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税務調査の想定問答をClaudeで準備する — 勘定科目ごとに根拠資料との整合を確認

税務調査の想定問答をClaudeで準備する — 勘定科目ごとに根拠資料との整合を確認

税務調査の事前通知を受けたあと、過去の申告書・総勘定元帳・契約書をClaudeのProjectsに置き、勘定科目ごとに質問されやすい点と根拠資料の有無を一覧にする社内準備の手順です。

税務調査の事前準備でClaudeに任せるのは「勘定科目ごとの突き合わせ」

事前通知の電話を受けたら、経理担当者が最初にやるのは資料を揃えることです。ただ、総勘定元帳の科目ごとに「何を聞かれそうか」「それを裏づける契約書や請求書は手元にあるか」を一人で洗い出すのは、数日がかりの作業になります。

この洗い出しにClaudeのProjectsが向いています。過去の申告書、総勘定元帳、契約書をプロジェクトの資料として置き、勘定科目ごとに「質問されやすい点」「根拠資料」「資料の有無」を一覧にさせる。それを担当者が原本と見比べて、足りない書類を調査の日までに探す。この記事の手順は、ここまでを社内の準備作業として組み立てます。

Claudeが出した一覧は、調査担当者の質問を予言するものではありません。資料の抜けを見つけるための下書きです。税務署への回答や税務代理にあたる部分は、税理士の領分として切り分けます。顧問先データを外部サービスに渡す際の守秘義務は税理士のClaude利用と守秘義務にあり、ここでは自社の資料を自社で整える場面に絞ります。

事前通知で決まる範囲に合わせて、準備の対象を絞る

準備の最初の仕事は、対象の絞り込みです。国税庁の「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」によると、実地の調査では原則として、調査を行う旨、開始の日時・場所、調査の対象となる税目・課税期間、調査の目的などが電話等で通知されます。

事前通知の方法は法令に定めがなく、原則は電話による口頭の連絡です。希望しても書面は交付されません。通知を受けたその場で、税目・課税期間・目的をメモしておく必要があります。

通知で聞く項目準備への使い方
税目(法人税・消費税など)準備への使い方突き合わせる資料の種類を決める
課税期間準備への使い方Projectsに入れる年度を決める
調査の目的(申告書の記載内容の確認など)準備への使い方質問されやすい論点の見当をつける
開始日時・場所準備への使い方逆算して準備の期限を置く

FAQには、調査の開始日時について都合が悪い日があれば事前通知の際に申し出られること、通知後も業務上やむを得ない事情があれば変更を協議してもらえることが載っています。準備が間に合わないと分かった時点で、担当者へ早めに相談する選択肢があります。

通知された年度の外にも、資料を求められることがある

もう一点、課税期間を絞るときの注意があります。FAQの問9によると、調査担当者は、通知された年度の申告内容を確認するために必要があると判断したとき、その年度以外の帳簿書類等の提示をお願いすることがあります。例として、減価償却費の計上額を確かめるために、資産の取得年度の帳簿を見る場合が挙がっています。

これは通知した年度以外の調査を行っているわけではなく、あくまで通知した年度の調査の一部とされています。したがってProjectsには、調査対象の年度だけでなく、固定資産や長期の契約の起点になる年度の資料も入れておくと、突き合わせの抜けが減ります。固定資産台帳側の整合は固定資産台帳と減価償却費の整合チェックをClaudeで行う手順が詳しいです。

提示を求められうる範囲は、帳簿に限らない

FAQの問7では、法人税の調査の過程で、代表者名義の個人預金について事業との関連が疑われる場合に、その通帳の提示・提出を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれると考えられる、と説明されています。会社の帳簿と個人の通帳の境目にある取引(役員への貸付金、立替払いなど)は、資料の置き場所を決めておく価値があります。

電磁的記録で保存している資料は、提示ならディスプレイ上で調査担当者が確認できる状態にすれば足ります(問5)。保存形式や検索要件など電子帳簿保存法の側の準備は、スキャナ保存の要件をClaudeで点検する方法と領収書や電子取引データの保存の記事を参照してください。

