ClaudeにSteadybit MCPをつないでカオス実験を設計・実行する
Steadybit MCPをClaudeと接続し、カオス実験の設計、実行、失敗の分析までを会話で進める手順です。アクセストークンとOAuthの違い、実行ツールだけ確認を挟む権限設定も扱います。
Steadybit MCPでClaudeに任せられる作業
Steadybit MCPは、カオスエンジニアリング基盤Steadybitのホスト型MCPサーバーです。ClaudeをSteadybitのテナントに直接つなぎ、環境、サービス、実験、実行結果を読ませたうえで、実験の設計から実行までを会話で進められます。接続先はhttps://platform.steadybit.com/mcpです。
Claudeのコネクタ一覧には、2026年7月に「Anthropic verified」の表示付きで追加されました。カテゴリは開発者ツールで、サインインが必須です。
Steadybit MCPの守備範囲
探る・分析する
環境、チーム、ターゲット、サービスのリスク内訳、実行ごとの結果、ログ、実行中に集めたメトリクスを読みます。信頼性に関するアドバイスと、時系列のレポートも対象です。
設計・作成する
自然言語の説明から実験の設計案を作ります。環境やサービスに合わせた実験の提案も受けられます。新規作成、既存実験の更新、テンプレートからの作成にも対応します。
実行する
実験の実行開始と、実行中の実験の中止です。本物の障害を注入するため、この区分だけは別扱いにします。
コネクタ一覧には31個のツールが載っています。表示されているget_execution_logやlist_environmentsのような名前は、読み取り系の操作です。実行系はrun_experimentとcancel_executionがあり、作成系にはdraft_experiment、create_experiment、create_experiment_from_templateがあります。
接続する前に確認する3つの条件
接続コマンドを打つ前に、次の3点を管理者に確かめておくと、後の「つながったのに動かない」を避けられます。
- MCPがテナントで有効か。MCPサーバーはライセンス対象の機能です。以下のエンドポイントがリクエストを拒否するときは、Steadybitの管理者にMCPが有効か確認します。
- Steadybit AI機能が使えるか。実験の設計、提案、実行の分析というAI支援のツールは、MCPのライセンスに加えてSteadybit AI機能を必要とします。
- 接続する認証情報の権限。どのツールも、接続した認証情報の権限で動きます。チームの権限、環境の許可、ライセンスはUIや公開APIと同じものが適用されます。
3つ目が運用上いちばん効きます。Claudeに強い権限を渡せば、Claudeはその範囲で動けてしまいます。逆に、実験を実行できないチームの認証情報なら、実行ツールは失敗します。Claude側の設定より先に、Steadybit側で渡す権限を絞るのが筋です。
ClaudeとClaude Codeで接続する
Claude(Web・デスクトップ)
Claudeのコネクタ一覧でSteadybitを開き、「Add to Claude」から追加します。追加後にSteadybitへサインインします。Steadybitの接続ドキュメントは、OAuthで使えるクライアントに「Claude Desktop / Web」を挙げています。
Claude Code
Claude Codeからはclaude mcp addでHTTPサーバーとして追加します。認証方法は2通りで、アクセストークンならヘッダーに載せます。
claude mcp add --transport http steadybit \
https://platform.steadybit.com/mcp \
--header "Authorization: Bearer <アクセストークン>"アクセストークンは、Steadybitの画面で「Settings」の「API Access Tokens」から作ります。トークンはテナントの情報を持っているので、接続先は素の/mcpで足ります。値は作成時に一度しか表示されません。シェルの履歴やリポジトリに残さない扱いにします。
OAuthなら、ヘッダーを付けずに追加します。
claude mcp add --transport http steadybit \
https://platform.steadybit.com/mcp
claude mcp list初回の利用時にブラウザーが開き、IDプロバイダー経由でSteadybitにログインして、同意画面で接続を承認します。claude mcp listが! Needs authenticationと示すときは、Claude Code内で/mcpを開いて認証を済ませます。
複数テナントに所属している場合
