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代理店契約・販売店契約を独占禁止法の指針でClaudeに点検させる手順

代理店契約・販売店契約を独占禁止法の指針でClaudeに点検させる手順

代理店契約・販売店契約の再販売価格、競合品の取扱い、テリトリーの条項を、公正取引委員会の流通・取引慣行指針の類型に当ててClaudeで洗い出す手順と、弁護士に回す線引きです。

代理店契約や販売店契約を供給側として作る・見直すとき、独占禁止法の観点では「条項そのもの」より「その条項がどの類型に当たり、自社がどの程度の市場地位にあるか」が論点になります。公正取引委員会の「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(以下、指針)は、この当てはめの物差しを類型ごとに示しています。

本記事は、契約書の条項を指針の類型に振り分ける作業をClaudeに任せ、人が判断すべき箇所だけを残す手順です。法的な結論はClaudeにも本記事にも出せません。出せるのは「この条項は指針のこの類型に当たりそうで、判断にはこの事実が要る」という整理までです。

指針は「条項の型」と「有力な事業者か」で読み分ける

指針は三部構成です。第1部が取引先事業者の事業活動に対する制限、第2部が取引先の選択、第3部が国内市場全域を対象とする総代理店を扱います。販売店契約は主に第1部、いわゆる総代理店(一手販売権を与える契約)は第3部が入口です。

読み分けの軸は2つあります。

くらべる

条項の型で変わる違法性の考え方

原則違法

再販売価格の拘束

流通業者の販売価格を拘束することは、原則として不公正な取引方法に当たり違法とされます。「正当な理由」の例外は、競争促進効果が実際に生じ、他のより競争阻害的でない方法では生じ得ない場合に、必要な範囲と期間に限って認められる、という厳しい書き方です。

効果を見て判断

非価格制限行為

競合品の取扱制限や地域制限などは、類型ごとに「市場閉鎖効果」や「価格維持効果」が生じるかを見て判断されます。行為類型だけで違法と決まるものではありません。

もう1つの軸が、制限を行う事業者が「市場における有力な事業者」かどうかです。競争者との取引制限、厳格な地域制限、抱き合わせ販売の3類型は、有力な事業者が行った場合に違法となるおそれがある型として整理されています。有力かどうかは、市場シェアが20%を超えることが一応の目安です。指針は、この目安を超えただけで違法になるわけではないこと、シェア20%以下の事業者や新規参入者が行う場合は通常、公正な競争を阻害するおそれはなく違法とならないことも書いています。

つまり、同じ「競合品を扱うな」という条項でも、自社の市場シェアが分からなければ点検は途中で止まります。この「シェアが要る」ことを最初から点検表に載せておくのが、Claudeに任せる設計のコツです。

渡す前に決める3つのこと

Claudeに条項を読ませる前に、人が決めておくことが3つあります。

  1. 自社が供給側か、販売側か。指針が規制するのは、取引先に制限をかける側の行為です。販売店の立場で契約書を受け取った場合、同じ条項でも「自社が課す」のか「自社が課される」のかで読み方が変わります。依頼文に立場を明記します。
  2. 対象の商品・役務と取引段階。メーカーと卸、卸と小売のどの間の契約か。指針は役務の取引にも基本的に同じ考え方を当てるとしていますが、役務の提供価格を拘束する場合は再販売価格拘束の条文でなく、拘束条件付取引(一般指定12項)の側で扱うと注記しています。
  3. 契約書の外にある運用資料の有無。価格改定の通知文、販売ルールの案内、営業担当のメールなどです。後で見るように、指針は契約条項に書かれていなくても、実効性を確保する手段があれば制限行為と判断します。

顧客の氏名や取引先名、単価を含む契約書をそのまま渡すかどうかは、契約と設定の確認が先です。確認の順番はコンサルがClaudeに顧客資料を渡す前のNDA点検表にまとめています。取引先名は「A社」「B社」に置き換えても、条項の類型判定にはほとんど影響しません。

