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Claudeで着手金・報酬金の見積と費用説明書を作る手順(弁護士・司法書士)

Claudeで着手金・報酬金の見積と費用説明書を作る手順(弁護士・司法書士)

事務所の報酬規程の算式をExcelに置き、経済的利益から着手金・報酬金・実費の概算を出して依頼者向けの費用説明書にする手順です。

着手金と報酬金の見積は、算式そのものは単純なのに、事件ごとに手で計算し直すと数字がずれます。経済的利益が変わるたびに段階料率を当てはめ、実費の概算を足し、依頼者向けの説明書に書き写す。この往復で転記ミスが起きます。

事務所の報酬規程の算式をExcelの料率表に置き、見積の計算をClaude for Excelに任せれば、算式の確認と説明書の下書きまでが1つのブックで済みます。ここでは、弁護士・司法書士の事務所を想定して、料率表の作り方、Claudeへの依頼文、費用説明書への落とし方を順に説明します。報酬額を決めるのは事務所です。Claudeは計算と文面の下書きを受け持ちます。

見積と説明書のブックは3枚のシートで足りる

最終的に作るのは、依頼者にそのまま渡せる費用説明書です。その手前に、算式を置く料率表と、事件ごとの見積シートを挟みます。

手順

ブックの組み立て順

  1. 1

    料率表シートに算式を置く

    事務所の報酬規程から、経済的利益の段階と料率を転記します。

  2. 2

    見積シートに事件の条件を入れる

    経済的利益、実費の概算、税率を入力欄にします。

  3. 3

    着手金・報酬金を式で出す

    料率表を参照する式で、金額を計算します。

  4. 4

    説明書シートに差し込む

    見積の数字を、依頼者向けの文面と表に反映します。

シートを分ける理由は、算式を1か所にまとめるためです。料率表だけを更新すれば、以後の見積すべてに改定が反映されます。

料率表を作る — 報酬規程の算式を段階ごとに置く

報酬規程の算式は、「経済的利益が300万円以下の部分は8%、300万円を超え3,000万円以下の部分は5%」のように、段階ごとの料率で書かれることが多い形式です。以下の数字は説明用の架空の例で、実在の規程の値ではありません。実際の値は自分の事務所の規程から写します。

下限(円)上限(円)着手金の料率報酬金の料率
0上限(円)3,000,000着手金の料率8%報酬金の料率16%
3,000,000上限(円)30,000,000着手金の料率5%報酬金の料率10%
30,000,000上限(円)300,000,000着手金の料率3%報酬金の料率6%

このまま式に使うと、段階ごとの足し算が面倒になります。そこで、料率表の横に「差分率」の列を作ります。各段階の料率から、一つ前の段階の料率を引いた値です。

下限着手金の差分率報酬金の差分率
0着手金の差分率8%報酬金の差分率16%
3,000,000着手金の差分率-3%報酬金の差分率-6%
30,000,000着手金の差分率-2%報酬金の差分率-4%

差分率を使うと、段階料率の合計が次の1つの式で出ます。経済的利益をB2、下限をA5からA7、着手金の差分率をD5からD7に置いた場合です。

=SUMPRODUCT((B2>A5:A7)*(B2-A5:A7)*D5:D7)

経済的利益が1,200万円なら、着手金は次のとおりです。

  • 全体の1,200万円に8%を掛けて96万円
  • 300万円を超える900万円に-3%を掛けて-27万円
  • 3,000万円は超えないので0円
  • 合計で69万円

この式は、段階の数が増えても、範囲を広げるだけで使えます。

Claudeに頼む — 式を作らせ、手計算と突き合わせる

Claude for Excelは、開いているブックに対して質問し、数式の関係を保ったまま値を更新し、テンプレートを組み立て、エラーの原因をたどれます。公式の説明では、答えにセル単位の引用が付き、クリックすると該当のセルへ移動できます。算式の確認に向いた機能です。

料率表を作ったら、次のように頼みます。

「料率表」シートの下限・着手金の料率・報酬金の料率から、差分率の列を
作ってください。見積シートのB2を経済的利益として、着手金と報酬金を
それぞれSUMPRODUCTで計算する式を入れてください。
料率表の値は変更しないでください。

最後の1文が大切です。料率表は事務所の規程そのものなので、Claudeに書き換えさせない前提を依頼に含めます。

毎回この注意を書くのが面倒なら、アドインのサイドバーにある設定の指示欄に書いておけます。指示欄の内容は、Excelでの会話すべてに適用されます。PowerPointやWordの指示とは別に保たれます。「料率表シートは参照だけで、書き換えない」「金額は円単位の整数で表示する」といった決まりを置く使い方です。

