PagerDuty×CoworkでSLA監視とエスカレーションを自動化する
Cowork Scheduled Tasksで未解決インシデントを定期監視し、SLA超過が近いものだけ承認を挟んで人へ確認を求める構成を組む方法をまとめます。
未解決のPagerDutyインシデントを定期的に見に行き、SLA超過が近いものだけ人に確認を求めてからエスカレーションする。この動きは、CoworkのScheduled TasksとPagerDutyのMCPサーバーで作れます。読み取りは自動、実際に人へ連絡が飛ぶ書き込みは承認制に分けると、巡回の手間だけを減らして判断は人に残せます。
ただし、PagerDuty自身がすでにエスカレーションを自動で行っています。Claudeに任せる価値があるのは、その仕組みが拾わない範囲だけです。
前提条件
CoworkのScheduled TasksはPro・Max・Team・Enterpriseの有料プランで使えます。接続済みのコネクタとプラグイン、Claudeアカウントに保存したファイルが対象なので、PagerDutyのMCPサーバーを先にコネクタとして繋いでおく必要があります。Team・EnterpriseではCowork自体の利用可否を管理者が組織設定で切り替えます。
PagerDuty側の条件は、Advanced Permissionsを持つアカウントと、ユーザーのAPIキーまたはOAuthクライアントです。接続先はPagerDutyがホストするMCPサーバー(https://mcp.pagerduty.com/mcp)です。EUリージョンのアカウントはhttps://mcp.eu.pagerduty.com/mcpを使います。クライアントはリモート(HTTP)のMCPサーバーに対応している必要があります。OAuthで繋ぐ場合、PagerDutyは動的クライアント登録(DCR)に対応していません。
2026年10月6日から、ProとMaxでは新しいCoworkタスクがクラウドで動きます。設定の「Only on your computer」は消え、すでにコンピューター上で始めたタスクはそのまま手元に残ります。この記事の監視タスクはPagerDutyのコネクタだけで完結するので、PCを閉じていても回ります。
PagerDutyに任せる範囲と、Claudeが拾う範囲
PagerDutyのエスカレーションポリシーは、インシデントが発生するとルールを上から順に進み、誰かが確認(acknowledge)するまで通知を続けます。各ルールの「escalates after ___ min」が猶予時間で、既定は30分です。つまり、誰も反応しない高緊急度のインシデントは、Claudeがいなくても次のレベルへ上がります。
SLA超過を誰が拾うか
PagerDutyが自分で動く
確認されないまま猶予時間を過ぎると、次のルールの担当者へ通知が移ります。この範囲に巡回タスクを重ねても、同じ通知を二重に出すだけです。
巡回で補う
確認した時点でエスカレーションは止まり、確認は解決ではありません。低緊急度のインシデントも自動では上のレベルへ進まず、手動のエスカレーションもできません。ポリシーに沿って上げるには、先に高緊急度へ変更する必要があります。確認後に放置されたものを探す役目が、この巡回タスクです。
サービス設定の「Acknowledgement Timeout」を有効にすると、確認済みのインシデントも一定時間後に再発報(re-trigger)されて担当者へ再通知されます。この設定は既定でオフなので、オンにしているサービスでは巡回の対象を減らせます。逆に、オンにできない運用の組織ほど、この巡回タスクが効きます。
Scheduled Taskのプロンプトを設計する
「Scheduled」→「New task」→「Set up manually」で、タスク名・プロンプト・承認モード・頻度を指定します。頻度は時間単位、日単位、週単位、平日のみ、手動から選びます。プロンプトには、上の切り分けをそのまま手順にして書きます。
1. browse_incidentsのlistで、acknowledgedのインシデントと、緊急度が低いtriggeredのインシデントを取得する
2. 作成時刻からの経過時間を計算し、優先度ごとの閾値を超えたもの、または次の巡回までに超えそうなものを抽出する(閾値: P1は2時間、P2は1日。以降は組織のSLAに置き換える)
3. 抽出した各インシデントのID・タイトル・経過時間・サービス・現在の担当を一覧にする