OAuthでは、テナントがSteadybitのメンバーシップから決まります。複数のテナントに所属していると、どれを指すか判断できず、選択肢のURLを並べたエラーで失敗します。そのときは接続先をhttps://platform.steadybit.com/mcp/<テナントキー>に変えます。<テナントキー>は自分のテナントのキーに置き換えます。
使えるクライアントの違い
2つの認証方法は、同じサーバーに同じ機能で接続します。違いはクライアントの対応です。
| 認証方法 | 向いている場面 | 対応クライアント |
|---|---|---|
| アクセストークン | 向いている場面スクリプトやヘッドレスの構成 | 対応クライアントHTTPヘッダーを送れるMCPクライアント全般 |
| OAuth | 向いている場面ブラウザーでログインできる環境 | 対応クライアントClaude Code、Claude Desktop / Web、VS Code(GitHub Copilotを含む) |
Dynamic Client Registrationを要求するクライアントは、OAuthでは使えません。Cursor、Windsurf、Codex CLI、GitHub Copilot CLIがその例として挙がっていて、これらにはアクセストークンを使います。
アクセストークンの種類で動ける範囲が決まる
アクセストークンで接続すると、トークンの種類がそのままClaudeの権限になります。Steadybitは3種類のトークンを用意しています。
トークンの種類と到達範囲
チームトークン
関連付けたチーム内の実験とチーム単位の操作に使えます。管理者かチームオーナーが作成します。Claudeに任せる範囲を最も狭められるのはこの種類です。
ワイルドカード / 管理者トークン
ワイルドカードトークンは、作成者がオーナーであるすべてのチームに届きます。管理者が作ると全チームが対象です。管理者トークンはチームに紐づかず、チームや環境、ユーザーの管理APIに届きます。
ClaudeにはまずチームトークンかOAuthを使います。OAuthでは認証情報が自分のユーザーアカウントなので、Claudeは自分と同じことができる状態になります。広いトークンを会話に渡すと、その分だけ実験を実行できる環境も広がります。
トークンには有効期限を付けられます。期限のないトークンは失効しません。有効期限を付けられるなら、検証用途では短めに設定します。
実行ツールにだけ確認を挟む
コネクタ一覧によると、読み取り専用のツールにはその旨の注釈が付き、実験の開始は「破壊的」と注釈されています。そのためClaudeは、障害を注入する前に確認を求めます。Steadybitのドキュメントも、実行ツールを破壊的な操作として扱い、行儀のよいクライアントは実行前に確認すると説明しています。
Claude Codeでは、この確認を権限ルールでさらに固められます。ルールは拒否、確認、許可の順に評価されます。MCPツールはmcp__<サーバー名>__<ツール名>で指定し、許可ルールのワイルドカードはサーバー名の後ろだけで使えます。サーバー名をsteadybitにしていれば、次の形になります。
{
"permissions": {
"allow": [
"mcp__steadybit__get_*",
"mcp__steadybit__list_*"
],
"ask": [
"mcp__steadybit__run_experiment",
"mcp__steadybit__create_experiment"
]
}
}読み取り系は聞かずに通し、実行と作成は毎回確認します。ここに載せなかったツールは、既定どおり使うたびに確認が出ます。本番環境の実験をClaudeから動かさせたくないなら、run_experimentをdenyに移します。拒否ルールは確認や許可より先に評価され、どの設定スコープで書かれていても効きます。
注意点が1つあります。get_とlist_の接頭辞で読み取りと判断しているのは、ツール名からの切り分けです。Steadybitのドキュメントにツール単位の読み取り・書き込みの一覧はありません。許可を広げる前に、Claude Codeの/mcpでツールの一覧を開き、名前と数を確かめてください。
設計から分析までの流れ
実験の設計、実行、分析を1つの会話で回すと、次の順になります。プロンプトは例で、実際の応答はテナントの構成によって変わります。
カオス実験をClaudeで回す流れ
- 1
環境とサービスを把握する
「ステージング環境のサービスと、サービスリスクの高いものを一覧にして」と頼みます。環境、サービス、リスクの内訳を読む操作だけで済み、何も変更されません。
- 2
実験を設計する
「checkoutサービスのポッドを1つ止めたとき、注文APIの可用性が保たれるか確かめる実験を設計して」と頼みます。Claudeは設計案を作ります。この段階では、まだ何も実行されません。
