Claudeで総合型選抜の志望理由書を添削する — 面接で突かれる点まで想定する手順
生徒の活動メモと志望理由書の草稿をProjectsに置き、事実・動機・学びのつながりを点検して面接の想定問答にする教員向けの手順です。代筆にしない線引きも示します。
総合型選抜の志望理由書は、文章の巧さよりも「書いてあることを本人が説明できるか」が問われます。教員がClaudeに頼むのは、書き直しではなく点検と想定問答です。生徒の活動実績メモと草稿をプロジェクトに置き、事実・動機・大学での学びがつながっているかを確かめさせ、面接で突かれそうな箇所を質問の形で出してもらいます。ここではその手順と、代筆にしないための線引きをまとめます。
点検の対象は文章ではなく「つながり」
志望理由書は、おおよそ次の3つが一本の線でつながっているかで読まれます。
- 事実: 何をしたか(活動、成果、期間、役割)
- 動機: なぜそれに取り組み、なぜこの大学・学部なのか
- 学び: 入学後に何を学び、どう生かすか
教員が赤を入れるときも、誤字や敬語より先に「この活動から、どうしてこの学部の志望になるのか」が引っかかるはずです。Claudeに任せやすいのは、この引っかかりを機械的に拾う作業です。
逆に、任せてはいけないのは動機の中身です。「なぜ」の答えを生徒の代わりに作ると、書類は整っても面接で崩れます。面接官は書類を見ながら質問するので、本人が自分の言葉で語れない一文は、そのまま弱点になります。
この記事で扱うのは、大学入試の志望理由書です。小論文の骨子作りはClaudeで大学受験の小論文の骨子を作るで、面接官役の練習全般はClaudeを面接官役にして模擬面接を練習する方法で扱っています。
使い始める前に確認する3つの条件
操作するのは教員(18歳以上)
Claudeのアカウントは、作成も利用も18歳以上が条件です。サポート記事には、アプリストアが18歳未満と判断した場合に作成やサインインができなくなる旨が書かれています。受験生の多くは18歳前後なので、生徒本人のアカウントで使わせる前提は置かず、教員が自分のアカウントで操作し、結果を面談で見せる形にしておくと安全です。
生徒の個人情報の入れ方
草稿には氏名、学校名、家族の事情、病歴などが含まれることがあります。プロジェクトに置く前に、氏名は「生徒A」のような記号に置き換え、本題と関係ない個人情報は削ります。病歴や信条のような情報の扱いは要配慮個人情報をClaudeに入力してよいかで整理しています。
履歴や記憶に残したくないやり取りには、インコグニートチャットがあります。履歴にもClaudeのメモリにも保存されず、学習にも使われませんが、サポート記事によると保持自体は30日間(既定)あります。切り替えのゴーストアイコンは、プロジェクトの外で新しいチャットを始めるときの画面に出ます。つまり「個人情報を伏せた状態でプロジェクトに置く」か「プロジェクトを使わずインコグニートで単発に聞く」かの二択になります。
学校としての扱い
利用が生徒の書類に及ぶ以上、学校の方針や保護者への説明が必要かどうかは、先に管理職や情報担当に確認しておく領域です。大学生向けのサポート記事にも、利用先の学術的誠実性のルールに従うよう書かれています。同じ考え方で、高校の指導でも「何をClaudeに任せ、何を生徒本人に残すか」を最初に決めておきます。
プロジェクトに置く3種類の資料
Projectsは無料プランを含む全ユーザーが使え、無料プランでは作成は5個までです。プロジェクトには資料をナレッジとして追加でき、プロジェクトごとの指示も書けます。ここでは生徒1人につき1プロジェクトを作ります。
| 置くもの | 中身 | 役割 |
|---|---|---|
| 活動実績メモ | 中身活動名、期間、役割、数字、うまくいかなかったこと | 役割「事実」の根拠。草稿と食い違いを探す基準 |
| 志望校の情報 | 中身学部の学びの内容、アドミッション・ポリシー、募集要項の評価観点 | 役割「学び」の接続先。大学側が求める観点 |
| 志望理由書の草稿 | 中身生徒本人が書いた最新版 | 役割点検の対象 |
活動実績メモは、生徒に箇条書きで書かせたものを使います。きれいな文章である必要はありません。「何月に何をした」「何人でやった」「何が失敗した」が残っていれば、草稿の誇張や抜けを見つけられます。
プロジェクトの外のチャットとは文脈が共有されない点も押さえておきます。サポート記事によると、プロジェクト内でも、チャットをまたいで情報を持ち越すには、その情報をナレッジに追加する必要があります。面談で新しく聞いた事実は、メモに足してからClaudeに読ませます。
