内容証明の文案をClaudeで作る — 字数・行数と行政書士の業務範囲
内容証明の文案づくりにClaudeを使うときの手順を解説。日本郵便の字数・行数の条件、Claudeに数えさせる方法、行政書士法と弁護士法72条から見た作成者ごとの線引きを示します。
内容証明の文案をClaudeで作る — 字数・行数と行政書士の業務範囲
内容証明の文案は、事実関係の時系列と請求内容さえ手元にあれば、Claudeで形にするところまでは進められます。ただし、そこから先に二つの関門があります。一つは日本郵便が定める謄本の字数・行数、もう一つは「誰が、どこまで書いてよいか」という資格の線引きです。
文案づくりはClaudeに任せられますが、字数と行数の条件は日本郵便の定めに合わせて数え直す必要があり、他人のために有償で作る場合は資格の問題が出ます。個別の紛争について法的な結論を出す記事ではありません。
文案づくりの流れは5段階に分けられる
Claudeにいきなり「内容証明を書いて」と頼むと、事実の抜けや請求の根拠の飛躍がそのまま文面に残ります。先に材料を整えてから、書式に合わせる順で進めると手戻りが減ります。
Claudeと詰める内容証明の文案
- 1
事実関係を時系列で書き出す
日付、やり取りの手段、金額を一件ずつ並べます。評価や感想は混ぜず、証拠が手元にある事実とない事実に分けておきます。
- 2
請求内容と期限を決める
何を求めるのか(支払い、履行、停止など)、いつまでに応じてほしいのかを決めます。ここは依頼者本人の判断で、Claudeに決めさせる箇所ではありません。
- 3
文案をClaudeに作らせる
材料を渡して、通知書の構成(日付、当事者、経緯、請求、期限)で下書きを出させます。
- 4
謄本の書式に収める
日本郵便の字数・行数の条件に合わせて、行ごとに折り返します。Claudeにファイルを作らせ、字数は数えさせます。
- 5
人が読んで直す
事実の誤り、断定が強すぎる表現、請求の根拠を人の目で確認します。資格者が関わる場合は、ここで内容を検討します。
1段階目の材料づくりは、Claudeとの対話で効率が上がる部分です。次のような指示にすると、時系列の整理表が返ってきます。
以下のメモから、内容証明の文案に使う時系列表を作ってください。
- 列は「日付 / 出来事 / 根拠資料(契約書・メール等)」
- メモに書かれていない日付や金額は補わず、「要確認」と書く
- 私の推測にすぎない記述は、別の一覧に分ける
【メモ】
(ここに経緯を貼る)「メモにないものは補わない」「推測は別に分ける」と指定するのが肝心です。内容証明は相手に送る書面なので、Claudeが前後関係をもっともらしく補ってしまうことが、いちばん困る失敗になります。
日本郵便が定める謄本の書式条件
内容証明の取扱いは、日本郵便が次の条件を満たすものについて行います。
- 文書1通のみを内容とすること。図面や返信用封筒など内容文書以外の物は同封できません。為替証書や小切手などの有価証券も同じです
- 仮名、漢字、数字、英字(固有名詞に限る)、括弧、句読点、その他一般に記号として使われるもので書くこと
- 一般書留として出すこと
字数と行数の制限は、郵便局に残る謄本(控え)に対するものです。日本郵便のページには、この制限は謄本に関するもので、内容文書には字数・行数の制限がない、と書かれています。
| 書き方 | 1行の字数 | 1枚の行数 |
|---|---|---|
| 縦書き | 1行の字数20字以内 | 1枚の行数26行以内 |
| 横書き(1) | 1行の字数20字以内 | 1枚の行数26行以内 |
| 横書き(2) | 1行の字数13字以内 | 1枚の行数40行以内 |
| 横書き(3) | 1行の字数26字以内 | 1枚の行数20行以内 |
横書きは3通りから選べます。解説サイトによっては1通りしか載せていないものもあるので、Claudeに条件を渡すときは、この表の数字から1通りを選んで指定すると取り違えが減ります。
字数の数え方に癖がある
日本郵便のページは、数え方を例つきで示しています。
- 記号は1個を1字とする。ただし括弧は上下(横書きなら左右)の組全体で1字とし、開き括弧のある行の字数に入れる
- 「%」は1字、「m²」や「kg」は2字
- 数字や文字を丸や四角などの枠で囲んだものは、各文字と枠(1字)の合計で数える。「⑤」は2字、「⑩」は3字。ただし文中の序列を示す記号として使うものは全体で1字
- 傍点や下線を付けた文字は、傍点や下線を含めた全体を1字として数える
括弧と丸数字の数え方は、人が目で数えると間違えやすい部分です。ここをClaudeに任せる場合は、規則そのものをプロンプトに貼って、数え方の根拠を示させるのが近道です。
訂正・契印・付記の決まり
書式の条件は字数だけではありません。同じページには次の決まりも載っています。
- 謄本の文字を訂正・挿入・削除するときは、字数と箇所を欄外か末尾の余白に書き、差出人の印を押す。削除した文字は読める字体で残す
