記入されていること
- 事例作成日が記入されていること
- 歴史上の人物や著名人に関する事例なら、公開された確かな情報源に基づき、個人情報への配慮がされていること
- 過去の事例なら、現在でも内容が適切だと判断できること
- 未解決事例なら、調査のプロセスが記入されていること
この六つはチェック表に向きます。表の欄ごとに「満たす/満たさない/記録票に情報なし」を返させると、一般公開に足りない欄が見えます。ただし、満たすかどうかの最終判断は担当責任者のものです。公開したデータの内容への責任は、各参加館が持つとされています。
事業の案内が示す登録の流れも、Claudeの作業と相性がよいものです。まず「自館のみ参照」で質問を入力し、回答後に回答などの項目を入れ、担当責任者が事例を選んで「参加館公開」等に変更します。Claudeが整えた表は、入力の下書きとして使い、公開レベルの変更は人が行います。
館内手続きや時間が足りないとき
「自館のみ参照」は、まず登録しておくための置き場として使えます。ガイドラインは、表現や書式をさらに整えてから公開したい場合、十分な調査ができていない場合、古いデータを新しいものに差し換えて残す場合を、自館のみ参照にする例として挙げています。
また、未解決の事例は、他の参加館からコメントが得られることがあるため、条件を満たすなら積極的に参加館公開にすることが望まれるとされています。
Projectsに指示を固定する
毎回この指示文を貼るのは手間です。ClaudeのProjectsには、プロジェクト内のすべてのチャットに効く「プロジェクトの指示」を置けます。指示文はここに保存し、記録票はチャットごとに貼ります。
固定するときの注意点は二つです。
- プロジェクト内でも、チャットをまたいだ文脈は共有されません。共有したい情報は、プロジェクトの知識に追加する必要があります
- Team・Enterpriseプランでは、プロジェクトを組織内の他のユーザーと共有できます(管理者が止めていない場合)。閲覧権限を持つメンバーは、プロジェクトの指示と知識を見られます
プロジェクトの知識には、館の管理番号の体系、調査種別の選択肢、キーワードの付け方の方針など、事例そのものを含まない規則だけを入れます。過去の事例の記録票は入れません。
つまずきやすい点
- 回答に書かれていない資料が参考資料に載る。指示文の「記録票にない内容を足さない」を省くと起きやすい項目です。点検の3番で必ず拾います
- 質問が複数あるのに1件にまとまる。一つの記録票に複数の質問が混ざっていたら、事例を分ける前提で振り分けさせます
- 管理番号を作らせてしまう。管理番号は各館が決めた体系で付ける番号です。Claudeに付番させず、手元の台帳で付けます
- 備考に非公開の事情が入る。備考は公開可能な内容を書く欄です。館内向けのメモは、自館ユーザーだけが参照・編集できる「ローカル項目」に書きます
- 質問者区分が空になる。区分は、回答の妥当性を裏づけるために書く欄です。記録票にない場合は「記載なし」のままにし、推測で埋めません
過去の記録をまとめて登録したいとき
ExcelやAccessに溜まったレファレンス記録を一括で登録したい場合、国立国会図書館のレファ協事務局が遡及入力を手伝える場合があると案内されています。大量にあるなら、Claudeで1件ずつ整える前に、事務局への相談も選択肢です。
まだ参加館でない場合
レファ協への参加には、図書館法に基づく図書館、大学や高等専門学校の図書館、学校図書館を設ける学校など、定められた資格があります。必要なのはインターネットに接続されたパソコンとメールアドレスで、参加費等の費用はかかりません。申請書類は参加対象ごとに異なるため、事務局の案内ページで確かめます。
参加前でも、この記事の振り分けは館内の記録整理に使えます。欄の考え方は、そのまま館内のレファレンス記録票の見直しになります。