条項を指針の類型に振り分けるプロンプト

出力の形を表に固定し、「結論を出さない」「根拠の条項をそのまま引用させる」「事実が足りない行は足りないと書かせる」の3点を入れます。次は一例です。

あなたは契約書の自己点検を補助します。違法かどうかの結論は出さないでください。
立場:当社は商品Aの供給側(メーカー)です。相手は販売店(小売段階)です。
資料:添付の販売店契約書。条項番号は原文のままにしてください。
 
次の7類型に当たりうる条項を抜き出し、表にしてください。
  1 販売価格の指定・下限・値引き制限、広告での価格表示の制限
  2 競合品・自社商品のみの取扱いの義務づけ、最低数量の義務づけ
  3 販売地域・販売拠点・地域外顧客への販売の制限
  4 販売先・仕入先の指定、転売や横流しの禁止
  5 販売方法(店頭、通信販売、説明販売など)の制限
  6 リベート・割戻しの条件
  7 契約終了後の競合品取扱制限
列:条項番号 / 原文の引用 / 該当しうる類型 / 判断に追加で必要な事実 /
    人が確認する理由
原文に無いことは推測せず「記載なし」と書いてください。
市場シェアなど契約書から分からない事実は「追加で必要な事実」の列に書いてください。

Projectsに契約書の雛形を置き、立場と類型の一覧を指示文として固定しておくと、販売店ごとの個別契約を連続して点検できます。出力の「原文の引用」は、人が契約書と1行ずつ照合します。引用がずれている行はその行だけ聞き直します。

再販売価格は「契約書に書いていない運用」を別に見る

類型1は最も重い論点で、点検の入れ方も他と違います。指針は、再販売価格の拘束の有無を「何らかの人為的手段によって、示した価格で販売することの実効性が確保されているか」で判断します。契約条項だけを見ても足りません。

実効性確保の手段として指針が挙げるものを、契約書の中と外に分けると次のとおりです。

場所指針が挙げる手段の例
契約書・同意書指針が挙げる手段の例示した価格で販売することを契約で定める/同意書を出させる/売れ残りを値引き販売せず買い戻す条件にする
契約書の外指針が挙げる手段の例守らない場合の出荷停止・出荷量削減・リベート削減/守る場合のリベート供与/販売価格の報告徴収、店頭パトロール、派遣店員による価格監視、帳簿閲覧

契約書と運用メモ(価格改定の通知、営業メール、販売ルールの案内文)を両方渡し、「価格に関する記載を横断して、上の手段のどれに近いかを分類して」と頼むと、契約書だけを点検するより抜けが減ります。突き合わせの型は、偽装請負の点検で使った契約書と運用実態メモの突き合わせと同じです。

価格の書き方にも注意が要ります。指針は、拘束される価格に確定価格のほか、次のような形も含まれるとしています。

  • 希望小売価格の○%引き以内の価格
  • 一定の範囲内(□円以上△円以下)の価格
  • 事前の承認を得た価格
  • 近隣店の価格を下回らない価格
  • 下回ると警告を行うなどして暗に下限として示す価格

「参考価格」と書いてあれば安全、という整理はできません。希望小売価格が参考にとどまる限りは問題とならない一方、守らせるなら拘束に当たります。指針は、通知文に「正価」「定価」や金額だけを書くのでなく、「参考価格」「メーカー希望小売価格」のような非拘束的な語を使い、販売価格は各流通業者が自主的に決めるものだと通知文書で明示することが、未然防止の観点から望ましいとしています。

Claudeへの依頼には、価格に関する文言を抜き出して「確定価格・下限・範囲・承認制・暗黙の下限のどれに近いか」を分類させる一文を足します。

拘束に当たらないとされる場面も指針にある

流通業者の実際の販売価格を調べる「流通調査」は、出荷停止などの不利益を伴うなど価格に関する制限を伴わない限り、通常問題とならないと指針は述べています。また、委託販売で受託者が危険負担をしない場合のように、取引先が単なる取次ぎで、実質的に自社が販売していると認められる場合は、価格を指示しても通常違法とならないという整理もあります。

