IntercomとCoworkで問い合わせ一次対応を承認フロー付きにする
顧客への返信を送れないIntercomコネクタとCowork Scheduled Tasksを組み合わせ、問い合わせの下書き回答を定期作成し人間が送信を担う運用の組み方を確認します。
IntercomとCoworkの一次対応ワークフローとは
ClaudeとIntercomを連携する方法で扱ったとおり、Claudeのディレクトリに載るIntercomコネクタの6ツールは読み取り専用で、顧客への返信の送信やクローズのツールはありません。Intercom側の資料には、顧客に届かない内部メモを追加する add_internal_note もあります。この制約を逆手に取ると、Cowork Scheduled Tasksで「新着の問い合わせを定期的に読み、返信の下書きを作る」タスクを組み、人間が下書きを確認してIntercomで送るという一次対応の型が作れます。
承認の置き場所は、コネクタが書き込みツールを持つかどうかで変わります。SOPの実行を自動化しつつ承認だけ人に残す設計は、Process StreetとCoworkでSOPの実行を自動化し承認は人に残すでも扱っています。
承認の置き場所の違い
Intercom(顧客への送信なし)
ディレクトリ掲載のツールは search fetch search_conversations get_conversation search_contacts get_contact の6つで、すべて検索・取得です。顧客に届く返信を送るツールは一覧にありません。
書き込みツール付きのコネクタ
Zendeskチケット分析で扱う非公式MCPのように create_ticket_comment を備える構成では、書き込みの前にCowork内の確認が入ります。組織設定のツール承認も効いてきます。
前提条件
- Cowork Scheduled Tasksが使えるプラン(Pro・Max・Team・Enterprise。Team・Enterpriseは管理者がCoworkを無効にしていないこと)
- Intercomのアカウントと、対象ワークスペースの会話を閲覧できる権限
- IntercomをコネクタとしてClaudeに接続済みであること(接続の手順はClaudeとIntercomを連携する方法にあります)
下書きタスクを作って動かす4ステップ
設定から運用開始まで
- 1
接続を確かめる
チャット欄の「+」メニュー、または「Customize」→「Connectors」のページで、Intercomが接続済みになっているかを見ます。
- 2
タスクを作る
左サイドバーの「Scheduled」で「New task」→「Set up manually」を選び、タスク名・依頼文・承認モード・実行頻度・モデルを入れます。Intercomだけで完結するので、フォルダは空欄のままにします。
- 3
頻度を手動にして試す
実行頻度に手動(manually)を選ぶと、Scheduledページからオンデマンドで、好きなときに実行できます。下書きの質と、Claudeが何を読んだかを数回見てから、毎時や平日のみへ切り替えます。
- 4
結果を読んでIntercomで送る
各回の実行は独立したCoworkセッションとして残ります。Scheduledページで結果を開き、下書きを確認して、Intercomの返信欄に貼って送ります。
依頼文には、下書きだけを作り送信はしないこと、成果物の形(会話リンクと下書きの一覧)を書いておきます。Intercomコネクタに顧客への送信ツールは無いため実際には送られませんが、報告文に「送信しました」のような紛らわしい言い回しが混ざるのを指示で防げます。
依頼文の例
毎時、Intercomで過去2時間以内に新着があり未返信の会話を確認して。会話ごとに要点を3行で要約し、丁寧なビジネス日本語で返信の下書きを1つずつ作成して。実際の送信は行わず、会話へのリンクと下書きの一覧だけを提示して。
下書きの置き場所はIntercomの外にある
ディレクトリ掲載の6ツールは検索と取得だけなので、顧客に見える返信の下書きをIntercomの会話に保存する手段はありません。内部メモの追加はツール次第で、使える環境かどうかはClaudeとIntercomを連携する方法にあります。標準の下書きが残るのは、タスクの実行結果を表示するCoworkのセッション側です。担当者は文面を見直す余地があるぶん、送信前に手を入れられます。
一手間が増える代わりに、送信ボタンを押す人が必ず1人います。無人で動くScheduled Tasksについて、安全性ガイドは「メッセージの送信や購入のような、取り消しにくい操作を含むタスクは予約しない」よう案内しています。この構成はその注意に沿っています。
承認モードはどれを選ぶか
Coworkの3つの承認モード
Manually approve
Claudeが止まり、各アクションの前にAllowかDenyを求めます。
Automatically approve
Claudeは止まらず進み、各アクションを事前に安全性の面から自己判定して、危険と判断したものをブロックします。ブロックが続くと、1ステップごとに許可を求める状態へ戻ります。安全チェックの分だけ他のモードより使用量を多く消費します。
Skip all approvals
確認も、自動のチェックもありません。関わるコネクタ・ファイルをすべて信頼できるときだけの設定です。
ディレクトリ掲載の6ツールだけなら読み取りだけで、顧客に届く操作は起きません。どのモードでも実害は起きにくい構成です。安全性ガイドが挙げるManuallyに切り替える条件は、機微なデータやアカウントに触れるとき、新しいツールを初めて使うとき、メッセージ送信のように取り消しにくい操作があるときの3つです。初回はIntercomという新しい接続先に触れるので、Manuallyで数回動かしてからAutoへ移る流れが筋の通った進め方です。
