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Claudeで特許の拒絶理由通知への対応案を整理する範囲と限界

Claudeで特許の拒絶理由通知への対応案を整理する範囲と限界

拒絶理由通知を条文別に仕分け、引用文献とクレームを対比し、補正案と意見書の論点を整理する手順です。補正の許容性の最終判断と未公開内容の扱いは人が持ちます。

特許の拒絶理由通知を受けたら、まず「何条違反とされ、どの引用文献のどこが根拠か」を読み解く作業が待っています。ここはClaudeに任せやすい部分です。一方、補正が認められる範囲に収まっているかの最終判断と、未公開の内容をどこまで入力するかは、人が線を引く部分です。

この記事は、通知書を条文別に仕分け、引用文献とクレームを対比し、補正案と意見書の論点候補を出すまでの手順を、特許法の条文に合わせて組みます。

通知書をClaudeに渡す前に、条文の枠を確かめる

審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするとき、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければなりません(特許法50条)。これが拒絶理由通知です。出願人が取れる動きは、意見書で反論する、補正で請求項を直す、その両方、の3通りに整理できます。

補正には制約があります。特許法17条の2第1項は、特許をすべき旨の査定の謄本が届く前なら明細書・特許請求の範囲・図面を補正できるとしています。ただし50条の通知を受けた後は、次の場合に限られます。

17条の2第1項

通知後に補正できる場面

  • 最初の通知への応答期間内

    最初に受けた拒絶理由通知について、指定された期間内にする補正です。

  • 最後の通知への応答期間内

    拒絶理由通知を受けた後にさらに通知を受けた場合、最後に受けた通知の指定期間内にする補正です。

  • 審判請求と同時

    拒絶査定への不服審判を請求するとき、その請求と同時にする補正です。

条文にはもう1つ、文献公知発明の情報の記載について48条の7の通知を受けた場合の期間内、という場面もあります。

この枠は、Claudeに渡す前提として先に自分で確認しておく項目です。どの場面の補正なのかによって、使える補正の目的が変わるためです。

手順1: 拒絶理由を条文別に仕分ける

通知書は、1つの請求項に複数の理由が重なることがよくあります。最初の作業は、請求項ごとに「どの条文違反か」「根拠にされた引用文献は何か」を表にすることです。

通知書の本文を貼れる状態なら、次のような依頼文が使えます。例として組んだ文面です。

添付の拒絶理由通知書を読み、請求項ごとに次の表を作ってください。
列: 請求項番号 / 適用条文 / 審査官が挙げた引用文献の番号 /
    審査官が示した理由の要旨(通知書の文言に近い言葉で)
 
条件:
- 通知書に書かれていない理由を補わないでください。
- 条文の番号が通知書から読み取れない箇所は「不明」と書いてください。
- 引用文献の記載箇所(段落番号や図番号)が示されていれば、そのまま転記してください。

「通知書に書かれていない理由を補わない」と明示するのは、仕分けの段階で創作を混ぜないためです。この表は、後続の作業すべての土台になります。

条文ごとに、どんな論点になるか

仕分けた条文は、論点の型が違います。条文の要件を先に頭に入れておくと、Claudeの出力を読むときの目が変わります。

条文要件の骨格反論・補正で見る点
29条1項要件の骨格出願前に公知・公然実施・刊行物記載などの発明は特許を受けられない反論・補正で見る点引用発明と本願発明の相違点があるか
29条2項要件の骨格出願前に通常の知識を有する者が容易に発明できたときは特許を受けられない反論・補正で見る点引用発明からの容易想到性
29条の2要件の骨格先の出願の当初明細書等に記載された同一の発明は特許を受けられない反論・補正で見る点先願の記載との同一性
39条要件の骨格同一発明の二以上の出願は最先の出願人のみ反論・補正で見る点先願との同一性、協議
36条4項1号要件の骨格当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載反論・補正で見る点発明の詳細な説明の記載
36条6項要件の骨格請求項の発明が詳細な説明に記載、明確、簡潔反論・補正で見る点請求項の文言と詳細な説明の対応

表の要件は条文の言葉を短くしたものです。個別の事案の当てはめは、条文の原文と通知書の本文を並べて読む作業になります。

手順2: 引用文献とクレームを要素ごとに対比する

進歩性などの理由では、通知書の主張は「本願の請求項の構成要素Aは引用文献1に、Bは引用文献2に記載されている」という形をとります。これを自分の目で検証するために、請求項を構成要素に分け、引用文献の記載と並べる対比表を作ります。

引用文献は、公報の該当部分を貼り付けて渡します。公報として公開済みの文書なので、入力の扱いの面で重い情報ではありません。

【本願の請求項1】
(請求項の文言)
 
【引用文献1の記載(段落【0012】〜【0015】)】
(公報から貼り付けた文)
 
請求項1を構成要素に分け、次の表を作ってください。
列: 構成要素 / 引用文献1に同じ記載があるか(ある・ない・一部) /
    該当する文言の引用 / 本願との違いの要点
 
