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キャッシュフロー計算書の作り方(間接法)— Claude for Excelで2期比較から組む

キャッシュフロー計算書の作り方(間接法)— Claude for Excelで2期比較から組む

貸借対照表の2期比較と損益計算書から、間接法のキャッシュ・フロー計算書をClaude for Excelで組む手順です。営業・投資・財務への振り分けと、期末現預金の検算式まで数値例で示します。

間接法のキャッシュ・フロー計算書は、損益計算書の利益から出発し、貸借対照表の2期比較で現金の動きに直していく計算書です。仕訳帳を集計し直さなくても、前期末と当期末の貸借対照表と当期の損益計算書があれば組めます。Claude for Excelは、この振り分けと検算式をExcelの中で数式として組むところまで進められます。

ただし、2期比較だけでは決まらない項目があります。固定資産の取得額や借入の総額は、明細で補う必要があります。この記事は、数値例を使って「どこまで自動で出て、どこから明細が要るか」を切り分けます。数値は説明用の仮の値で、単位は千円です。

間接法の骨格 — 3つの区分と財務諸表等規則の型

キャッシュ・フロー計算書の区分は、営業活動・投資活動・財務活動の3つです。これに現金及び現金同等物に係る換算差額、増加額または減少額、期首残高、期末残高が続きます(財務諸表等規則の第112条)。

営業活動の書き方は2通りあります。主要な取引ごとに総額で示す直接法と、税引前の当期純利益に加減算して示す間接法です(同規則第113条)。間接法で加減算するのは、次の3種類です。

調整項目

間接法で税引前利益に足し引きする3種類

  • 資金の増減を伴わない損益項目

    減価償却費のように、費用に出ても現金が出ていかない項目です。

  • 営業の資産・負債の増減

    売上債権、棚卸資産、仕入債務など、営業活動で生じた資産と負債の増減額です。

  • 投資・財務に属する損益項目

    固定資産売却益や支払利息のように、損益計算書に出ていても別の区分で扱う項目です。

投資活動と財務活動は、直接法の書き方、つまり総額表示です。投資活動には有形固定資産の取得による支出や売却による収入、財務活動には借入れによる収入と返済による支出、配当金の支払額などが入ります(第114条、第115条)。この総額表示が、後で述べる「明細が要る項目」の原因になります。

利息と配当金は、2つの置き方から選びます。受取利息・受取配当金・支払利息を営業活動に入れて配当金の支払額だけを財務活動に置く方法と、受取側を投資活動、支払側を財務活動に置く方法です(第117条)。この記事は前者で組みます。

財務諸表等規則は金融商品取引法の財務書類に適用される規則です。中小企業の決算書にそのまま義務づけるものではありませんが、区分と科目の並びは、社内の決算書類や金融機関向けの資料を組むときの型として使えます。

数値例 — 前期末と当期末の貸借対照表、当期の損益計算書

次の小さな会社を例にします。単位は千円で、利息はすべて現金で動いたものとします。

貸借対照表(前期末と当期末)

科目前期末当期末増減
現金預金前期末12,000当期末7,700増減-4,300
売掛金前期末18,000当期末22,000増減4,000
棚卸資産前期末10,000当期末9,000増減-1,000
有形固定資産前期末40,000当期末42,500増減2,500
買掛金前期末9,000当期末8,000増減-1,000
未払法人税等前期末1,500当期末1,600増減100
長期借入金前期末25,000当期末22,000増減-3,000
資本金前期末20,000当期末20,000増減0
利益剰余金前期末24,500当期末29,600増減5,100

資産合計は前期末80,000、当期末81,200で、負債・純資産の合計と一致しています。

損益計算書(当期)

科目金額備考
売上高金額100,000備考
売上原価金額60,000備考
販売費及び一般管理費金額30,000備考うち減価償却費4,000
営業利益金額10,000備考
受取利息金額200備考
支払利息金額600備考
固定資産売却益金額500備考帳簿価額1,500の設備を2,000で売却
税引前の当期純利益金額10,100備考
法人税等金額3,000備考
当期純利益金額7,100備考

当期は配当を2,000支払ったものとします。利益剰余金の増加5,100は、当期純利益7,100から配当2,000を引いた額と一致します。

組み立ての手順 — 3つのシートと振り分けの順番

ブックは、貸借対照表を置くBS、損益計算書を置くPL、計算書本体のCFの3シートで足ります。BSには前期末(B列)、当期末(C列)、増減(D列、=C2-B2)を置きます。

