Claudeで労働者死傷病報告の書き方を下書きする — 休業4日以上と未満の分け方
労働者死傷病報告の事故状況を、現場メモから報告項目へ振り分けるClaudeの使い方。休業4日以上は遅滞なく、4日未満は四半期ごとという区分の確認と、電子申請前の照合まで。
死傷病報告の下書きでClaudeに任せる範囲
労働者の死傷病報告は、労働者が労働災害などで死亡または休業したときに、事業者が所轄の労働基準監督署へ出す報告です。根拠は労働安全衛生法に基づく省令(安衛則)の97条で、Claudeに頼めるのは「現場の事故メモを、97条が求める項目に振り分けて文章にする」ところまでです。
任せないのは3つです。休業が4日以上か未満かの判断、原因の断定、提出そのものです。区分は条文の文言で決まり、原因は調査の結果で決まります。ここをClaudeに推測させると、提出する報告が事実とずれます。
この記事では、条文の区分を先に押さえ、メモから項目への振り分け、事実と推測の分離、提出前の照合を順に整えます。社労士が労災の給付請求を扱う場面は労災の給付請求書をClaudeで下書きする社労士向け手順にあります。こちらは給付を受ける側の請求で、本記事の死傷病報告は事業者が監督署へ出す報告です。
休業4日以上と4日未満で何が変わるのか
安衛則97条は、休業の日数で報告の出し方を2つに分けています。
| 休業4日以上・死亡 | 休業4日未満 | |
|---|---|---|
| 条文 | 休業4日以上・死亡97条1項 | 休業4日未満97条2項 |
| 提出時期 | 休業4日以上・死亡遅滞なく | 休業4日未満四半期ごとにまとめて |
| 休業見込期間・死亡日時(9号) | 休業4日以上・死亡報告する | 休業4日未満報告しない |
| 休業日数 | 休業4日以上・死亡条文上の項目なし | 休業4日未満報告する |
4日未満の提出時期は、暦の四半期の最後の月の翌月末日です。
休業4日未満の提出期限
- 1〜3月の分4月末日まで
- 4〜6月の分7月末日まで
- 7〜9月の分10月末日まで
- 10〜12月の分翌年1月末日まで
条文の2項は「1項各号(9号を除く)に掲げる事項及び休業日数」と書いています。つまり4日未満の報告でも、労働者の氏名や発生状況は4日以上と同じ粒度で必要です。簡略版になるのは休業見込期間だけで、事故の状況を書く手間は変わりません。
休業が延びたときはどちらで出すのか
最初の見込みは3日でも、治療が長引いて4日を超えることがあります。この場合の扱いは、97条の条文だけでは読み切れません。Claudeに「どちらの区分か」を聞いても、条文にない運用の答えを作ってしまいます。区分が揺れる事案は、所轄の労働基準監督署か社労士に確認する前提で、下書きには「区分未確定」と注記させる運用が安全です。
様式第23号・第24号で探しても見つからない理由
死傷病報告の書き方を調べると、様式第23号や第24号の記入例が出てきます。安衛則の別記様式の一覧では、「様式第二十三号」と「第二十四号」の欄が「削除」になっています。
報告は電子申請が原則です。97条1項・2項はいずれも、電子情報を処理する組織を使った報告と定めています。ただし改正の附則(令和6年の厚生労働省令45号)に、当分の間は書面による報告でも構わないという経過措置が置かれています。4日以上は1項各号の事項を書面に、4日未満は9号を除く事項と休業日数を書面に書く形です。
つまり「様式の分け方」は、今は紙の様式番号でなく、電子申請の画面項目と97条の項目の対応で考えます。電子申請の画面を開いたら、下の表の号と画面の入力欄を1つずつ突き合わせて入力します。社内に事故報告書がある会社は、それを下書きの材料に使い、97条の項目に当てはめ直してください。
97条の項目を、メモのどこから埋めるか
条文が求める項目は12あります。下書きをClaudeに任せやすい項目と、台帳や本人確認から転記すべき項目に分けます。
| 号 | 項目 | 埋め方 |
|---|---|---|
| 1〜3 | 項目労働保険番号、事業の種類・事業場の名称・所在地・電話番号、常時使用する労働者数 | 埋め方会社の台帳から転記 |
| 4 | 項目建設工事に従事する労働者が被災した場合の工事の名称(自社・請負を問わない) | 埋め方工事台帳から転記。建設工事でなければ空 |
