時間外在校等時間の集計をClaude for Excelで — 教員の月45時間・年360時間と突き合わせる
教員の日々の在校記録から時間外在校等時間を月・年で集計し、月45時間・年360時間と特例の上限に照らす表をClaude for Excelで組む手順です。
教員の時間外在校等時間は、日々の出退勤の記録から「在校等時間」を出し、所定の勤務時間を引いて月と年に積み上げれば求まります。上限は月45時間・年360時間で、臨時的な特別の事情がある場合だけ、月100時間未満・年720時間以下などの特例が重なります。Claude for Excelなら、日次の記録シートから月次の突き合わせ表までを、数式と判定列の形で組ませられます。ここでは表の設計、Claudeへの依頼文、検算の順に進めます。
対象は公立学校の教育職員です。事務職員等は36協定による時間外労働の規制が別に適用されるため、この表の物差しとは異なります。
上限の数字は、どの時間に当てるのか
突き合わせる相手は「在校等時間」から所定の勤務時間を除いた時間です。ここを取り違えると、表がどれだけ正確でも判定が狂います。
教育職員の時間外在校等時間の上限
1か月(通常)
45時間以内
1年(通常)
360時間以内
1か月(特例)
100時間未満
臨時的な特別の事情がある場合
1年(特例)
720時間以内
臨時的な特別の事情がある場合
特例にはさらに2つの条件がつきます。連続する複数月の平均が80時間以内であること、そして時間外在校等時間が45時間を超える月は年間6か月までであることです。平均の取り方は、各月にその直前の1〜5か月を加えたそれぞれの期間で見る、と規則例に書かれています。
「臨時的な特別の事情」とは、通常予見できない業務量の大幅な増加などで、一時的または突発的に所定の勤務時間外に勤務せざるを得ない場合です。該当するかどうかは、服務監督権者である教育委員会や校長が状況に応じて判断します。つまり表の側で「特例だからOK」と自動判定してはいけません。表が出すのは「特例の要件を確認する対象かどうか」までです。
在校等時間に入れる時間・入れない時間
日次シートの列は、在校等時間の定義をそのまま写して決めます。
- 基本は、学校に出勤で到着した時間から、帰宅のために学校を出る時間までの在校時間
- 加えるのは、校外で職務として行う研修や児童生徒の引率等の時間と、各地方公共団体が定めるテレワークの時間
- 除くのは、休憩時間と、勤務時間外の自己研鑽・業務外の時間(自己申告による)
一度学校を離れて戻った場合は、帰宅のために学校を出る時間が終期になります。校外学習や修学旅行の引率は出張復命書や行程表で、所定の勤務時間外の部活動引率は部活動手当の申請書や活動記録で外形的に把握できる、とQ&Aにあります。
落とし穴
持ち帰り仕事を入れると上限判定がずれる
自宅等への持ち帰りの時間は在校等時間に含まれません。ただし、各地方公共団体が定める方法のテレワークは含まれます。持ち帰りを列に入れてしまうと、記録は増えても上限と突き合わせる数字が公式の定義から外れます。上限を守るためだけに持ち帰りが増えること自体が、ガイドラインの趣旨に反するともされています。
表の設計 — 日次シートと月次シート
シートは2枚に分けます。日次に生の記録を置き、月次は日次から集計だけを引きます。月次に手入力を混ぜない作りにしておくと、検算のときに「どの日が効いているか」を日次へさかのぼれます。
| 日次シートの列 | 中身 | 備考 |
|---|---|---|
| A日付 | 中身勤務日・休日を問わず記録がある日 | 備考土日祝の校務も在校等時間に入る |
| B区分 | 中身平日(所定勤務あり)/休日 | 備考所定勤務時間の判定に使う |
| C到着・D退校 | 中身時刻 | 備考一度戻った日は最終の退校時刻 |
| E校外 | 中身研修・引率の時間(時間単位) | 備考復命書や行程表の値を転記 |
| Fテレワーク | 中身自治体が定める方法の時間 | 備考持ち帰りは入れない |
| G休憩 | 中身実際に確保された休憩(時間単位) | 備考実際に確保した分だけ引く |
