Claudeで動物病院の術後ホームケア説明書を処置別にそろえる手順
避妊去勢や歯石除去など処置別の術後説明書の型をClaudeのProjectsに置き、投薬や再診の日付だけを差し替えて飼い主向けの文書を仕上げる手順です。獣医師が決める部分との線引きも示します。
術後の自宅ケア説明書は、処置が変わっても書く項目はほぼ同じです。変わるのは薬の名前と量、再診の日付、その子の注意点くらいです。処置別の型をClaudeのProjectsに置いておけば、診察のたびに一から書かず、差し替える部分だけを渡して飼い主向けの文書に仕上げられます。
ここでは、動物病院の事務や看護の担当者が、処置別の説明書を型として整える手順を説明します。先に断っておくと、薬の種類・用量・再診の要否を決めるのは獣医師です。Claudeに任せるのは、獣医師が決めた内容を読みやすい文書に整える作業までです。
説明書づくりでClaudeに任せる範囲
Claudeに任せるのは文面の整形で、診療上の判断ではありません。獣医師法は、獣医師でなければ犬や猫などの診療を業務としてはならないと定めています(第17条)。さらに、自ら診察しないで診断書を交付したり、省令で定める医薬品を投与・処方したりすることも獣医師に禁じています(第18条)。
同じ法律の第20条は、獣医師が飼育動物を診療したときに、飼育者へ衛生管理の方法など保健衛生に必要な事項を指導する義務を定めています。術後の説明書は、この指導を書面で補う文書です。内容の責任は獣医師にあります。
線引きは次のとおりです。
| 作業 | 誰が決めるか |
|---|---|
| 薬の種類・用量・投与日数 | 誰が決めるか獣医師 |
| 再診や抜糸の要否と日付 | 誰が決めるか獣医師 |
| 受診を勧める症状の基準 | 誰が決めるか獣医師 |
| 見出しの並べ方・言い回し・やさしい日本語への直し | 誰が決めるかClaude |
| 項目の書き忘れの指摘 | 誰が決めるかClaude |
| 飼い主向けの文字の大きさ・行間の提案 | 誰が決めるかClaude |
表の上の3行は、Claudeに考えさせず、獣医師が確定した値を渡す欄です。下の3行が、Claudeを使う意味のある部分になります。
処置別に型を分ける理由
術後の説明書を1本にまとめた汎用版にすると、読む側に不要な項目が混ざります。避妊去勢の説明に歯石除去後の食事制限が載っていれば、飼い主は自分の子にどれが当てはまるのか迷います。処置ごとに1枚ずつ型を持つと、この迷いがなくなります。
型に分けるときの切り口は、次のように考えると整理しやすくなります。
- 麻酔の有無と、帰宅後に残る麻酔の影響の書き方
- 傷口やテープ、包帯など、飼い主が見守る場所
- 運動と食事の制限、エリザベスカラーなど保護具の扱い
- 投薬の頻度と飲ませ方
- 再診や抜糸の予定
処置の種類は病院ごとに異なるので、実際に日々出している説明書から順に型にしていくのが現実的です。最初から全処置を揃えようとせず、件数の多い処置から3〜4種を作ると回しやすくなります。
Projectsに置くものと置かないもの
ProjectsはClaudeの中に作る、チャット履歴と資料を持つ作業場です。プロジェクトの知識として置いた資料は、そのプロジェクト内のすべてのチャットで文脈として使われます。一方で、プロジェクト内の別のチャット同士は文脈を共有しません。知識に追加した情報だけが共通になります。
この性質から、置き場所は次のように分けると運用が安定します。
情報の置き場所
Projectsの知識に置く
処置別の説明書の型。病院の連絡先、時間外の対応、病院で使う用語の言い回し。
毎回のチャットで渡す
薬名と用量、投与の開始日、再診日、その子の名前と種類。診察のたびに変わるので、知識には入れません。
Claudeに渡さない
飼い主の氏名・住所・電話番号など、説明書の文面づくりに要らない個人情報。
日付や用量のような診察ごとの値を知識に置くと、前の症例の値が次の文書に紛れ込む原因になります。値はチャットの冒頭で渡し、型の側には空欄のまま残しておきます。
飼い主の個人情報は、説明書の文面を整える作業には不要です。動物の名前と処置の内容があれば足りるので、氏名や連絡先は渡さず、印刷の段階で差し込む運用にすると安全です。
手順 — 型をProjectsに置く
ProjectsはFreeアカウントでも使えます。ただしFreeで作れるのは最大5個です。処置を多数持つ病院なら、1つのプロジェクトに複数の型をまとめて置く構成にすると、この上限に当たりにくくなります。
プロジェクトを作る流れ
- 1
プロジェクトを作る
左側の「Projects」から「+ New Project」を押し、名前に「術後説明書」などを付けます。名前と説明はClaudeには渡りません。
- 2
型を知識に追加する
プロジェクトの知識欄の「+」から、処置別の説明書の型を文書として追加します。1処置1ファイルにすると、後で更新するファイルが特定できます。
- 3
指示を保存する
「Set project instructions」を押し、下に示す指示文を入れて「Save instructions」で保存します。
- 4
チャットを始める
診察ごとに新しいチャットを開き、その子の情報と獣医師が確定した値を渡して、文書を作らせます。