検算は3点で足りる

式ができたら、Claudeの出力を信用する前に次の3点を確かめます。

  1. 前節のように、1件を電卓で手計算して、シートの金額と一致するか。
  2. 段階の境目(ちょうど300万円、ちょうど3,000万円)で、数字が飛ばず連続しているか。
  3. 経済的利益を0円にしたとき、着手金が0円になるか。

境目の確認は特に有効です。「超える」と「以上」の取り違えは、境目の1円で結果が変わります。

依頼者に見せる見積は、内訳を分けて出す

見積シートは、依頼者の目にそのまま触れる前提で作ります。ここで押さえたいのは、「事件の結果にかかわらず払う費用」と「成功した場合に生じる費用」を混ぜないことです。

日弁連の案内では、弁護士費用の種類として「着手金」「報酬金」「手数料」「法律相談料」「顧問料」「日当」「実費」などが挙げられています。着手金は事件を依頼した段階で払い、結果に関係なく返還されないものです。報酬金は事件が成功に終わったときに、終了の段階で払います。成功には一部成功も含まれ、度合いに応じて払う扱いです。実費は、裁判所に納める印紙代や郵券代、記録の謄写費用など、事件処理のために実際に出費されるものです。

この区別を、見積シートの構造に反映します。

区分払う時期見積シートでの扱い
着手金払う時期依頼時見積シートでの扱い確定額として表示する
報酬金払う時期事件終了時見積シートでの扱い経済的利益の想定ごとに範囲で示す
実費払う時期随時見積シートでの扱い概算の入力欄にして、精算と明記する

先ほどの例で、請求額が1,200万円の事件を考えます。着手金は69万円です。回収できた額が800万円だった場合の報酬金は、300万円までを16%の48万円、残り500万円を10%の50万円として、98万円です。消費税10%を掛けると、着手金が75.9万円、報酬金が107.8万円です。実費の概算は説明用に5万円と置きます。

報酬金は結果によって変わる金額です。「勝てば98万円」と1点で書くのではなく、回収額が500万円・800万円・1,200万円のときに分けた小さな表を作ると、依頼者が事件の見通しと費用を結びつけやすくなります。この表も、先ほどの式の経済的利益の欄を変えるだけで作れます。

税の扱いと端数は事務所の運用に合わせる

消費税の計算や端数の処理は、事務所によって決めごとが違います。そこで、見積シートに「税率」「端数処理」の入力欄を設けて、式がそれを参照する形にします。Claudeに「消費税10%で計算して」と毎回頼むより、入力欄に値を置き、式を参照にしておくほうが、後から変更できます。

説明書シートに落とす — 弁護士と司法書士で根拠が違う

見積の数字ができたら、依頼者向けの費用説明書にします。ここは、弁護士と司法書士で根拠が異なります。

弁護士の場合

弁護士の職務基本規程29条は、事件を受任するにあたり、依頼者から得た情報に基づいて、事件の見通し、処理の方法、弁護士報酬と費用について適切な説明をするよう定めています。同じ条で、依頼者に有利な結果を請け合ったり保証したりすることも禁じられています。30条は、受任の際に弁護士報酬を記載した委任契約書を作る原則を置いています。報酬の額については、24条が、経済的利益、事案の難易、時間・労力などの事情に照らして適正かつ妥当であるよう求めています。

費用説明書の文面にこの条文が効くのは、次の2点です。

  • 見通しと費用を同じ書面で説明するので、見積の表に、結果の保証と読める言い回しを入れない。
  • 報酬の算定に使った事情(経済的利益の額や事案の難易)を、説明書の中で追えるようにする。

司法書士の場合

司法書士法の施行規則22条は、司法書士法3条1項各号の事務を受任しようとするときは、あらかじめ依頼者に報酬額の算定方法その他の報酬の基準を示すよう定めています。見積の計算根拠を示した説明書は、この「あらかじめ示す」を満たす形に整えやすい書類です。

また、同施行規則29条により、報酬を受けたときは、受領した報酬額の内訳を詳細に記載した領収証を作成します。見積の段階で報酬の内訳を項目に分けておけば、領収証の記載との対応が取りやすくなります。