4. 各インシデントに、担当チームの追加(add_responders)またはノート追記(add_note)の案を添える。実行はせず、承認を待つ閾値の数字は例です。PagerDutyの優先度ラベルは組織ごとに決められ、P1〜P5でもSEV-1〜SEV-5でも構いません。優先度は常に5段階で、使わない段には---を入れる仕様です。プロンプトには、自分の組織が実際に使っているラベル名を書きます。名前が違うと、Claudeが該当のインシデントを取り違えることがあります。
閾値の根拠になる猶予時間は、browse_escalation_policiesのlistとgetでポリシーを取得できます。猶予時間が返る項目に含まれるかは、最初の実行で確かめます。まず対象サービスのポリシーが存在するかを確かめる用途に使い、SLAの数値自体は社内の取り決めを正としてプロンプトへ書きます。
未解決インシデントの取得について、PagerDutyのページはlist_incidentsと書いていますが、ツール一覧の表ではbrowse_incidentsのlistアクションです。チームや担当者(teams・assigned)での絞り込みにはユーザー単位の認証が要ります。アカウント単位のキーで繋ぐと、この絞り込みなどが効かなくなります。
作る順番
最初から書き込みを許可せず、読み取りだけで巡回の精度を確かめてから広げます。
読み取りから始める4段階
- 1
コネクタを繋いで呼び出しを試す
テスト用の会話で「PagerDutyの未解決インシデントを5件挙げて」と頼み、PagerDutyのツールが呼ばれることを確認します。
- 2
Claudeと会話して下書きを作る
新しいClaudeの画面(ProとMax)では、どの会話からでも予定タスクを作れます。Coworkの画面からなら、「Scheduled」の「New task」で「Create with Claude」を選びます。そこで「1時間おきに、確認済みで止まっているインシデントを教えて」と伝えます。
Claudeが質問を挟み(Coworkの画面では選択式)、名前・スケジュール・内容を提示するので、確認してから「Schedule」を押します。
- 3
書き込みを止めたまま数回回す
manage_incidentsを「ブロック」にして、抽出の過不足を見ます。優先度ラベルや閾値のずれはここで直します。 - 4
要承認に切り替える
抽出が安定したら
manage_incidentsを「要承認」へ変え、担当者追加の案が承認プロンプトとして出ることを確認します。
承認の掛け方とモードの罠
Coworkの承認は、2つの設定の掛け合わせで決まります。コネクタ側のツール権限(常に許可・要承認・ブロック)と、タスクの承認モード(Manual・Auto・Skip)です。PagerDutyのMCPサーバーは、ツールの絞り込み機能を持ちません。権限はClaude側でツール単位に付けます。PagerDutyのページによると、スコープを絞ったOAuthクライアントを使えば、成功するツールを制限することもできます。なおDCR非対応なので、OAuthクライアントは静的なクレデンシャルで設定します。
PagerDutyのツールを3グループに分ける
常に許可する読み取り
browse_incidents・browse_escalation_policies・browse_schedules(list_oncallsで現在の当番を引けます)。読むだけなので、無人で回しても副作用がありません。要承認にする書き込み
manage_incidents。作成・更新・ノート追記・担当者追加・ワークフロー起動の5アクションが1つのツールに入っています。ツール単位の権限なので、「ノートは自動、担当者追加だけ承認」とは分けられません。ブロックしておく
manage_teams(削除・メンバー除外を含む)、manage_services、manage_schedules、manage_event_orchestrations、manage_alert_grouping。ステータスページへ投稿する
manage_status_pagesも外へ公開する書き込みです。巡回にはどれも要りません。
承認モードの効き方は、書き込みツールの権限によって次のように変わります。
| 承認モード | 「要承認」の書き込みツール | 「常に許可」の書き込みツール |
|---|---|---|
| Manual | 「要承認」の書き込みツール毎回承認を求める | 「常に許可」の書き込みツール承認なしで実行 |
| Auto | 「要承認」の書き込みツールClaudeが安全性を見て判断 | 「常に許可」の書き込みツールClaudeが安全性を見て判断 |
| Skip | 「要承認」の書き込みツール承認なしで実行 | 「常に許可」の書き込みツール承認なしで実行 |
新しいClaudeの画面では、メッセージ欄の承認設定がAutoとManual(既定)の2択です。無人の巡回でも書き込みの前に必ず人を挟むなら、Manualで始めます。