型の書き方
型は、固定の文面と差し替える欄を分けて書きます。差し替える欄は角括弧で示し、誰が埋める値かまで添えておくと、Claudeが勝手に数値を補う余地が減ります。
【避妊手術後のおうちでのすごし方】
手術日: [日付]
お薬: [薬名と量は獣医師が記入]
傷口: 毎日1回、見える範囲で確認してください。[注意点は獣医師が記入]
運動: [制限の期間は獣医師が記入]
再診: [日付は獣医師が記入]
こんなときはすぐにご連絡ください: [病院が定めた症状を記入]
連絡先: [病院名と電話番号]「獣医師が記入」と書いた欄は、Claudeが埋めない欄です。ここを曖昧に空けておくと、もっともらしい数値で補われてしまうおそれがあります。
指示文の例
指示文には、役割と、やってはいけないことを両方書きます。次は例示であり、病院の運用に合わせて直してください。
あなたは動物病院の説明書づくりを手伝う事務担当者です。
知識にある処置別の型に沿って、飼い主向けの術後ケア説明書を作成します。
守ること:
- 薬の名前、量、回数、日数は、私がチャットで渡した値だけを使う。渡されていない値は推測せず、[獣医師が記入] のまま残す。
- 受診を勧める症状の基準は、型に書かれたものだけを使う。新しい基準を足さない。
- 診断や治療の助言はしない。
- 文は短く、専門用語には言い換えを添える。
- 最後に、値が渡されずに空欄で残した項目を一覧にして示す。最後の一覧が効きます。空欄が残った項目を毎回出させると、獣医師への確認漏れを防げます。
診察ごとの使い方
診察が終わったら、新しいチャットを開いて処置名と確定した値を渡します。
処置: 歯石除去(抜歯あり)
名前: ムギ(犬)
手術日: 10月20日
お薬: [獣医師が確定した薬名と量をここに書く]
再診: 10月27日Claudeは型に沿って文書を作り、渡されなかった項目を空欄として一覧にします。出てきた文書は、獣医師が読んで確定してから飼い主に渡します。印刷用の文字の大きさや行間は、「高齢の飼い主向けに文字を大きくして」のように追加で頼めます。
出力を確かめる点
出てきた文書は次の順で見ます。
- 渡した値が、一字も変わらずに入っているか
- 渡していない値を、Claudeが補っていないか
- 型にない注意書きが足されていないか
- 受診を勧める症状が、病院の基準と一致しているか
3番目は見落としやすい点です。Claudeは親切のつもりで一般的な注意を足すことがあるので、型にない文は一度は疑って読みます。
複数のスタッフで型を共有する
TeamまたはEnterpriseのプランなら、プロジェクトを組織内で共有できます。共有時の権限は2段階です。
- Can view: 中身と指示を見て、プロジェクト内でチャットできるが、編集はできない
- Can edit: 指示や知識を変更でき、メンバーの設定も更新できる
型の更新を獣医師や院長に限るなら、受付や看護のスタッフには「Can view」を割り当てます。プロジェクトを公開にしても、各自のチャットは他のメンバーからは見えないままです。診察ごとの値を渡したチャットが共有されることはありません。
共有に使う画面や上位プランの条件は、士業事務所の例を扱ったClaudeで士業事務所の業務マニュアルを共有する手順に詳しくあります。
管理者が共有をオフにしていると、新しい共有は追加できません。公開にしていたプロジェクトは非公開に戻ります。共有できないときは、管理者に確認してください。
型を更新するときの注意
薬の運用や再診の目安が変わったら、型の側も直します。更新するときは、次の点を守ると事故が減ります。
- 変更したファイルの名前に更新日を入れ、古い版は知識から外す
- 古い版と新しい版を同時に置かない。Claudeがどちらを使うか分からなくなる
- 変更の内容は、獣医師が確認してから反映する
知識が増えて上限に近づくと、有料プランでは自動的にRAGモードに切り替わり、容量が最大10倍まで広がります。RAGが働くと、全文を毎回読み込む場合とは検索の仕方が変わります。型の数が増えたら、出力が型に忠実かどうかを定期的に見直してください。この仕組みの詳細はClaude ProjectsのRAG検索の記事で整理しています。
飼い主の相談そのものには使わない
この手順は、病院が作る文書の整形に限った使い方です。飼い主から届く個別の症状の相談にClaudeで答える運用には、向きません。症状の判断は診察を伴う獣医師の領分だからです。飼い主側がClaudeを使うときの注意は、Claudeにペットの気になる行動を相談するときの注意点で扱っています。
また、飼い主の個人情報を含む書類を扱う場合の考え方は、個人情報の開示請求対応を題材にした保有個人データの開示請求対応の手順が参考になります。
まとめ
術後説明書の型は処置別に分けて知識に置き、値は毎回のチャットで渡します。薬と再診は獣医師の確定値だけを使い、渡されなかった項目は空欄のまま一覧に出させる。この運用なら、説明書づくりの手間は減らせても、診療上の判断がClaudeに移ることはありません。
最初は件数の多い処置を1つ選び、型と指示文を作って、獣医師の確認を挟みながら数件回してみてください。空欄の一覧に出てくる項目の傾向を見れば、型のどこを直すべきかが分かります。