Claudeで旅行業法の取引条件の説明書面を点検する手順 — 募集型企画旅行の抜けと契約書面の差
募集型企画旅行の取引条件の説明書面を、規則5条の記載事項に当てて抜けを洗い出し、契約書面や標準約款との食い違いまで表にする手順です。条文の読み方も添えます。
説明書面は法12条の4、契約書面は12条の5で別々に定められている
旅行業法12条の4第1項は、旅行業者等が旅行者と企画旅行契約や手配旅行契約を結ぼうとするとき、依頼された旅行業務の内容を確認したうえで取引の条件を説明するよう求めています。2項は、その説明にあたって書面を交付する義務を定めています。
書面に載せる中身は、法律本文では「サービスの内容」「対価に関する事項」「旅行業務取扱管理者の氏名」「通訳案内士の同行の有無」などが例示される程度です。細目は省令に委ねられています。
その省令が、内閣府・国土交通省の共同命令である「旅行業者等が旅行者と締結する契約等に関する規則」です。企画旅行について、説明すべき事項は3条1号、書面の記載事項は5条1号に並んでいます。契約を結んだ後に渡す契約書面は法12条の5で、記載事項は同規則9条が決めます。
この記事は、募集型企画旅行を扱う旅行会社の担当者が、自社のパンフレット・申込書・書面のひな型をClaudeに渡し、5条と9条の項目へ一つずつ当てて「記載なし」と「食い違い」を表にする手順です。出力は点検の下書きにとどまります。記載が足りているかの最終判断は、登録行政庁への確認が前提です。第一種以外の登録は各都道府県が窓口になると、観光庁の旅行業法のページに案内があります。
突き合わせる資料は4種類 — 広告・説明書面・契約書面・確定書面
点検の前に、手元の資料がどの段階の書面なのかを分けておきます。同じ冊子や画面が複数の役割を兼ねている会社もあるため、資料ごとに「どの条文上の書面として使っているか」を書き出すところから始めます。
| 資料 | 根拠 | 渡す・出す時期 |
|---|---|---|
| 募集広告 | 根拠法12条の7、規則13条 | 渡す・出す時期参加者の募集時 |
| 取引条件の説明書面 | 根拠法12条の4第2項、規則5条 | 渡す・出す時期契約を結ぼうとするとき |
| 契約書面 | 根拠法12条の5第1項、規則9条 | 渡す・出す時期契約を結んだとき、遅滞なく |
| 確定書面 | 根拠標準旅行業約款(募集型)10条 | 渡す・出す時期契約書面に定める日まで |
確定書面は、契約書面で日程や運送・宿泊機関の名称を確定できなかったときに交付する書面です。約款10条は、利用予定の宿泊機関と表示上重要な運送機関を契約書面に限定して列挙したうえで、旅行開始日の前日までに確定状況を書面で渡すと定めます。旅行開始日の前日から数えて7日目に当たる日以降に申し込まれた契約では、期限は旅行開始日になります。
広告にも、説明書面とつながる項目があります。規則13条8号は、取引条件の説明を行う旨を広告に表示するよう求めています。ただし、3条1号の事項を広告に表示している場合は除かれます。パンフレットの隅にある「旅行条件は契約前にご説明します」の一文は、この号の確認対象です。
説明書面と契約書面の記載事項を並べた早見表
規則5条1号は、募集型を含む企画旅行契約を結ぼうとするときの書面の記載事項を挙げます。イからニが企画者・営業所・管理者に関する事項、ホは3条1号のハからタまでの事項です。契約書面の9条1号は、3条1号のハからチまで・ヌからタまでと、5条1号のイ・ハ・ニを引き、契約締結の年月日などを足しています。
| 項目 | 説明書面 | 契約書面 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 企画者の氏名・名称、住所、登録番号 | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考5条1号イ |
| 代理して契約する場合の代理人の情報 | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考代理のときのみ |
| 取扱営業所の名称・所在地 | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考外務員なら氏名と所属営業所 |
| 旅行業務取扱管理者の氏名と最終説明の旨 | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考依頼があれば管理者が最終的に説明する旨 |
| 目的地、出発日などの日程 | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考3条1号ハ |
| 対価と収受の方法 | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考3条1号ニ |
| 対価で受けられるサービスの内容 | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考3条1号ホ |
| 届出住宅の事業者名・届出番号・住所 | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考民泊を含むときのみ |
| 対価に含まれない経費で通常必要なもの | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考3条1号ト |
| 最少催行人員 | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考人数割れで中止とするときのみ |
