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ClaudeでSOAP形式の診療録に整える — 診察の音声メモからS・Oの事実とA・Pの判断を分ける

ClaudeでSOAP形式の診療録に整える — 診察の音声メモからS・Oの事実とA・Pの判断を分ける

診察の音声メモを文字起こしして匿名化し、ClaudeにS・O・A・Pへ振り分けさせる手順です。録音に無い判断を補わせない指示文と、元の発話への照合の取り方を載せました。

診察の音声メモをSOAP形式に整える作業は、Claudeに任せやすい部分と、任せてはいけない部分がはっきり分かれます。任せやすいのは、発話をS(主観的情報)とO(客観的情報)に振り分ける作業です。任せられないのは、A(評価)とP(計画)を埋めることです。この2つは医師が口にした内容だけを写し、録音に無ければ空欄のまま返させます。

この記事では、文字起こしの匿名化、ファイルでの渡し方、指示文の型、出力の照合までを順に示します。

音声メモの発話は、SOAPのどこに入るのか

SOAPは、診察の記録をS・O・A・Pの4つに分ける型です。音声メモは時系列に話が進むので、1つの文に事実と判断が混ざりがちです。振り分けの基準を先に決めておくと、指示文がそのまま書けます。

区分入れるもの音声メモでの典型的な発話
S(主観的情報)入れるもの患者の訴え、経過、本人が述べた生活の様子音声メモでの典型的な発話「三日前から咳が出ると」「夜は眠れていないそうです」
O(客観的情報)入れるもの診察所見、バイタル、検査値、画像の所見音声メモでの典型的な発話「体温37.8度、SpO2は97」「右下肺野で湿性ラ音」
A(評価)入れるもの医師の見立て、鑑別、重症度の判断音声メモでの典型的な発話「肺炎は否定的、気管支炎として」
P(計画)入れるもの処方、追加検査、指導、次回の予定音声メモでの典型的な発話「対症療法で、三日後に再診」

迷いやすいのは次の3つです。「患者が血圧は家で測って130台だと言った」は、数値でもSに入ります。測ったのが患者の自己申告だからです。医師が測った値だけがOになります。「胸の音は問題なさそう」は、医師の所見なのでOですが、「だから肺炎ではない」と続くと、そこからはAです。1つの発話を所見と判断に切って、それぞれに入れます。

手順:文字起こしを匿名化して、テキストで渡す

手順

音声メモからSOAPの下書きまで

  1. 1

    音声を文字起こしにする

    録音アプリや端末のディクテーションで文字にします。Claudeのモバイルアプリでの音声入力の使い方はClaudeで通院の診察メモを音声入力し、家族に共有する手順にあります。

  2. 2

    氏名・ID・日付を置き換える

    患者名、カルテ番号、生年月日、住所、勤務先を、伏せ字のラベルに置き換えます。次の節で例を示します。

  3. 3

    テキストファイルにしてチャットに添付する

    TXTかDOCXで保存し、チャット欄左下の「+」から「Add files or photos」で添付します。ドラッグ&ドロップや、画像のコピー貼り付けでも渡せます。

  4. 4

    指示文でS・O・A・Pへの振り分けを依頼する

    指示文の型は後の節にあります。A・Pは録音にある発言だけを写すと明記します。

  5. 5

    出力を元の発話と照合してから、医師が記載する

    数値と用量を、文字起こしと突き合わせます。確認が済んだ内容を医師が診療録に記載します。

音声そのものではなく、文字起こしを渡す理由

ヘルプセンターの対応ファイル形式の表には、PDF・DOCX・CSV・TXT・HTML・ODT・RTF・EPUB・JSON・XLSXの文書と、JPEG・PNG・GIF・WebPの画像が並びます。音声ファイル(mp3やm4aなど)は、この一覧に載っていません。録音は一度文字にしてから、テキストで渡す流れになります。