- 謄本が2枚以上になるときは、つづり目に契印をする。押す印章は封筒に記載した差出人の印章に限られる。ただし差出人が1名のときは、「契印」などつづり目を明確に示せる印章でもよい
- 謄本の末尾余白に、差出人と受取人の住所氏名を付記する。内容文書に書いた住所氏名と同じなら、原則として省略できる。付記した文字は字数にも枚数にも数えない
これらはClaudeの出力に含まれません。印を押す作業も、訂正の記載も、紙の上で人が行います。文案の段階で、できるだけ訂正が出ない形にしておくと、清書でのやり直しが減ります。
料金は、謄本1枚の内容証明を定形郵便物で出す場合、内容証明の加算480円と郵便物110円と一般書留の加算480円で合計1,070円と、同じページに例が示されています。速達や配達証明を付けると、それぞれの料金が加わります。
Claudeに書式を守らせるやり方
Claudeには、Word(.docx)やPDFなどのファイルを会話の中で作る機能があります。Claudeの公式ヘルプによると、この機能はFree、Pro、Max、Team、Enterpriseのすべてのプランで、Webとデスクトップ、モバイルで使えます。Team・Enterpriseでは、組織のオーナーが設定で無効にできます。
作ったファイルは、ダウンロードするか、Google Driveに保存できます。ファイルの作成は通常のチャットより利用上限を多く消費する、とも書かれているので、書式の調整を何往復も重ねるときは残量に気をつけてください。
字数・行数の調整は、規則を明示して、数える作業をコードで行わせると安定します。次のような指示です。
下の文案を、内容証明の謄本用に横書き「1行26字以内・1枚20行以内」に整えてください。
- 括弧は開きと閉じの組で1字、「%」は1字、「kg」は2字として数える
- 意味の切れ目で行を折り、句読点が行頭に来ないようにする
- 数えるのはコードを実行して行い、行ごとの字数と総行数を表で示す
- 文面の内容は変えず、変えた語があれば一覧にする
【文案】
(ここに貼る)「内容は変えず、変えた語は一覧にする」という条件が重要です。字数を詰めようとして、Claudeが語を言い換えると、請求の趣旨が変わるおそれがあります。
Claudeの返した数字をそのまま信じず、手元でも確かめたいときは、簡単なスクリプトで検算できます。次の例は、謄本の1行を1行ずつ書いたテキストファイルを読み、横書き26字・20行の条件で超過を拾います。
import sys
MAX_CHARS, MAX_LINES = 26, 20 # 横書き 1行26字・1枚20行
def width(line: str) -> int:
# 括弧は開きと閉じの組を1字として数える(閉じ括弧を引く)
return len(line) - sum(line.count(c) for c in "))」』】")
lines = open(sys.argv[1], encoding="utf-8").read().splitlines()
for no, line in enumerate(lines, 1):
if width(line) > MAX_CHARS:
print(f"{no}行目: {width(line)}字(上限{MAX_CHARS})")
pages = -(-len(lines) // MAX_LINES)
print(f"{len(lines)}行 / {pages}枚(1枚{MAX_LINES}行)")このスクリプトが見ているのは、括弧の組と文字数だけです。丸数字、単位記号、傍点、下線の数え方までは入っていません。最終的な数え方は日本郵便のページの規則が基準で、郵便局の窓口でも確認されます。
誰が文案を作ってよいのか
「行政書士の範囲」と言われる線引きは、行政書士法の条文で読めます。
行政書士法第1条の3は、行政書士が「他人の依頼を受け報酬を得て」、官公署に提出する書類のほか、権利義務または事実証明に関する書類を作成することを業とする、と定めています。第1条の4は、このほかに、契約その他に関する書類を代理人として作成することや、書類の作成の相談に応じることも業とできるとしています。
内容証明は、権利義務に関する書類を相手に届ける手段なので、その文案づくりは、条文上は権利義務に関する書類の作成に当たります。一方で、条文には歯止めがあります。第1条の3の第2項は、他の法律で業務が制限されている書類の作成はできないと定め、第1条の4第1項第1号は、官公署への手続の代理について、弁護士法72条に規定する法律事件に関する法律事務に当たるものを除くと定めています。
第19条は、行政書士または行政書士法人でない者が、他人の依頼を受けて、名目を問わず報酬を得て、業として第1条の3の業務を行うことを禁じています。ただし、他の法律に別段の定めがある場合などは除かれます。
これを作成者ごとに並べると、次のようになります。
| 作成者 | 条文上の位置づけ | 注意する点 |
|---|---|---|