| 契約の申込方法と成立に関する事項 | 説明書面○ | 契約書面— | 備考9条の引用範囲から外れている |
| 契約の変更・解除(取消料を含む) | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考3条1号ヌ。取消料は約款別表第一 |
| 責任・免責 | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考3条1号ル |
| 旅行中の損害の補償 | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考3条1号ヲ |
| 参加資格 | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考資格を定めるときのみ |
| 輸送の安全に関する情報 | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考専ら企画旅行のための運送を含むとき |
| 目的地の安全・衛生に関する情報 | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考該当する情報があるとき |
| 通訳案内士の同行の有無 | 説明書面○ | 契約書面○ | 備考3条1号タ |
| 契約締結の年月日 | 説明書面— | 契約書面○ | 備考9条1号ハ |
| 旅程管理者が同行しないときの連絡方法 | 説明書面— | 契約書面○ | 備考9条1号ニ |
表の見方に、二つ注意があります。
一つ目は「備考」に条件を書いた行です。最少催行人員や参加資格のように、条文が「〜する場合にあっては」と限定している項目は、自社のツアーが条件に当たらなければ記載がなくても抜けではありません。Claudeには、条件に当たるかをツアー単位で自分に確認させるよう頼みます。
二つ目は、説明書面にだけ要る項目と、契約書面にだけ要る項目があることです。申込方法と契約の成立時期は説明書面の側の項目で、契約書面側は、契約締結の年月日と、添乗員などが同行しない場合の現地での連絡方法が加わります。例えば、契約書面のひな型に現地での連絡先の欄がない、といった抜けが対象になります。
Projectに置く資料と、点検を頼む手順
Claudeには、条文の項目を行にした表を自分で作らせ、その行に自社資料を当てさせます。条文を知らない前提で「抜けを探して」と頼むと、一般的な旅行条件の話に流れてしまうためです。
Projectを作って点検するまでの流れ
- 1
資料をProjectの知識に入れる
標準旅行業約款(観光庁掲載のPDF)、規則の3条・5条・9条・13条をテキストにした文書、自社のパンフレット・申込書・説明書面・契約書面・確定書面のひな型を入れます。観光庁の「旅行業法及び省令等」のページに、約款PDFと法令データへのリンクが並んでいます。
- 2
資料ごとの役割を指示に書く
Projectの指示に「この資料は広告」「この資料は説明書面として交付している」のように役割を書きます。役割が曖昧だと、広告にあって説明書面にない項目を「抜け」と誤って数えます。
- 3
条文の項目表を先に作らせる
規則5条1号と9条1号を、前掲の早見表と同じ形で行に分解させます。この段階で、人が条文のテキストと見比べて行の過不足を直します。
- 4
自社資料を行に当てる
各行について「記載あり」「記載なし」「記載はあるが他の書面と内容が違う」の3つに分け、該当箇所を資料の文言で引用させます。引用のない判定は採用しません。
- 5
食い違いは原本で確かめる
引用された箇所を自分の目で原本に当たり、数字や日付を読み違えていないか確かめます。結果は旅行業務取扱管理者に回します。
Projectの知識に入れるファイルには上限があります。ヘルプセンターによれば、1ファイルは30MBまでで、ファイル数に上限はない代わりに、内容の合計がコンテキストウィンドウに収まる必要があります。PDFは100ページ以下なら図表も読み取られますが、101〜1000ページではテキストだけが対象です。パンフレットの料金表が画像で貼られている場合は、PDFを100ページ以内に分けるか、料金表をテキストでも添えておきます。
標準旅行業約款のPDFは、観光庁のページで339KBと案内されています。サイズの面では問題になりません。
点検を頼むプロンプトは、次の形で頼みます。
添付の「規則5条1号・9条1号の項目表」の各行について、次の3点を
一つの表にしてください。
1. 説明書面のひな型に記載があるか(引用つき)
2. 契約書面のひな型に記載があるか(引用つき)
3. 広告・申込書・確定書面の記載と、数字や日付が食い違っていないか
条件付きの項目(最少催行人員・参加資格・届出住宅・安全衛生情報など)は、
まず該当するかをこのツアーの資料から判断し、根拠を示してください。
資料に書かれていないことは推測せず「記載なし」と書いてください。
条文の解釈や適法性の結論は出さず、確認が必要な点として列挙してください。出力の表は、例えば次のような形になります(書式の例示であり、実際の資料に基づく結果ではありません)。
| 項目 | 説明書面 | 契約書面 | 食い違い |
|---|---|---|---|
| 最少催行人員 | 説明書面「20名(引用)」 | 契約書面「15名(引用)」 | 食い違いあり。人数が異なる |
| 旅程管理者が同行しない場合の連絡方法 | 説明書面— | 契約書面記載なし | 食い違い契約書面にのみ要る項目が未記載 |
約款が「契約書面に記載したところ」を指す箇所は食い違いの確認先になる