| H除外 | 中身自己研鑽・業務外(自己申告) | 備考自己申告のため根拠メモ欄を別に置く |
| I在校等時間 | 中身数式 | 備考下記 |
| J所定 | 中身数式 | 備考下記 |
休憩は、労働基準法第34条で労働時間が6時間を超えれば少なくとも45分、8時間を超えれば少なくとも1時間と定められています。在校等時間から引くのは、実際に確保された分です。公立学校の所定勤務時間は条例で通常7時間45分と定められているため、Jは平日を7.75、休日を0とします。自治体の条例で時間が違う場合は、その値に差し替えます。
下の数式は、公式の定義を式にした例です。Claudeが返す式を比べる基準として使えます。
I2: =IF(OR(C2="",D2=""),0,(D2-C2)*24)+E2+F2-G2-H2
J2: =IF(B2="平日",7.75,0)月次シートは、年月(各月の1日)を縦に並べ、日次から月ごとに合計します。
B2: =SUMIFS(日次!I:I,日次!A:A,">="&A2,日次!A:A,"<"&EDATE(A2,1))
C2: =SUMIFS(日次!J:J,日次!A:A,">="&A2,日次!A:A,"<"&EDATE(A2,1))
D2: =B2-C2 ← 月の時間外在校等時間
E2: =SUM(D$2:D2) ← 年の累計
G2: =COUNTIF(D$2:D2,">45") ← 45時間超の月数上限の定義が「1か月について、業務を行う時間から所定の勤務時間を除いた時間」なので、日ごとにマイナスを切り捨てず、月の合計どうしで引いています。年休を取った日などの所定勤務時間の扱いは自治体の運用に左右されるため、そこは勤務時間管理の担当者に確かめてください。
複数月の平均は、7行目(7か月目)を例にすると次の形です。直前1〜5か月を加えた2〜6か月の平均が、それぞれ80時間以内かを見ます。
H7: =AVERAGE(D6:D7) ← 2か月
I7: =AVERAGE(D5:D7) ← 3か月
J7: =AVERAGE(D4:D7) ← 4か月
K7: =AVERAGE(D3:D7) ← 5か月
L7: =AVERAGE(D2:D7) ← 6か月
M7: =MAX(H7:L7) ← 最も高い平均条文の文言には、年の区切りで平均を打ち切る定めがありません。年度の最初の数か月を判定するときは、前年度の末尾5か月分を表の上に残しておくと、平均の窓が足ります。
Claudeに依頼する — 表づくりの文面
Excelにアドインを入れたら、記録のシートを開いた状態で依頼します。Claude for Excelは、ブックについての質問に、クリックでセルへ飛べる引用つきで答えます。また、数式の関係を保ったままの更新、複数シートにまたがる作業、並べ替えやフィルター、条件付き書式、入力規則のドロップダウンの作成にも対応しています。月次の判定列や色分けは、そのまま頼める範囲です。
日次シートに教員の勤務記録があります(A:日付 B:区分 C:到着 D:退校
E:校外 F:テレワーク G:休憩 H:除外)。次を作ってください。
1. 日次のI列に在校等時間(時間単位)、J列に所定勤務時間
(平日7.75、休日0)の数式を入れる
2. 月次シートに、月ごとの在校等時間・所定・時間外在校等時間、
年の累計、45時間超の月数を集計する
3. 判定列に「45時間以内」「45時間超(特例の要件を確認)」
「100時間以上」を出し、年の累計は360時間と720時間で同様に判定する
4. 複数月平均(2〜6か月)の最大値を出し、80時間を超える行を色付けする
既存のセルを上書きする前に、対象範囲を教えてください。判定列の文言を「特例の要件を確認」にしているのは、前の節のとおり、特例の該当は表では決まらないからです。依頼のたびに「上限は45時間、特例は教育委員会の判断」と添える必要はなく、アドインの設定の「Instructions」欄に書いておけば、Excelでの全ての会話に適用されます。
依頼から検算までの順序
- 1
