ClaudeとDextを連携する方法 — 接続手順と読み取り専用で見える範囲
会計事務所向けDextのコネクタをClaudeに追加する手順を、管理者とメンバーに分けて解説します。認証、読み取り専用の範囲、ツールの上限と使いどころをまとめます。
ClaudeとDextの連携でできること
Dextは、会計事務所や記帳代行の事務所向けに記帳を自動化するプラットフォームです。Dext AI Connectorは、その事務所のデータをClaudeの会話から引き出すためのコネクタで、Claudeのコネクタディレクトリに「Anthropic verified」付きで載っています。追加時期は2026年9月、開発元はDextです。
使い方は単純です。「高い重要度のデータヘルス問題を抱えているクライアントはどこか」「今四半期の事務所全体のVAT(付加価値税)の状況は」「先月、チームの時間は何に使われたか」と日本語で聞けば、Dextのデータに基づいた答えが返ります。クライアントを1社ずつ開いて確かめる作業が、ポートフォリオ全体への質問に置き換わります。
先に押さえておく点は3つあります。
- 読み取り専用です。仕訳の作成や削除、仕訳の転記、申告書の提出はできません
- 税の機能は英国向けです。VAT、法人税(CT)、P11D、年次投資控除(AIA)が対象になります
- Dextの事務所アカウントが必要で、ログインは必須です
日本の会計ソフトの話ではありません。英国・EUのクライアントを持つ事務所や、Dextを使う海外拠点を束ねる側が主な読者になります。同じ会計系の読み取りコネクタでは、ClaudeとXeroの連携の記事が参考になります。Connector全般の仕組みはClaudeのコネクタとはにまとめています。
使うための条件と、使えない環境
コネクタを入れる前に、条件を表で見ておきます。このコネクタは現在オープンベータです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Dextのプラン | 内容Practice Advancedアカウントが対象。参加はAnthropicのマーケットプレイスから |
| Dext側の有効化 | 内容AIコネクタが有効になった事務所アカウント |
| Claude側の権限 | 内容組織のコネクタを追加する管理者権限 |
| 認証 | 内容メンバーが各自のDextログインで承認する。サインインは必須 |
| 接続先 | 内容1つのDext事務所アカウントが認証できるワークスペースは1つだけ |
| 接続URL | 内容https://app.dext.com/mcp(ディレクトリ掲載のコネクタURL) |
ここで見落としやすいのが、個人のClaudeアカウントでは使えないことです。Dextの利用設定はワークスペース単位で行われるため、個人アカウントでは使えません。自分のClaude Proで試そうとしても、コネクタ一覧にDextは出てきません。
1つの事務所アカウントが認証できるワークスペースが1つという制約も、地味に効きます。チームごとに別のClaude環境を持つ事務所では、最初にどのワークスペースへ入れるかを決めておかないと、後から付け替えることになります。
また、ツールの一部は「Data Health & Insights」アドオン(旧称Precision)が有効なクライアントでしか動きません。税の見積もり、売掛・買掛の年齢別残高、仕訳、銀行残高、固定資産、ワークフロー、設定チェックがこれに当たります。どのクライアントが対象かは、接続後にClaudeへ「Data Healthモジュールが有効なクライアントはどれか」と聞けば分かります。
管理者がワークスペースに追加する手順
最初の作業は、事務所のClaude管理者が組織にコネクタを追加することです。この手順を踏まないと、メンバー側の画面にDextが出ません。
管理者がDextコネクタを組織に追加する流れ
- 1
組織設定のコネクタ画面を開く
Claudeの組織設定(Organisation settings)から、Connectorsを選びます。
- 2
コネクタを探す
ページ下部の「Browse connectors」を押して、一覧からDextを選びます。
- 3
説明と権限を確認する
Dextの説明と、読み取り・書き込みの能力の表記を確認します。ディレクトリの説明は全ツールが読み取り専用だとしています。
- 4
チームに追加する
「Add to your team」を押します。これで組織の全員にDextが見えるようになります。
追加しただけでは、誰のDextデータも見えません。ここまでは「使える状態にする」操作で、実際にデータへ触れるには、メンバーが次の節の手順で自分のアカウントを接続します。追加後は、メンバー自身がDextのサインインを完了する流れになります。
メンバーが「コネクタが見えない」と言ってきたときの確認点は3つです。正しいワークスペースに追加したか。ページを更新するか、いったんサインアウトして入り直したか。ユーザーにサードパーティのコネクタを有効にする権限があるか。追加直後のコネクタは、開いているセッションにすぐ反映されないことがあります。