有料プランでは、ナレッジが文脈の上限に近づくとRAGモードが自動で有効になり、容量が広がります。1人分の資料なら上限に達する量ではないので、仕組みの詳細を気にする必要はあまりありません。気になる場合はClaude ProjectsのRAG検索の仕組みと全文投入との違いにまとめています。
指示文の書き方 — 点検役に徹させる
プロジェクトの「Set project instructions」に、役割と禁止事項を書きます。次の例は、点検と質問だけを返させる設計です。
あなたは高校の進路指導を手伝う点検役です。
生徒Aの志望理由書の草稿を、活動実績メモと志望校の情報に照らして点検します。
やること:
- 草稿の主張ごとに、活動実績メモに根拠があるかを示す
- 「事実」「動機」「学び」のつながりが切れている箇所を指摘する
- 面接官が聞きそうな質問を、質問の形だけで出す
やらないこと:
- 志望理由書の文章を書き直したり、代わりの文案を出したりしない
- 活動実績メモにない経験や数字を補わない
- 動機を推測して決めつけない。分からないときは生徒に確認する質問にする
指摘は「どの文」「何が足りないか」「生徒に何を聞けばよいか」の順で書く。ポイントは「補わない」の一行です。Claudeは文脈から自然な動機を作るのが得意なので、禁止を書いておかないと、メモにない「きっかけ」が草稿に紛れ込みます。指示は短く保ち、狙いと違う動きが出た項目だけ足していくほうが調整しやすくなります。
手順1: 事実の裏付けを確かめる
草稿とメモを置いたら、最初は文章の良し悪しではなく、事実の食い違いだけを見ます。
草稿を一文ずつ読み、活動実績メモと食い違う、またはメモに根拠がない記述を
表にしてください。列は「草稿の文」「メモの該当箇所」「判定(一致・要確認・根拠なし)」。「根拠なし」と出た文は、誇張か、メモの書き漏れのどちらかです。教員が生徒に「これは本当にやったことか、メモに書き忘れただけか」を聞くきっかけになります。面接では、数字や役割の言い過ぎが最も突かれやすいため、ここを最初に潰します。
手順2: 事実・動機・学びのつながりを点検する
次に、3つの接続を1か所ずつ確かめます。
次の2つの接続について、草稿に書かれている根拠と、足りないものを分けて示してください。
①活動(事実)から、この学部を志望する動機へ
②動機から、入学後に学びたいこと(学び)へ
つながりが飛んでいる場所は、生徒に聞くべき質問として書いてください。返ってくる指摘は、たとえば次のような形になります。
| 接続 | よくある切れ目 | 生徒に聞く質問の例 |
|---|---|---|
| 事実から動機 | よくある切れ目活動の成果は詳しいが、なぜこの分野に進むのかが書かれていない | 生徒に聞く質問の例その活動で、いちばん悔しかったのはどの場面か |
| 動機から学び | よくある切れ目「地域に貢献したい」で止まり、大学で何を学ぶかがない | 生徒に聞く質問の例その課題を解くために、まだ足りない知識は何か |
| 学びから志望校 | よくある切れ目どの大学でも通じる学びの説明になっている | 生徒に聞く質問の例この大学のこの学びを選ぶ理由は何か |
この表は例示で、実際の指摘は草稿によって変わります。大事なのは、Claudeの指摘を「直すべき文」ではなく「生徒に尋ねる質問」として受け取ることです。質問に生徒が自分の言葉で答え、その答えを生徒自身が草稿に反映します。
手順3: アドミッション・ポリシーとの対応を確かめる
志望校の情報に入れたアドミッション・ポリシー(AP、大学が求める学生像)は、置いただけでは点検に使われません。草稿のどの文がAPのどの観点に対応するかを、表で返させます。
志望校の情報にあるアドミッション・ポリシーの観点を1つずつ挙げ、
草稿のどの文がその観点に対応するかを表にしてください。
列は「APの観点」「対応する草稿の文」「対応の強さ(明確・弱い・なし)」。
対応がない観点は、生徒に聞く質問として書いてください。文案は出さないでください。「なし」と出た観点は、書き足す指示ではなく、生徒に確かめる材料です。その大学の求める学生像に、生徒が本当に当てはまる経験があるかを尋ねます。当てはまる経験がなければ、無理に書き足さず、志望校の選び方を見直す面談につなげます。逆に、APの言葉を草稿に貼り付けただけの文は、面接で具体例を聞かれて崩れやすいため、「弱い」と判定された文を先に見直します。
手順4: 面接で突かれる点を想定問答にする
