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Claudeの出力をモデル学習に使ってよいか — 許可される用途と禁止される用途

Claudeの出力をモデル学習に使ってよいか — 許可される用途と禁止される用途

Claudeの出力は利用者のものですが、Anthropicの書面許可なしに競合するAIモデルの学習へ使うことは規約で禁止されています。許可される特化型モデルの例と禁止の線引きを示します。

Claudeの出力は利用者のものです。ただし、その出力でAIモデルを学習させる用途には条件があります。Anthropicの書面許可なしに、Anthropicのモデルと競合するモデルを学習・開発することは禁止です。競合しない特化型のモデルなら、出力を学習に使えます。

この記事では、許可される用途と禁止される用途の線引き、プラン別の規約の書きぶり、禁止の理由として示されている内容をまとめます。

出力は誰のものか — 所有と学習利用は別の話

Anthropicのヘルプは冒頭で、Claudeを使うと入力から生成された出力を利用者が所有すると述べています。同じ段落の直後に、出力でAIモデルを学習・開発することには重要な制限があるとも書かれています。

ヘルプは、この制限をAI業界で標準的な慣行だと位置づけています。また、対象はAIモデルの学習・開発全般ではなく、Anthropicの書面許可を得ていない利用です。許可があれば話は変わりますが、その手続きは後の節で触れます。

所有権と利用制限は矛盾しません。所有権は出力そのものへの権利の話で、制限はサービスの使い方に対する契約上の条件です。規約の側から見ると、次のように分かれています。

契約出力の権利モデル学習に関する条項
商用規約(API・Team・Enterprise系)出力の権利顧客が出力を所有し、Anthropicは出力に持つ権利を顧客へ譲渡するモデル学習に関する条項競合する製品・サービスの構築(競合AIモデルの学習を含む)のためにサービスへアクセスすることを禁止
消費者規約(Free・Pro・Max)出力の権利Anthropicが出力に持つ権利があれば、それを利用者へ譲渡するモデル学習に関する条項競合する製品・サービスの開発(AI・機械学習モデルの開発・学習を含む)にサービスを使うことを禁止
利用ポリシー(AUP)出力の権利—モデル学習に関する条項入力と出力を使ったAIモデルの学習(モデルスクレイピングや蒸留)を、事前承認なしに行うことを禁止

どの契約でも、書き方は違っても同じ方向を向いています。出力の権利は利用者へ渡す。ただし、Claudeで競合モデルを作ることは認めない。

商用規約の所有条項には「顧客の規約遵守を条件として」権利を譲渡するという前置きがあります。消費者規約にも同じ趣旨の条件が付いています。規約に違反した状態では、出力の権利が利用者へ渡る前提そのものが崩れる書き方です。

何ならやってよいのか — 許可される用途

ヘルプは、Anthropicのモデルと競合しないモデルの学習には出力を使えるとしています。例として挙げられているのは、次の特化型ツールです。

  • 感情分析ツール
  • コンテンツ分類システム
  • 要約ツール
  • 情報抽出ツール
  • セマンティック検索ツール
  • 異常検知ツール

いずれも特定の作業だけをこなす小さなモデルで、汎用的に文章を書くモデルではありません。Claudeに大量のレビュー文へラベルを付けさせ、そのラベル付きデータで自社の感情分析モデルを学習させる、といった使い方がこの範囲に入ります。

学習とは別に、出力をアプリケーションに組み込む使い方も明示的に許されています。ヘルプは次の用途を挙げています。

  • 自社製品の機能をClaudeの出力で動かす
  • 顧客向けのコンテンツを生成する
  • データを分析して構造化する
  • 社内のワークフローや生産性を改善する

つまり、Claudeを使って何かを作ること自体は制限されていません。制限されるのは、作ったものがAnthropicの製品と競合する場合です。

何がやってはいけないのか — 禁止される用途

ヘルプは、競合するモデルの学習に出力を使うことを規約が認めていないとし、第三者が同じことを試みるのを支援することも違反だとしています。禁止される用途の例は次の4つです。

  • 汎用チャットボット
  • 自由形式のテキスト生成を目的としたモデル
  • 出力をモデルの学習ターゲット(教師データ)として使うこと
  • 学習手法のリバースエンジニアリング

許可される例と並べると、線の引かれ方が見えてきます。

観点許可される側の例禁止される側の例
モデルの役割許可される側の例分類・抽出・検索・異常検知など特定タスク禁止される側の例汎用チャットボット、自由形式のテキスト生成
出力の扱い許可される側の例学習データを作る道具の一つ禁止される側の例出力そのものを教師データにして別モデルを作る
Anthropicとの関係許可される側の例競合しない禁止される側の例競合する

線引きの軸は「競合するか」です。

同じ出力データでも、作るモデルが特化型なら許可側、汎用のテキスト生成なら禁止側です。判定の軸は出力の使い道ではなく、できあがるモデルが競合するかどうかにあります。境界線上のケースに個別の線を引いた記述は、ヘルプにはありません。

蒸留とは何か、なぜ問題視されるのか

蒸留(distillation)は、既存の大きなモデルの出力を使って、別のモデルを学習させる手法です。ヘルプの文中でも「蒸留されたモデル」という言い方が使われています。

禁止の理由として、ヘルプは2つを示しています。

理由の一つは安全性です。Anthropicはリリース前のテストや複数の安全層、継続的な挙動監視に投資している、と説明しています。出力から新しいモデルをAnthropicの監督なしに学習させると、Claudeの安全対策が引き継がれず、有害・危険なAIシステムになるおそれがあります。さらに、蒸留されたモデルがどう運用されているかはAnthropicから見えず、悪用の監視も防止もできない、というのがヘルプの主張です。