XLSXで検査値の表を渡す場合は、アカウントでコード実行とファイル作成を有効にしておく必要があります。

ファイルの上限と、長い診察の分け方

チャットへのアップロードは、1ファイル500MBまで、1チャット20ファイルまでです。テキストの文字起こしなら、容量の上限に当たることは少なく、問題になるのは長さです。ヘルプセンターは、大きな文書は小さな区間に分けて渡すよう勧めています。カンファレンスの録音のように長いものは、話題ごとに切って別々に依頼します。

匿名化の置き換え表

置き換えは、あとで元に戻せる形にします。ラベルを固定にし、対応表は手元の別ファイルにだけ残します。

元の情報置き換え後注意
患者の氏名置き換え後[患者]注意家族・紹介元の氏名も別ラベルにする
カルテ番号・ID置き換え後[ID]注意桁数や形式のヒントも消す
生年月日置き換え後年齢の数字だけ残す注意年代の区分で足りる場合はそちらに
診察日置き換え後[受診日]、または相対表現注意「三日前」など日数の言い方は残す
住所・勤務先置き換え後[地名]、[勤務先]注意珍しい職業は、職種の大分類にする

単純な置換は、シェルのスクリプトでも書けます。macOSのsedを使った例です。

sed -E \
  -e 's/山田[  ]?太郎/[患者]/g' \
  -e 's/[0-9]{4}年[0-9]{1,2}月[0-9]{1,2}日/[日付]/g' \
  -e 's/ID[::]?[0-9]{6,}/[ID]/g' \
  transcript.txt > transcript_masked.txt

この置換は取りこぼしを前提にします。実行後は、人の目で通読して固有名詞が残っていないかを見ます。発話の中の「◯◯さんの紹介で」のような言い回しは、正規表現では拾えません。ここでの置き換えは氏名などを伏せる実務上の手当てで、法令の定める匿名加工情報の作り方とは別です。生成AIへの入力が医療情報の安全管理の枠組みでどう扱われるかは、医療情報システム安全管理ガイドラインで生成AI入力はどう扱われるかで解説しています。

行番号を付けると、あとの照合が楽になる

出力の各行がどの発話から来たかを辿れるように、文字起こしに行番号を付けて渡します。

nl -ba -w3 -s': ' transcript_masked.txt \
  > transcript_numbered.txt

-ba で空行にも番号が付き、-w3 は3桁幅です。番号が付いた行を指示文で「根拠」として引かせると、出力の照合は番号の突き合わせで済みます。

指示文の型:A・Pは録音にある発言だけを写す

次の指示文は、振り分けの規則、空欄の扱い、根拠の示し方を1つにまとめた形です。診療科や書式に合わせて、見出し名や略語の扱いを差し替えてください。

添付の文字起こし(行番号付き)を、SOAP形式に整えてください。
 
規則:
1. S: 患者本人が述べた訴え・経過・自己申告の数値。
2. O: 医師が診察で述べた所見・測定値・検査結果。
3. A: 医師が口にした評価・見立てだけを写す。
   録音に無い場合は「記載なし」と書く。推測で補わない。
4. P: 医師が口にした処方・検査・指導・再診の指示だけを写す。
   録音に無い場合は「記載なし」と書く。
5. 各項目の末尾に、根拠の行番号を [L12] の形で付ける。
6. 数値・薬剤名・用量は、文字起こしの表記のまま写す。
   聞き取りが不確かな箇所は [要確認] を付ける。
7. 診断名の追加、鑑別の提案、用量の推奨はしない。

規則3・4が肝です。これが無いと、Claudeは「それらしいA・P」を文脈から組み立ててしまいます。診察の流れから見て自然な見立てが書かれると、医師が確認で見落とす危険が出ます。空欄を許す指示は、見落としを防ぐ側の設計です。

出力はこういう形になる

次は、架空の症例で見た出力の一例です。実際の返答はモデルと入力によって変わるため、形の目安として読んでください。

S: 三日前から咳。夜間に増悪し、睡眠が妨げられている。
   発熱の自覚あり。 [L3][L5]
O: 体温37.8度、SpO2 97%。右下肺野で湿性ラ音。 [L8][L9]
A: 気管支炎として対応。肺炎は否定的との発言あり。 [L12]
P: 対症療法。三日後に再診。処方内容は記載なし。 [L14]

