ClaudeとQontoを連携する方法 — 権限・SCA・読み取り専用の使い分け
Qonto公式のMCPサーバーをClaudeに接続する手順です。単一組織と複数組織のエンドポイントの違い、接続できるロール、SCAが挟まる操作、書き込みを任せる前の絞り方をまとめます。
Claude Qonto連携とは何か
Qonto連携は、法人向け銀行サービスのQontoが提供するMCPサーバーを、Claudeにつなぐ仕組みです。取引、明細書、請求書、見積書、クライアント、カード、承認待ちのリクエストといった口座まわりのデータを、画面を開かずに自然文で引けます。読むだけでなく、請求書の作成やカードの発行も頼めます。
Connectorsディレクトリでは「Anthropic verified」付きで掲載され、追加は2026年6月です。サインインは必須で、カテゴリは「Financial services」。接続先のURLは https://mcp.qonto.com/mcp です。ツールは52個あり、一覧の先頭には approve_request や change_card_status、create_client_invoice のような書き込み系が並びます。
Connector全般の仕組みはClaude Connectorsの解説にあります。同じ財務系で、閲覧中心のコネクタの例はClaude Carta連携が参考になります。
接続前に決める2つのこと
最初に決めるのは、使うエンドポイントとQonto側のロールです。この2つで、できることが大きく変わります。
単一組織か、複数組織か
Qontoは2種類のURLを用意しています。
| 単一組織 | 複数組織 | |
|---|---|---|
| URL | 単一組織https://mcp.qonto.com/mcp | 複数組織https://mcp.qonto.com/multi-organization/mcp |
| 同意の単位 | 単一組織接続ごとに1組織 | 複数組織1回の同意で複数組織 |
| ツール | 単一組織読み取りと、選ばれた書き込み | 複数組織読み取り専用 |
| 組織の指定 | 単一組織不要 | 複数組織organization_id が必須 |
ディレクトリからの追加で入るのは、単一組織のほうです。複数の法人を持つ人が横断で集計したいときは、カスタムコネクタで複数組織のURLを足します。2つは独立していて、同じクライアントに並べて入れても、片方の取り消しがもう片方に響きません。
複数組織のほうは読み取り専用なので、SCA(強力な本人認証)が走ることもありません。分析だけに使うなら、こちらが安全側の選択です。
接続できるロール
接続できるかどうかは、Qontoでのロールで決まります。
- オーナー、管理者(admin)、経理担当(accountant)は、そのまま接続できる
- マネージャーと従業員は、オーナーか管理者がQonto MCPを有効にしてから
有効化はQontoのWebアプリで、左のサイドバーから「Qonto AI」を開き、「Qonto MCP」パネルの「Give managers and employees access to Qonto MCP」をオンにします。このパネルが見えるのはオーナーと管理者だけです。反映には数分かかるので、再インストールではなく再試行を促すのが正解です。
落とし穴がひとつあります。許可されていないロールでも、OAuthは最後まで成功し、Claude側の接続は正常に見えます。それでいてQontoのツールは1つも出ず、呼び出しは断られます。「つながっているのにツールが空」なら、まずロールを疑います。
Claudeに接続する手順
Claude.aiとデスクトップアプリ
コネクタはClaudeアカウントに紐づくので、Webで追加すればデスクトップでも使えます。利用にはPro、Max、Team、Enterpriseのいずれかのプランが前提です。
ディレクトリから追加する流れ
- 1
コネクタを開く
claude.ai/customize/connectorsで「Browse connectors」を押し、Qontoを検索します。 - 2
Connectをクリック
Qontoのコネクタページで「Connect」を押します。
- 3
QontoでOAuthを承認
ブラウザーが開きます。Qontoにサインインし、接続する組織を選び、Claudeが求める権限(スコープ)を確認して承認します。
- 4
新しい会話で確かめる
コンポーザーのコネクタ欄でQontoが有効なのを確認し、「直近5件の取引を出して」と頼みます。初回は
list_transactionsの実行許可を求められます。
APIキーも組織IDも、手でコピーする必要はありません。承認が終わるとコネクタ一覧のQontoに緑の点が付きます。
ディレクトリに見当たらないときは「Add custom connector」を押し、名前を「Qonto」、URLを https://mcp.qonto.com/mcp にして、同じ承認に進みます。複数組織用は名前を「Qonto (all organizations)」にしておくと、一覧で見分けられます。
Claude Codeに追加する
