育児・介護休業法の改正を就業規則に反映する差分をClaudeで洗い出す
令和6年改正の育児・介護休業法に合わせ、現行の育児・介護休業の規程との差分をClaudeのProjectsで洗い出す手順です。条文対応表から新旧対照案まで、人が確かめる箇所も示します。
育児・介護休業の規程の見直しは、改正資料と現行規程を並べて読み比べる作業です。Claudeのプロジェクト機能(Projects)に両方を置けば、「改正項目ごとに、規程のどの条文が関わるか」を表にする部分を任せられます。
令和6年に改正された育児・介護休業法は、令和7年4月1日と10月1日に分けて施行されました。変更点は子の年齢に関わる項目が多く、規程の「3歳」「就学前」といった数字を一つずつ見直す作業になります。
この記事では、厚生労働省の改正資料を使い、規程側で差分が出やすい箇所の見取り図と、Projectsで条文対応表と新旧対照案を出す手順を示します。会社として何を選ぶかの判断と、法的な最終確認は人の仕事として残します。
令和6年改正で規程の見直しに関わる項目
厚生労働省の概要資料(令和6年法律第42号)によると、改正の柱は3つです。子の年齢に応じた柔軟な働き方の措置、育児休業の取得状況の公表義務と次世代育成支援の強化、介護離職を防ぐ両立支援の強化です。
このうち就業規則や育児・介護休業の規程の条文に直接響きやすいものを、施行日とあわせて表にします。
| 改正項目 | 施行日 | 規程で見る箇所 |
|---|---|---|
| 3歳以上で小学校就学前の子への柔軟な働き方の措置 | 施行日令和7年10月1日 | 規程で見る箇所会社が選んだ措置の定め、申出時期の定め |
| 妊娠・出産の申出時、3歳前の個別の意向聴取と配慮 | 施行日令和7年10月1日 | 規程で見る箇所面談の手続き、様式 |
| 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大 | 施行日令和7年4月1日 | 規程で見る箇所「3歳に満たない子」の記述 |
| 子の看護休暇の拡大と名称変更 | 施行日令和7年4月1日 | 規程で見る箇所名称、対象の子、取得事由、除外規定 |
| 介護休暇の勤続6月未満除外の廃止 | 施行日令和7年4月1日 | 規程で見る箇所労使協定による除外の記述 |
| 介護の個別周知・意向確認、早期の情報提供 | 施行日令和7年4月1日 | 規程で見る箇所申出時の手続き、周知方法 |
| 3歳までの子と介護でのテレワーク(努力義務) | 施行日令和7年4月1日 | 規程で見る箇所努力義務の措置の記述 |
概要資料では、育児休業の取得状況の公表義務が「常時雇用する労働者数が300人超」に広がった点と、次世代育成支援の行動計画の見直しも改正に含まれています。こちらは条文の書き換えより届出や公表、計画づくりの運用に近い項目です。規程の差分表とは別の欄で管理すると、混ざりません。
Projectsに置く資料と置かない資料
Projectsは、書類を知識として置き、その中で何度でも質問できる作業場所です。プロジェクトごとに専用の指示(Project instructions)も書けます。使う側が押さえておく条件は次のとおりです。
- 知識に置くファイルは1つ30MBまで。文章の抽出が基本で、画像中心のPDFは読み取りが限られる(マルチモーダル対応のPDFを除く)
- 知識が多くなると、有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)ではRAGが自動で働き、容量が最大10倍まで広がる
- 同じプロジェクト内でも、チャットごとの会話は共有されない。残したい結論は知識に追加する
- 共有はTeamとEnterpriseで使える。無料アカウントで作れるプロジェクトは5つまで
資料は、役割ごとに3種類に分けて置きます。
Projectsに置く3種類の資料
現行の規程
育児・介護休業の規程と就業規則の該当章。PDFでもWordでも構いません。知識への登録は文章の抽出が基本のため、スキャン画像だけのPDFは文字化したものを用意します。
改正の資料
