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Claudeで和解条項案の清算条項・口外禁止の抜けを点検する手順

Claudeで和解条項案の清算条項・口外禁止の抜けを点検する手順

和解条項案のWord・PDFと争点メモをClaudeに渡し、清算条項・口外禁止・履行期限の抜けを条項ごとの確認表にする手順です。民法と執行力の条文、ファイル上限も示します。

和解条項案の点検は、条項を1本ずつ「何を決めているか、何が書かれていないか」に分けて確認表にする作業です。ClaudeにWordかPDFの和解案と争点メモを渡せば、この表の下書きを作らせられます。

点検の対象は3つです。清算条項(債権債務の範囲)、口外禁止(守秘義務)、履行期限と不履行時の扱いです。ここが空いていると、和解のあとに「その請求は残っているのか」「誰に話してよいのか」「払わなかったらどうなるのか」で再び揉めます。

Claudeが出すのは点検の下書きです。和解してよいかの判断も、条項の最終文言も、当事者か代理人が決めます。

和解条項のどこが条文で決まり、どこが書き方次第か

和解は、当事者が互いに譲歩して争いをやめると約束することで効力が生じます(民法695条)。条項に何を書くかで、あとの権利関係が決まる契約です。

条文が決めている部分と、書かなければ空白になる部分を先に分けておくと、確認表の軸が定まります。

論点条文が決めていること書き方次第の部分
争いの終わらせ方条文が決めていること互いに譲歩して争いをやめる約束で効力が生じる(民法695条)書き方次第の部分何を争いとして終わらせるかの範囲
権利の移転・消滅条文が決めていること確証が得られたとき、権利は和解で移転・消滅したものとする(民法696条)書き方次第の部分清算条項の「本件」の範囲
履行の遅れ条文が決めていること確定期限なら期限到来から遅滞の責任(民法412条1項)書き方次第の部分期限を日付で書くか、条件付きにするか
賠償額の予定条文が決めていること違約金は賠償額の予定と推定される(民法420条3項)書き方次第の部分守秘義務違反の違約金額
解除条文が決めていること相当期間を定めた催告後に解除できる(民法541条)書き方次第の部分催告なしの解除や期限の利益喪失の定め

清算条項を定めた条文は民法にありません。「本件に関し債権債務がないことを確認する」という定型文は、当事者が合意で書き込む条項です。範囲を決めるのは文言です。

強制執行できるかは和解の形式で変わる

金銭の支払いを約束する和解では、「払われなかったときに強制執行できるか」が履行条項と並ぶ論点です。

民事執行法22条は、強制執行を行う根拠(債務名義)を列挙しています。確定判決と同一の効力を有するもの(7号)や、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述を記載した公正証書(5号)が含まれます。民事訴訟法267条は、裁判所書記官が和解について電子調書を作成しファイルに記録したときの記録は、確定判決と同一の効力を有すると定めています。

この列挙に、当事者が自分で作った和解書そのものは載っていません。私的な和解書で済ませるのか、裁判上の和解や公正証書にするのかは、条項の文言より前に決まる設計です。確認表の最初の行に「この和解の形式で、不履行時に強制執行へ進めるか」を置いておくと、あとから気づく手戻りを防げます。

Claudeに渡すもの — 和解案と争点メモ

渡す資料は2点です。

  • 和解条項案(WordかPDF)
  • 争点メモ(何を争っていて、何を譲り、何を譲れないか。テキストか短いWord)

アップロードできる文書はPDF、DOCX、TXT、RTFなどです。チャットへの添付は1ファイル500MBまで、1チャット20ファイルまで、PDFは1000ページまでです。プロジェクトのファイルは1ファイル30MBまでで、テキスト抽出が中心になります。

和解案の点検で効く細部が3つあります。

  • 100ページ以下のPDFは、文字と図表の両方が解析されます。101〜1000ページは文字のみです
  • DOCX、TXTなどPDF以外の文書は、文字だけが抽出されます。図として貼り込んだ署名欄や表の画像は読まれません
  • ページを指して質問するときは、文書に印字された番号でなくPDFビューアの番号を使います