ただし、この例外の成否は危険と費用を誰が負担するかという事実の話です。契約書の題名が「委託」でも、在庫リスクや回収不能のリスクを相手が負っていれば前提が崩れます。Claudeには「危険負担・費用負担の条項を抜き出す」ところまでを頼み、成否は人が判断します。

競合品の取扱制限とテリトリー制は市場地位を確認する

類型2・3は、先に触れた「有力な事業者かどうか」が効く領域です。

競合品の取扱制限では、有力なメーカーが流通業者に自社商品のみの取扱いを義務づけたり、競合品である輸入品などの取扱いを制限したりして、市場閉鎖効果が生じる場合に違法となります。指針は、ブランド力が強い場合や競争者の供給余力が小さい場合、制限の期間が長いほど、相手方の数が多いほど、その可能性が高まるとしています。「流通業者の取扱能力の限度に近い販売数量の義務づけ」によって競合品の取扱いを事実上制限する形も、例として挙がっています。

最低購入数量の条項は一見これと無関係ですが、数量の水準次第で競合品を扱う余地がなくなります。Claudeには、最低数量条項に「相手の取扱能力との関係は契約書から分からない」という注記を必ず付けさせます。

地域の条項は、4つの型に分けて読みます。

型指針の整理
責任地域制(主たる責任地域で積極販売する義務)指針の整理通常、違法とならない
販売拠点制(店舗の設置場所の限定・指定)指針の整理通常、違法とならない
厳格な地域制限(地域外での販売の制限)指針の整理有力な事業者が行い、価格維持効果が生じる場合に違法
地域外顧客への受動的販売の制限指針の整理価格維持効果が生じる場合に違法。ブランド内競争を制限する効果は厳格な地域制限より大きいとされる

この表の上2行と下2行を分けるのが、「積極的に売る義務」を課すのか「地域外で売ることを禁じる」のかです。契約書に「担当地域外での販売を行わないこと」とあれば下の2行側です。「担当地域外からの注文に応じない」まで書いてあれば、さらに受動的販売の側へ寄ります。指針はインターネット販売の例を挙げ、自社サイトを見て注文した顧客が地域外在住と分かったときにその顧客との取引を止めさせる運用を、受動的販売の制限の文脈で扱っています。

契約書にオンライン販売の条項がある場合、Claudeには「積極的販売の義務」と「地域外への販売禁止」を分けて引用させます。この2つが同じ条項に混ざっていると、人が読んでも見落としやすいためです。

そのほか、点検表に入れておく類型は次のとおりです。

  • 安売り業者への販売禁止・安売りを理由とした出荷停止。指針は原則違法としています。契約書に書かれていなくても、運用で起きうる点に注意が要ります。
  • 販売方法の制限。商品の安全性や品質保持などの合理的な理由があり、他の小売業者にも同等の条件が課されていれば、それ自体は問題とならないとされます。一方、価格を明示した広告の禁止や安売り広告の掲載拒否は、再販売価格拘束に準じて原則違法です。
  • リベート。供与基準が不明確で裁量的なリベートが取引先のマージンの大きな割合を占める場合、販売政策に従わせやすくなる、と指針は述べます。占有率リベートや著しく累進的なリベートは、競合品の取扱制限として働くかを見ます。

総代理店契約では、問題ない条項と問題になる条項が割れる

第3部は、国内市場全域を対象とする総代理店が対象です。複数の販売店に地域を割り当てる契約では第1部が中心で、一手販売権を1社に与える契約でこの第3部が加わります。ここで効くのは「原則として問題とならない」条項の一覧です。

指針が「原則として独占禁止法の上で問題とはならない」とする条項には、最低購入(販売)数量または金額の設定、販売のために最善の努力をする義務、許諾地域外で総代理店が積極的に販売しない義務、供給業者またはその指定する者からのみ購入する義務があります。契約書にこれらがあっても、点検表では「指針上、原則問題なしの類型」として別の欄に仕分けておくと、確認すべき条項が絞れます。