Projectsに入れる資料と、入れない資料

ClaudeのProjectsは、独自のチャット履歴と知識ベースを持つ作業スペースです。資料をアップロードし、プロジェクトの指示(instructions)を決めておくと、そのプロジェクト内のチャットでClaudeが資料を踏まえて答えます。Projectsは無料アカウントを含む全ユーザーが使えます。無料で作れるプロジェクトは5つまでです。

置く資料

調査準備の突き合わせに使う資料は、次の4種類に分けると管理しやすくなります。

区分例ファイル名の付け方の例
申告書類例決算書、法人税申告書と別表、消費税申告書ファイル名の付け方の例申告_2025期_決算書.pdf
帳簿例総勘定元帳、補助元帳、固定資産台帳ファイル名の付け方の例帳簿_2025期_総勘定元帳.csv
契約書例取引基本契約、賃貸借契約、業務委託契約ファイル名の付け方の例契約_A社_業務委託_2024.pdf
証憑の一覧例請求書・領収書の台帳、稟議書の一覧ファイル名の付け方の例証憑_2025期_請求書一覧.csv

ファイル名に期と種類を入れておくと、Claudeが「どの資料のどの部分か」を答えるときの出典表示が読みやすくなります。契約書や請求書の原本の画像をそのまま全部入れる必要はありません。論点になりやすい契約だけを選び、金額・期間・解約条件が読み取れる状態で置きます。ファイル形式とサイズの上限はClaudeファイル上限の一覧で経路別に確認できます。

置かない資料

次の情報は、突き合わせに必要な範囲を超えるため、入れないか、入れる前に伏せます。

  • マイナンバー、従業員の住所・口座番号
  • 取引先の担当者個人の連絡先
  • 調査と無関係な年度・部門の資料

プランによって入力データの扱いが異なります。会社の経理データをどのアカウントで扱うかは、先に決めておきます。この判断の材料はClaudeに個人情報を入力する前に確認する一次資料にまとめてあります。

資料が増えたときの検索の仕組み

有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)では、プロジェクトの知識がコンテキストの上限に近づくと、RAG(検索拡張生成)モードが自動で有効になります。容量が最大10倍まで広がり、Claudeは質問に関連する部分を検索して使います。無料プランにこの拡張はありません。

RAGが働くと、全資料を読み通しているわけではなく、関連する箇所の検索結果で答えている状態になります。複数年度の元帳を入れた場合に、特定の仕訳を取りこぼす可能性があるということです。次の手順で、質問を勘定科目ごとに分ける理由はここにもあります。RAGの挙動はClaude ProjectsのRAG検索の仕組みと全文投入との違いで説明しています。

想定問答と資料の整合を確認する手順

手順

事前通知から整合表の完成まで

  1. 1

    通知内容と対象年度をメモする

    税目・課税期間・目的を記録し、突き合わせる年度を決めます。

  2. 2

    Projectsを作って資料を置く

    調査用に新しいプロジェクトを作り、申告書類・帳簿・契約書を種類別の名前で置きます。

  3. 3

    指示文を書く

    資料にないことは推測しない、根拠資料を必ずファイル名で示す、という2点を指示に入れます。

  4. 4

    勘定科目ごとに整合表を作らせる

    科目を1つずつ指定し、質問されやすい点と根拠資料の有無を表にさせます。

  5. 5

    Claudeの数字を元帳と照合する

    表に出た金額と日付を、手元の集計と照らします。

  6. 6

    「資料なし」の行を担当者が探す

    資料が見つからない行は、原本を探すか、説明の担当者を決めます。

手順3: 指示文は「推測しない」と「出典を示す」に絞る

プロジェクトの指示は、Claudeに役割を与える短い文章です。想定問答づくりでは、答えを作らせるより、資料の有無を正確に報告させることに指示の重心を置きます。例えば次のような形が考えられます。

