Claudeで推薦書の書き方を整える教員向け手順 — 事実と所見を分ける
学校推薦型選抜の推薦書を、匿名化した要約からClaudeで構成案にする手順です。大学入学者選抜実施要項が求める記載、事実と所見の分け方、生徒への開示の確認先までを扱います。
推薦書を求められるのは、主に学校推薦型選抜
推薦書は、学校推薦型選抜で出身高校の校長が大学へ出す書類です。総合型選抜では、中心になる書類が違います。教員がClaudeに任せやすいのは、書く前の整理と、書いた後の点検です。推薦理由の中身は、生徒を見てきた教員にしか書けません。
文部科学省の令和9年度の大学入学者選抜の実施要項は、2つの選抜を次のように区別しています。
総合型選抜と学校推薦型選抜で、書類の主役が違う
総合型選抜
入学志願者自らの意志で出願できる公募制という性格から、活動報告書・大学への入学希望理由書・学修計画書など、志願者本人が記載する資料を必ず評価に使うとされています。要項には、推薦書の記載を求める定めが載っていません。
学校推薦型選抜
出身高等学校長の推薦に基づき、調査書を主な資料にして評価します。推薦書の中に、学力の三要素に関する評価を書くよう求めることが、要項に明記されています。
総合型選抜で高校に書類を求めるかどうかは、大学ごとの募集要項で決まります。要項は「高等学校に記載を求める資料等」にも触れていますが、様式は大学が定めます。書き始める前に、志願先の募集要項で、高校側に求められている書類の名前と記載項目を確かめてください。
総合型選抜で志願者が書く志望理由書の添削は、Claudeで総合型選抜の志望理由書を添削するにあります。この記事は、教員が書く側の推薦書です。
要項が推薦書に求める3つの記載
令和9年度の要項(令和8年5月27日付け8文科高第318号)で、推薦書に関わる記述は次の3点です。
推薦書に関わる要項の記述
学力の三要素の評価
アドミッション・ポリシーに対応する、志願者本人の学習歴や活動歴を踏まえた学力の三要素の評価を書かせます。三要素は、知識・技能、思考力・判断力・表現力等、主体性を持ち多様な人々と協働しつつ学習する態度です。
努力を要する点
生徒の努力を要する点など、入学後の指導で特に配慮が要るものがあれば、その内容の記載を求めるとされています。
様式は参考
推薦書のイメージ例が参考様式1として付いています。ただしQ&Aでは、必ず使う必要はなく、文言や記載欄は各大学の判断で改変できるとされています。
参考様式1の本体は、宛先の学長、学校名と学校長名、志望学部・学科、氏名、そして「推薦理由」の欄です。記載責任者の欄もあります。推薦理由の欄の注記が「アドミッション・ポリシーに対応する志願者本人の学習歴や活動歴を踏まえた学力の三要素に関する評価について記載してください」です。
実際の様式は、志願先の大学が指定したものを使います。字数、行数、押印の有無は大学によって違うので、Claudeに渡す前に確定させておきます。
Claudeに渡す前に、事実と所見を2枚に分ける
推薦書の失敗は、事実と教員の見立てが混ざることから起きます。「リーダーシップがある」と書いても、根拠となる場面がなければ、読む側には何も伝わりません。逆に、事実だけを並べても、推薦にはなりません。
そこで、Claudeに渡す前に、生徒1人につき2種類のメモを作ります。
| メモ | 書く中身 | 例 |
|---|---|---|
| 事実メモ | 書く中身日付・役割・数字・結果。評価語は入れない | 例「2年次の文化祭で、実行委員6人のうち会計を担当」 |
| 所見メモ | 書く中身教員が見て判断したこと。根拠の事実番号を付ける | 例「予算超過を自分から報告した(事実3)。責任感が強い」 |
所見メモに事実番号を付けるのが肝です。番号が付かない所見は、推薦書に入れる根拠がありません。Claudeに点検させるときも、この対応を基準にします。
どちらのメモも、氏名・出席番号・学校名は書きません。「生徒A」とし、出来事の具体性で個人が特定できる記述は一般化します。個人情報の入れ方の考え方は、要配慮個人情報をClaudeに入力してよいかに整理があります。
調査書の側にも、同じ考え方が書かれています。要項の「調査書記入上の注意事項等について」は、調査書を個人的主観にとらわれたり、特別の作為を加えたりしないよう作成することと定めています。推薦書は調査書と書類の性質が違いますが、事実に根拠を置く姿勢は共通です。
手順1: Projectsに、推薦書の型だけを置く
プロジェクトは、独立した作業場です。Claudeの知識ベースに資料を置き、プロジェクトごとの指示を書けます。無料アカウントでも使えますが、作れるのは最大5つまでです。
置く資料は、生徒の情報ではなく、型にあたるものだけにします。
- 要項の推薦書に関する記述(上の3点)の要約
- 志願先大学のアドミッション・ポリシーと、募集要項にある推薦要件
- 志願先が指定した推薦書の様式の、欄名と字数
学校推薦型選抜では、推薦要件を可能な限り具体的に募集要項で示すことが大学に求められています。要件の言い回しは、そのまま推薦理由と突き合わせる基準になります。
指示欄には、次のような内容を書きます。日本語の文面は一例なので、自校の運用に合わせて直してください。
あなたは、高校の推薦書の構成を作る補助役です。
- 入力は「事実メモ」と「所見メモ」の2種類だけです。氏名・学校名・