逆に、点検表で強調しておきたいのが次の2点です。

  1. 契約終了後の競合品取扱制限。総代理店の事業活動を拘束して市場参入を妨げるため、原則として問題となります。例外は、秘密情報(販売ノウハウを含む)の流用防止などの正当な理由があり、必要な範囲内の制限である場合です。契約期間中の制限は、すでに取り扱っている競合品を制限するものでなければ原則問題とならない、という対比も指針にあります。
  2. 並行輸入の阻害。価格維持のために、海外の流通ルートからの真正商品の入手の妨害、並行輸入品を扱う小売への販売制限、並行輸入品を偽物扱いして販売の中止を求める行為、買い占め、修理拒否、広告の妨害などを行うことは、違法となるとされます。契約書の条項だけでなく、総代理店から届く通知や営業メモも点検の対象です。

Claudeには、これらを「契約期間中/終了後」「条項/運用」で並べ替えた表にさせると、人の確認が速くなります。

弁護士に回す線引き

ここまでの出力は、類型への振り分けです。次の表のように、Claudeの出力が確定できない箇所と、人が専門家へ回す箇所を分けておきます。

状況扱い
再販売価格・安売り防止に関わる条項や運用が見つかった扱い結論をClaudeに出させず、弁護士の確認へ。原則違法の類型で、例外も厳格
競合品・厳格な地域制限・抱き合わせの条項があり、市場シェアが20%を超える、または不明扱い弁護士の確認へ。有力な事業者かどうかと、市場閉鎖・価格維持効果の評価が要る
責任地域制・販売拠点制・最低数量・最善努力義務のみで、運用メモにも価格の指示がない扱い担当者の確認で足りるが、点検表を残す
契約書の外(メール・口頭・出荷停止の実績)に価格や取引先の指示がある扱い弁護士の確認へ。指針は実効性確保の手段を見ており、書面の外が本体になる
契約終了後の競合品取扱制限、並行輸入に関わる条項扱い弁護士の確認へ

この線引きの背景には2つの事情があります。1つは、再販売価格の拘束が課徴金の対象になる点です。独占禁止法20条の5は、再販売価格の拘束(2条9項4号)について、調査開始日から遡って10年以内に同号に係る排除措置命令などを受けたことがある事業者に、売上額の3%の課徴金を命じると定めています。課徴金額が100万円未満のときは納付を命じられません。初めての違反でも排除措置命令の対象になりうるため、課徴金の有無は「やってよいか」の基準にはなりません。

もう1つは、Claudeの出力が条項の読み違いを含みうる点です。個別の契約書に法を当てはめて評価することは、弁護士法72条との関係が論点になります。弁護士法72条とAIの契約書レビューにあるように、社内の自己点検の範囲にとどめる設計が前提です。

点検結果は表に残して改定につなげる

点検後は、Claudeの出力表に人が3列を足して保存します。

  • 確認した人と日付。引用の照合を誰がいつ行ったか。
  • 事実の回答。「追加で必要な事実」列に対する、市場シェアや取引実績などの回答。
  • 対応。修正する、運用を止める、弁護士に回す、問題なしと判断した理由。

修正案の文面を作らせる場合は、「指針の類型に照らして、拘束に読まれにくい書き方」を求めます。たとえば価格条項なら、「販売価格は販売店が自主的に決定する」旨と、希望小売価格は参考である旨を明記する方向です。これは指針が望ましいとする通知文書の書き方に沿った案ですが、条項の最終形は弁護士が確認します。

発注書側の観点で、下請法から改正された取適法の点検は別の物差しです。取適法の発注書チェックを使い分けてください。

よくある質問

代理店契約と販売店契約で、指針の当てはめは変わりますか。

指針の「代理店」は、国内市場全域を対象とする総代理店(第3部)を指します。複数の販売店と結ぶ契約は第1部の類型で読みます。呼び方が「代理店契約」でも、実際の取引が委託販売で危険負担を供給側が負う形なら、価格の指示が問題とならない場面があるため、題名でなく取引の実態で振り分けます。

契約書に価格の条項がなければ、再販売価格の点検は不要ですか。

不要とは言えません。指針は、契約に書かれていなくても出荷停止やリベートの調整、価格の報告徴収などの手段で実効性が確保されていれば拘束と判断します。契約書と運用メモを一緒に渡して点検します。

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