「ある」と判断した箇所には、必ず引用文献からの逐語の抜き出しを添えてください。
引用できない場合は「ない」としてください。

逐語の抜き出しを求めるのは、Claudeが「それらしい」一致を作らないようにする工夫です。出力に引用が付いていれば、人が公報の原文と照合できます。

対比表から読み取れるのは、審査官の認定に隙があるかどうかの手がかりです。たとえば、通知書が「記載されている」とする構成要素が、引用文献の該当段落には見当たらない場合は、意見書の論点になります。

手順3: 補正案の候補を作り、許容性を条文で突き合わせる

意見書だけで反論しきれないとき、請求項を補正して引用文献との差を明確にする選択肢があります。補正案はClaudeに候補を出させやすい作業ですが、補正には条文上の制約があり、ここが人の判断の中心になります。

17条の2は、補正に次の条件を課しています。

17条の2

補正案が満たす条件の確認順

  1. 1

    新規事項を入れていない(3項)

    補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、図面に記載した事項の範囲内でしなければなりません。

  2. 2

    発明の単一性を保っている(4項)

    補正前の通知で判断が示された発明と、補正後の請求項の発明が、37条の発明の単一性を満たす一群の発明に当たるようにします。

  3. 3

    補正の目的が限られた範囲に収まる(5項)

    請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に限られます。減縮は、産業上の利用分野と解決しようとする課題が同一であるものに限ります。

5項の目的制限は、条文上1号・3号・4号の場面に適用されます。1号の場合は、拒絶理由通知と併せて50条の2の通知(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)を受けたときに限ります。最初の通知の応答でこの制限がかかるかは、50条の2の通知の有無で変わります。通知書の末尾にその通知があるかは、手順1の段階で確かめておきます。

最後の拒絶理由通知への応答(または50条の2の通知を併せて受けた場合の応答)でこれらの条件を満たさない補正は、審査官が決定で却下します(53条1項)。最初の通知への応答で3項に反する補正をしても却下にはならず、新たな拒絶理由として扱われます。却下の決定に対しては原則として不服を申し立てられず、拒絶査定への不服審判を請求した場合の審判でのみ争えます(53条3項)。補正案の許容性は、出願の運命を左右する論点です。

Claudeに候補を出させる依頼文

手順2の対比表を前提に、請求項1の補正案を3つ出してください。
各案について次を書いてください。
- 補正後の請求項の文言(案)
- 追加する限定の根拠として、願書に最初に添付した明細書の
  どの段落に書かれているか(段落番号と逐語の引用)
- 補正後も引用文献1との差が残る理由
 
根拠となる段落を明細書から引用できない案は、
「根拠なし」と書いて案から外してください。

「最初に添付した明細書の段落を逐語で引用させる」ことが、新規事項の検査の入口になります。引用できない限定は、新規事項に当たるおそれのある案です。ただし、逐語の引用が付いたからといって、その限定が3項の範囲内であるとはClaudeの出力だけでは言い切れません。範囲内かどうかは、人が明細書を読み、弁理士が判断します。

補正案を検査する第二の依頼

候補を出した会話とは別に、条文の本文を貼り付けて検査させる方法もあります。

以下は特許法17条の2第3項〜第5項の条文です。
(条文を貼り付け)
 
次の補正案が、各項の要件に照らしてどの点で問題になり得るかを
項ごとに書いてください。判断が分かれる点は断定せず、
「論点」として挙げてください。

条文を会話に貼るのは、記憶から条文を再現させないためです。出力は結論ではなく、人が検討するチェックリストとして使います。

手順4: 意見書の論点を組み立てる

意見書は、通知書の理由に対する出願人の反論と、補正の内容の説明を書く書面です。Claudeは、対比表と補正案から、論点の骨組みを作る作業に向いています。

骨組みの型は、理由ごとに次の順になります。

  1. 審査官の認定の要旨(通知書からの転記)
  2. 補正の内容と、その根拠となる明細書の記載
  3. 補正後の請求項と引用発明との相違点
  4. 相違点が、引用文献から容易に導けない理由(進歩性の場合)

Claudeに骨組みを作らせるときも、「相違点の主張は、対比表に書かれた逐語の引用から外れない」と条件を付けると、創作が混ざりにくくなります。

反対に、Claudeに任せにくいのは、技術的な効果の主張です。「この構成によって従来より優れた効果を奏する」という書き方は、明細書に効果の記載があるかどうかで説得力が決まります。明細書にない効果を意見書で述べる場合の扱いは、事案ごとの判断になり、弁理士と詰める部分です。