| 5〜7 | 項目構内下請の労働者の場合は事業場の名称、建設の請負人の労働者の場合は元方事業者の事業場の名称、派遣労働者の場合は追加事項 | 埋め方該当する場合だけ。Claudeに該当の有無を聞き返させる |
| 8 | 項目労働者の氏名、生年月日、年齢、性別、職種、経験期間、傷病の名称・部位 | 埋め方人事台帳と診断書から転記 |
| 9 | 項目休業見込期間または死亡日時(4日以上のみ) | 埋め方診断書から転記 |
| 10 | 項目外国人の場合の国籍・地域と在留資格の区分 | 埋め方在留カードの内容から転記 |
| 11 | 項目発生日時、発生場所の所在地、発生状況と略図、原因 | 埋め方メモからClaudeが下書き |
| 12 | 項目報告年月日、事業者と報告者の職氏名 | 埋め方提出時に入力 |
Claudeが力を発揮するのは11号です。ほかの項目は、事実がすでに台帳や診断書に確定していて、文章にする工程がありません。
4〜7号は、被災者の働き方によって該当が分かれます。4号は建設工事の作業に従事する労働者が被災した場合の工事の名称で、自社の従業員でも建設工事中なら書きます。5号は事業場の構内で作業する請負人の労働者が被災した場合の事業場の名称、6号は建設工事の請負人の労働者が被災した場合の元方事業者の事業場の名称です。7号は派遣労働者が被災した場合に、報告する事業者が派遣先か派遣元かの別と、派遣先の事業場の名称・郵便番号を求めます。該当しない号はClaudeに空欄を埋めさせないよう指示しておきます。
Projectsに条文と指示を置いてから下書きを頼む
毎回条文を貼り直すのは手間なので、ClaudeのProjectsに97条の本文を入れておきます。プロジェクトのFilesに置いたファイルは、会話をまたいで参照されます。ファイルは文章を抽出した形で読まれ、1ファイルは30MBまでです。
指示欄には、次のような内容を入れます。例として挙げる形で、自社の運用に合わせて調整してください。
あなたは死傷病報告の下書きを手伝います。
- 根拠はProjectsにある安衛則97条の本文だけです。
- 条文にない運用や過去の扱いは、推測で答えず「条文にありません」と返してください。
- 私が貼る事故メモの事実だけで、11号(発生日時・場所・発生状況・原因)を下書きしてください。
- メモにない情報は補わず、「メモに記載なし」と書いて空欄にしてください。
- 休業が4日以上か未満かは判断しません。私が伝えた区分に従ってください。
- 4号は建設工事の作業中の被災、5号は構内下請の労働者、6号は建設の請負人の労働者、7号は派遣労働者の場合だけ出してください。該当するか不明なときは私に聞いてください。条文のテキストは、e-Govの安衛則から97条の部分だけを切り出して貼ります。省令全体は巨大なので、97条だけ入れれば足ります。
事故メモから11号の発生状況を下書きする
現場の事故メモは、時系列がばらばらで、見たことと推測が混ざっています。そこでClaudeには、いきなり文章にさせず、まず仕分けさせます。
次の事故メモを、次の3つに分けてください。
A: 現場で確認された事実(日時、場所、動作、設備の状態)
B: 担当者の推測や感想(「〜と思う」「たぶん」)
C: 欠けている情報(いつ、誰が、どの設備で)
分けただけで、まだ文章にしないでください。Aが整ったら、次の指示で発生状況を書かせます。
Aだけを使って、時系列で発生状況を3〜5文にしてください。
Bの内容は、書き込まず別枠に残してください。
日時は「令和◯年◯月◯日 午前◯時ごろ」の形で、メモの表現をそのまま使ってください。この2段階にする理由は、Claudeが日本語を自然に整える過程で、「〜したと思われる」が「〜した」に変わりやすいためです。仕分けを挟むと、推測が事実の欄へ混ざる経路が一つ減ります。
原因欄は断定せず、調査の状態を書く
11号は原因も求めています。事故の直後に原因が確定していることは少なく、Claudeに「原因を書いて」と頼むと、もっともらしい断定文が返ってきます。
原因欄は、確認できた事実と、調査中の仮説を分けて書かせます。たとえば「床面の油の付着が確認された」は事実欄、「清掃手順の不徹底が背景にある可能性がある」は調査中の仮説です。報告を出した後に原因が変わることもあるので、断定した文言は後で食い違いを生みます。原因の整理の仕方は、Claudeで介護事故報告書を下書きする書き方の原因欄の節が同じ考え方で書かれています。
