ClaudeとFactSetを連携して競合比較表を出典つきで作る手順
FactSetコネクタで上場企業の財務とコンセンサスを引き、顧客向けの競合比較表に出典ツールと取得日を残す進め方。24個のツールの分類、接続、依頼文の型をまとめます。
Claude FactSet連携とは — 比較表の数字を引く入口
FactSetコネクタは、FactSet Research Systemsが提供するコネクタです。ディレクトリ上では「FactSet AI-Ready Data」という名前で、「Anthropic verified」と表示され、2026年2月に追加されました。コネクタページの説明は、グローバルの価格、ファンダメンタル分析、利益予想(アーニングスのエスティメート)、リサーチの知見をClaudeに取り込む、というものです。
競合比較表の作成で効くのは、財務と予想の数字をClaudeが自分で書かず、データソースから引いてくる点です。Claudeに「A社の売上高は」と聞くと、学習済みの記憶から答える余地が残ります。コネクタを有効にした会話では、数字をツールの戻り値から取らせ、どのツールで取ったかを表に残せます。
この記事が扱うのは、顧客に出す競合比較表を作る場面です。コンサルタントが競合分析や業界ベンチマークを組むときの型として、取得項目の選び方、出典と取得日の残し方、検算の頼み方を順に説明します。
非上場企業の資金調達はClaudeとCrunchbaseを連携する方法、投資家向けの企業調査はClaudeとPitchBookを連携する方法が扱っています。業界の市場規模や構造はClaudeとIBISWorldを連携して業界分析の前提表を作る手順にあります。FactSetは上場企業の財務・予想・株主・サプライチェーンが中心で、データの入口が別です。
前提と接続先 — サインインとプランの条件
コネクタページに載っている接続情報は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| サインイン | 内容必須(Sign-in: Required) |
| 提供元 | 内容FactSet Research Systems |
| カテゴリ | 内容Financial services |
| 追加時期 | 内容2026年2月 |
| コネクタURL | 内容https://mcp.factset.com/content/v1 |
サインインが必須とだけ書かれており、どの契約が要るかはコネクタページに記載がありません。FactSetのデータ利用は契約済みの顧客が前提と考えるのが自然ですが、無料で試せるのか、どの契約プランで有効になるのかは、ページから読み取れません。接続前に、自社のFactSet管理者へ「自分のアカウントでMCP経由の取得が許可されているか」を確かめてください。
Claude側の権限の扱いは、サポート記事に書かれています。Claudeは接続先のサービスでの権限をそのまま引き継ぎ、元のシステムで見られないデータにはコネクタ経由でも届きません。FactSet側で契約していないデータセットは、Claudeからも引けない見込みです。
Team・Enterpriseプランでは、先にOwnerまたはPrimary Ownerが組織でコネクタを有効にします。有効にしただけでは誰も使えず、各メンバーが個別に認証する必要があります。コネクタ全般の仕組みはClaude Connectorsとはにあります。
接続の流れ
手順はほかのコネクタと同じです。
FactSetコネクタの追加
- 1
ディレクトリを開く
claude.aiの「Customize」から「Connectors」を開き、ディレクトリでFactSetを探します。
- 2
追加して認証する
「Connect」または「Install」で追加し、FactSetのアカウントで認証します。
- 3
会話で有効にする
チャット左下の「+」メニューの「Connectors」から、FactSetをオンにした会話で使います。
提供元が信頼できるかの確認は利用者側の仕事です。コネクタページには「信頼できる開発元のコネクタだけを使ってください。Anthropicは、開発元が提供するツールを管理しておらず、想定どおり動くことも、後から変わらないことも保証できません」という趣旨の注意書きがあります。FactSetの場合は、提供元の公式ページが同じ組織の運営であることを、自社のFactSet担当者経由で確かめるのが確実です。
24個のツールを比較表の列に結びつける
コネクタページには24個のツール名が並びます。説明文は付いていないため、以下の分類は名前からの整理で、各ツールが返す項目の細部はページから分かりません。
| 比較表で使う観点 | 候補ツール名 | 数 |
|---|---|---|
| 企業の特定・属性 | 候補ツール名FactSet_EntityReference / FactSet_PrivateCompany / FactSet_People | 数3 |
| 財務実績 | 候補ツール名FactSet_Fundamentals / FactSet_Metrics / FactSet_DebtCapitalStructure / FactSet_Banks | 数4 |
| 将来予想 | 候補ツール名FactSet_EstimatesConsensus / FactSet_CalendarEvents | 数2 |
| 株価・ファンド | 候補ツール名FactSet_GlobalPrices / FactSet_FundsETF / FactSet_FundsScreener | 数3 |
| 事業構成・取引関係 | 候補ツール名FactSet_GeoRev / FactSet_RBICS / FactSet_SupplyChain / FactSet_Ownership | 数4 |
| 絞り込み | 候補ツール名FactSet_CompanyScreener | 数1 |
| 取引・投資 | 候補ツール名FactSet_MergersAcquisitions / FactSet_PrivateEquityVC | 数2 |
| 文書・マクロ・業種特化 | 候補ツール名FactSet_UnstructuredContent / FactSet_Macroeconomics / FactSet_QFL / FactSet_PowerUtilities | 数4 |
| 利用条件 | 候補ツール名FactSet_TermsConditions | 数1 |
