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Claudeで等級基準と賃金規程の矛盾を洗い出す手順

Claudeで等級基準と賃金規程の矛盾を洗い出す手順

等級基準・賃金規程・賃金テーブルをProjectsに置き、規程間の食い違いを条文ごとに一覧にさせる手順です。運用実態とのズレの読み分け方と、人が決める範囲も扱います。

人事制度の規程は、足し算で増えていきます。等級基準は人事制度の改定時に、賃金規程は就業規則の見直し時に、手当の細則はそれぞれ別の年に直される。気づくと、同じ「G3」という言葉が、規程によって違う意味で使われています。

この記事では、等級基準・賃金規程・賃金テーブルをClaudeのProjectsに置き、規程どうしの食い違いを条文単位で一覧にさせる手順をまとめます。Claudeに任せるのは「食い違いの候補を漏れなく拾うこと」までです。どちらを正とするかは、人事が決めます。

規程間の矛盾は4つの型で起きる

「矛盾を探して」と頼むと、返ってくるのは表現の揺ればかりで、直すべき食い違いが埋もれます。先に探したい型を決めておくと、指摘の質が揃います。

矛盾の型

規程の食い違いが出やすい4つの型

  • 定義の不一致

    等級基準では「課長相当」、賃金規程では「管理職」と呼ぶなど、同じ対象を別の語で書いている型です。手当の支給対象がどちらの語に従うのかが決まらなくなります。

  • 数値の不整合

    昇格要件の在級年数と、賃金規程の昇給条項の年数が違う型です。賃金テーブルの等級ごとの範囲が、隣の等級と重なっている場合もここに入ります。

  • 条件の抜け・重複

    昇格の条件は等級基準にあるのに、昇格時の賃金の決め方が賃金規程にない型です。逆に、同じ条件が両方にあり、片方だけ改定された例もあります。

  • 運用実態とのズレ

    規程どおりに運用されていない型です。規程の側が古いのか、運用が規程を外れているのかは、文書だけでは決まりません。

最初の3つは文書どうしの比較で拾えます。4つ目は、給与の実績データなど規程の外の材料が要ります。手順を分けるのはこのためです。

手順1: 規程をそろえ、読める形にする

Claudeに渡す前の準備で、結果の半分が決まります。

  • 対象を絞る: 等級基準(等級定義、昇格要件)、賃金規程、賃金テーブル(号俸表)、手当の細則、直近の改定履歴。就業規則の本体は、賃金規程が別規程になっていなければ含めます
  • 版をそろえる: ファイル名に施行日を入れ、改定前の版は入れないか、別フォルダに分けます。新旧が混ざると、実在しない矛盾が出ます
  • 形式を確かめる: Projectsのファイルは、ファイルあたり30MBまで、テキスト抽出のみの扱いです(マルチモーダル対応のPDFを除く)。WordやPDFの中の画像になった表は、読み取られません

賃金テーブルをExcelで持っているなら、XLSXは「コード実行とファイル作成」を有効にしたアカウントでだけアップロードできます。有効にしていない場合は、CSVか、表を本文に起こしたPDFにします。

法令との関係も、材料に加えておくと比較の軸が増えます。労働基準法89条2号は、賃金の決定・計算・支払の方法と昇給に関する事項を、就業規則の必ず書く事項としています。92条は、就業規則が法令に反してはならないと定めています。賃金規程の昇給条項が空欄に近いと、この観点でも拾えます。ただし法令適合の最終判断は、社会保険労務士や弁護士の領分です。

手順2: Projectsに置いてプロジェクト指示を書く

Projectsは、独自のチャット履歴とナレッジベースを持つ作業スペースです。アップロードした資料は、そのプロジェクトのどのチャットでも文脈として使われます。

作り方は、サイドバーの「Projects」から「+ New Project」を選びます。名前と説明はClaudeには渡らないので、指示は「Set project instructions」に書きます。

注意点が1つあります。プロジェクト内でも、チャットどうしの文脈は共有されません。共有したい決定事項(「この規程を正とする」など)は、ナレッジに追加する必要があります。

指示は、次のような形で書きます。例として示す文面で、自社の規程名に置き換えて使います。

あなたは人事規程の整合性を点検する担当です。
ナレッジの「等級基準」「賃金規程」「賃金テーブル」だけを根拠にします。
- 食い違いは、必ず両方の規程名と条番号(または表の行)を示す
- 引用は原文のまま。要約で言い換えない
- 食い違いを「定義」「数値」「条件」に分類する
- どちらが正しいかは判断しない。論点だけ挙げる
- 規程に書かれていないことは「記載なし」と書き、推測で補わない

最後の2行が重要です。Claudeは、矛盾を見つけたあとに「おそらく賃金規程が古い」と原因まで書きたがります。原因は材料に書かれていないことが多いので、指示で止めます。

ナレッジが多くなったら、有料プラン(Pro、Max、Team、Enterprise)ではRAGモードが自動で有効になり、プロジェクトの容量が最大10倍まで広がります。ただしRAGは関連しそうな部分を検索して読む仕組みです。「全条文を漏れなく突き合わせる」作業には、手順3のように範囲を区切って頼むほうが安全です。

手順3: 条文を区切って突き合わせさせる

全部を一度に頼むと、粗い指摘で終わります。突き合わせの単位を決めます。

定義と用語の一覧を先に作らせる

等級基準と賃金規程で、等級・職位・役職・資格を指す語を全部拾い、「語」「出てくる規程と条」「定義の有無」の表にしてください。同じ対象に別の語を使っている疑いがあるものは、末尾にまとめてください。