メンバーが自分のDextアカウントを接続する手順
メンバー側の接続は数分で終わり、1回やれば足ります。事前に、接続したいDextの事務所アカウントにブラウザでログインしておいてください。複数の事務所にアクセスできる人は、ここで取り違えると別の事務所に接続されます。
Claudeに自分のDextを接続する流れ
- 1
コネクタ一覧を開く
Claudeの設定から、Connectorsを開きます。一覧にDextが出ているはずです。
- 2
Connectを押す
Dextの横にある「Connect」を押します。
- 3
事務所を選んで承認する
Claudeは、いまDextにログインしている事務所を表示します。接続先が合っているか確かめて承認します。
- 4
Allowで完了する
最後に「Allow」を押すと設定が終わります。
画面の名称は資料によって揺れています。管理者向けの記事は「Customize、次にConnectors」、メンバー向けの記事は「Settings、次にConnectors」と案内しているので、自分の画面でConnectorsに相当する項目を探してください。
接続できたら、新しいチャットでDextがオンになっているかを確かめます。新規チャットでは既定でオンです。
- メッセージ欄の横にある「+」を押す
- 「Connectors」を選ぶ
- Dextのトグルがオンになっているか見る
動作確認には、次の一文が使えます。クライアント一覧が返れば接続は成功です。
List my clients in Dext.日本語で「Dextのクライアント一覧を出して」と頼んでも構いません。確認用の質問が英語で用意されているので、うまく動かないときは英語のままで切り分けるのが楽です。
認証と権限:誰のDextデータが見えるのか
認証の仕組みは、各メンバーが自分のDextログインで承認する形です。管理者が共有のサービスアカウントを作るわけではありません。結果として、Claudeが引ける範囲は「その人がDext上ですでに開けるクライアントと事務所」に限られます。アクセスは既存のDext権限に従い、見える事務所とクライアントはアプリで見えるものと同じです。
つまりClaudeが権限を広げることはありません。逆に、Dextの権限を絞っておけば、その分だけClaudeの回答範囲も狭まります。権限の見直しはClaude側でなく、Dextの役割設定で行います。
一部の質問は管理者に限られます。
| 質問の種類 | 使える人 |
|---|---|
| ユーザー、アクセス権、アカウントマネージャーの照会 | 使える人事務所の管理者、クライアントの管理者 |
| 時間記録(誰がどのクライアントに何時間使ったか) | 使える人事務所の管理者、クライアントの管理者 |
| クライアント一覧、財務スナップショット、VATなど | 使える人Dextの権限でそのクライアントが見えるユーザー |
標準ユーザーがアクセスや時間記録を聞くと、Claudeは取得できないと答えます。これは不具合ではなく設計です。事務所の管理者とクライアントの管理者は全クライアントが見えるため、「明示的にアクセスを付与されたユーザー」の一覧には出てきません。この点も仕様です。
Dextのログインがそのまま入り口になるため、Dextアカウントには二要素認証を設定しておくと安全です。設定手順はDextのヘルプセンターにあります。
使えるツールの全体像
ディレクトリの詳細ページには、ツールが26個あると書かれ、一覧には24個が表示されています。公式ページにツール名と機能の対応表は無いので、ここでは機能の分類と、実際に載っているツール名を並べます。
Dextコネクタで引ける6つの領域
ポートフォリオ
クライアントを、会計連携、プロダクト、管理状況、ヘルススコア、次の期限で一覧・絞り込みできます。誰が何を担当し、誰にアクセスがあるかも見られます。
データヘルス
重要度別のインサイトを出し、ワークフローのチェックを見直し、PAYE・配当・役員貸付金・交際費といった重要な勘定が正しく設定されているかを申告前に確かめます。
ワークフロー
フロー(業務の流れ)をステータス、期日、担当者で追い、進行中・レビュー中・リスクのあるものを事務所横断で把握します。
英国の税務準備
VAT申告のサマリー(税コード別内訳つき)、会計期間の法人税見積もり、P11Dの要否確認、AIA対象の資産の抽出ができます。
元帳の明細
請求書、買掛・売掛の年齢別残高、固定資産、仕訳、給与仕訳を引けます。Xeroに接続したクライアントは銀行残高もリアルタイムで取れます。
キャパシティ
クライアント別、担当者別、チーム全体での使用時間を集計します。
ディレクトリに載っているツール名は次のとおりです。
ディレクトリ掲載のツール名(表示された24個)
check_account_config client_access client_list