もう一つは競合です。出力で競合モデルを学習させる行為は、Anthropicのインフラと投資を使って直接の競合を作ることになる、と説明されています。ほかのソフトウェア・サービス提供者と同様に、自社の製品を損なう使われ方は想定しない、という立場です。

こうした問題意識は、Anthropicの政策面の発信にも表れています。オープンウェイトモデルに関する立場表明では、一律禁止には反対しつつ、産業規模の蒸留への政策介入を支持する対策の一つに挙げていました。詳しくはオープンウェイトモデルに関するAnthropicの立場にまとめています。利用規約の禁止は個々の利用者との契約、政策提言は国レベルの話で、次元は違いますが、蒸留を問題視する方向は一致しています。

プランごとの規約の書きぶり

先の表のとおり、禁止条項は契約ごとに文言が異なります。読み比べると、強調点の違いが分かります。

商用規約の使用制限は、競合する製品・サービスを構築するためにサービスへアクセスすることを禁じ、その例として競合AIモデルの学習とサービスの再販を挙げています。リバースエンジニアリングや複製の禁止も同じ条項にあり、第三者による同様の行為を支援することも対象です。

消費者規約は、サービスと競合する製品・サービスの開発を禁じ、AI・機械学習のアルゴリズムやモデルの開発・学習を例に挙げています。サービスの再販も同じ箇所にあります。消費者規約は、他人がサービスを使うのを助ける行為も禁止対象にしています。

AUPは、プラットフォームの濫用を禁じる項目の中に、入力と出力を使ったAIモデルの学習を置いています。例として挙げられているのはモデルスクレイピングとモデル蒸留で、いずれも事前承認なしの場合が対象です。AUPの全体像はAnthropicのAcceptable Use Policyとはで整理しています。

3つの文書に共通しているのは、「Anthropicの許可があれば例外になりうる」という含みです。ヘルプは「書面許可なしに」、AUPは「事前承認なしに」、商用規約は「Anthropicが明示的に承認した場合を除き」という表現を使っています。許可を得る具体的な手続きは、ヘルプにも規約にも書かれていません。競合モデルの学習を検討している場合は、規約の一般条項ではなく、Anthropicとの個別の合意が前提になります。

学習に使うデータの問題とは分けて考える

「出力をモデル学習に使う」という言葉は、2つの別の話に使われがちです。

  • 利用者が、Claudeの出力で自分のモデルを学習させてよいか(この記事の主題)
  • Anthropicが、利用者の入力・出力でClaudeを学習させてよいか(入力と出力の学習利用)

後者は、プランによって扱いが異なります。商用規約には、Anthropicはサービス上の顧客コンテンツでモデルを学習しないと定めた一文があります。コンシューマープランの学習設定の変更はClaude Consumer Terms改定で、組織側のデータの扱いはClaude組織のデータ所有権は誰にあるかで扱っています。

方向が逆であることを押さえておくと、「Anthropicが学習に使わないのだから、こちらも自由に学習に使える」という取り違えを避けられます。前者はAnthropicから利用者への約束で、後者は利用者に課された条件です。片方が緩いことは、もう片方の緩さを意味しません。

また、日本の著作権法30条の4がAI学習をどう扱うかは、規約とは別のレイヤーの話です。法律が許す範囲と、契約で合意した制限は独立しています。前者は著作権法30条の4はClaudeのAI学習利用をどう見るかで扱っています。

判断の目安 — 自社の利用がどちらに寄るか

ここまでの内容を、実務で出やすいケースに当てはめてみます。あくまで公式の記述から読み取れる範囲の整理で、法的な判断ではありません。

ケース傾向根拠となる記述
Claudeでラベル付けしたデータで感情分析モデルを作る傾向許可側根拠となる記述感情分析ツールが許可例に含まれる
社内文書の分類器の学習データをClaudeで作る傾向許可側根拠となる記述コンテンツ分類システムが許可例に含まれる
Claudeの出力を製品機能に組み込む傾向許可側根拠となる記述出力のアプリ組み込みが明示されている
Claudeの出力を大量に集めて汎用チャットボットを作る傾向禁止側根拠となる記述汎用チャットボットが禁止例に含まれる
出力を教師データにして自由形式の文章生成モデルを作る傾向禁止側根拠となる記述自由形式のテキスト生成モデルと、出力を学習ターゲットにすることが禁止例に含まれる
他社の学習を手伝うためにClaudeの出力を渡す傾向禁止側根拠となる記述第三者による同様の試みの支援も違反と明記されている

判断に迷うのは、特化型のつもりが結果的に汎用に近づくケースです。たとえば、分類タスク用に作ったはずのモデルが、後から回答生成にも使われる場合が考えられます。この場合の扱いはヘルプに書かれていないので、判断がつかないときの確認先はAnthropicです。

違反した場合に起きうること

違反時の対応について、AUPは、違反を把握した場合にアクセスの制限、停止、終了を行うことがあると述べています。商用規約にも、使用制限条項への違反が疑われる場合にサービスの利用を一時停止できる旨の条項があります。

個別の事案にどの措置が取られるかは、規約には書かれていません。学習用データの収集をAPIで大量に回している場合は、規約上の位置づけとあわせて、自社の利用実態は規約と突き合わせて定期的に見直す対象になります。

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