ClaudeのUS-only inferenceをEnterpriseで有効化 — 手順と1.1倍の料金
Claude EnterpriseのUS-only inferenceは、組織の推論を米国内に限定する設定です。有効にする手順、変更できるロール、利用料が1.1倍になる範囲を示します。
Claude EnterpriseのUS-only inferenceは、組織が使うすべてのClaudeアプリの推論(応答を生成するモデル処理)を、米国内のサーバーに限定する組織設定です。Organization settingsのData and privacyでトグルを1つオンにするだけで切り替わります。
代償は料金です。オンにすると、Claude Opus 4.6・Claude Sonnet 4.6以降のモデルの利用分が標準API料金の1.1倍になります。席料は変わりません。
US-only inferenceは何を米国内に限定するのか
US-only inferenceがオンの組織では、推論がすべて米国内のサーバーで実行されます。対象はClaude CodeやClaude Desktopを含むClaudeアプリ全般の利用です。会話タイトルの生成やメモリーのようなバックグラウンド処理も含まれます。
オフのときは、速度と可用性のために他の地域のサーバーへ推論が振り分けられることがあります。つまりオンにすると、この振り分けの選択肢が取り除かれます。
この設定はusage-based(使用量課金)のEnterpriseプランで使えます。Teamプランや、従来の座席課金型のEnterpriseプランには表示されません。
API側で推論地域を指定するinference_geoは別系統の設定です。両者の違いはClaudeのデータレジデンシー(inference geoとworkspace geoの違い)にまとめています。この記事で扱うのは、Enterprise管理画面の組織設定のほうです。
有効にする手順
US-only inferenceをオンにする流れ
- 1
管理画面を開く
Organization settingsのData and privacyに移動します。
- 2
US-only inferenceの項目を探す
画面内の「US-only inference」を見つけます。表示されない場合は、後述の切り分けを参照してください。
- 3
トグルをオンにする
トグルをオンにします。設定は組織全体に適用され、メンバーごとの出し分けはできません。
変更は即時に反映されるはずですが、使っているClaudeアプリによっては反映に少し遅れが出ることがあります。切り替えた直後は、アプリごとに反映のタイミングがずれることがあります。
すでにオンで、変更できない組織がある
これまでにグローバルルーティングを拒否していた組織や、契約書に米国内推論の要件がある組織では、設定は最初からオンです。画面から切り替えることはできず、既存の価格条件がそのまま適用されます。この場合の確認先は、アカウント担当チームです。
誰が設定を変えられるか
変更できるのは、Primary Owner、Owner、そしてカスタムロールのうちPrivacy権限が「Can manage」のメンバーです。Privacyが「Can view」のメンバーは設定を見られますが、変更はできません。
| ロール | 設定の閲覧 | 設定の変更 |
|---|---|---|
| Primary Owner / Owner | 設定の閲覧できる | 設定の変更できる |
| カスタムロール(Privacy = Can manage) | 設定の閲覧できる | 設定の変更できる |
| カスタムロール(Privacy = Can view) | 設定の閲覧できる | 設定の変更できない |
推論地域の変更は請求額に直結するため、変更権限を誰に渡すかは運用上の論点になります。Privacy権限だけを持つロールを作れば、請求まわりの権限(Billing)を渡さずに設定担当を置けます。ただし設定のオンオフは料金に響くので、Billingの管理者にも変更を共有しておくと、請求額の変化に驚かずに済みます。ロールの作り方はClaude Enterpriseでカスタムロールを作成する手順にあります。
料金への影響を試算する
US-only inferenceの料金への掛かり方
使用量の単価
標準API料金の1.1倍
Opus 4.6・Sonnet 4.6以降のモデル
席料
変更なし
1.1倍は使用量だけに掛かる
旧世代モデル
標準料金のまま
Opus 4.5・Sonnet 4.5・Haiku 4.5以前