和解案が画像として貼り込まれたスキャンPDFなら、そのまま渡すより、テキストに起こした版を並べて渡したほうが条項の取りこぼしを避けられます。

清算条項で抜けを見る4点

清算条項は「この和解で、本件に関する請求はすべて終わった」と宣言する条項です。広く書けば紛争の蒸し返しを防げますが、広すぎると自分の側の請求まで消えます。

観点

清算条項の確認観点

  • 「本件」が定義されているか

    事件名、発生日、対象の契約や取引で特定されているかを見ます。「本件」だけでは、どの範囲の請求が消えるのか読み手で変わります。

  • 除外したい請求が残っているか

    今回の和解に含めない請求(別の未払い、将来の請求、第三者への請求)は、清算の対象外と明記されているかを見ます。

  • 当事者と関係者の範囲

    請求の相手方に、会社だけでなく役員や従業員、保証人が含まれるのか。条項の主語が当事者本人だけなら、関係者には効きません。

  • 和解条項自体の義務は別扱いか

    「何らの債権債務がない」と書くだけでは、和解で新たに生まれた支払義務まで消えるように読めます。「本和解条項に定めるものを除き」と、例外を置けているかを見ます。

落とし穴

「一切の債権債務がない」だけを書いて、相手に有利な清算になる

和解で請求を放棄するのは自分の側も同じです。争点メモに「未払いの別件請求がある」と書いてあるのに、清算条項が対象を限定していなければ、その請求も一緒に消えます。Claudeには、争点メモの請求項目を一つずつ挙げさせ、清算の範囲に入るか外れるかを表にさせます。

口外禁止で抜けを見る点

口外禁止は、民法に定型の条文があるわけではなく、当事者の約束だけで成り立ちます。そのため、効力の範囲は基本的に書いてある文言で決まります。

確認項目抜けていると起きること
禁止の対象(和解の存在・金額・経緯のどこまでか)抜けていると起きること金額だけ守ったつもりが、経緯を話して違反と言われる
例外(弁護士・税理士・家族、裁判所や行政への提出)抜けていると起きること必要な相談や法令上の説明まで、禁止の文言に当たる
期間抜けていると起きること期間の定めがなければ、いつまで続くのかが読めない
違反時の扱い抜けていると起きること違約金の額や、差止めの定めがなく、実効性が弱い
当事者の関係者抜けていると起きること従業員や家族が話した場合の責任が不明

違約金は、民法420条3項で賠償額の予定と推定されます。金額を書くなら、「実際の損害を問わずこの額」とする意図なのかを、争点メモに添えてClaudeに伝えておくと、指摘が具体的になります。

履行期限と不履行時の扱いを見る

履行条項では、期限が日付で確定しているかを最初に見ます。確定期限があれば、期限の到来した時から遅滞の責任が生じます(民法412条1項)。期限を定めなければ、履行の請求を受けた時からです(同条3項)。「速やかに」「相当期間内に」と書かれた条項は、確定期限になりません。

次に見るのは、払われなかったときの流れです。

  • 分割払いなら、1回でも滞ったとき残額を一括で請求できる定め(期限の利益喪失)があるか
  • 遅延損害金の率が書かれているか
  • 解除できるか。催告が必要になるのか(民法541条は相当期間を定めた催告を前提にします)
  • 振込手数料はどちらが負担するか