Claude Codeでは、リモートMCPサーバーとして1行で登録します。
claude mcp add --transport http qonto-mcp https://mcp.qonto.com/mcp登録したら、セッション内で /mcp を開き、qonto-mcp の横の「Authenticate」を押します。ブラウザーでQontoのOAuthが始まります。確認は「承認待ちのリクエストを見せて」のような読み取りから始めると安全です。qonto-mcp という名前はローカルのもので、変更できます。
設定は端末ごと、ユーザーごとに保存されます。チームで共有するときは、プロジェクト直下の .mcp.json に書きます。複数組織用を並べる場合は、キーを分けます。
{
"mcpServers": {
"qonto": {
"type": "http",
"url": "https://mcp.qonto.com/mcp"
},
"qonto-multi-org": {
"type": "http",
"url": "https://mcp.qonto.com/multi-organization/mcp"
}
}
}Claude CodeでMCPを再接続するコマンドは、認証が切れたあとの立て直しで役に立ちます。
52個のツールを役割で分ける
ディレクトリは52個のツール名を載せています。Qonto側のドキュメントは、それを業務の領域で次のように整理しています。
| 領域 | 読む | 書く |
|---|---|---|
| 取引・明細書 | 読む一覧、絞り込み、月次明細書(署名付きの短命URL) | 書く添付ファイルのアップロード |
| カード | 読む一覧とメタデータ | 書く仮想・物理カードの作成、ロック解除、紛失・盗難の登録、廃棄 |
| カード申請・複数振込申請 | 読む承認待ちの一覧 | 書く作成、却下。承認は承認者がWebアプリで行う |
| 請求書 | 読む顧客向け、仕入先向けの一覧と詳細 | 書く作成、更新、確定、入金済みへの変更、メールや電子請求網での送付、下書きの削除 |
| 見積書・クレジットノート | 読む一覧と詳細 | 書く作成、更新、送付、クレジットノートの発行 |
| 支払いリンク | 読む一覧と、回収された支払い | 書く作成 |
| クライアント・商品 | 読む一覧、参照 | 書く作成、更新、削除 |
| メンバー・チーム | 読むメンバー、チーム、ラベル | 書くメンバーの招待、チームの作成 |
名前から用途が読めるものも多くあります。ディレクトリの一覧に見えるものでは、create_client_invoice、create_credit_note、change_supplier_invoice_status、get_card_iframe_url などです。approve_request も一覧に入っていますが、名前だけで挙動の説明はありません。Qonto側の説明は「承認は承認者がWebアプリで行い、アシスタントは承認ページへのリンクを返す」です。承認まわりは、Claudeの返答を鵜呑みにせず、Qontoの画面で状態を確かめるのが無難です。
使えないもの
MCPの範囲は、Business APIの一部に絞られています。次の操作は含まれません。
- 受取人へのSEPA送金と、国際送金
- SEPAダイレクトデビット
- Webhook、決済端末、オンボーディング
- 支払いリンクの無効化
「Claudeに振込まで任せられるか」と考える人に効く線引きです。Qontoの利用条件も、支払いの開始のような機微な操作は、この接続では使えないと明記しています。一方で、複数振込の「申請」までは作れます。署名は承認者がSCAで行います。
業務での使いどころ
Qontoのドキュメントは、LLMが得意なのは手元にデータが載ってからの集計だと位置づけています。例として、月ごとの支出をラベル別に比べる、請求が遅い仕入先を探す、定期的な出金から翌月の資金繰りを見積もる、といった頼み方が挙がっています。裏では list_transactions や list_supplier_invoices を呼び、集計は会話の中で行います。
実務での頼み方は、読む仕事と書く仕事で分けると事故が減ります。
読む仕事の例:
- 先月の1,000ユーロ超の取引のうち、添付書類がないものを一覧にしてほしい
- 60日以上入金のないクライアントを出してほしい
- 申請者ごとに承認待ちのリクエストをまとめてほしい
書く仕事の例:
- ACME宛てに「6月分コンサルティング」の請求書(1,200ユーロ+VAT)を作ってほしい
- 「広告」という名前で、月500ユーロ上限、オンライン決済のみの仮想カードを作ってほしい
- 仕入先請求書INV-3382を支払い済みにしてほしい
書く仕事のうち、請求書の作成は下書きから始めて、確定と送付は人が画面で見てからにする運用が考えられます。作成した請求書の番号と金額を、Claudeに表で読み返させてから送る手もあります。
書き込みを任せる前に絞る
Claude側とQonto側の両方に歯止めがあります。順に見ます。
Qonto側が止める線
- ツールは常に、接続した本人として実行される。ロールとプランを超える操作はできない