Team・Enterpriseでは、組織設定の「Allow "Always allow" for connector tools」がオフ(既定)の場合、書き込み可能なツールは「常に許可」にしていてもタスクごとに承認が要ります。読み取り専用として注釈されたツールだけがこの対象外で、注釈を付けていないカスタムコネクタでは全ツールが承認の対象です。PagerDutyの読み取りツールが注釈付きかどうかで、無人の巡回が止まるかが決まります。Step 1の試し実行で、読み取りだけの呼び出しに承認が出るかを見ると分かります。部門ごとの承認設計はCowork Approval Gatesを部門ごとに設計する考え方にまとめてあります。
公式の安全ガイドは、予定タスクに「代わりにメッセージを送る」「元に戻しにくい」操作を入れないよう勧めています。担当者の追加は相手を呼び出す操作なので、この指針に当たります。承認プロンプトを誰も押さなかった場合の挙動は、予定タスクのページには書かれていません。無人の時間帯に書き込みを走らせたくなければ、manage_incidentsを「ブロック」のままにし、抽出結果だけを受け取って人がPagerDuty上で操作する運用も選べます。巡回が見つけた件に担当者の追加やオンコールの上書きが要るときも、この流れなら人がPagerDutyで実行します。コネクタの権限設計でありがちな失敗はClaude Connectorの権限設定でやりがちな失敗に挙げています。
実行結果の確認と承認
予定タスクは独立したCoworkセッションとして動きます。結果は左サイドバーの「Scheduled」から見られ、承認モードとツール権限の組み合わせに応じて承認プロンプトが出ます。誤検知が多くて承認が頻発するときは、閾値をプロンプト側で見直します。Cowork承認プロンプトが多すぎて止まるときの対処法も参考になります。
同じ画面から、過去の実行結果と次回の予定の確認、一時停止・再開・削除、「Run a task on demand」による即時実行ができます。当番の交代時にいったん止めたいときや、今すぐ最新状況を見たいときは、次の定期実行を待たずに走らせられます。
頻度は時間単位までしか選べない
頻度の選択肢は、時間単位・日単位・週単位・平日のみ・手動です。分単位はありません。SLAの猶予が1時間を切る対応は、この巡回では間に合いません。分単位で緊急の通知はPagerDuty自身の電話やプッシュ通知に任せ、巡回は「放置されたものを拾う」役に絞る分担が現実的です。
SLAという言葉の限界
ツール一覧には、インシデントの取得・更新といった操作が並びます。SLA超過そのものを判定する専用の機能は、ツール一覧にありません。「超過が近い」という判断は、プロンプトの閾値とClaudeの計算に委ねられます。
また、緊急度(urgency)と優先度(priority)は別の軸です。緊急度は高い・低いの2段階で通知の出し方を決め、優先度は組織が決めた分類ラベルです。プロンプトに「P1は2時間」と書くときは、緊急度でなく優先度のことだと明示します。取り違えると、緊急度は高いが優先度は低いインシデントまで抽出してしまいます。
よくあるつまずき
- チーム絞り込みが効かない:
teams・assignedで絞る操作はユーザー単位の認証が必要です。アカウント単位のキーでは意図どおりに動かないことがあります - ローカルのファイルやアプリを使えない: 予定タスクはコネクタとClaudeアカウント上のファイルだけを対象にします。手元のスプレッドシートへ書き出す処理を足すと、ローカル実行に限られます
- 閾値の固定しすぎ: 優先度の体系やエスカレーションポリシーは組織側で変わります。ポリシーを見直したら、タスクの指示文も更新します
- 「ブロック」のまま承認が出ない: ツール権限が「ブロック」だと、承認を求める前に呼び出しが拒否されます。確認が来ないときは権限設定を先に見ます
週次のSLA遵守状況をまとめる
別の予定タスクを週次で走らせ、超過が近いと判定された件数・平均経過時間・実際にエスカレーションまで至った件数を集計させます(エスカレーションの履歴が取れるかは、最初の実行で確かめます)。オンコール負荷や優先度設定を見直す材料になります。定型レポートの組み方はCowork Scheduled Tasksで定型レポートを自動化する実践パターンにあります。
まとめ
巡回の頻度は時間単位までなので、猶予が1時間を切る対応はPagerDuty自身の通知に任せ、巡回は確認後に止まった件と低緊急度の拾い上げに充てます。Team・Enterpriseでは、読み取りツールの注釈と「Always allow」の設定を先に確かめると、無人の巡回が承認待ちで止まるかが分かります。書き込みは承認を必ず挟む構成で始めます。