手順

CF シートを埋める順番

  1. 1

    営業活動の調整項目を出す

    税引前の当期純利益を起点に、減価償却費、利息、売却益、運転資本の増減を加減算します。

  2. 2

    投資・財務の総額を入れる

    固定資産の取得と売却、借入と返済、配当を総額で入れます。取得額などは貸借対照表の増減から逆算し、明細と合わせます。

  3. 3

    現金の増減を合計し、期首残高に足す

    3区分の合計が現金の増減です。期首残高に足して、期末残高を出します。

  4. 4

    貸借対照表の期末現預金と突き合わせる

    差がゼロでなければ、振り分けのどこかが誤っています。

営業活動のキャッシュ・フロー

PLは、B2に売上高、B3に売上原価、B4に販売費及び一般管理費、B5に減価償却費の内訳、B6に営業利益といった並びとします。BSは、行3が売掛金、行4が棚卸資産、行5が有形固定資産、行7が買掛金、行8が未払法人税等、行9が長期借入金、行11が利益剰余金とします。この配置を前提にしたCFの数式は次のとおりです。

B3  税引前の当期純利益      =PL!B10
B4  減価償却費            =PL!B5
B5  受取利息              =-PL!B7
B6  支払利息              =PL!B8
B7  固定資産売却益        =-PL!B9
B8  売上債権の増減        =-BS!D3
B9  棚卸資産の増減        =-BS!D4
B10 仕入債務の増減        =BS!D7
B11 小計                  =SUM(B3:B10)
B12 利息の受取額          =PL!B7
B13 利息の支払額          =-PL!B8
B14 法人税等の支払額      =-(PL!B11-BS!D8)
B15 営業活動によるCF      =SUM(B11:B14)

符号の考え方は2つです。資産が増えれば現金は減るので、売掛金と棚卸資産の増減には負号を付けます。負債が増えれば現金は増えるので、買掛金の増減はそのまま足します。

利息は、受取利息を引き、支払利息を足し戻して、いったん税引前の利益から取り除きます。そのうえで小計の下に、受取額と支払額を実額で入れ直します。こうすると、税引前利益に含まれた利息と二重にならずに済みます。

法人税等の支払額は、費用3,000をそのまま置かないのがつまずきの元です。未払法人税等が100増えているので、実際に払ったのは3,000から100を引いた2,900です。

例の営業活動によるキャッシュ・フローは、小計が10,000、受取利息200、支払利息600、法人税等2,900で、合計6,700になります。

投資活動と財務活動のキャッシュ・フロー

投資と財務は、貸借対照表の増減だけでは出し切れません。

B17 有形固定資産の取得による支出   -8000   (入力)
B18 有形固定資産の売却による収入    2000   (入力)
B19 投資活動によるCF               =B17+B18
B21 長期借入れによる収入            2000   (入力)
B22 長期借入金の返済による支出     -5000   (入力)
B23 配当金の支払額                 =-(PL!B12-BS!D11)
B24 財務活動によるCF               =SUM(B21:B23)

配当金は、当期純利益から利益剰余金の増加を引いた差(7,100から5,100を引いた2,000)として逆算できます。一方、取得額、売却収入、借入と返済は入力欄です。

有形固定資産は、増減が2,500でも、取得が8,000、減価償却が4,000、売却した設備の帳簿価額が1,500という3つの動きが重なった結果です。借入金も、増減がマイナス3,000でも、実際は2,000の借入と5,000の返済でした。総額表示にするには、固定資産台帳や借入明細からこの内訳を持ってくる必要があります。

取得額には逆算の検算式を置けます。

取得額の逆算 = BS!D5 + PL!B5 + (売却収入 - PL!B9)
            = 2500 + 4000 + (2000 - 500) = 8000

入力した8,000とこの逆算値が一致しているかを、CFシートの隣に置いておきます。

現金の増減と期末残高の検算

B26 現金及び現金同等物の増減額     =B15+B19+B24
B27 現金及び現金同等物の期首残高   =BS!B2
B28 現金及び現金同等物の期末残高   =B27+B26
B29 貸借対照表の現金預金(当期末)  =BS!C2
B30 差                             =B28-B29

例の数値では、営業6,700、投資マイナス6,000、財務マイナス5,000で、増減額はマイナス4,300です。期首12,000に足すと期末は7,700で、貸借対照表と一致して差は0になります。

外貨建ての現預金があるときは、換算差額の欄(第116条)が別に要ります。期末換算の考え方は、外貨建の期末換算と為替差損益の検算にまとめています。

Claude for Excelに任せる範囲と、プロンプトの型

Claude for Excelは、開いているブックの数式や参照をたどって質問に答え、数式の関係を保ったまま値を更新し、新しいモデルを作ったり既存のテンプレートを埋めたりできます。回答にはセル単位の出典が付き、クリックで該当セルに移動できます。公式の例には、試算表から3表モデルを作る依頼も載っています。

CF計算書の作成では、次の分担が現実的です。

作業Claudeに任せる担当者が握る
調整項目の数式Claudeに任せるBSとPLの参照で組む担当者が握る符号と区分の最終確認
取得額・借入内訳の欄Claudeに任せる入力欄の用意と逆算式の設置担当者が握る台帳・明細の数字の入力
検算セルClaudeに任せる差の式と判定の設置担当者が握る差が出たときの原因の確定
利息の区分Claudeに任せる選んだ方法で式を組む担当者が握るどちらの方法で表示するかの決定
注記Claudeに任せる現金及び現金同等物と貸借対照表科目の関係の下書き担当者が握る内容の確定