未公開の内容を入力するときの線引き

拒絶理由通知への対応では、公報と未公開情報が混在します。入力の可否を、種類別に分けます。

材料公開状態入力の考え方
引用文献(公報)公開状態公開済み入力の考え方該当部分を貼る。公報なので内容の秘匿は問題になりにくい
本願の明細書・請求項公開状態出願公開前は未公開入力の考え方公開前なら、入力は慎重に判断する
補正案・意見書の草稿公開状態未公開入力の考え方出願人側の戦略を含むため、入力先の契約を確認する
発明者の社内資料公開状態未公開入力の考え方原則として入力しない

特許庁長官は、特許出願の日から1年6月を経過したとき、出願公開をしなければなりません(64条1項)。公開される内容は、明細書・特許請求の範囲に記載した事項と図面の内容などです(同条2項)。したがって、出願から1年6月がたっていない本願の内容は、未公開の情報です。

未公開の情報を、秘密保持の約束がない先に載せると、新規性を失うおそれがあります。日本弁理士会の「弁理士業務AI利活用ガイドライン」は、使うサービスが秘密保持規約等のあるプラットフォームかどうかを確認するよう求めています。この論点と、契約形態ごとの学習・保存の違いは、弁理士がClaudeで生成AIを使うときのガイドラインの記事に整理してあります。

個人向けプラン(Free・Pro・Max)では、モデル改善への利用を許可した場合などに、チャットとコーディングセッションが学習に使われます。シークレットチャットは、許可していても学習に使われません。設定の変え方はClaudeを学習させない設定で扱っています。守秘の構成全般はClaudeを法務で使うときの秘匿特権と守秘にあります。

学習に使われない設定にしても、第三者に開示しないという約束と同じにはなりません。学習の有無と秘密保持は別の論点です。

入力を減らす工夫

未公開の内容を入力せずに済む作業もあります。

  • 手順1の仕分けは、通知書に書かれた理由と引用文献の番号だけで成り立つ
  • 手順2の対比は、請求項を技術用語の一般的な言い換えに置き換えて行う
  • 発明の固有の数値や構成は、記号(部材A、構成B)に置き換えて渡す

置き換えた内容でも、請求項の構造は伝わります。ただし、置き換えの対応表は手元に残し、Claudeには渡さないようにします。

人が持つ部分

条文に沿った整理で、Claudeが出せるのは材料までです。次の判断は、出力を読んだ人が持ちます。

判断

人が最終判断する4つの点

  • 補正の許容性

    新規事項(17条の2第3項)、単一性(同条4項)、補正の目的(同条5項)に収まるかの判断です。

  • 審査官の認定への反論の筋

    認定のどこを争うか、争うこと自体が得かの判断です。

  • 分割出願の要否

    補正できる時または期間内、あるいは最初の拒絶査定の謄本の送達日から3月以内に限り、出願の一部を新たな出願にできます(44条1項)。

  • 審判請求の判断

    拒絶査定を受けた場合、謄本の送達日から3月以内に拒絶査定への不服審判を請求できます(121条1項)。

応答の期間は通知書に指定されます。審査官は、指定した期間を請求により、または職権で延長できます(5条1項)。延長を請求できるかどうかや、日数、期間が過ぎた後の扱いは通知書と特許庁の案内で確かめる事項で、条文だけでは決まりません。スケジュールの管理はClaudeの出力に頼らず、通知書に書かれた期間から人が行います。

先行技術の調査や、発明者の問題との分担

通知書が引いた文献に加えて、さらに別の先行技術を探したい場面では、Claudeの調査機能の範囲と限界が論点になります。Claudeで特許の先行技術調査を下調べする範囲と限界に、任せやすい作業とJ-PlatPatで人が見る部分を分けてあります。

AIの関与と発明者要件の関係はClaudeで発明を作ると特許は取れるか、発明が生まれた後の社内規程の点検は職務発明規程の改定案を特許法35条の要件でClaudeに点検させる手順に載せています。

つまずきやすい点

落とし穴

条文を覚えているかのように答えさせる

Claudeに条文番号と内容を尋ねるだけだと、改正前の記述が混ざることがあります。条文の本文を貼り付けた上で照合させると、出力が原文に縛られます。

落とし穴

対比表の「ある」を鵜呑みにする

構成要素が引用文献に「ある」と出力されても、逐語の引用が付いていなければ根拠がありません。引用の付かない「ある」は、公報で確かめるまで空欄として扱います。

落とし穴

補正案の根拠を後付けで作らせる

補正案を先に決めてから「根拠を探して」と頼むと、近い記述を無理に結び付けることがあります。根拠となる段落の引用が先、限定の言葉が後、の順にします。

まとめ

拒絶理由通知への対応では、条文別の仕分け、引用文献とのクレーム対比、補正案の候補出し、意見書の骨組みまでが、Claudeに頼みやすい範囲です。どの作業にも、逐語の引用を求める条件を付けておくと、人が原文と照合できます。

補正が17条の2の3項〜5項に収まるかの判断、反論の筋の選択、分割や審判の判断、そして未公開の内容をどの契約のアカウントに入力するかは、弁理士を含む人が決める部分です。Claudeの出力は結論ではなく、その検討の材料として使います。

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