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Anthropicの使用ポリシーは政府機関にどんな例外を認めるか — 外国情報分析は可、国内監視は禁止のまま

Anthropicの使用ポリシーは政府機関にどんな例外を認めるか — 外国情報分析は可、国内監視は禁止のまま

Anthropicは選ばれた政府機関に限り、契約で使用制限を調整します。例に挙がるのは外国情報分析です。偽情報・兵器・検閲・国内監視・悪意あるサイバー作戦の禁止は残り、対象はASL-2のモデルだけです。

Anthropicは、使用ポリシー(Usage Policy)の制限を政府機関の顧客に合わせて調整する契約を結ぶことがあります。ただし誰にでも認めるわけではありません。外国情報分析のような用途を認める代わりに、偽情報・兵器・検閲・国内監視・悪意あるサイバー作戦の禁止は残します。しかも、このサポート記事が対象にしているのはASL-2のモデルだけです。

条文の骨格は短く、読み落としやすい点が三つあります。例外を決めるのは契約とAnthropicの判断であること、例として挙がるのは一つだけであること、禁止が残る領域が名指しされていることです。

例外は「契約」で作られ、Anthropicの判断で決まる

サポート記事の最初の段落が、仕組みの全体を述べています。Anthropicは政府の顧客と、その機関の公的な使命と法的権限に合わせて使用制限を調整する契約を結ぶことがあります。条件は、契約上の使用制限と適用される安全対策が、使用ポリシーが対処しようとする害を十分に緩和するとAnthropicが判断することです。

手順

例外が成立するまでの流れ

  1. 1

    政府機関が自らの使命と権限を示す

    調整の根拠は、その機関の公的な使命と法的権限です。「政府だから」では足りません。

  2. 2

    契約上の制限と安全対策を組む

    使用ポリシーの一部を外す代わりに、契約で別の制限を置き、誤用を防ぐ仕組みを添えます。

  3. 3

    Anthropicが十分かどうかを判断する

    緩和が足りるかの最終判断はAnthropic側にあります。機関側が条件を満たせば自動で認められる、という書き方ではありません。

使用ポリシー本文にも同じ趣旨の一文があります。原文は「Anthropic may enter into contracts with certain governmental customers that tailor use restrictions to that customer’s public mission and legal authorities」で、続く条件節は「in Anthropic’s judgment, the contractual use restrictions and applicable safeguards are adequate to mitigate the potential harms」です。サポート記事の説明とほぼ同じ構造で、サポート記事は「政府機関の使命と権限」「Anthropicの判断」という二つの軸を、運用側の言葉で言い直したものにあたります。使用ポリシー全体の構造はAnthropicのAcceptable Use Policyとはで整理しています。

例に挙がるのは外国情報分析だけ

サポート記事が例として示すのは、慎重に選んだ政府機関に、適用される法令に従った外国情報分析(foreign intelligence analysis)を認める可能性がある、という一点です。

この書き方には限定が三重にかかっています。

  • 「carefully selected(慎重に選ばれた)」政府機関に限る
  • 「in accordance with applicable law(適用法令に従う)」範囲に限る
  • 「may allow(認める可能性がある)」であり、認めると約束してはいない

外国情報分析のほかにどんな調整がありうるのか、記事は挙げていません。調整の範囲を網羅した一覧ではなく、例が一つだけある文章と読むのが正確です。

例外が及ばない領域

例の直後に、残る禁止が列挙されています。

残る禁止(サポート記事の文言)使用ポリシー本文で対応する節(筆者の対応づけ)
disinformation campaigns使用ポリシー本文で対応する節(筆者の対応づけ)Do Not Create or Spread Disinformation / Do Not Engage in Deceptive Campaigns or Artificial Activity
the design or use of weapons使用ポリシー本文で対応する節(筆者の対応づけ)Do Not Develop or Design Weapons
censorship使用ポリシー本文で対応する節(筆者の対応づけ)Do Not Use for Surveillance, Censorship, or Prohibited Law Enforcement or Criminal Justice Purposes
domestic surveillance使用ポリシー本文で対応する節(筆者の対応づけ)同上
malicious cyber operations使用ポリシー本文で対応する節(筆者の対応づけ)Do Not Compromise Computer or Network Systems Without Authorization / Do Not Compromise Critical Infrastructure

右の列は、サポート記事に書かれた対応関係ではありません。使用ポリシー本文の節名と並べて読んだときに、最も近い節を示したものです。

注意したいのは、外国情報分析が許されても、国内監視は許されないという線引きです。同じ「情報機関の仕事」に見えても、対象が国外か国内かで扱いが分かれます。使用ポリシー本文の監視の節には、同意のない人物の追跡、法執行機関の捜査での監視、政府組織に代わって検閲対象のコンテンツを特定する用途などが並んでいます。サポート記事の「検閲」「国内監視」はこの節に当たります。