住所・成績の実数値が含まれていたら、下書きを作らず知らせてください。
- 所見メモの各文に、根拠となる事実番号が付いているか確認してください。
番号がない所見は、一覧にして返してください。
- 推薦理由は、大学のアドミッション・ポリシーの項目ごとに、
該当する事実を割り当てる構成案にしてください。
- 事実メモにない出来事や数字を、補って書かないでください。
- 「優れている」「素晴らしい」など根拠のない評価語を使わず、
何をしたかを書いてください。
- 字数は、私が指定した上限に収めてください。最後の2項目が、事実の創作を防ぐ線です。生成AIの出力は、補われた事実が自然な文に溶け込むと見分けにくくなります。補わせない指示と、手順2の照合の両方を置いておきます。
手順2: 構成案、下書き、点検を別々に頼む
1回で完成稿を頼むより、段階を分けるほうが、教員が手を入れる場所がはっきりします。
推薦書づくりの4段階
- 1
割り当て表を作る
アドミッション・ポリシーの項目と、事実メモの番号を対応させる表を作らせます。どの項目にも事実が割り当たらなければ、そこは推薦理由で触れられない項目です。
- 2
構成案を確認する
推薦理由の段落の並びと、各段落に使う事実番号を出させます。ここで教員が、並びと強調点を決めます。
- 3
下書きを作らせる
構成案に沿って、字数を指定して下書きを出させます。下書きは、教員が自分の言葉に書き直す土台です。
- 4
事実との照合をさせる
下書きの各文を、事実メモの番号に戻して照合させます。対応しない文は、削るか、教員が根拠を足します。
手順4の依頼文は、次のように書きます。
下書きの各文について、根拠にした事実番号を右に書いてください。
事実メモに根拠がない文は「根拠なし」と書き、理由を一言添えてください。「根拠なし」が出た文が、教員の見立てを足すか、削るかを判断する箇所です。
「努力を要する点」の欄は、扱いに注意が要ります。要項が書かせるのは、入学後の指導で特に配慮が要るものがあれば、という場合です。何もなければ、無理に埋める欄ではありません。あるときも、評価語を避け、いつ・どの場面で・どう支援したかを事実として書くと、大学の側で受け取りやすくなります。
生徒本人への開示と、情報の持ち出しの確認先
推薦書を生徒本人に見せるかは、要項に定めが載っていません。要項とQ&Aで「開示」が出てくるのは、大学が受験者本人へ成績を開示する話です。推薦書の開示は、学校や設置者の方針と、大学の募集要項の取り扱いで決まります。
確かめる先は次の表のとおりです。
| 確かめること | 確かめる先 |
|---|---|
| 推薦書を生徒・保護者に見せてよいか | 確かめる先学校の方針、設置者(教育委員会等)の規程 |
| 推薦書の様式・字数・提出方法 | 確かめる先志願先の募集要項 |
| 生成AIに生徒の情報を入れてよいか | 確かめる先学校の情報セキュリティポリシー、管理職 |
| 大学に渡した個人情報の扱い | 確かめる先大学側。要項は選抜で取得した個人情報を、選抜と入学後の学籍管理などに限って使うとしている |
調査書を電磁的記録で出すときは、各高校が個人情報保護の法令と、設置者の定める教育情報セキュリティポリシーに従うことが、要項に書かれています。推薦書をClaudeで整える場合も、同じ筋で考えるのが無理のない進め方です。生徒の情報を一切入れない型の運用なら、この確認は軽く済みます。
複数の教員で同じプロジェクトを使うときは、共有の範囲にも注意します。TeamとEnterpriseのプランでは、プロジェクトを組織内のメンバーと共有でき、閲覧のみか編集可かを選べます。事実メモは、生徒1人分でも共有プロジェクトに置かない運用にします。型だけを共有し、生徒ごとの作業は、各教員の個人のプロジェクトで行います。
指導要録の所見を下書きするときの分業の考え方は、指導要録の所見をClaudeで下書きする手順にまとめています。型をClaudeが作り、個別の場面を教員が足すという線引きは、推薦書でも同じです。
つまずきやすい点
推薦理由が、どの生徒にも当てはまる文になる。割り当て表で、アドミッション・ポリシーの項目に事実が1つも結びつかないと起こります。事実メモに、その生徒だけの場面を足してから、構成案を作り直します。
所見が先に走り、事実が後付けになる。「責任感が強い」という結論に合う出来事だけを集めると、推薦書が一面的になります。事実メモは所見を書く前に確定させます。
大学ごとの様式の違いを、1つの下書きで吸収しようとする。字数と欄が違えば、強調する事実も変わります。志願先ごとに構成案を作り、事実メモは共通で使います。
下書きを、そのまま提出する。推薦書は、校長の名で出る書類です。記載責任者の欄もあります。Claudeの出力は下書きで、最終的な文面と責任は学校にあります。
まとめ
推薦書をClaudeで書くとき、渡す材料は、生徒を特定しない事実メモと所見メモに絞ります。Claudeには、アドミッション・ポリシーとの対応づけと、根拠のない文の洗い出しを任せます。推薦理由そのものは、教員が書き直して仕上げる前提です。
学校推薦型選抜の推薦書は、校長の推薦を大学に伝える書類です。生徒への開示範囲と、AIに入れてよい情報の線引きは、要項ではなく学校と設置者が決めます。使い始める前に、そこを管理職と確かめておくと、運用が止まりません。