- 3
内容を確認して保存する
対象、障害の種類、時間、停止条件を読みます。意図と違う箇所を直してから保存します。
- 4
実行する
実行ツールの確認が出たら、環境が合っているかを見て承認します。本物の障害が注入されます。
- 5
失敗を分析する
「直近の実行がなぜ失敗したか、ログとメトリクスから説明して」と頼みます。実行ごとの結果、ログ、メトリクスを読んで答えます。
設計案の保存についての補足です。SteadyBuddy(Steadybit組み込みのAIアシスタント)のドキュメントは、チャットで作った実験の下書きを手動で保存するまでは実験一覧に出ないと説明しています。MCP経由のdraft_experimentとcreate_experimentがこの動作と同じかどうかは、MCPのドキュメントに記載がありません。保存の有無は、Steadybitの実験一覧で目視確認します。
失敗の分析で得られるもの
SteadyBuddyの実行分析は、失敗や異常終了した実行について、判定、根本原因、仮説の判断、推奨の4点を決まった形で返します。推奨は、修正案と同じ爆発半径での再実行です。分析は実行ごとに1回だけ計算されて保存され、同僚が開いても同じ内容が出ます。
MCPのanalyze_executionが同じ形で返すかは記載がありません。Claudeに頼むときは、この4点を答えの形として指定すると、読み比べやすくなります。例えば「判定を1文、根本原因、仮説が成り立ったか、次の一手の順で答えて」と書きます。
安全のためにCLAUDE.mdへ書く規約
実行前の確認はツール側で効きますが、設計の質は指示で決まります。Claude Codeを使うなら、次のような規約をCLAUDE.mdに置いておけます。
## Steadybitでの実験
- 実験の実行は、必ずステージング環境から始める
- 設計時に仮説と停止条件を明記し、爆発半径は最小のターゲットから広げる
- run_experimentを呼ぶ前に、環境名・対象・継続時間を要約して確認を取る
- 失敗した実行は、ログとメトリクスを読んでから原因を述べる実行が拒否されるときの切り分け
Steadybitのドキュメントは、実験を実行できる条件を4つ挙げています。検証エラーがないこと、すべての攻撃が少なくとも1つのターゲットに解決されること、実験と同じチームのメンバーであること、緊急停止が発動していないことです。ここから、実行が通らないときの順番が組めます。
実験が開始されないときの確認順
- QMCPのエンドポイントがリクエストを拒否しているか?答えがいいえのとき答えがはい
テナントでMCPが有効かどうか、管理者に確認します。MCPはライセンス対象の機能です。
- Q実験に検証エラーが残っているか?答えがいいえのとき答えがはい
エラーの出ている項目を直してから、保存し直します。
- Q攻撃がターゲットに解決されないか?答えがいいえのとき答えがはい
その環境にターゲットが存在し、実験の対象指定に合っているかを見直します。
- Q接続した認証情報は実験と別のチームか?答えがいいえのとき答えがはい
実験と同じチームのメンバーとして接続し直します。チームトークンなら、実験のチームを含めて作ります。
緊急停止の状態を確認する
緊急停止が発動していると、UIでもAPIでも新しい実験を開始できません。MCPからの実行とこの状態の関係は、MCPのドキュメントに記載がありません。解除の手順は、Steadybitの緊急停止のページで確認します。
緊急停止は、認証済みのユーザーなら誰でも、実行中のすべての実験を止められる操作です。Claudeが開始した実験を急いで止めたいときも、UIの「Current Activities」にあるボタンが使えます。
導入判断のポイント
Steadybit MCPは、実験の設計と失敗の分析という手間のかかる部分を会話に寄せる接続です。実行だけは破壊的な操作として確認を挟む設計なので、導入の勘所は権限の絞り方にあります。
- Claudeの探索、設計、分析は、読み取り権限だけの認証情報でも試せます
- 実行まで任せるなら、チームトークンかOAuthで対象のチームを絞り、
run_experimentをaskに置きます - 本番環境は、実行ツールを
denyにして、UIで人が実行する分担も選べます
MCPとCLIで本番の操作をClaudeに任せるときの権限設計は、AWS CLIをMCPでClaudeに実行させる権限設計が参考になります。メトリクスをPromQLで読む側は、mcp-grafanaでPromQLを実行し、p95・p99を出す手順に手順があります。同じ開発者ツール系のコネクタでは、BrowserStack MCPでテストを計画・実行・デバッグするが似た流れです。Claude Code全体の使い方はClaude Codeの全体像にまとまっています。