CoworkとAntigravityの比較 — エージェント開発の設計思想を読む
Claude CoworkとGoogle Antigravityを対象ユーザー・動作環境・権限モデル・料金で比較します。成果物を渡す設計と、エージェントを指揮する設計の違いを軸に整理しました。
Claude CoworkとGoogle Antigravityとは何か
Claude Cowork(クロードコワーク)は、依頼したタスクをClaudeが自分のファイルとツールの中で最後まで進め、完成した成果物をレビューのために返す製品です。公式ページは「目標を与えれば、ファイルとツールを横断して動き、完成した仕事を確認するために戻ってくる」と説明しています。対象は非エンジニアの業務(マーケティング・営業・法務・財務)です。基本機能はClaude Cowork(クロードコワーク)とはにまとめています。
Google Antigravityは、Googleが提供するエージェント型の開発プラットフォームです。公式サイトは「Google Antigravity is our agentic development platform, allowing anyone to build in the agent-first era.」と定義しています。中核製品のAntigravity 2.0は、複数のAIエージェントを起動・監視・指揮する「司令塔」です。以前のバージョンだったAgent Managerとは異なり、IDEに依存しない単独アプリケーションとして動作します。
両者はどちらも「AIエージェントに作業を任せる」点は共通していますが、成り立ちが違います。Coworkは業務のタスクを渡して成果物を受け取る設計、Antigravityはソフトウェア開発の現場で複数のエージェントを並行運用するために作られた指揮センター型の設計です。この違いは、対応ユーザー・動作環境・権限モデルのすべてに現れています。
設計思想の違い — 成果物を渡すか、エージェントを指揮するか
Coworkの公式FAQは、Claude CodeとCoworkの役割分担を明確に線引きしています。Claude Codeはソフトウェアエンジニアリング向け、Coworkは非コーディングの知識労働(リサーチ・分析・文書作成などの多段階タスク)向けだと説明されています。Anthropicはこの説明の通り、コーディングと非コーディングの知識労働を別製品に分けました。Coworkの利用者は「何を」達成したいかを言葉で伝えるだけで、進め方はClaude側が決めます。
Antigravityは逆に、コーディングと一般的な知識労働の両方を1つのブランドの中に統合しています。Antigravity 2.0のドキュメントは、エージェントが実行できる操作としてシステムコマンドの実行・ファイルの読み書き・Web検索・サブエージェントの管理を並べています。対象をソフトウェア開発に限定していません。それでもプロジェクトの単位はGitリポジトリとワークツリーが軸です。VCSパネルやターミナルの統合など、開発者向けの機能が土台になっています。
この構造の違いは、ClaudeとManusの比較で扱った自律実行エージェントとも重なります。Manusが汎用タスク代行の単一製品だったのに対し、AnthropicとGoogleはどちらも「開発者向け」と「非開発者向け」を分ける、または統合するという設計判断を明示的に下しています。
動作環境と対応プラットフォームの比較
Coworkはデスクトップアプリ(macOS・Windows・ChromeOS・Linux)が起点ですが、デスクトップアプリは必須ではなく、ウェブとモバイルでも動きます(いずれもベータ)。動作環境ごとの機能差はCoworkのウェブとモバイル対応で詳しく比較しています。要点は、ローカルファイルの読み書きとブラウザ操作がデスクトップアプリ経由でしか完全には届かないことです。
Antigravityは単一のアプリではなく、5つの製品で構成されるファミリーです。常駐の司令塔がAntigravity 2.0、ターミナル中心がAntigravity CLIです。VS Code・Visual Studio・JetBrains・Zed・Xcodeに対応するAntigravity Extensions、フル機能のAntigravity IDE、カスタムエージェントを組むためのAntigravity SDKもあります。動作環境の要件はmacOSがMonterey以降(Intel非対応)、WindowsがWindows 10(64bit)、Linuxがglibc 2.28以上です。
モバイルからの継続性も設計が異なります。Coworkはスマホからタスクを開始でき、ノートPCを閉じてもクラウド側で作業が続きます。開始した作業をどの端末からでも確認・指示できます。AntigravityのRemote Controlは、計算そのものはデスクトップ機に置いたまま、モバイルのブラウザから監視・承認だけを行う設計です。ローカルのファイルシステムや認証情報はデスクトップ側に残ります。
権限とセキュリティモデルの比較
Coworkは「You decide what Claude can access」という原則で、利用者が指定したフォルダとツールの外にはアクセスできません。ファイルの削除のような重大な操作は事前の承認が必須で、Enterprise管理者はチーム・部署単位で権限とツールを制御し、OpenTelemetry経由でSIEMに操作ログを流せます。実行環境もClaudeアカウントのほか、Amazon Bedrock・Google Cloud・Microsoft Foundryといった自社のクラウド上で完結させる選択肢があります。
Antigravityの権限モデルは3段階のプリセットで構成されています。macOSとLinuxでは「Default」(サンドボックス内は自動許可、外は都度確認)、「Request Review」(常に確認)、「Turbo」(無制限に自動実行)から選びます。プロジェクトごとに個別設定で上書きできます。サンドボックスは~/.sshや.envのような機微なファイルを遮断し、明示的にマウントしていないパスはエージェントから見えません。一方Windows版は別系統の実装で、サンドボックス機能は既定でオフのままです。公式ドキュメントは、統一された権限システムへの更新は今後のリリースで対応する予定だと述べており、プラットフォームによる機能差が残っています。
外部ツールとの連携方法も設計が異なります。Coworkは標準機能としてSlack・Google Drive・Microsoft 365・AmplitudeなどをConnectorsで直接つなぎます。業務でよく使うアプリの操作は、プラグイン(Skills・Connectors・Sub-agents)として1つのパッケージにまとめられます。Antigravityは接続の入り口をMCPサーバーに一本化しており、Skills・Rules・Hooks・Sidecarsといったカスタマイズもすべてこの上に組み立てます。AntigravityのOSネイティブサンドボックスは、Claude Code・Codex CLI・Cursorが採用する方式に近い設計です。詳細はAIコーディングエージェントのサンドボックス実装比較で比較しています。