司法書士が扱える業務の範囲そのものは、3条と73条の線引きがあります。Claudeを使う場面の整理は、司法書士はClaudeをどこまで使えるかにまとめています。

説明書の文面をClaudeに下書きさせる

見積シートの数字と、事務所の定型文があれば、文面の下書きもExcelの中で頼めます。

「見積」シートの内容から、依頼者向けの費用説明書の下書きを
「説明書」シートに作ってください。
- 着手金は確定額、報酬金は回収額が500万・800万・1,200万円の
  場合の3パターンの表にする
- 実費は概算であり、精算する旨を一文で書く
- 結果を保証する表現は使わない
- 数字は見積シートのセルを参照し、文中に直接打ち込まない

「セルを参照し、直接打ち込まない」とするのは、見積の数字を変えたときに説明書が追随するためです。文面に数字が直打ちされていると、見積を更新しても説明書に古い金額が残ります。

公式が示す制限と、この用途で気をつけること

公式の説明は、Claude for Excelの現在の制限として、人の確認がない最終的な顧客向け成果物と、検証のない監査上重要な計算、機微な情報や規制対象のデータを適切な管理なしに扱うブックの3つを、推奨しないとしています。依頼者向けの費用説明書は、まさに最初の例に当たります。数字の最終確認は弁護士や司法書士自身が行い、事務所の判断として署名・押印する書面にしてください。

ほかに、次の点が実務に関わります。

制限

この用途で関わる制限

  • データテーブルとマクロは使えない

    データテーブルとマクロ・VBAの操作は未対応です。見積の自動化にマクロを使っている事務所は、式だけで組み直す必要があります。

  • 外部から受け取ったファイルに注意

    ダウンロードしたテンプレートや外部のファイルには、隠れた指示が含まれ得ます。公式は、信頼できるスプレッドシートでのみ使うよう求めています。

  • 上書きの前に警告が出る

    既存データを上書きする前に確認が出ます。料率表を誤って書き換える事故を防ぐ助けになります。

  • 対応バージョンの確認

    Excel 2016・2019のパッケージ版、iPad、Androidでは動きません。事務所のPCの版を先に確かめます。

依頼者の情報をブックに入れるときの線引き

見積の段階では、依頼者の氏名や事件の詳細を入れずに計算できます。経済的利益と事件類型だけで足りるからです。氏名や事件番号は、説明書を印刷する直前の別ブックで差し込む運用にすると、Claudeに渡す情報を最小にできます。

公式は、Claude for Excelの入出力がバックエンドで30日以内に削除されることや、組織が設定したデータ保持の設定を引き継がないこと、Enterpriseの監査ログに活動が含まれないことを説明しています。Enterpriseの組織でCompliance APIを有効にしている場合は、セッションがその対象に入ります。弁護士の守秘義務との関係は、Claudeに相談内容を入力しても弁護士の守秘義務は保てるかで条文から整理しています。

落とし穴

経済的利益の額をClaudeに決めさせない

料率を当てはめる土台は経済的利益の額ですが、これは事件ごとに、請求の内容や争いの状況から人が決める数字です。Claudeに「この事件の経済的利益はいくらか」を尋ねても、事務所の運用に沿った答えは出ません。入力欄の値は担当者が決め、Claudeには計算と文面だけを任せます。

報酬の見直しとの使い分け

報酬規程の算式を使った事件ごとの見積と、顧問契約の月額報酬の見直しは、別の作業です。後者は、タイムシートを顧問先別に集計して実質の時間単価を出す形になります。手順は士業事務所の工数集計にあります。

複数の業者から見積を取る側の比較表は、相見積もりの比較表をClaude for Excelで作るで扱っています。こちらは見積を出す側ではなく受ける側の作業です。

弁護士でない人が報酬を得る目的で法律事務を扱うことの禁止は、弁護士法72条にあります。Claudeを使った書類作成が72条にどう関わるかは、弁護士法72条とAIの契約書レビューにあります。事務所内で、弁護士や司法書士が内容を精査する運用であることが、この手順の前提です。

まとめ

見積と費用説明書の作成で、Claudeが受け持つのは、料率表を参照する式の作成、段階の境目の検算、説明書の文面の下書きです。経済的利益の額、報酬の最終額、説明書の内容の確定は、事務所が行います。

作り方の軸は3つです。

  • 算式は料率表の1か所に置き、見積と説明書はそこを参照する。
  • 着手金は確定額、報酬金は結果に応じた範囲、実費は概算と精算で、区分を分けて見せる。
  • 公式が推奨しない「人の確認がない顧客向け成果物」にならないよう、最後は必ず担当者が通す。

弁護士の場合は職務基本規程の29条・30条、司法書士の場合は施行規則の22条・29条が、説明書の中身と領収証の内訳に関わります。条文の言葉を説明書の見出しに写しておくと、確認の漏れが減ります。

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