このプロジェクトは、税務調査の事前準備のための資料突き合わせ用です。
- 回答は、プロジェクトに置いた資料に書かれている内容だけで行う
- 根拠にした資料は、ファイル名と該当箇所で示す
- 資料に見当たらない事項は「資料なし」と書き、推測で補わない
- 申告内容の適否や修正申告の要否は判断しない
- 「質問されやすい点」は論点の候補として書き、断定しない

これは指示の一例で、Claudeがこの通りに動くことを保証するものではありません。実際の応答は、担当者が資料と照らして確認する前提で使います。

手順4: 勘定科目を1つずつ指定して整合表を作らせる

全科目をまとめて頼むと、RAGが働く規模のプロジェクトでは科目ごとの抜けが見えにくくなります。1回の依頼は1科目、または関連する2〜3科目にします。

勘定科目「交際費」について、2025期の総勘定元帳の仕訳を確認し、
次の列の表にしてください。
列: 日付 / 摘要 / 金額 / 質問されやすい点 / 根拠資料(ファイル名) / 資料の有無
- 根拠資料は、プロジェクトの資料にあるものだけを挙げる
- 資料に見当たらない行は「資料なし」と書く
- 金額の合計を最後に出す

返ってくる表の形は、例えば次のようなものになります(形を示すための例で、実際の出力とは限りません)。

日付摘要金額質問されやすい点根拠資料資料の有無
2025-06-12摘要A社 会食金額48,000質問されやすい点参加者と目的根拠資料証憑_2025期_請求書一覧.csv資料の有無領収書あり・参加者の記録なし
2025-09-03摘要B社 贈答金額30,000質問されやすい点相手先との関係根拠資料なし資料の有無資料なし

「質問されやすい点」の列は、Claudeの一般的な知識に基づく論点候補であり、国税庁が調査で確認する項目として定めた一覧ではありません。この列を鵜呑みにせず、列の価値は「資料の有無」にあると考えるのが安全です。参加者の記録のように、行ごとに足りない書類が一目で分かるからです。

科目ごとの論点の見当は、次のように一次ソースで裏づけられるものと、そうでないものがあります。

  • 裏づけがあるもの: 減価償却費の計上額と資産の取得価額(FAQの問9の例)、代表者名義の個人預金と事業の関連(問7の例)
  • Claudeの一般知識によるもの: 交際費の参加者、仮払金の精算、売上計上時期の根拠など

後者は、有用でも「この点を聞かれる」と決まっているわけではありません。担当者が自社の事情に合わせて取捨します。

手順5: Claudeの数字を、手元の集計で検算する

整合表の金額が正しいかは、Claudeに「合っていますか」と聞き返しても確かめられません。元帳を別の手段で集計し、結果を突き合わせます。次のスクリプトは、総勘定元帳のCSVから勘定科目ごとの借方・貸方の合計を出す例です。列名は自社のエクスポートに合わせて直してください。

import csv
import sys
from collections import defaultdict
 
# 総勘定元帳のCSV(列: 勘定科目, 借方金額, 貸方金額)を科目別に集計する
totals = defaultdict(lambda: [0, 0])
with open(sys.argv[1], newline="", encoding="utf-8") as f:
    for row in csv.DictReader(f):
        debit = int(row["借方金額"] or 0)
        credit = int(row["貸方金額"] or 0)
        totals[row["勘定科目"]][0] += debit
        totals[row["勘定科目"]][1] += credit
 
for account, (debit, credit) in sorted(totals.items()):
    print(f"{account}\t借方 {debit:,}\t貸方 {credit:,}")
python3 ledger_sum.py gl_2025.csv

出力された科目別の合計と、Claudeの表の合計が合わなければ、その科目をもう一度Claudeに依頼し直します。数字が合わない原因の多くは、資料の取りこぼしか、期をまたぐ仕訳の扱いです。Claudeに原因を推測させるより、不一致の行を指定して「この仕訳は資料のどこにありますか」と聞くほうが、答えを検証しやすくなります。