厚生労働省の「令和6年改正法の概要」と、改正育児・介護休業法のQ&A。20MBを超えるパンフレットは、概要とQ&Aで足りる間は置かない運用が扱いやすくなります。
規定例
厚生労働省が公開している「育児・介護休業等に関する規則の規定例」。新しい条文の言い回しを揃える土台になります。
置かないものもあります。個々の従業員の面談記録や、取得者の氏名が入った台帳です。規程の差分づくりには不要で、プロジェクトを共有する範囲も広がるためです。
条文対応表から新旧対照案までの手順
差分づくりは、いきなり改定案を書かせず、段階を分けると崩れにくくなります。
差分を出す5段階
- 1
プロジェクトの指示を書く
資料の範囲と、断定しない約束を最初に固定します。
- 2
改正項目の一覧を作らせる
概要資料から、改正項目と施行日を表にします。
- 3
条文対応表を作らせる
各項目に、現行規程の条番号を対応させます。無ければ「該当なし」と書かせます。
- 4
差分を3区分に振り分ける
「規程の記述が追いついている」「改定が要りそう」「規程に定める事項ではなく運用の話」に分けます。
- 5
新旧対照案を作らせる
「改定が要りそう」の項目だけ、規定例の言い回しを土台に案を出させます。
1. プロジェクトの指示
Project instructionsには、役割と制約を短く書きます。次のような形が使えます。
あなたは、育児・介護休業の規程の見直しを手伝う補助者です。
根拠にしてよいのは、このプロジェクトの知識に入れた資料だけです。
- 条番号や数字は、資料に書かれたものだけを引用し、資料名とページを添える
- 資料に書かれていないことは「資料にありません」と答える
- 法律上の可否を断定せず、判断が要る点は「会社の判断」「専門家に確認」と分けて示す
- 出力は表を基本にし、現行規程の条番号は「第○条」の形で示す「資料名とページを添える」と決めておくのが要点です。出力のどこが資料由来かを、人があとから追えるようになります。
2. 改正項目の一覧
最初の依頼は、改正資料だけを材料にします。
「令和6年改正法の概要」から、就業規則・育児・介護休業の規程の条文に関わりうる
改正項目を表にしてください。列は「項目」「施行日」「資料の該当箇所」です。
公表義務や行動計画のように規程の条文でなく運用に関わる項目は、別の表にしてください。返ってきた表は、本記事の前半の表と見比べます。施行日が違う項目があれば、概要資料の該当ページを開いて直します。
3. 条文対応表
次に現行規程を材料に加えます。
2の表の各項目について、育児・介護休業の規程の中で関係する条文を探し、
「項目」「現行規程の条番号」「現行の記述(原文を短く引用)」の表にしてください。
関係する条文が見つからない項目は、条番号を「該当なし」としてください。「該当なし」の行が増える場合、規程にその制度が無いのか、規程が別の文書に分かれているのかを、人が切り分けます。育児と介護で規程が別ファイルなら、両方をProjectsに置いておかないと、対応表に空きが出ます。
4. 差分の振り分け
対応表ができたら、3区分に振り分けます。
3の表の各行を、次の3区分に分類し、理由を1文で添えてください。
A: 現行の記述が改正後の内容と合っている
B: 改定が要りそう(どの数字・語句が、資料のどの記述と食い違うか)
C: 規程に定める事項ではなく、運用や手続きの話
判断に迷う行は、A・B・Cのどれでもなく「要確認」としてください。「要確認」の逃げ道を用意しておくと、Claudeが無理に区分へ押し込まなくなります。
5. 新旧対照案
Bに入った行だけ、改定案を出させます。
Bに分類した行について、規定例の言い回しを参考に、新旧対照表の案を作ってください。
列は「条番号」「現行」「改定案」「変更の理由(資料の該当箇所)」です。
改定案の原文を作れない項目は、会社が決める点を質問として書いてください。出力は、例えば次のような形になります(以下は形を示すための例示で、実際の条文ではありません)。
| 条番号 | 現行 | 改定案 | 変更の理由 |
|---|---|---|---|