最後の行の「処方内容は記載なし」が、この指示文の狙いです。録音で薬の話が出ていなければ、出力にも薬を書かせません。

出力を元の発話に照合する3つの確認

Claudeが書いた下書きは、次の3点を確かめてから使います。

  1. 数値と薬剤名が、文字起こしと一字違わず一致しているか。行番号を頼りに1行ずつ見ます。
  2. A・Pの文が、医師の発言の写しになっているか。言い換えられて意味が強まっていないか。「否定的」が「否定」になる類です。
  3. SとOが入れ替わっていないか。患者の自己申告の数値が、Oに入っていないかを見ます。

照合を別のチャットに依頼する手もあります。元の文字起こしと下書きを渡して「下書きの数値と薬剤名を列挙し、文字起こしに無いものを指摘して」と頼みます。同じ会話の中で聞き直すと、直前の解釈に引きずられやすいため、新しいチャットで試すほうが、元の解釈と切り離して確かめられます。

Projectsに指示文だけを置いて、毎回の入力を省く

同じ診療科で繰り返し使うなら、Projectsの指示欄に規則を置きます。プロジェクトのFilesに置いた資料は、会話をまたいで参照されます。置いてよいのは、SOAPの書式見本と略語表のように、患者の情報を含まないものだけです。患者の文字起こしは、チャットごとに添付します。

プロジェクトのFilesには、1ファイル30MBまでの上限があります。ファイル数に上限はありませんが、内容の合計がコンテキストウィンドウに収まる必要があります。通常のチャット添付と違い、抽出されるのはテキストだけです(マルチモーダル対応のPDFを除く)。書式見本に図や画像を入れても、中身は読まれません。

よくあるつまずき

落とし穴

略語を展開した結果、医師の意図とずれる

同じ略語でも、診療科や施設によって指すものが違うことがあります(たとえば「HT」は高血圧を指す場合も、身長を指す場合もあります)。略語表を書式見本に置き、展開を禁じる規則を足します。「略語は展開せず、そのまま写す」の1行を足すと、ずれを抑えられます。

症状原因の候補対処
A・Pに録音に無い診断名が出る原因の候補規則3・4が弱い、または省略されている対処「推測で補わない」を規則の先頭に移し、「記載なし」を明示
数値が丸められる原因の候補要約として書き直されている対処規則6の「表記のまま写す」を強める
長い診察で後半が抜ける原因の候補1回の入力が長い対処話題ごとに切って別チャットで依頼する
同じ所見がSとOに重複する原因の候補患者の発話と医師の復唱が両方拾われる対処重複は「Sに記載、Oは医師の確認所見のみ」と指示

診療録の記載は医師が行う

医師法24条は、医師が診療をしたときは遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならないと定めています。診療録は、病院・診療所に勤務する医師の診療についてはその管理者が、それ以外は医師本人が5年間保存します。

Claudeの出力は、この記載の下書きです。記載の責任主体が医師にあることは、AIを使っても変わりません。生成AIの下書きを医師が確認しなかった場合の法的な位置づけは、医師がClaudeで紹介状・診療情報提供書を下書きする際の法的境界で、紹介状を題材に扱っています。診察録音からの診療録作成が、ヘルスケア分野の活用の中でどう位置づけられているかはヘルスケア業界のClaude活用ガイドを参照してください。

まとめ

SOAPへの整形で得られる時短は、S・Oの振り分けと書式の統一です。A・Pは、医師が言ったことだけを写す設計にします。指示文に「記載なし」を許す規則を入れ、出力に根拠の行番号を付けさせれば、確認は番号の突き合わせに変わります。患者の情報を実際に扱う段階になったら、プランと契約の条件を先に確認してください。

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