Enterpriseは、席料と使用量が別建ての請求です。席料にはトークンの利用枠が含まれず、消費したトークンはすべて標準API料金で別に請求されます。US-only inferenceの1.1倍が掛かるのは、このうち使用量の部分だけです。
月額の目安
1.1倍の影響は、対象モデルの利用額に比例します。たとえば月に対象モデルで10,000ドル使う組織は、オンにすると11,000ドルになります。増分は1,000ドルです。
対象外のモデルが混ざる場合は、その分だけ増分が小さくなります。月の利用が「対象モデル8,000ドル+旧世代モデル2,000ドル」なら、請求は8,800ドル+2,000ドルで10,800ドルです。
この試算は、標準料金での利用額を出発点にした単純な掛け算です。Haiku 4.5やOpus 4.5以前を使い続けているチームが多い組織ほど、増分は小さくなります。
料金が変わるのは契約形態を問わない
請求ヘルプには、1.1倍がセルフサーブ型とセールス経由(sales-assisted)型のどちらのEnterpriseにも適用されるとあります。セルフサーブではクレジットの減りが速くなり、セールス経由では月次請求書の使用量が増える形で表れます。
クレジットで先払いしている組織は、同じクレジット額で流せるトークン量が約9%減ると考えられます(1 ÷ 1.1 ≒ 0.909)。アクティベーション特典のクレジットを使っている組織の見え方は、Claude Enterpriseのアクティベーション特典 — 1人1,000ドルの条件で触れています。
US-only inferenceが対象にしないもの
この設定が制御するのは、モデルがリクエストを処理する場所だけです。次の2つは対象外です。
- コネクタと第三者サービス: SlackやGoogle Driveなどと連携すると、そのサービスは自社のインフラでデータを処理します。所在地が米国外のこともあり、この設定では変わりません
- データの保存場所: 組織のデータをどこに保存するかは、推論の実行場所とは別の話です
「米国内に限定した」という説明を社内で使うときは、範囲の言い方に気をつけます。推論は米国内、コネクタ先とデータ保存は別、という3点を分けて伝えると誤解を避けられます。個人情報保護法との関係はClaude Data Residencyと「外的環境の把握」の記事が詳しく扱っています。
設定が見えないときの切り分け
US-only inferenceの項目が表示されないとき
- Qプランはusage-basedのEnterpriseですか?答えがTeamプランや従来の座席課金型Enterpriseでは項目が表示されません。答えがはい
- Q自分はPrimary Owner、Owner、またはPrivacy権限を持つロールですか?答えがPrivacyが「Can view」なら閲覧のみです。権限を持つ管理者に依頼します。答えがはい
それでも変更できないとき
グローバルルーティングの拒否や契約上の要件で最初からオンの組織は、画面から変更できません。アカウント担当チームに確認します。
プランの種類が分からない場合は、Enterpriseを立ち上げた担当者か、アカウントマネージャーに確認するのが確実です。なお、「Chat」「Chat + Claude Code」の席種を持つ組織も使用量課金のEnterpriseに含まれ、この設定の対象です。表示されないのは、Teamプランと従来の座席課金型Enterpriseです。
有効化の前に確かめたいこと
オンにする前の確認事項を、順番にまとめます。
- 利用の中心が対象モデルか。Opus 4.6・Sonnet 4.6以降が中心なら1.1倍がほぼ全額に掛かります
- 予算とクレジットの残量。セルフサーブ型は、クレジットの減りが約1割速くなります
- 支出上限の設定。組織単位・個人単位の上限は金額で決まるため、1.1倍になると同じ作業量で上限に早く届きます
- 契約側の要件。すでにオンの組織は、画面から触る必要がありません
- コネクタの処理地域。推論が米国内でも、連携先は別の地域で処理することがあります
まとめ
US-only inferenceは、トグル1つで推論を米国内に固定できる代わりに、対象モデルの利用料が1割増える設定です。判断の分かれ目は、利用の中心がOpus 4.6・Sonnet 4.6以降か、そして推論以外の地域要件(コネクタ、データ保存)を別に満たす必要があるかの2点にあります。
権限はPrivacyの「Can manage」、料金への影響はBillingの管理者という別々の担当に分かれるため、オンにする前に両方へ共有しておくと、請求額の増加で驚くことを避けられます。