| 第○条 | 現行3歳に満たない子を養育する従業員 | 改定案小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員 | 変更の理由所定外労働の制限の対象拡大(概要資料) |
改定案の文面は、あくまでたたき台です。そのまま規程に載せず、規定例の最新版と突き合わせてから確定します。
見落としやすい箇所
差分づくりでよく崩れるのは、数字と除外規定です。確認に使える観点を挙げます。
見落としやすい5つの箇所
年齢の数字
残業免除は「3歳」から「小学校就学前」へ、子の看護休暇は「小学校就学前」から「小学校3年生修了まで」へ変わりました。規程内の年齢表記を全文検索で拾わせ、条ごとに照合します。
名称の変更
「子の看護休暇」は「子の看護等休暇」になりました。取得事由には、感染症に伴う学級閉鎖等と、入園(入学)式・卒園式が加わっています。名称は申請書の様式にも残りやすい箇所です。
労使協定の除外
勤続6月未満の労働者を労使協定で除外する仕組みが、子の看護等休暇と介護休暇の両方で廃止されました。規程の除外規定に加え、別に結んでいる労使協定の側も見直し対象になります。
申出期限の定め
柔軟な働き方の措置の申出期限を会社が定めるなら、就業規則等で事前に明らかにしておく必要があります。過度に煩雑な手続や早すぎる期限は、措置を抑制するものと認められうるとQ&Aは述べています。
介護休業の名称
介護休業は、会社独自の名称にしても、法律上の要件を満たせば差し支えありません。Q&Aには「介護準備休暇」の例があります。
会社が選ぶ部分はClaudeに決めさせない
3歳以上で小学校就学前の子について、会社は5つの措置から2つ以上を選びます。5つは、始業時刻等の変更、テレワーク等(月10日以上)、保育施設の設置運営等、養育両立支援の休暇(年10日以上)、短時間勤務制度です。選ぶ前に、労働者の過半数で組織する労働組合などから意見を聴く機会を設けることになっています。
この選択は、職場の実情と労使の意見で決まります。Claudeには「各措置を採用した場合に、規程へ入る定めと、運用で決める点を並べる」ところまでを頼みます。
柔軟な働き方の措置の5つの選択肢について、それぞれを採用した場合に
規程へ入れる項目(対象者、日数、申出方法、時間単位の取得など)を表にしてください。
どれを採用するかは提案せず、会社が決める点を列挙してください。パートタイム労働者など短時間で働く人の扱いは、Q&Aに専用の整理があります。短時間勤務制度の選択肢に関する区分が一般の従業員と異なるため、対象者の定めは該当のQ&Aを読んでから書きます。
Claudeに任せる範囲と人が見る範囲
作業の分担を一度書き出しておくと、確認漏れが減ります。
任せる作業と、人が確かめる作業
Claudeに任せる
改正項目の一覧づくり、規程の年齢表記の洗い出し、条文対応表、3区分の仮分類、新旧対照表の下書き。
人が確かめる
資料の該当ページとの照合、会社が選ぶ措置の決定、労使協定の見直し、規程変更の手続き、社労士など専門家への確認。
照合は、Claudeが示した「資料名とページ」を実際に開いて行います。まず3項目を抜き出して原文と見比べ、ずれがあればプロジェクトの指示を直して、表を作り直します。資料に無い条番号を挙げた行が出たら、その表は全体を作り直す対象です。
PDFの読み取りや、就業規則の条文をClaudeに確認させる基本の流れは、就業規則PDFをClaudeに読ませて副業規定を確認する方法にまとめています。たたき台づくりに向く作業と向かない作業の線引きは、社労士の生成AI活用ガイドブックとClaudeで就業規則たたき台を作る方法が詳しく、モデル就業規則を土台にする考え方はClaudeで36協定届とモデル就業規則のたたき台を作ると共通します。
法改正の内容そのものをClaudeに説明させたい場合は、社労士・行政書士・宅建の学習モードの記事にある、法改正の確認時の注意点も参考になります。
まとめ
差分づくりの肝は、改正資料と現行規程を同じプロジェクトに置き、「資料名とページを添える」約束で表を作らせることです。年齢の数字と除外規定は、全文検索と原文照合の二重で見ます。措置の選択と労使協定の見直しは、会社と専門家が決める部分として最初から分けておきます。