悪意あるサイバー作戦の禁止も残りますが、これは「セキュリティの仕事全般」の禁止ではありません。使用ポリシー本文のサイバーの節は、権限なく脆弱性を探して悪用する、不正アクセスを得る、マルウェアやランサムウェアを作る、DoS攻撃やボットネットの管理ツールを作る、といった行為を挙げています。一方で、自分が所有・運用するシステムや、システム所有者の許可を得た範囲、認可されたバグバウンティの範囲でのセキュリティ研究やテストは禁止に含まれないと、同じ節の末尾に明記されています。線は職種ではなく、許可の有無で引かれています。

つまり、調整されうるのは特定の用途の制限であって、使用ポリシーの骨格ではありません。

対象はASL-2のモデルだけ

サポート記事は最後に、この方針が適用されるのはResponsible Scaling Policy(RSP)でAI Safety Level 2(ASL-2)に分類されるモデルだけだと述べています。記事は「At this time」と書いており、将来の変更を含んだ書き方です。

ASLはモデルの能力に応じて安全対策を引き上げる等級です。ASL-2からASL-3への移行はAI Safety Level(ASL)とはにまとめています。そこでは、2025年5月のClaude Opus 4のリリースに合わせてASL-3が発動されたとされています。

サポート記事は、ASL-3以上のモデルでこの種の調整をどう扱うかを書いていません。「ASL-2のみ」という文面を、より高い等級のモデルには適用されない、と読むことはできます。ただし、個々のClaudeモデルがどの等級にあたるかはこのページに載っていません。自分が使うモデルが対象になるかは、契約交渉の中でAnthropicに確かめる事項です。

どの政府機関が対象になるか — 五つの評価要素

サポート記事には、調整を認めるかの評価に含まれる要素が五つ挙がっています。「includes」という書き方なので、この五つだけとは限りません。

評価要素

評価に含まれる五つの要素

  • モデルの適合性

    提案された用途に、そのモデルが向いているかをAnthropicが見ます。

  • 機関の法的権限

    その機関が、根拠法のもとで何をする権限を持つかが問われます。

  • 対話を続ける姿勢

    Anthropicとの継続的な対話に、機関がどこまで応じるかも要素に入っています。

  • 誤用と誤りを防ぐ仕組み

    誤用の防止と、誤りが起きたときの被害を抑える安全対策が確認されます。

  • 独立した民主的な監督

    立法や規制による制約、公に表明した約束など、機関と、その機関のAI利用を外から監督する度合いです。

五つ目が、他の四つと性質が違います。前の四つは、機関とモデルの組み合わせが妥当かを見る項目です。五つ目は、機関の外にいる立法府や規制当局が、その機関のAI利用を縛れるかを見ます。外国情報分析のように、使い方によっては権力の乱用につながるおそれがある用途を認める条件として、外部の監督が明示されているわけです。

政府と取引する側が確認しておきたいこと

この例外は、政府機関と直接契約するAnthropicの話です。次の立場の読者は、範囲を取り違えないようにしてください。

立場この例外との関係
一般の企業・個人の利用者この例外との関係根拠にできません。使用ポリシーが通常どおり適用されます
政府機関向けにClaudeを組み込んで納品する事業者この例外との関係機関が例外を得ていても、その上で自社製品を使う側にも使用ポリシーが及ぶことに注意が要ります。自社の製品がどの契約の範囲に入るかは契約で確かめる事項です
政府機関の調達・法務担当この例外との関係用途が禁止が残る領域に触れないかを、調達の段階で整理できます

2行目の事業者の扱いは、サポート記事に書かれた規定ではなく、使用ポリシーが「Claudeを組み込んだ製品のエンドユーザー」にも及ぶという適用範囲の定めからの推論です。例外契約が納品先の製品にどう効くかは、契約の文面で決まります。

政府向けの提供形態と認証は官公庁のClaude導入ガイド、2026年9月30日に発表された一般提供の製品はClaude for Governmentの一般提供で扱っています。例外規定と製品の提供形態は別の話で、後者を契約していても、前者が自動的に付くとは書かれていません。

2026年11月の改定との関係

使用ポリシーは2026年11月12日に新版が発効します。改定の中身はClaudeのUsage Policy 2026年改定にあり、過去の変遷はUsage Policyの改定履歴にあります。

新版の本文にも、政府系顧客との契約で使用制限を調整できるという一文が残っています。表現は「certain governmental customers」で、外国情報分析という例は本文中に出てきません。例は、サポート記事のほうにだけ書かれています。

一方で、禁止の側は条文が書き直されています。新版には偽アカウントや捏造サイトによる活動を束ねたDeceptive Campaignsの節があり、監視の節も監視能力そのものの構築を禁じる書き方になっています。サポート記事が「残る」と述べる領域は、新版でも禁止の中心に置かれています。

まとめ

この例外は、政府機関に使用ポリシーの穴を開ける仕組みではありません。機関の使命と権限、安全対策、外部の監督を見たうえで、特定の用途の制限を契約で置き換える仕組みです。外国情報分析という例が目立ちますが、同じ文章の中で国内監視・検閲・偽情報・兵器・悪意あるサイバー作戦の禁止が明示されています。

対象はASL-2のモデルに限られます。自分の用途や使うモデルが当てはまるかは、サポート記事の文面からは判断できず、契約の相手方であるAnthropicとの協議事項になります。

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