依頼文は、シート名と配置、符号の規約、入力欄の指定まで書くと、数式のぶれが減ります。例えば次のような依頼です。

BSシート(B列:前期末、C列:当期末、D列:増減)とPLシートから、
CFシートに間接法のキャッシュ・フロー計算書を組んでください。
- 利息は営業活動に入れ、配当金の支払額は財務活動に入れる
- 現金の増加はプラス、減少はマイナスで表示する
- 固定資産の取得・売却と借入・返済は入力欄にし、数式で埋めない
- 最後に、期末残高とBSの現金預金との差を出す検算セルを置く

毎回同じ規約を書く手間は、アドインのサイドバーにある設定のInstructionsに入れておくと省けます。Instructionsは、Excelでのすべての会話に適用される指示を置く欄です。Excelで設定した内容は、PowerPointやWordのInstructionsとは別になります。

数式を組み終えたら、「差のセルがゼロにならないのは、どの行の符号か」と聞いて、参照をたどらせます。回答のセル出典を押せば、該当の式まで移動できます。

検算で差が出たときの切り分け

差がゼロでなければ、次の表の症状に当てはめて原因を探します。この表の差は、例の数値を使い、わざと誤りを入れて計算した値です。

誤りの内容差(CF期末−BS期末)見つけ方
売却益500を引き忘れる差(CF期末−BS期末)+500見つけ方営業の調整項目に売却益の行があるか
減価償却費4,000を足し戻さない差(CF期末−BS期末)-4,000見つけ方営業の調整項目と、取得額の逆算値
売掛金の増減の符号を逆にする差(CF期末−BS期末)+8,000見つけ方資産の増減に負号が付いているか
法人税等を費用3,000のまま置く差(CF期末−BS期末)-100見つけ方未払法人税等の増減を反映したか
配当金2,000を入れ忘れる差(CF期末−BS期末)+2,000見つけ方財務活動の行と、利益剰余金の増減

差の大きさが誤りの大きさと一致しやすいので、まず金額で当たりを付けます。

検算の限界も知っておく必要があります。借入金を総額の2,000と5,000でなく、純額のマイナス3,000で入れても、現金の合計は変わらないので差はゼロのままです。区分の入れ違い(営業と投資の取り違えなど)も同じで、期末現金は合ってしまいます。検算がゼロになったことは、区分や表示が正しいことの証明にはなりません。

だからこそ、入力欄の数字は台帳や借入明細と照合します。この照合は、Claudeにも担当者にも、検算セルの外側の作業です。

使えない環境とデータの扱い

Claude for Excelが動くのは、Excel on the web、Microsoft 365版のWindows(ビルド16.0.13127.20296以降)、Mac(バージョン16.46以降でビルド21011600以降)です。Excel 2016と2019の永続・ボリュームライセンス、iPad、Androidは対象外です。プランは、Pro、Max、Team、Enterpriseが対象です。

機能面では、データテーブルとマクロ・VBAの操作が非対応です。感度分析を数式で組む必要があり、転記マクロをClaudeに書かせて動かす運用もできません。

決算書類は、公式に推奨されない用途に近づきます。最終的なクライアント成果物を人の確認なしに出すこと、検証なしの監査上重要な計算が該当します。CF計算書を金融機関や監査人に出す場合は、検算セルと台帳照合を担当者が済ませたうえで使います。

データの取り扱いにも注意が必要です。入力と出力は、受信または生成から30日以内にバックエンドで削除されます。チャット履歴はブラウザーのローカルに保存され、Anthropicのサーバーには保存されません。Claude for Excelは組織が設定したカスタムのデータ保持設定を引き継がず、Enterpriseの監査ログにも含まれません。

外部から受け取ったブックには、隠れた指示が含まれている可能性があります。取引先から届いた台帳などは、信頼できるコピーに値だけを写してから読ませます。危険な操作を提案されたときは確認が求められるので、内容を読んでから承認します。

まとめ

間接法のCF計算書は、BSの増減とPLの項目を、調整、投資、財務の3つの置き場に振り分ける作業です。貸借対照表の増減で出せるのは、営業の調整項目と配当金までで、固定資産の取得額と借入の内訳は台帳が要ります。

検算セルは、現金のずれを拾う道具です。区分の取り違えや純額表示は拾えないので、入力欄の照合と一対で使います。月次の資金予測は資金繰り表の週次更新、決算資料づくりの任せ方の線引きは決算資料・税務書類の任せ方にあります。試算表からの月次レポートの組み方は月次レポートと試算表のExcel手順が扱っています。

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