コピーのブックで作業する
勤務記録の原本は、公務災害などの際に重要な記録として、公文書の管理を受けるものです。Claudeに触らせるのは複製したブックにします。
- 2
日次の列を先に決める
列の意味を依頼文に書いてから頼みます。列が曖昧だと、持ち帰りの時間が混ざる原因になります。
- 3
返ってきた数式を、上の式と見比べる
引用つきの答えから該当セルへ飛び、IとJの式、EDATEを使った月の範囲指定が合っているかを見ます。
- 4
1か月を手計算で突き合わせる
最も時間外が長い月を選び、日次の値を電卓かピボットで足して、月次のDと一致するか確かめます。
- 5
判定列を境界値で試す
月の合計が45時間ちょうど、45.01時間、100時間ちょうどになるよう日次の値を一時的に書き換え、判定が変わる位置を確認します。
使う前に確認する制限
Claude for Excelは、Pro・Max・Team・Enterpriseのプランで一般提供されています。動作するのはExcel on the web、Microsoft 365のWindows版・Mac版で、Excel 2016・2019の永続版・ボリュームライセンス版、iPad、Androidでは動きません。学校の端末が古いExcelだと、アドイン自体が入りません。
機能面では、データテーブルとマクロ・VBAの操作が未対応です。月次の集計を「ボタンひとつで更新するマクロ」にしたい場合は、このアドインでは作れません。関数とピボットで組みます。
扱うデータの性質にも注意が要ります。公式の制限事項には、機密性や規制の強いデータを適切な統制なしに扱うモデル、監査上重要な計算を検証なしに使うことは推奨されない、と書かれています。教員の勤務記録は個人情報を含むため、校内の情報セキュリティの規程で外部サービスへの入力が許されるか、先に確認してください。氏名の列を職員番号に置き換えた複製を使えば、リスクは下がります。
もう1点、外部から受け取ったファイルには、Claudeを誘導する隠し指示が仕込まれていることがあります。他校や業者から届いた集計テンプレートをそのまま開いて作業させず、信頼できるブックに値だけ移します。リスクのある操作を提案するときは、実行前に確認が求められます。
結果の読み方 — 超過が出たときに見るもの
表が示すのは、記録に基づく数字だけです。上限を超えた教員がいたとき、ガイドラインが問うのは個々の教員ではなく、校長と教育委員会の学校の管理運営に係る責任です。特定の教員に校務分掌が集中して過重負担となっている場合は、校務分掌の適正化が求められます。学校内の多くの教員が上限を超えているなら、業務削減などの取組を積極的に進める必要があります。
月次の表に加えて、教員ごとの年間累計を並べた一覧を作っておくと、超過が個人に偏っているのか、学校全体の傾向なのかを一枚で見分けられます。Claudeには「月の時間外が45時間を超えた教員の人数を月別に数えて」と頼めます。人数の推移は、分掌の見直しを話し合うときの材料になります。
医師による面接指導の対象者の抽出は、別の物差しで動きます。安衛法上の「労働時間の状況」は、所定の勤務時間と超過勤務命令に基づく業務の時間で見るのが原則です。抽出の手順は医師面接指導の対象者を80時間超で抽出する手順にあります。副業・兼業がある場合の通算は副業・兼業の労働時間通算の点検手順が扱っています。同じ教員向けの表づくりでは、定期テストの作問と配点表の手順も参考になります。
Claudeが固まったときの原因と上限値は、Claude for Excelが応答しない・タイムアウトする原因にまとめています。1年分の日次記録を一度に渡して止まる場合は、月ごとに分けて依頼する手があります。
まとめ
時間外在校等時間の突き合わせは、定義の再現(日次)、月の合計(月次)、上限との判定(判定列)の3段で成り立ちます。数式の例を基準にして、Claudeの返す式と1か月分の手計算で検算すれば、判定表は実務で使える精度に届きます。特例の該当判断と、勤務時間の所定の扱いは、表ではなく教育委員会の規則と校長の判断で決まります。