機能比較表
| 項目 | Claude Cowork | Google Antigravity |
|---|---|---|
| 位置付け | Claude Cowork業務タスクの代行 | Google Antigravityエージェント型の開発プラットフォーム |
| 主な対象 | Claude Cowork非エンジニアの知識労働者 | Google Antigravityソフトウェア開発者 |
| 提供形態 | Claude Coworkデスクトップ・Web(β)・モバイル(β) | Google Antigravityデスクトップアプリ・CLI・IDE拡張・SDK |
| 作業の単位 | Claude Cowork依頼したタスク | Google Antigravityプロジェクト(Gitワークツリー対応) |
| サンドボックス | Claude CoworkLinuxはQEMU/KVMのVM(他OSの実装は未確認) | Google AntigravityOSネイティブ機構のみ、VM不使用(Windowsのみ旧実装) |
| 権限プリセット | Claude Coworkフォルダ・ツール単位の許可、削除は要承認 | Google AntigravityDefault・Request Review・Turboの3段階 |
| 外部連携 | Claude Cowork標準搭載のConnectors + Skills・Sub-agents | Google AntigravityMCPサーバー + Skills・Rules・Hooks・Sidecars |
| 定期実行 | Claude CoworkClaude works when you don't(定期タスクの自動起動) | Google AntigravityScheduled tasks(スケジュール指定でエージェントを起動) |
| 無料プラン | Claude Coworkなし(Proプラン以上に付属) | Google Antigravityあり($0、主要モデルに一部アクセス可) |
| 組織導入 | Claude CoworkEnterprise管理者設定 + 独自クラウド選択 | Google AntigravityGoogle Cloud経由のOrganizationプラン |
料金モデルの違い
Coworkは単独の料金プランを持たず、Claudeの契約プランに含まれる形で提供されます。Proプランは年払いで月17ドル(月払いは20ドル)、Max 5xは月100ドル、Max 20xは月200ドルです。Teamは1シートあたり月20ドル(2〜150シート)で、Slackコネクタも含まれます。Enterpriseは管理者コンソールと使用量分析が付いたカスタム契約です。
Antigravityは個人向けに無料プランを用意しています。公式の料金ページによれば、無料の「For Individuals」プランでもGemini 3.8/3.7/3.6 Flash・Gemini 3.1 Pro・gpt-oss-120bに加えて「Claude Sonnet & Opus 4.6」へのアクセスが含まれます。Tab補完とCommand実行は無制限です。上位のGoogle AI Pro/Ultraはレート制限とAIクレジットプールが拡大しますが、具体的な月額は料金ページに明記されていません。組織導入はGoogle Cloudの利用規約のもとで従量課金される「Organization plan」が別途用意されています。
それぞれの強みと弱み
Coworkの強みは、業務でよく使うツールへの標準連携と、Enterprise向けの統制機能が最初から揃っている点です。スケジュール実行やスプレッドシートの突合、契約書の一括レビューのように成果物の形が決まっている業務では、Connectorsを通じて既存のデータソースに直接触れられます。準備なしで使い始められるのが利点です。弱みは、コーディング用途にはClaude Codeという別製品が必要になることです。Cowork単体では開発者向けの機能(ワークツリー管理やVCSパネルなど)を持ちません。
Antigravityの強みは、Gitワークツリー・VCSパネル・統合ターミナルといった開発者が日常的に必要とする機能を、エージェント指揮と同じ画面に統合している点です。ブラウザ操作を伴うタスクもChrome DevTools MCPとの統合により、実際のブラウザに近い形で扱えます。弱みは2つあります。個人のGoogleアカウントを前提とした認証モデルのため、既存のGoogle Workspace組織にそのまま展開しにくいこと。もう1つは、Windowsのサンドボックスがまだ従来方式のままで、macOS・Linuxと同じ保護を受けられないことです。
使い分け早見表
| 用途・状況 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 週次レポートやスプレッドシートの突合 | おすすめCowork | 理由Connectorsで既存データソースに直接つながる |
| 契約書・メモの一括レビュー | おすすめCowork | 理由フォルダ単位の成果物生成に最適化されている |
| 新規アプリのスクラッチ開発 | おすすめAntigravity | 理由ワークツリー・VCSパネルなど開発フローが標準装備 |
| Google Workspace組織での一斉導入 | おすすめCowork | 理由Antigravityは個人アカウント前提で導入障壁がある |
| 無料でエージェント開発を試したい | おすすめAntigravity | 理由$0の個人プランで主要モデルに触れられる |
まとめ
Claude CoworkとGoogle Antigravityは、どちらもAIエージェントに複数ステップの作業を任せる製品ですが、出発点が違います。Coworkは非コーディングの業務を対象に、成果物を渡して受け取る体験に振り切っています。Antigravityはソフトウェア開発の現場から生まれ、コーディングと一般的な知識労働を1つの指揮センターに統合する方向に進んでいます。
業務の定型作業を任せたいならCowork、開発フロー込みでエージェントを組み合わせたいならAntigravityという選び方が、公式ドキュメントに書かれた設計思想からは読み取れます。どちらも権限モデルとサンドボックスの実装を独自に磨いている最中で、特にAntigravityのWindows対応は今後の更新で変わる可能性があります。導入を検討する際は、この記事の比較表と合わせて各社の最新ドキュメントも確認してください。