client_managers client_users colleague_time_spent
get_client_activity get_client_stats get_ct_estimate
get_vat_return get_xero_bank_balances invoice_lookup
list_aged_payables list_aged_receivables list_assets
list_checks list_flows list_insights
list_invoices list_journals list_wages_journals
organisations practice_users submit_feedback一覧の末尾にsubmit_feedbackがあるのも注目点です。フィードバックは、チャットで「Dextチームにフィードバックを送りたい」と頼めば送れます。使い勝手や、欲しいのに無かったデータをその場で伝えられます。
業務での使いどころ:質問を組み立てる
質問の例は領域別に用意されています。その中から、事務所の定型業務に置き換えやすいものを選びます。
| 場面 | 質問の例(ヘルプの例文に沿った形) |
|---|---|
| 週次のポートフォリオ確認 | 質問の例(ヘルプの例文に沿った形)Which 10 clients have the lowest healthscores? |
| 顧客との通話前 | 質問の例(ヘルプの例文に沿った形)Give me the financial dashboard for Smith & Co. |
| 与信管理 | 質問の例(ヘルプの例文に沿った形)Show me aged debtors for Acme Ltd. |
| 申告前の確認 | 質問の例(ヘルプの例文に沿った形)Which of my clients are missing a Dividends account? |
| 稼働管理 | 質問の例(ヘルプの例文に沿った形)Which 5 clients ate the most hours last month? |
| アクセス監査 | 質問の例(ヘルプの例文に沿った形)Which practice users haven't logged in for over 90 days? |
質問は広く始めて徐々に絞ると通りやすくなります。まず全クライアントを出し、次にXeroのクライアントだけに絞り、さらにヘルススコアの低い10社に絞る順です。期間は「最近」でなく「Q4 2025」や日付範囲で書きます。
Claude側でできる工夫もあります。複数の問い合わせを1つの依頼にまとめると、Claudeがツールを順に呼びます。たとえば次のような依頼文を、月次レビューの定型として使えます。次は組み立て例で、Dextの例文そのものではありません。
Dextで次の順に調べて、クライアントごとに1行ずつ要約してください。
1. ヘルススコアが50未満のクライアントを出す
2. その各社の売掛の年齢別残高で、90日超の残高が大きい順に並べる
3. PAYE、配当、役員貸付金の勘定が未設定の会社に印を付ける
取得できなかった項目は推測で埋めず、取得できなかったと書いてください。Claudeのプロジェクトを作れる環境なら、前提をカスタム指示に置いておくと、毎回の質問が短くなります。次は指示文の例です。
このプロジェクトではDextコネクタを使います。
- 税の見積もりは英国のクライアントだけを対象にする
- 数字には必ず取得元のツールと対象期間を添える
- 見積もりには「申告前に有資格者が確認する」と一言付ける
- 書き込みはできないので、修正が要る点は提案として列挙する出力は一次確認として扱います。顧客に出す前に数字を確かめてください。Dextのヘルプは、見積もりは助言の会話のためのもので有資格者の確認の代わりにはならないと明記しています。
回答が空になる・足りないときの上限と例外
「聞いたのに答えが薄い」ときの原因は、コネクタの上限に当たっていることが多いです。上限は次のとおりです。
| 対象 | 上限・既定 |
|---|---|
| クライアント一覧 | 上限・既定1ページ50件。総数を聞くと複数ページを取りにいく |
| 財務スナップショットの一括取得 | 上限・既定一度に20社まで |
| 設定チェック、クライアント活動 | 上限・既定一度に20社まで |
| 売掛・買掛の年齢別残高 | 上限・既定1クライアントずつ。既定100件、最大200件 |
| 請求書 | 上限・既定既定20件、最大100件 |
| 仕訳 | 上限・既定既定100件、最大200件。自由検索は参照とメモ欄のみで、明細の摘要は対象外 |
| 時間記録 | 上限・既定期間の既定は直近30日。記録を始める前の期間は空 |