ファイルの完全削除は、どのモードでも必ず明示的な許可が必要です。
実行場所とフォルダ指定の食い違い
公式ヘルプのScheduled tasksの記事は、1か所のなかで2通りの書き方をしています。仕組みの説明では、タスクはリモートで動いてPCがスリープしていても走り、PC上のフォルダには結び付けられないとあります。一方の手動設定の項では、作業フォルダを選べる欄があり、ローカルのファイルやアプリが必要なタスクはローカルでしか動かないとあります。
読者の状況別に切り分けると次のようになります。
- Intercomのデータだけで完結するタスク: フォルダを空にすれば、PCを閉じていても動く
- 手元のファイル(過去の回答集など)も参照させたいタスク: ローカルのファイルやアプリが必要なタスクは、ローカルでしか動かない
2026年10月6日から、ProとMaxでは新しいCoworkタスクがクラウドで実行され、設定の「Only on your computer」は廃止されます。すでに始めたタスクはPC上に残ります。
顧客の文面は信頼できない入力として扱う
Intercomの会話本文は顧客が書いた第三者のテキストです。安全性ガイドは、Claudeが作業の途中で悪意ある内容(プロンプトインジェクション)を読むと、利用者が気づく前にその指示に従う場合があると警告しています。Autoでは安全チェックが自動で行われますが、Cowork入門のヘルプは、どの防御も完全ではなく、どのモードも利用者の判断の代わりにはならないとしています。
この構成では顧客への送信やクローズのツールが無いので、送信や削除は起きません。残るリスクは下書きの中身で、たとえば会話に紛れた指示で、返金の約束や別の顧客の情報が文面に混ざる可能性があります。検索系のツールを持つ以上、他の会話の内容が下書きに混ざる経路は考えられます。人間が送る前に、下書きの宛先と書かれた内容が1件の会話に収まっているかを見るのが、承認ステップの役目の1つです。
Team・Enterpriseでの権限設計
Team・Enterpriseでは、「Organization settings」→「Cowork」の「Permissions」欄にある2つのトグルが関わります。
「Allow "Automatically approve" mode」は、メンバーがAutoモードを使えるかを決めます。既定でオンなので、管理者がオフにしない限り選択肢に表示されます。
「Allow "Always allow" for connector tools」は、書き込み可能なコネクタツールで、タスクごとの承認をスキップできるかを決めます。既定はオフです。オフの間は、承認ダイアログの「Allow for all tasks」がグレーアウトし、保存済みの常に許可も効きません。
読み取り専用のツールがこの制限から外れる条件は、コネクタがそのツールを読み取り専用と注釈している場合です。Intercomのコネクタ紹介ページに載るのは6ツールの名前までで、注釈の有無は書かれていません。この6ツールは書き込みをしないので、どちらでも結果は変わりません。一方、Intercom側の資料にある内部メモの追加は書き込みなので、「Write conversations」権限つきで認可して使うなら、この設定の対象になりえます。メール送信のような書き込み可能なコネクタを足した場合も同様です。
よくあるつまずき
Claudeが「返信を送信しました」と報告してくることがあっても、実際には送信されていません。公式ヘルプには、メールを送ったと偽って報告する症状の専用記事があります。依頼文で送信禁止と成果物の形を指定したうえで、「下書きの提示までで完了とする」ことを明記します。
Manuallyで予約した実行が進まないときは、承認待ちで止まっていないかを確かめます。Intercom単体の読み取りだけなら通常は詰まりませんが、他の書き込み可能なコネクタを組み込んでいると、そのツールの承認で止まります。対処法はCowork承認プロンプトが多すぎて止まるときの対処法にあります。
組織で「常に許可」がグレーアウトしているのは、「Allow "Always allow" for connector tools」がオフだからです。Intercom単体なら実害はありませんが、他のコネクタと併用するタスクを組むなら、管理者に設定の意図を聞いておくと後から迷いません。詳しくはCowork常に許可がグレーアウトする原因と直し方を参照してください。
運用開始後の見直し
実行結果は、左サイドバーの「Scheduled」ページでいつでも見返せます。安全性ガイドが勧めるのは、実害の小さいタスクから始め、各回の出力を定期的に確認し、使わなくなったタスクは一時停止か削除にすることです。問い合わせの傾向が変わって下書きの精度が落ちたときも、見返す習慣があれば早く気づけます。
Scheduledページからは、依頼文や頻度の編集、一時停止と再開、削除もできます。下書きの文体を直したいときは、タスクを作り直さず依頼文を書き換えます。
手動設定のほかに、「New task」の「Create with Claude」から、やりたいことを話してタスクを作る方法もあります。メッセージ欄に「Chat」と「Cowork」の選択肢が出ない新しい体験のProとMaxでは、会話の中で頻度を伝え、提案された名前・スケジュール・指示を確認して「Schedule」を押します。
個人が特定できる問い合わせ内容を要約させる指示を含めるなら、実行結果を見られる範囲にも気を配ります。
まとめ
Intercomのコネクタは顧客への返信を送れないので、Scheduled Tasksで「読んで下書きを作る」までを任せ、送信は人間がIntercomで担う型になります。他の書き込み可能なコネクタを足すときは、組織のツール承認設定も合わせて見ておくと、承認の置き場所がずれません。