- 同意時に与えたスコープが上限。広げるなら再承認が必要
- PSD2で機微とされる操作(一部のカード作成など)は、Qontoのモバイルアプリで本人認証を求められる。Claudeは承認を促し、済んだら続きに進む
- リクエストの承認は、Webアプリの承認者が行う
見せられるツールもロールで変わります。閲覧専用のユーザーは書き込みツールが拒否されます。同じ組織につないだ2人でも、見えるツールが違うことがあります。
Claude側でツールを絞る
コネクタの各ツールは、初回の利用時に「Allow once」か「Allow always」を選びます。書き込み系で「Allow always」を選ばないだけでも、歯止めになります。
Claude Codeでは、権限ルールでツール単位に止められます。MCPツールの指定は mcp__<サーバー名>__<ツール名> の形で、末尾にワイルドカードも使えます。サーバー名を qonto-mcp で登録した場合の例です。
{
"permissions": {
"allow": [
"mcp__qonto-mcp__list_*",
"mcp__qonto-mcp__get_*"
],
"deny": [
"mcp__qonto-mcp__delete_client",
"mcp__qonto-mcp__delete_client_invoice",
"mcp__qonto-mcp__delete_quote",
"mcp__qonto-mcp__create_card"
]
}
}このように、一覧と参照は自動で通し、削除とカード作成は拒否します。ツール名はディレクトリの一覧で確かめたものだけを書きます。残りの書き込み系は、既定どおり実行のたびに確認が出ます。設定済みのルールは、セッション内の /permissions で見直せます。
分析だけなら読み取り専用にする
月次の集計や資金繰りの見積もりしかしないなら、複数組織のエンドポイントを使う手があります。書き込みツールがそもそも載っていないので、誤った操作の入り口が消えます。法人が1つでも、このURLを使って構いません。
データの行き先を理解しておく
Qontoのドキュメントは、データの扱いをはっきり分けています。
- Qonto MCPサーバーは会話の内容や業務データを保存しない。ツール呼び出しを中継するだけで、残るのはHTTPメソッド、ツール名、応答ステータス、遅延、匿名化された組織識別子といった運用ログ
- 会話とツールの入出力を保持するのは、Claude側。保持や学習利用の扱いは、クライアントであるClaude側の規約に従う
- 一度Claudeに渡ったデータは、接続を切っても取り戻せない
承認画面で「Authorize」を押すと、利用条件への同意とアカウントデータの共有に同意したことになります。この条件には、職業上の秘密(professional secrecy)の解除への同意も含まれています。会計士や外部の担当者にClaudeを使わせるときは、この点を先に社内で確認します。
明細書や添付ファイルの署名付きURLは、持っている人なら誰でも有効期間内は開けます。画面共有やログへの貼り付けでは、そのまま見せない扱いが必要です。レート制限はBusiness APIと共通で、「2024年以降の全取引」のような依頼は、日付や口座で区切ると通りやすくなります。
つながらないとき、数字が合わないとき
| 症状 | 見る場所 |
|---|---|
| ツールが空 | 見る場所ロールが許可対象か。マネージャー・従業員はオーナーか管理者の有効化待ち |
| URLの誤り | 見る場所末尾が /mcp か。末尾が欠けると黙って失敗するクライアントがある |
| OAuthの画面が終わらない | 見る場所ポップアップブロッカー、ヘッダーを削るプロキシ、別タブでの再試行 |
| 認証エラーが続く | 見る場所Qontoの「connected apps」に承認が残っているか。取り消されたトークンが原因のことがある |
forbidden や scope missing | 見る場所招待やカード操作などのオーナー・管理者限定の操作ではないか。後から増えたツールは再承認が必要 |
| SCAが届かない | 見る場所モバイルアプリの通知設定。保留中の確認はアプリを開くと見える。期限切れならツールの再実行 |
複数組織で organization_id がない | 見る場所単一組織のサーバーに承認されている。カスタムコネクタで完全なURLを入れ直す |
切断するときは、2か所を消します。Claude側はコネクタの「Remove」、Qonto側は「connected apps」の取り消しです。両方やって初めて完全に切れます。
まとめ
Qonto連携の要は、できることよりも、止まる場所を先に決めておくことです。ロールとSCA、承認者の画面という3段の歯止めがQonto側にあり、Claude側ではツール単位の許可と読み取り専用のURLが使えます。
最初の一手は、読み取りの質問を3つ試すことです。慣れてから請求書の下書きを作らせ、確定と送付だけは画面で見てから行います。振込そのものがMCPの外にあることも、運用の前提にしてください。