この表が、後の突き合わせの土台になります。語の対応を人が確定してから進むと、後続の指摘が減ります。

等級ごとに、要件と賃金の範囲を並べさせる

等級ごとに、等級基準の昇格要件(在級年数、評価条件)と、賃金テーブルの基本給の下限・上限を並べてください。隣り合う等級で範囲が重なる箇所と、昇格後の賃金の決め方が賃金規程に書かれていない等級を、別の表にしてください。

出力の形は、次のようなものを狙います。以下は形式を示す架空の例で、中身は自社の規程から出てきたものに置き換わります。

等級等級基準の昇格要件賃金規程・テーブル食い違い
G3→G4等級基準の昇格要件在級3年以上賃金規程・テーブル昇給条項は「在級4年以上」食い違い数値(年数)
G4等級基準の昇格要件評価B以上を2期連続賃金規程・テーブル昇格時の賃金の決め方の記載なし食い違い条件の抜け
G3・G4等級基準の昇格要件(なし)賃金規程・テーブルG3上限とG4下限が重なる食い違い数値(範囲)

数値の突き合わせは、Claudeが誤りやすい作業です。表の範囲の重なりや合計は、Claudeの答えを鵜呑みにせず、Excelで再計算して確かめます。Claude側にも「算出した数値は計算過程を示す」と指示しておくと、確かめやすくなります。

手当の細則を別途かける

等級に連動する手当(役職手当、資格手当など)は、等級基準と賃金規程のどちらにも条件が書かれていることがあります。

等級や職位に連動する手当を全部拾い、支給条件が書かれている規程と条を並べてください。条件が複数の規程に書かれていて文言が違うものを、「文言の差」と「差の意味」に分けて挙げてください。

「差の意味」を分けて書かせると、言い回しだけの違いと、支給対象が変わる違いを区別できます。

手順4: 運用実態とのズレは別の材料で見る

規程の文面が整合していても、運用が違えば問題は残ります。給与の実績や昇格の履歴を渡して、規程どおりかを見ます。

ここで気をつけるのは個人情報です。氏名や社員番号は外し、「等級・在級年数・基本給」だけの形にします。社外サービスに賃金データを渡してよいかは、社内の情報管理規程と、利用しているClaudeのプランの設定で判断します。

添付の実績(等級、在級年数、基本給)を、賃金テーブルの範囲と等級基準の昇格要件に照らしてください。範囲を外れている人数と、昇格要件を満たさないまま昇格している人数を、等級別に集計してください。個人の特定につながる出力はしないでください。

出てきたズレは、2通りに読み分けます。

  • 規程が古く、運用のほうが現実に合っている。規程の改定候補です
  • 運用が規程を外れている。是正の対象です。個別の事情(経過措置、個別合意)があれば、規程外の根拠を確認します

どちらかは、Claudeには決められません。経過措置や個別の合意は、規程ファイルに載っていないことが多いからです。

出てきた指摘をどう読むか

指摘の一覧は、そのまま使わずに3段階に振り分けます。

手順

指摘を仕分ける順番

  1. 1

    原文と照合する

    Claudeが示した条番号と引用が、原文と一致するかを確かめます。引用が要約になっている指摘は、根拠として使いません。

  2. 2

    型ごとに重さを決める

    数値の不整合は、賃金の支払いに直結するので優先します。定義の不一致は、改定の際にまとめて直します。

  3. 3

    正にする側を人が決める

    等級基準と賃金規程のどちらに合わせるかは、制度の設計意図で決まります。決定は、ナレッジに「決定事項」として追加します。

決定事項をナレッジに足すと、次の点検で同じ指摘が繰り返されません。チャットを新しく開いても、プロジェクトのナレッジは引き継がれるためです。

落とし穴

原因まで言い切る指摘は、材料の裏付けを確かめる

「賃金規程が2年前の改定に追随していない」のような原因の記述は、改定履歴がナレッジに入っていなければ推測です。推測の指摘を、そのまま議事録に書かないでください。

改定の作業につなげる

洗い出しの次は、直す作業です。決定事項が出たら、改定案の文面づくりを別のチャットで頼めます。ここでも、直す根拠を条番号つきで示させると、改定の経緯を残せます。

等級定義と職務記述書の整合は職務記述書と等級定義をそろえる手順、規程と実績の突き合わせは決裁権限表と稟議実績の食い違いを洗う手順が参考になります。賃金の最低額との関係は最低賃金の改定後に賃金割れを点検する手順にあります。

TeamやEnterpriseプランでは、プロジェクトを人事チームで共有できます。「Can view」は閲覧とチャット、「Can edit」は指示とナレッジの変更もできます。賃金データを含むプロジェクトは、共有範囲を限った人だけに絞り、編集権限は決定事項を管理する担当者にとどめるのが運用しやすい形です。

まとめ

規程間の矛盾は、定義・数値・条件・運用実態の4型に分けて探すと拾い漏れが減ります。Claudeは、条文の引用つきで候補を並べるところまでが得意な範囲です。数値は再計算し、どちらを正とするかは人事が決め、その決定をナレッジに戻す。この循環が回ると、次の改定からは、点検の起点が「前回の決定事項」になります。

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