| 差出人本人(自分の件) | 条文上の位置づけ第19条が禁じるのは、他人の依頼を受け報酬を得て業として行う場合。自分の書類を作る行為はこの要件に当たらない | 注意する点内容の正確さは自分で負う |
| 行政書士 | 条文上の位置づけ権利義務に関する書類の作成と、その相談は業務の範囲 | 注意する点紛争の相手方との交渉や代理は、弁護士法72条との関係で別の問題(第1条の4第1項第1号の除外とは別に検討) |
| 弁護士 | 条文上の位置づけ弁護士法72条が非弁に禁じる法律事務を扱える立場 | 注意する点紛争の代理や交渉まで依頼できる |
| 資格のない人が報酬を得て作る | 条文上の位置づけ行政書士法第19条・弁護士法72条の問題になり得る | 注意する点個別の事実関係で判断される |
表の1行目は、条文の要件から読める整理です。個別の事案への当てはめは、事実関係によって変わります。
弁護士法72条との接点
弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で、法律事件について鑑定、代理、和解などの法律事務を業として取り扱うことを禁じています。争いが起きている、または起きそうな案件で、相手方への請求や交渉を伴う場合は、この条文との関係を意識する場面です。
AIが関わる場合の読み方は、弁護士法72条とAIの契約書レビューで、法務省のガイドラインをもとに整理しています。そこで示された軸の一つが「事件性」です。内容証明の文案も、日常の業務連絡に近いものと、すでに紛争になっている請求とでは、同じ書式でも位置づけが違ってきます。
差出人本人がClaudeを使って自分の件の文案を作ることと、事業者が「Claudeで内容証明を作る代行サービス」を有償で提供することは、問われる条文が別になります。後者は、行政書士法第19条と弁護士法72条の両方を見る場面です。
Claudeの利用ポリシーが求めること
Anthropicの利用ポリシーには、法的な権利・義務・責任に関わる助言や、署名・提出用の法的書類の作成を「高リスクの用途」として扱う項目があります。該当する場合、次の二つが求められます。
- 資格のある人が、出力を実質的に確認し、修正する権限をもつこと
- 助言や判断の対象になる個人に、AIが使われたことを明確に伝えること
ポリシーによると、AIを使ったことは伝える必要がありますが、AnthropicやClaudeという名前、モデル名まで明かす必要はありません。ポリシーの文言は、個人のために署名や提出用の法的書類を用意する場面を指しています。
行政書士が依頼者のためにClaudeで文案を作る場合は、この項目の対象に入ってきます。行政書士自身が内容を精査し、依頼者にAIの利用を伝える運用になります。
Claudeに渡す情報と、渡す前の注意
内容証明の材料には、契約相手の氏名・住所や金額が含まれます。入力の前に、次の点を確認しておくと安心です。
- 相手方から届いた書面や、第三者の資料をアップロードして読ませるときは、プロンプトインジェクションに注意する。Claudeの公式ヘルプは、外部のファイルやWebサイトに紛れ込ませた指示で、Claudeがだまされる可能性を説明している。作業中はClaudeの動きを見て、想定外のデータ参照があれば止められる
- Claude for Wordを使う場合、公式ドキュメントは、人の確認なしに最終版を相手に送ること、訴訟関係書類や監査に関わる書類を検証なしで作ること、法務・財務の判断を置き換えることを推奨しないとしている。修正履歴モードなら、Claudeの編集がWordの標準的な校閲ウィンドウに履歴として残り、採用か却下かを自分で選べる
Claude for Wordの操作はClaude for Wordの使い方に、ファイル作成機能の設定はClaudeでファイル作成・編集ができる範囲とセキュリティ設定にまとめています。
よくある質問
文案の下書きだけでも、資格がないと頼めないのですか
本人が自分の件の文案を作る分には、第19条の要件(他人の依頼を受け報酬を得て業として)に当たりません。誰かに有償で作ってもらう場合に、その相手に資格が必要かどうかが問われます。
字数をClaudeに数えさせれば、郵便局で必ず受け付けてもらえますか
受け付けの可否は、郵便局が謄本を確認して決めます。Claudeの数え方は規則の解釈に左右されるので、窓口の確認を前提に、事前に整えておく位置づけです。
まとめ
内容証明の文案づくりは、事実の整理、請求内容の決定、下書き、謄本への整形、人の確認の順に進めると、Claudeの得意な部分(整理と整形)と人が担う部分(請求の判断と確認)が分かれます。日本郵便の条件では、字数・行数の制限が及ぶのは謄本で、内容文書には制限がありません。括弧や丸数字の数え方が独特なので、規則を渡して、数える作業はコードに任せるのが現実的です。
誰が作るかについては、差出人本人の件、行政書士が依頼を受けて作る件、紛争の代理や交渉を伴う件で、使う条文が変わります。争いが具体化している案件では、行政書士の業務範囲の外に出る部分が出てくるため、弁護士に相談する選択肢も並べて考えてください。