合計は24です。顧客向けの競合比較表で中心になるのは、財務実績と将来予想の2系統です。
名前から読み取れる点が2つあります。
1つ目は、事業構成を見るツールが複数あることです。FactSet_GeoRev は地域別売上、FactSet_RBICS は業種分類、FactSet_SupplyChain は取引関係を指すと見られますが、ページに説明がありません。競合の「どこで稼いでいるか」を並べたいなら、財務実績に加えてこの系統を足せるかを、実際に問い合わせて確かめることになります。
2つ目は、FactSet_TermsConditions というツールがあることです。データの利用条件を返すツールと推測できます。顧客に渡す資料へデータを載せるとき、再配布が許されるかは契約で決まります。出典を表に残す前に、このツールで条件を引かせるか、FactSet側の契約書を確認する運びです。ただし何を返すかは、ページには書かれていません。
FactSet側のページは、同じ内容をMCPサーバー経由でClaudeに渡せると説明しています。対応プラットフォームにClaudeのほか、ChatGPT、Microsoft Copilot、Google Gemini、Databricks、Cursor、GitHub Copilot、Perplexityが挙がり、Fundamentals、Estimates、Ownership、M&A、Pricing、People、Events、Supply Chainが直接引けるとあります。
出典つきの競合比較表を作る依頼の型
比較表の信頼性は、数字の出所を後から追えるかで決まります。Claudeに頼むときは、数字を取る工程と表に整える工程を分け、表の各行に出典ツールと取得日を持たせます。以下は設計例で、実際の出力ではありません。
FactSetのコネクタを使って、次の順で進めてください。
1. 比較対象の3社(A社、B社、C社)を、FactSet上のエンティティとして特定する
(社名、ティッカー、同名の別会社がないかを一覧にして私に確認する)
2. 直近の通期の売上高、営業利益、営業利益率を、決算期と通貨つきで取る
3. 次期のコンセンサス売上高とコンセンサス営業利益を取る
4. 次の列を持つ表にする: 社名 / 項目 / 値 / 通貨 / 決算期 / 出典ツール名 / 取得日
コネクタで取れなかった項目は空欄にして、推測で埋めないでください。この頼み方には、4つの狙いがあります。
- 手順1で、社名の取り違えを防ぐ。同名の別会社や子会社を拾うと、表全体が崩れるため、人が確認してから進める
- 手順2と3で、実績と予想を別の工程にする。実績は確定値、コンセンサスは予想値で、性格が違う
- 手順4で、通貨と決算期を列にする。3社の決算期が違うと、そのまま並べた比較が成立しない
- 最後の一文で、取れなかった項目を埋めさせない。Claudeが記憶で補うと、出典のない数字が表に混ざる
出典列に何を書かせるか
出典の列は、少なくとも次の3つを残す形が使えます。
- どのツールで取ったか(
FactSet_Fundamentalsなど、ツール名そのもの) - いつ取ったか(日付。コンセンサスは日々変わるため、翌週に開いたら値が違うことがある)
- 通貨と決算期(換算前の値か、換算後かも含める)
為替換算が必要な表では、換算後の数字を表に載せる前に、換算前の値と使ったレートも並べさせると検算しやすくなります。コネクタがレートを返すかはページから分からないため、レートの出所はあなたが指定してください。
検算の頼み方
同じ会話に、数字の整合を確かめる依頼を足せます。
先ほどの表について、次を確認してください。
- 営業利益率が、営業利益÷売上高と一致しているか(自分で計算して比べる)
- 3社の決算期がずれている場合、どの会社がずれているか
- コンセンサスの値が、実績より極端に高い・低い会社はないか
食い違いは、修正せずに指摘だけしてください。「修正せずに指摘だけ」と頼むのは、検算の段階で数字がClaudeの手で書き換わるのを避けるためです。食い違いが見つかったら、人が元のツールを再度呼ばせて確かめます。
顧客向け資料にする前の注意
コンサルタントが顧客に渡す資料では、コネクタで取れた数字と、Claudeが書いた文章を分けて扱うと安全です。
- 数字は表に載せ、出典列とセットにする
- 「競合の強み」「示唆」のような解釈の文章は、人が書くか、書かせたうえで根拠の数字を必ず添えさせる
- コンセンサスは予想の集まりなので、「アナリスト予想の平均」と注記する。確定した業績見通しのように書かない
データの再配布条件は、FactSetとの契約で決まります。顧客向け資料に載せてよい範囲は、FactSet_TermsConditions の内容やFactSet担当者への確認で先に決めておくと、納品直前の差し戻しを避けられます。
FactSet側のページは、データの扱いとして、顧客データや入力した内容を公開の生成AIモデルと共有しないこと、検索拡張生成(RAG)で事実に基づくデータに回答を結びつけることを挙げています。これはFactSet自身のAI製品についての説明で、Claudeとの会話に流した質問文がFactSetでどう扱われるかを個別に示したものではありません。取引先の機密情報を質問文に含める場合は、自社のルールと契約を確認してください。
よくある質問
非上場企業の比較にも使えますか
FactSet_PrivateCompany と FactSet_PrivateEquityVC というツール名があり、非上場企業を扱えるように見えます。ただし、どの項目がどこまで埋まるかはページに記載がありません。非上場の資金調達はCrunchbaseの記事が扱う領域で、使い分けはデータの入口で決まります。
コンセンサスの取得日は、いつの値ですか
コネクタが返す値の基準日は、ページに書かれていません。表に「取得日」を残す設計は、そのためです。同じ質問を翌日に流しても、同じ値が返るとは限りません。
ツールごとに使う・使わないを分けられますか
Team・Enterpriseプランでは、OwnerがコネクタのTool permissionsで、ツールごとに「Always allow」「Needs approval」「Blocked」を選べます。競合比較表の用途なら、使わない系統のツールをBlockedにしておくと、意図しないデータ種別の取得を防げます。この設定は組織全体に効き、個人は上書きできません。