再発防止策の検討は、死傷病報告とは別の作業です。災害が起きる前の危険の洗い出しはリスクアセスメント表の作り方にあるので、再発防止の議論はそちらの表に戻して行います。
略図はClaudeに描かせない
11号には、発生状況に加えて略図が含まれます。略図は、被災時の設備や人の位置関係を示すものです。Claudeに図そのものを作らせると、メモにない配置まで描いてしまうおそれがあります。代わりに「略図に載せるべき要素の一覧」を作らせ、人が描きます。
Aの事実から、略図に描く必要がある要素を箇条書きにしてください。
(設備、被災者の位置、通路、障害物、発見者の位置)
メモにない位置関係は「要確認」と書いてください。個人情報はClaudeに渡す前に外す
8号には、被災者の氏名、生年月日、年齢、性別があります。Claudeに渡すのは11号の材料だけにして、氏名や生年月日は渡さず、電子申請の画面か書面に直接入れます。事故メモには被災者名が混じるので、「Aさん」「同僚B」のような記号に置き換えてから貼ります。
置き換えの漏れは、自由記述の欄で起きます。「3号機の田中さんが」のように、設備名と氏名が並んだ文が残りやすいところです。氏名の一覧を作り、検索で全部ヒットしないことを確認してから貼ります。表を使った匿名化の手順は、ヒヤリハット報告の分析をClaudeでで詳しく扱っています。
提出前に原本のメモと突き合わせる
下書きを受け取ったら、電子申請に入力する前に次を確認します。
- 日時、場所、設備名が、メモと一致しているか
- 推測の文が、発生状況の欄に事実として混ざっていないか
- 4日未満の報告に、休業見込期間(9号)の記載が紛れていないか
- 4日以上の報告で、9号が空になっていないか
- 4〜7号の欄が、該当しない号で埋まっていないか。逆に、建設工事中や請負人・派遣労働者の被災なのに空になっていないか
- 診断書の傷病名・部位と、報告の記載が一致しているか
特に3点目と4点目は、区分が違うと必要な項目が違うために起こります。条文は、4日未満では9号を除くとはっきり書いています。Claudeが4日以上の項目一式で下書きしてしまった場合は、休業日数の欄に直します。
照合を楽にするため、発生状況の各文の末尾に、根拠にしたメモの行番号を括弧で付けさせる方法もあります。確認が済んだら括弧は消します。
報告しないと、どうなるのか
労働安全衛生法100条は、厚生労働大臣、労働局長、労働基準監督署の署長が、事業者などに必要な事項を報告させられると定めています。97条の死傷病報告は、この「厚生労働省令で定めるところにより」報告させる仕組みの一つです。
同法120条5号は、100条1項または3項の報告をせず、または虚偽の報告をした場合を50万円以下の罰金の対象にしています。さらに122条により、従業者が業務に関して違反したときは、行為者だけでなく法人にも罰金刑が科されます。下書きが遅れたことを理由に報告自体を後回しにしないこと、事実と違う内容を書かないことが、この罰則から導かれる運用の線です。
つまずきやすい場面
区分をClaudeに聞いてしまう。「休業3日だから4日未満ですよね」と確認を求めると、Claudeは同意します。区分は条文と診断書で人が決め、Claudeには決めた区分を伝えます。
4日未満の報告を忘れる。4日以上の報告は事故のたびに出しますが、4日未満は四半期にまとめて出すので、期限を忘れがちです。四半期末に、その期間の4日未満の被災者を台帳から洗い出す作業は、Claudeに一覧表の形で整理させると楽です。ただし、台帳のデータはClaudeに渡す前に個人名を外します。
旧様式の記入例を土台にする。様式第23号・第24号の記入例を貼って「この形で書いて」と頼むと、削除された様式の欄に沿った下書きが返ってきます。97条の項目を土台にしてください。
労災の給付請求と混同する。給付請求は労働者が受ける保険給付の手続きで、死傷病報告は事業者が監督署へ出す報告です。提出先も目的も別なので、同じ事故でも書類は別々に作ります。
任せる範囲と任せない範囲
Claudeに任せるのは、メモの仕分け、11号の発生状況の文章化、略図に載せる要素の一覧づくりです。人が決めるのは、休業日数による区分、原因の確定、被災者の個人情報の入力、提出です。
条文と診断書という確定した材料のそばでClaudeを使うと、下書きの誤りは照合で見つかります。就業規則のたたき台のように、社内文書を整える使い方は社労士の生成AI活用ガイドブックとClaudeで就業規則たたき台を作る方法にあります。