整合表ができたあとの使い方

整合表の目的は、調査の当日に慌てないことです。次のような使い方があります。

  1. 「資料なし」の行を担当者別に割り振り、調査開始の前に探す
  2. 見つかった資料の置き場所を表に書き足し、当日すぐ出せる状態にする
  3. 説明が必要な取引は、経緯を数行にまとめ、担当者が口頭で説明できるようにしておく

FAQの問13は、事前通知について、調査開始日までに納税者が調査を受ける準備等をできるよう、相当の時間的余裕を置いて行うこととしていると説明しています。準備期間を前提にして、日次で「資料なし」の行を減らしていく運用になります。

当日の提示と提出は、準備の段階で区別しておく

提示は資料を見せることで、提出は資料を渡すことです。FAQの問10によると、調査担当者が帳簿書類等の留置き(預かり)をお願いするのは、納税者の理解と協力の下、承諾を得て行うものとされています。承諾なく強制的に留め置くことはないとあります。

預かりの申し出があったときに慌てないよう、整合表には「原本の保管場所」と「コピーの有無」の列を足しておくと、どの資料を預けても業務に支障が出ないかを事前に判断できます。

想定問答の答えは、Claudeに書かせない

事前準備では、質問に対する答えをClaudeに書かせたくなります。ただ、答えの文面を作る作業は、資料の整合を確認する作業とは性質が違います。資料に基づく事実の説明は担当者が自分の言葉で行い、解釈が分かれる点は税理士に相談する。Claudeには「この取引の経緯を資料の範囲で3行にまとめて」と頼む程度にとどめると、資料にない説明を作ってしまうリスクを避けられます。

調査の終了後については、FAQの問25が、修正申告の勧奨に応じるかどうかは納税者の任意の判断だと説明しています。修正申告をするか、しないかの判断をClaudeに委ねる場面ではありません。この判断は顧問税理士と行います。

税理士に依頼している場合の分担

税務代理を税理士に依頼している場合、事前通知は、納税者の同意が、税務署に出した権限証書に記載されていれば税理士に行えば足り、同意の記載がなければ納税者と税理士の双方に行われます(問14)。調査結果の説明も、原則は納税者に対して行われ、同意があれば税務代理人にのみ行われることがあります(問27)。

社内の準備と税理士の役割は、次のように分けられます。

作業社内(Claudeを使う)税理士
資料の収集・整理社内(Claudeを使う)担当する税理士必要に応じて助言
勘定科目ごとの整合表づくり社内(Claudeを使う)担当する税理士完成した表の確認
論点の見立て・申告内容の適否社内(Claudeを使う)しない税理士担当する
調査担当者への説明の方針社内(Claudeを使う)経緯の整理まで税理士担当する
修正申告の要否社内(Claudeを使う)しない税理士担当する

Claudeに税務書類の作成をどこまで任せられるかはClaudeに決算資料・税務書類の作成をどこまで任せてよいかで扱っています。整合表を作ったら、税理士に見せる前提で作ると、打ち合わせの時間を論点の判断に使えます。

新しいProjectsとの関係

Projectsには新しい方式のベータ版が出ています。ヘルプセンターによると、新方式は、選ばれたPro・Maxの契約者のうちClaude Codeを使う人から段階的に提供されています。チャットとCoworkにある既存のプロジェクトは、これまで通り動きます。この記事の手順は、既存のチャット版のProjectsを前提にしています。新方式の概要はClaude CodeのProjectsが刷新にあります。

まとめ

税務調査の準備にClaudeを使う価値は、答えを作ることより、資料の抜けを早く見つけることにあります。通知された税目・課税期間で対象を絞り、取得年度のように通知年度の外にある資料も置いておく。科目を1つずつ指定して整合表を作らせ、金額は手元の集計で検算する。そのうえで「資料なし」の行を担当者が探し、論点の判断は税理士に預ける。この分担にすると、Claudeの下書きが誤っていても、原本の確認で止められます。

最初の一歩は、通知を受けた期のうち1科目だけで試すことです。表の形と指示文が自社の資料に合うかを確かめてから、ほかの科目へ広げられます。

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