債務不履行による損害賠償の請求(民法415条)も、条項に書いていなければ一般の規定に戻ります。書く・書かないの選択を、当事者が意識して決めたかを確認します。

Claudeに点検させる手順

手順

点検の流れ

  1. 1

    資料を渡す

    和解条項案と争点メモを添付します。個人名、口座番号、住所は、点検に不要な範囲を伏せ字にしてから渡します。

  2. 2

    条項を1本ずつ分解させる

    各条項について「誰が誰に何をするか」「期限」「条件」を、表にさせます。書かれていない欄は「記載なし」と出させます。

  3. 3

    争点メモと突き合わせる

    争点メモの請求項目が、清算条項の内側か外側かを判定させます。判断できないものは「判断できない」として残させます。

  4. 4

    不足する条項を挙げさせる

    口外禁止の例外、不履行時の扱いなど、本稿の確認観点に沿って、足りない条項を「追記候補」と「追記しないときの影響」の2列で出させます。

  5. 5

    人が決める

    追記候補を採るかどうかは、当事者か代理人が決めます。Claudeの出力は、決めるための材料です。

指示文の例を示します。

添付の「和解条項案.docx」と「争点メモ.txt」を点検してください。
 
1. 条項ごとに「義務の主体・内容・期限・条件」を表にしてください。
   書かれていない欄は「記載なし」と書いてください。
2. 争点メモの請求項目ごとに、清算条項の対象に入るかを判定してください。
   判断できないものは「判断できない」と書き、理由を添えてください。
3. 口外禁止について、対象・例外・期間・違反時の扱いの4点が
   条項に書かれているかを確認してください。
4. 履行期限が確定期限か、不履行時の扱い(期限の利益喪失・遅延損害金・
   解除)が書かれているかを確認してください。
5. 法的な結論は出さず、条文を挙げるときは条番号と、条文のどの部分を
   根拠にしたかを併記してください。

5番の指定が重要です。条番号と根拠の箇所を併記させておけば、あとで条文と照合する作業が短くなります。

確認表の出力はこの形になる(例示)

次のような和解条項案(架空の例)を渡したとします。

第1項 甲は乙に対し、解決金として金150万円の支払義務があることを認め、
      令和8年11月30日限り、乙の指定口座に振り込んで支払う。
第2項 甲及び乙は、本和解条項に定めるもののほか、本件に関し、
      何らの債権債務がないことを相互に確認する。
第3項 甲及び乙は、本和解の内容を第三者に口外しない。

返ってくる確認表は、例えば次のような形になります(例示であり、Claudeの実際の出力そのものではありません)。

条項点検結果追記候補
第1項点検結果期限は確定期限。振込手数料の負担、不履行時の扱いは記載なし追記候補手数料負担、期限の利益喪失、遅延損害金
第2項点検結果「本件」の定義なし。争点メモの「別件の未払い」が範囲に入るか判断できない追記候補「本件」の特定、別件の除外
第3項点検結果対象は「内容」のみで、経緯の扱いは記載なし。例外・期間・違反時の扱いは記載なし追記候補例外、期間、違約金

第2項の例外句「本和解条項に定めるもののほか」は、和解で生まれた義務が清算で消えないことを示す書き方です。こうした良い点も、表に「問題なし」として挙がっているかを確かめます。

点検結果を扱うときの注意

法律上の判断をClaudeの出力だけで確定させない運用にします。条番号の引用は、e-Govの法令検索で条文の文言と一致するかを自分で確かめます。

扱う書類は、当事者の紛争の内容そのものです。Claudeへの入力が守秘義務やNDAに触れないかは、契約の種類で変わります。商用条件での構成の考え方はClaudeを法務で使うときの秘匿特権と守秘に、弁護士が依頼者の情報を入力する場合の条文はClaudeに相談内容を入力しても弁護士の守秘義務は保てるかにあります。顧客や取引先の資料を渡す前の契約確認はコンサルがClaudeに顧客資料を渡す前のNDA点検表が使えます。

他人の紛争について、報酬を得て和解条項を点検・作成する場合は、弁護士法72条との関係が論点になります。線引きは弁護士法72条とAIの契約書レビューにあります。和解の前段で相手に送る書面は、内容証明の文案をClaudeで作るの記事が手順を示しています。

まとめ

和解条項案の点検は、清算条項、口外禁止、履行期限の3点を、条項ごとの確認表に落とす作業です。Claudeに向くのは、書かれていない欄の洗い出しと、争点メモの請求項目との突き合わせです。

最初に決めるのは、和解の形式です。私的な和解書か、裁判上の和解か、執行を受け入れる旨の文言を入れた公正証書かで、不履行時に進める手続が変わります。この選択は、条項の細部を詰める前に当事者と代理人が決める事項です。そのあとで、Claudeに確認表を作らせ、追記候補を採るかどうかを人が判断します。

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