20社を超える事務所では、Claudeが複数回に分けて呼び出します。依頼文に「全クライアントを順に見て」と書いておくと、ループを前提にした回答になります。年齢別残高に事務所横断の一括取得はありませんが、Claudeに頼めばクライアントごとに繰り返してくれます。
ツール側の例外にも注意が要ります。
落とし穴
税の見積もりは「申告用の数字」ではない
法人税の見積もりは、資本控除(キャピタルアローワンス)、減価償却の加算戻し、交際費の否認を反映しません。Claudeは注意書きを付けるはずですが、その数字をそのまま顧客に渡すと誤解を生みます。AIAの対象判定も購入年に基づく簡易判定で、税務の確認を終えたものではありません。税率は19%、25%、限界税率控除が使い分けられます。
ほかにも、制約が表れる場面があります。
- 銀行のリアルタイム残高はXeroのみで、QBOなどのクライアントはエラーか空の結果になる
- 会計ソフトに未接続のクライアントは、財務数値の代わりに接続案内が返る
- フローのステータスは、保留・進行中・レビュー・完了の4種で、キャンセルで絞る機能は無い
- 書類の画像やPDF、メールや通知のデータ、請求(サブスクリプション)のデータ、カスタムレポートの出力は取れない
- 非英国のクライアントには、VAT、CT、AIA、P11Dのツールが意味のある答えを返さない
どれも「まだ使えない」領域で、いずれも今後の対応予定に挙がっています。今ある範囲で足りるかは、手元の質問を実際に投げて確かめるのが早道です。
つまずいたときの切り分け
接続やアクセスで止まったときは、次の順で確かめると原因を絞れます。
Dextが使えないときの切り分け
- Q会社のワークスペースにログインしていますか?答えが個人アカウント答えがはい
個人のClaudeアカウントにはDextのコネクタは出ません。事務所のワークスペースで開き直します。
- Qコネクタ一覧にDextが見えますか?答えが見えない答えがはい
管理者の追加がまだ済んでいないか、追加先のワークスペースが違います。ページを更新するか入り直してから、管理者に確認します。
- Q承認の画面は最後まで進みましたか?答えがdenied と出る答えがはい
「Access to app.dext.com was denied」と出たときは、複数の事務所を持つ人はブラウザでログインしている事務所が目的の事務所か確かめます。それでも出るときはDextのサポートに連絡します。
それでも答えが空なら
Data Health & Insightsアドオンが対象クライアントで有効か、会計ソフトに接続されているか、質問が上限表のどこかに当たっていないかを順に見ます。
データはどこに保存され、AIの学習に使われるのか
顧客に説明する場面に備えて、データの扱いを挙げておきます。
- Dextは顧客データをアイルランドに保存し、バックアップをドイツに置いています。これはコネクタの利用者に限らず全顧客に当てはまり、コネクタがデータを新しい場所に動かすわけではありません
- 保存時はAES-256、通信時はTLS 1.2以上で暗号化されます。Dextの認証はISO/IEC 27001:2022です
- Dextはユーザーのデータでモデルを学習させず、自社の基盤モデルも作っていません
- ユーザーが入力したプロンプトは取得せず、コネクタがClaudeへ返した内容を記録します
- フィードバックは、明示的な同意があるときだけ集められます
最後の点が、見落としやすい区別を生みます。DextからClaudeへ渡ったデータの扱いは、Anthropicとの契約が決めます。Dextの規約は、Dext側での保存と扱いを対象とします。保持期間や学習への利用は、事務所がAnthropicと結んだ契約に従います。Dextのヘルプも、ビジネスまたはエンタープライズの契約でコネクタを使うことを勧めています。
顧客から資料を求められたときの送り先は3つです。Dextのトラストセンター、情報セキュリティのページ、データ処理契約(GDPRの条項、データ主体の権利、サブプロセッサー、国際移転の保護措置)です。
導入前に決めておくこと
最後に、事務所で導入するときの判断材料を挙げます。
導入に向くのは、Dextを使う英国・EUのクライアントを多く抱え、「どこから手を付けるか」を毎週決める必要がある事務所です。ヘルススコアと期限、売掛の滞留、未設定の勘定を横断して拾う作業は、ポートフォリオ全体を見渡す質問と相性がよく、読み取り専用なので誤操作の心配もありません。
反対に、書き込みを期待する使い方には向きません。仕訳の修正や申告の自動化は対象外で、Claudeが出した提案は人が画面で実行する前提です。税の見積もりを顧客向け資料に直接使う運用も、見積もりの注意書きを踏まえると向きません。
導入の順番としては、まず1人の管理者アカウントで接続し、少数のクライアントで上限と空の結果が出る条件を試すのが手堅い進め方です。そのうえでメンバーを増やし、Dextの権限設定を見直します。コネクタの権限をClaude側の監査ログで追えるかは、プランによって違います。詳しくはClaudeコネクタの権限と監査ログで扱っています。