点検の結果を踏まえて、面接官役の質問を出させます。ここでも出力は質問だけにします。
この志望理由書を読んだ面接官が深掘りしそうな質問を、5つ出してください。
各質問に、書類のどの一文を根拠にした質問かを添えてください。
回答例は出さないでください。質問に「根拠にした一文」を添えさせると、生徒は自分の書いた文のどこが弱いかを、質問と結びつけて理解できます。深掘りの質問は、次のような型に分かれやすくなります。
- 数字や役割の確認(何人で、あなたは何を担当したのか)
- 失敗や困難の掘り下げ(うまくいかなかったとき、どう判断したか)
- 動機の一貫性(その経験が、なぜこの学部につながるのか)
- 入学後の具体性(最初の1年で何を学び、何を確かめたいのか)
- 反対の見方(その考え方には、こういう批判もあるが、どう考えるか)
出された質問を、教員が面談で生徒に読み上げ、生徒が口頭で答える練習に使います。答えに詰まった質問は、草稿にも弱点があるサインです。詰まった箇所は、手順2の質問表に戻して原因を探します。口頭の練習全般は、先に挙げた模擬面接の記事の手順がそのまま使えます。
代筆にしないための線引き
教員が運用で迷いやすい点を、頼んでよいことと避けることに分けます。
| 場面 | 頼んでよい | 避ける |
|---|---|---|
| 事実 | 頼んでよいメモとの食い違いの一覧化 | 避けるメモにない経験の追加 |
| 動機 | 頼んでよい切れ目の指摘、生徒への質問案 | 避ける動機の文案の作成 |
| 学び | 頼んでよい志望校の学びとの対応づけの確認 | 避ける学びたいことの代わりの設定 |
| 文章 | 頼んでよい誤字、重複、段落ごとの論点の確認 | 避ける全体の書き直し、言い換え案の大量生成 |
| 面接 | 頼んでよい想定質問、深掘りの質問 | 避ける模範解答の作成 |
分け方の基準は1つで、「生徒が面接で自分の言葉で説明できるか」です。表の右列は、文章が整うかわりに、本人の語りとの距離を広げます。迷った場合は、出てきた内容を生徒に見せたとき、生徒が「これは自分の話だ」と言えるかで判断します。
生徒が自分の言葉で草稿を直したあとは、同じプロジェクトに新しい版を置いて手順1からやり直します。版ごとに指摘がどう減っていくかを見ると、書き直しが的を射ているかも分かります。
字数を超えたときと、他の書類との食い違い
募集要項の字数(800字、1,200字など)を草稿が超えたとき、Claudeに削らせると、生徒の言い回しが残らない文章になりがちです。削る判断は生徒に残し、判断の材料だけを出させます。
草稿の各段落が「事実」「動機」「学び」のどれを担っているかを示してください。
同じ内容が重複している段落があれば、その組み合わせだけ挙げてください。
削る案や書き直しは出さないでください。事実の段落が3つ並び、学びが1つしかないといった偏りが見えれば、生徒は自分で「どの事実を残すか」を決められます。
もう1つ、同じプロジェクトに調査書や活動報告書の内容を入れられる場合は、志望理由書との食い違いも見られます。役割や期間、数字が書類ごとに違うと、面接官は食い違いのほうを先に聞きます。入れるときは手順1と同じく、氏名などを伏せた状態にします。
志望理由書と活動報告書で、活動名・期間・役割・数字が食い違う箇所を表にしてください。
どちらが正しいかは判断せず、生徒に確認する質問として書いてください。どちらの場合も、出力は判断材料と質問に限ります。直すかどうか、どう直すかは生徒が決めます。
つまずきやすい点
- Claudeが言い換え案を出し始める: 指示文の「やらないこと」を読み直させ、「質問の形だけで返して」と伝え直します。
- メモが薄く、ほぼ全部が根拠なしになる: 草稿ではなく、メモの側が不足しています。生徒に具体的な出来事を書き足してもらうのが先です。
- 志望校の情報が古い: アドミッション・ポリシーや募集要項は年度で変わります。最新版に差し替えてから点検します。
- 他の生徒の資料が混ざる: 生徒ごとにプロジェクトを分け、他の生徒の草稿を同じプロジェクトに置きません。チームプランで共有する場合は、共有範囲の設定を先に確認します。
- 別の会話で聞いた内容が反映されない: 面談で得た事実は、会話の中だけでなくナレッジのメモに追加します。
まとめ
Claudeに頼むのは、事実の裏付け、つながりの点検、想定質問の3つです。動機と学びの中身は、教員の質問を受けた生徒が自分で答えます。この分担を指示文に書いておけば、添削の時間を、文章の手直しから、生徒との対話に回せます。