標準旅行業約款の募集型企画旅行契約の部には、契約書面の記載を基準にする条文が散らばっています。説明書面と契約書面の内容が違っていると、どちらが旅行者との約束になるのかが曖昧になるため、次の箇所は優先して突き合わせます。
- 旅行代金の支払い(12条): 旅行者は、契約書面に記載する期日までに、契約書面に記載する金額を支払う
- 旅行者による解除(16条1項): 別表第一に定める取消料を支払えば、いつでも契約を解除できる。取消料の金額は契約書面に明示される(別表第一の備考)
- 旅行開始前の解除(17条1項5号): 旅行者の数が契約書面に記載した最少催行人員に達しなかったとき
- 催行中止の通知(17条3項): 国内旅行は旅行開始日の前日から数えて13日目(日帰りは3日目)に当たる日より前、海外旅行は23日目(ピーク時の出発は33日目)に当たる日より前に通知する
- 旅行代金の増額通知(14条2項): 旅行開始日の前日から数えて15日目に当たる日より前に通知する
- 利用人員による旅行代金の差(14条5項): 利用人員で代金が変わる旨を契約書面に記載した場合に、そのとおりに変更できる
取消料は、説明書面・パンフレット・契約書面の三つで率や起算日がそろっているかを見ます。別表第一の国内旅行(貸切船舶を利用するものを除く)は、旅行開始日の前日から数えてさかのぼる日数で段階が分かれ、いずれも「旅行代金の◯%以内」という上限です。
| 解除する時期 | 取消料の上限 |
|---|---|
| 20日目(日帰りは10日目)に当たる日以降 | 取消料の上限旅行代金の20% |
| 7日目に当たる日以降 | 取消料の上限30% |
| 旅行開始日の前日 | 取消料の上限40% |
| 旅行開始当日 | 取消料の上限50% |
| 旅行開始後・無連絡不参加 | 取消料の上限100% |
パンフレットに「14日前から30%」とあれば約款の上限を超えます。起算日を「出発日から」と数え、約款の「前日から」と1日ずれている書き方もあり得ます。海外旅行の取消料は別の表で、ピーク時の出発は区分が異なります。
最少催行人員を例にします。説明書面とパンフレットに「最少催行人員15名」と書き、契約書面のひな型が「20名」のまま残っていれば、17条1項5号が基準にする契約書面の数字が違うことになります。通知期限も同じで、パンフレットに「出発の10日前までにご連絡」と書いてあれば、国内旅行の17条3項と照らして期限の日数が合っているかを見ます。
確定書面との関係は、別表第二(旅程保証)の注に出てきます。確定書面が交付された場合は「契約書面」を「確定書面」と読み替えて表を適用し、契約書面と確定書面の間、または確定書面と実際に提供されたサービスの間に変更が生じたときは、それぞれを一件として数えます。この数え方は変更補償金の件数に関わります。点検では、確定書面のひな型の項目が契約書面のどの項目に対応するかを表にしておくと、読み替えがしやすくなります。
約款の条番号は、標準約款の最終改正に基づく番号です。観光庁のページは、告示の改正を令和8年3月9日反映としており、令和8年4月1日から適用される内容です。自社の約款がどの版を基にしているかは、点検の前に確認します。
Claudeに任せない部分と、つまずきやすい点
落とし穴
自社の約款が標準約款と同一とは限らない
標準約款と同一の約款を定めた旅行業者は、認可を受けたものとみなされます(法12条の3)。同一でない約款を使う場合は、条番号も文言も標準約款と違うため、Claudeに標準約款の条番号で判定させると食い違いを見落とします。自社の約款PDFを別に入れ、どちらを基準にするかをプロンプトで指定します。
取引条件の説明は、書面を渡すだけで終わるものではありません。法12条の4第1項は、依頼内容を確認したうえで取引の条件を説明するよう求めています。Claudeが見られるのは書面の記載であり、説明の場面でどう伝えたかは対象外です。
電子的な方法で書面に代える場合も、別の確認が要ります。法12条の4第3項は、旅行者の承諾を得て情報通信の技術を利用する方法で提供することを認めています。規則6条は、旅行者側にファイルを記録する方法や、旅行業者側の顧客ファイルを閲覧に供する方法を挙げ、顧客ファイル方式では、旅行サービスの提供が終了した日の翌日から2年を経過した日まで、記録を消去・改変できないことを求めています(苦情の申出があったときは、苦情が解決した日との遅いほう)。画面や運用の話で、書面のひな型を読むだけの点検では判断できません。
また、説明書面の交付が要らない場合も定められています。規則4条は、対価と引換えにサービスの提供を受ける権利を表示した書面を交付する場合を挙げます。手配旅行のように、企画旅行以外の契約を結ぶ場合の説明事項は、規則3条2号に別の項目として並んでいます。この記事の表は企画旅行用なので、手配旅行の書面を同じ表で点検すると行が合いません。
最後に、点検結果の持っていき先です。旅行業法11条の2は、営業所ごとに旅行業務取扱管理者を選任するよう定めています。管理者の職務は施行規則10条にあり、取引条件の説明(4号)と書面の交付(5号)に関する事項が含まれます。Claudeの表を管理者が確認し、疑義があれば登録行政庁へ照会する流れにしておくと、責任の所在が曖昧になりません。観光庁のページには、旅行業法施行要領とそのQ&Aも通達として掲載されています。表で気になった点は、まずその資料で運用の考え方を調べると、問い合わせが具体的になります。
資料の扱い方としては、同じ規程の読み合わせを作る場合の進め方が、Projectsで社内マニュアルに答えさせる手順にまとまっています。契約書の記載事項を条文に当てて表にする方法は、建設業法19条の点検や、保険の意向把握・意向確認書面の下書きでも、記載事項を条文に当てて表にしています。